無限の魔人 第六話 前編 〜接触〜
[港・倉庫街]
「あははは、あの小竜姫の悔しそうな顔といったらくくく、堪んないよ、はははは・・・・・・ふぅ」
腹を抱えながら笑っていたメドーサだが、最後の方は段々と尻萎みになっていった。
振り返り、後ろに居た勘九郎に言った。
「勘九郎、あんたは直に香港に向かいな。次の計画だよ」
「はいメドーサ様。雪之丞はどうします」
「放っておきな、どうせ何も出来やしない」
「ああそれと、日本に居る間は[力]は使うんじゃないよ。余計なのに位置がばれると面倒だからね」
心得たとばかりに礼をし、踵を返し外へ向かう勘九郎。
5分もたった頃だろうか。メドーサの様子が一変した。
「あああああ!頭に来る!」
ズゴっ! ガコっ! ドゴンっ!!
近くに置いてあったドラム缶が三つほど蹴り飛ばされた。
ドン! ドン! ドゴーン!
三つとも派手な音を出して壁にめり込んだ。
「はぁはぁはぁ「荒れてるねぇ、一体どうしたんだメドーサ」っ誰だいっ!!」
倉庫の扉に背を預けた男が居た。
黒い変なサングラスの男だった。
メドーサは三又の矛を取り出し、男に向け構えた。
「初めまして、メドーサ。俺は愚者に限りなく近い賢者(自称)名は界人(かいと)だ」
胡乱な者を見るような眼でメドーサは見ていた。
「賢者・・・ねぇ、それに聞いた事も無い名だね。それにあんたの声は、あの横島って奴にそっくりだ。
・・・そろそろ正体を―――
一拍の間。
―――現しなっ!!」
ダっ! ブオン
「な、かわした!?」
驚くのも当たり前だろう。
彼女は先手を打ったのだ。
自身の持つ最高の一撃、すなわち超加速。
だが、それがかわされたのだ。
いくら直線的な攻撃を仕掛けたからといって、下級神魔クラス程度にはかわせないはずだった。
「おいおい、行き成り何するんだよ。危ないだろうが」
その言葉とは裏腹に余裕を持って語る。
(あっぶね〜、完全に油断してた・・・もう少しでやばかったな)
危なかったのは界人では無い。
危険が迫ると無意識に体が反応するようになっている彼は、メドーサにすれ違い様一撃を放とうとするのを意志の力で防いだのだ。
「それに暴れちまうとGSやらなにやらが大挙してやって来るぞ? さっきみたいな超加速での一瞬ならそれは無いだろうが」
(メドーサってこんなやつだったか)
彼女は界人が敵意を持っていないことを感じたのだろうか、構えを解いた。
「ふん、あんたの狙いはなんだい」
「話が早くて助かる。別に大した事じゃないんだ。俺は知り合いが居なくてね。寝るところが無いんだ。ここに泊まらせてくれ」
(やはり頭の回転が早い)
「あたしには関係ないね。それよりも質問に答えな。あんたの正体は?」
再び矛を界人に向けて、言い放つ。
(龍美と良い、メドーサと良い、どうしてこうも気にするかな)
「正体って言われてもなー、龍美にも言ったが俺は俺。それ以上でもそれ以下でもない。それで納得してくれ」
「ふん、龍美ってな誰だい。それと、そのサングラスを外しな!それが礼儀ってもんだろう?」
ニヤリと笑うメドーサ。
「ははは、メドーサに礼儀を説かれるとはな」
笑いながらサングラスを外し、メドーサの視線を受け止める。
(まぁ、ある程度は教えておかないとな。こっちが頼む側だ)
「
あんた・・・・。横島って坊やじゃないのは認めてあげるよ。気配、態度、全てが違うからね・・・だが、どいうことだ、兄弟か何かかい? 気配も丸っきり全てが違うって訳でもない」
訳がわからないと言う表情をしながら、首を傾げ尋ねる。
「俺に親兄弟は居ない。お前の言う横島って坊やは俺とは別人だが全くそうという訳でもない」
「それ【それはどういう事だ】誰だいっ!」
(おいおい、龍美・・)
「小竜姫の気配を微弱ながら感じる、お前・・・・やはりあいつの手のものか!!」
メドーサから放たれる殺気が大きくなっていく。
「落ち着け、説明してやるから・・・・ったく龍美、話し掛けるのは時と場所を選べ」
【すまぬ】
多少落ち込んだ声で、界人が掛けているサングラスの左眼が謝る。
「分かれば良いさ、それとメドーサ」
「なんだい」
「少し冷静になれ、お前らしくも無い」
「ふん、今日会ったばかりの奴に私の何がわかるって言うんだい!・・・でも確かに、少し熱くなっちまったようだね」
メドーサは殺気を抑えたが、構えは以前解こうとしない。
「こいつは龍美。元は小竜姫の竜気から生まれた者だ。今日俺の相棒になった」
「・・・小竜姫との繋がりは無いんだね」
【ああ、私は今日のGS試験で雪之丞の攻撃で消えた事になっているからな】
「あんた、あのバンダナかい。しかし何故小竜姫にすら秘密にしているんだい?」
「理解が早いな、さすがだ。答えは簡単」
ニヤリ
「俺と言う存在はまだ秘密、だが龍美が欲しかった。ただそれだけ」
「へぇ、単純な事だね・・・だが、単純であればあるほど行動に迷いは出ない」
「そういうことだ。それと俺と横島の関係だったな」
「ああ、それがあんたの正体を最も理解しやすい質問だからね」
「正体って・・・お前も拘るな。俺は俺だって言ってるのに・・・分かったよ、自称賢者として言ってやる。」
『俺は唯一なる者、時を止められし者、魔人。神魔族、人、何れにも属さぬ存在。それが俺』
沈黙が場を支配する。
メドーサも龍美も今の言葉を理解しようとしているようだ。
「取りあえず、質問は終りだ。それにもう答える気も無いだろうし、あんたの事も多少は分かった。私の邪魔をしないならここは好きに使ってくれて構わないよ」
(メドーサって意外と良い奴だな・・・質問に答えてだけで使わせてくれる何て)
「そうか、ありがとう。」
「っ!」
「どうしたメドーサ? 風邪か?顔が赤いぞ」
(魔族も風邪引くのか?)
