香港の狂人
ジャン・アミラ著

〔初版〕 1969年
ガリマール社(パリ)
叢書セリ・ノワール 1312番

Les Fous de Hong-Kong / Jean Amila
-Paris: Editions Gallimard.
-(Série Noire; 1312). -1969.

   

 「思想より実利優先。香港で一番重要な建物って中国銀行のビルだと思うよ」
 水上船を売りつけるために香港にやってきたヴィクトール。初めて訪れるアジアは刺激的だった。旧友のジョンと再会。奥さんが黒髪をしていたのに驚かされた。
 「中国の女性ってヨーロッパと違う。うるさくないし、情が深いし、裏切らないから」。こちらを見ている女の瞳をみると…最後の発言は怪しいものだった。
 白髪、太い繭の男。香港側の担当者はリベイラだった。裏社会の顔役でもある。「そんな商談は聞いたこともないが」。何か手違いがあったようである。誰かに騙されて水上船を運んできたことになる。
  リベイラの名を騙り、偽の商談をでっちあげたのはジョンだった。男は1923年に沈没した船に隠された清王朝の財宝を探そうとしていた。独特の潮流に流されない船が必要だった。しかし財宝を追っていたのは一人ではなかった。ジョンが姿を消し、ヴィクトールも追われる立場となっていく…
 ビジネス小説、スパイ小説、海洋小説を混ぜこんだ面白い一作。男二人が協力しながら船の操作をしている部分にはジョゼ・ジョバンニの影響を見ることもできます。普段の強烈なペシミズムはやや抑え気味、珍しいベターエンドも相まって居心地の良い作品に仕上がっています。アミラの裏名作の一つ。

Photo : "The Doorway To Hell" / Archie Mayo, 1930
] Noirs [ - フランスのもう一つの文学 by Luj, 2008 - 2010

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