|
「思想より実利優先。香港で一番重要な建物って中国銀行のビルだと思うよ」 |
水上船を売りつけるために香港にやってきたヴィクトール。初めて訪れるアジアは刺激的だった。旧友のジョンと再会。奥さんが黒髪をしていたのに驚かされた。 |
「中国の女性ってヨーロッパと違う。うるさくないし、情が深いし、裏切らないから」。こちらを見ている女の瞳をみると…最後の発言は怪しいものだった。 |
白髪、太い繭の男。香港側の担当者はリベイラだった。裏社会の顔役でもある。「そんな商談は聞いたこともないが」。何か手違いがあったようである。誰かに騙されて水上船を運んできたことになる。 |
リベイラの名を騙り、偽の商談をでっちあげたのはジョンだった。男は1923年に沈没した船に隠された清王朝の財宝を探そうとしていた。独特の潮流に流されない船が必要だった。しかし財宝を追っていたのは一人ではなかった。ジョンが姿を消し、ヴィクトールも追われる立場となっていく… |
ビジネス小説、スパイ小説、海洋小説を混ぜこんだ面白い一作。男二人が協力しながら船の操作をしている部分にはジョゼ・ジョバンニの影響を見ることもできます。普段の強烈なペシミズムはやや抑え気味、珍しいベターエンドも相まって居心地の良い作品に仕上がっています。アミラの裏名作の一つ。 |
|