彼の彼たる所以。
三つ子の魂百までとあるが、彼は800まで行っても彼故に。
「な、なんでもないよ!」
背中を向けて入り口へ走り、そのまま外へ出て行く。
「どうしたんだ、一体?」
首を傾げながら不思議そうに呟く。
倉庫にはメドーサの行動が理解できなかった界人と、何処か憮然とした気配を漂わせた龍美の2人が残っていた。
無限の魔人 第六話 前編〜接触〜
end
あとがき
今回はメドーサの後を追った界人君の視点でお送りいたしました。
ああ、まず間違いなくメドーサのフラグが・・・ピコンっ!
界人君もびっくりのメドーサの意外な素直さ!これは来るか!?来るのね!?(死
メドーサの苦労とストレス(?)もちょっとだけ表現しときました。いつかこれから解放されるのでしょうか?
そして、取りあえず何と無く前編って付けちゃいましたが、後編は視点が龍美に代わるだけで同じお話です。
ヒロシです・・・・話が進みませんっ!(ぇ
レス返し
皆様毎度レスありがとうございます。
またのご声援をお願います。(何
>tojackさん
初めまして!
ふ、引っかかってしまいましたね!?あから様な名前を使う事によって、読者の突っ込み魂に訴えかける!あなた様は見事突っ込んでしまいました。(だから何だ
劉備元徳さんでしたか・・・似た様な名前の方は世の中沢山おります。気にしたら駄目です。それと擬人化ですが・・・奇抜はちょっとごめんなさい(え
>九尾さん(レス神さま)
>ここの横島が普通にいるってのがほんと都合いいですよ。ほっといていいんだもん。
正にその通りです。ほっと居て良い!!でも、「その間あいつ何やってんだー」なんて事になりそうで・・・界人君と横島君別々の視点も必要かな!?(自爆
>「その後どうなったか気になるあの人をクローズアップしよう企画〜♪」
炎の狐・・・いいですね! 頂きです!(そんなんでええんかー!?
こうご期待!!・・あ、炎の狐って原作の最初の方かー・・・既に折れてるはず。
>AZCさん
初めましてー。
>一話から全部読ませて貰いました。
駄目です。プロローグを忘れています!もう一回是非読んで下さい。(ぇ
>心眼もとい龍美とメドーサと界人のドタバタラブコメを期待しています。
ドタバタラブコメですか・・・メドーサはどっちかと言うと冷静に突っ込みそうで難しいかなー? GSはやっぱりギャグも必要ですよねー・・ラブコメっと。
>トレロカモミロさん
>もしそうなら、バンダナだった頃より変ですなw
本当にそうですね・・・左眼が縦割きの生々しい・・・グロ。これも気にしちゃ駄目です。左眼には’模様が出来た’くらいで想像して置いてください。
>界人君の食う寝る所に住む所はどんなとこになるんでしょうな。
広さがないと後で困るぞ? 理由は――云うまでもないでしょうなw
問題ない広さを確保できました。倉庫の一角!!これでどんどん追加しても(何を
)大丈夫です!
>MAGIふぁさん
・・・サングラス心眼怖いッすね。やっぱり外向けだったのがいけませんね!
サングラス左眼の内側に移せば良かったですね。(界人君常に心眼を見る!)
>紫竜さん
>1メドーサの後をつけてアシュタロスに出会う
>2メドーサの後をつけて始末する
>3メドーサ×横島のフラグを立てに行く
えーと取りあえず3は確定。その後1が有ったら楽しそうですねー。
となると界人君は魔族側に傾く?
>無貌の仮面さん
どうなんでしょう、取りあえず眼繋がりで、サングラスに移しましたが・・・バンダナポケットにしまったままの方が実は良かったり!?