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陰口 |
パスカル・デサン著 |
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〔初版〕1996年
リヴァージュ社(パリ)
叢書 リヴァージュ・ノワール 255番 |
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Bouche d'ombre / Pascal Dessaint
-Paris: Editions Rivages.
-(Rivages/noir; 255).
-255p. -17 × 11cm. -1996. |
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土砂降りの雨を車が走っていた。 |
午後四時というのに外は真っ暗だった。運転席に女、助手席に男。公証人の事務所に向かっていた。エルヴィールにとっては兄、シモンにとって友に当たる男ダニエルの遺言が公開される。遅れて来た黒服の女。ダニエルと付き合っていた女性ジュリア。公証人が遺言を読み上げる。「故人の財産200万フラン、および不動産は、子供を作らないという条件でエルヴィールに譲られる」 |
三人の回想が織り成されていく。ホームレスとしてさまよっていたシモンは屈強な体格を見こまれ、ダニエルの運転手兼ボディーガードとして雇われた。家に連れて行かれ、妹のエルヴィールに紹介される。女は近親相姦の罠に絡め取られ、自分を助けてくれる男を待っていた。兄に犯されながら、繰り返し耳にした蜘蛛の話が頭にこびりついていた。もう一人の女ジュリアも部屋で男を待ちつづけている。プレゼントされたサボテンを見つめながら… |
トゥールーズ。連続殺人鬼が犯罪を重ねていた。友人たちが死に始めていた。シモン、エルヴィール、ジュリア。三人の殺意が重なりあっていく。シモンのリュックに覚えの無いジャックナイフ。連続殺人事件の凶器だった… |
差別と憎悪、倒錯に蝕まれた街トゥールーズを背景として一人の男性の生き様、死に様が描かれていきます。恋人としてのダニエル、友としてのダニエル、兄としてのダニエルは当然のように矛盾しているのですが、それが逆に深みのある人物造形に繋がっているようです。 |
後年の作品に比べ描写の密度が低く読みやすい。意外性の高い結末逆転劇を含めて批評家大賞も納得。 |
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