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大きなバッタが野原を飛び回っている。アメリカの片田舎、人口350人の小さな町がダム建設で揺れていた。町長ヒラリー宅に人々が集まって対応を協議している。ダム建設に反対する住人を武力で押さえつけようとする工事関係者たち。ちょうどこの日町の司祭ポールが車で拉致され、左足が動かなくなる大怪我を負わされたところだった。 |
遠くで嵐の音がしていた。深夜、ヒラリーとポールが車に乗っていると背後から銃声が聞こえた。振り返ると黒の車が追跡してきていた。運転席のヒラリーがカービン銃を手渡してくる。ポールはタイヤを狙って敵の封じこめに成功する。ヒラリーが仲間を呼びに行っている間ポールは見張りを続けていたが、敵の残党の逆襲にあい相手を射殺してしまう。 |
「犯罪司祭が現場監督を射殺」。新聞一面にそんな記事が載った。誹謗中傷を交え、あることないことを書きたてた卑劣な内容。町人たちが皆怒っていた。 |
ダム建設を仕切っている採掘業界の大物が直々に登場。「部下を殺したのはあなたですかね」。町人を買収しようとし、適わないと知ると脅迫にかかる。「街から本当に危険な連中を呼びますよ」。口先ではなかった。翌日、本物の地獄が始まった… |
1950年に発表されたアミラ名義の処女作。フランス語オリジナルで書かれたセリ・ノワールとしても最初期の一作です。舞台をアメリカに設定していますが細部の書きこみが甘いためややリアリティ不足になっている欠点が見られます。 |
とはいえ「怒りの作家」アミラに相応しく作品は最後まで不穏な緊張感で貫かれており、ラスト15ページの激しい殺戮劇には鳥肌が立ちました。この時代にしか生まれてこない強烈なパルプ作品。初期のセリ・ノワールで仏訳されていた作家だとホレス・マッコイ(『経帷子にポケットはない』)の影響を受けているのではないかと思います。 |
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