無限の魔人 第五話 〜心眼改め〜
会場から聞こえていた音が大きくなった。
「ん、勘九郎が暴れ始めたか」
その言葉で心眼ははっとなり、呆然と彼の顔を見ていたのを止めた。
「何か言いたそうだが、俺は俺だ。気にしても分からないだろ。納得するしかない」
ニヤリと意地の悪い顔をする。
【な・・・お主、心が読めるのか】
俺は楽しかった。
もう一度心眼とこうして会話できる事が。
例え俺を知らない存在でも。
「いや、そんな感じがしたんだ。それに生まれて間もない奴の考える事なんか簡単に分かる。一応自称賢者だぞ」
【・・・それで自称賢者よ、これからどうするのだ】
(ちょっと拗ねちゃったかな)
「そうだな、お前に名前をつけて・・・体を与えるか?」
【そのような事が可能なのか!? 神魔族にしか出来ぬ事だぞ】
(そんなに驚く事なのか・・・)
「言っただろ、自称賢者を舐めるなよ。兎に角任せとけって。で、お前の性別は?」
【小竜姫様の竜気より生まれたからな、一応女性型だ。バンダナでは無意味であったが】
(昔の俺は女性と一緒に、女風呂覗きに行ったのか・・・・
あぁぅ)
「了解、名前は・・・そうだな、龍美(りゅうび)でどうだ」
【龍美か、まだ体も無い私に美と付いてもな。
相応しいか分からぬ】
「なぁに心配するなよ、美の相応しい体を作ってやるよ」
俺は安心させるように笑いかけてやった。
「さて、そろそろ移動するか。皆出てくるだろうし」
【何処へ行くのだ?】
「何処が良いかな・・・知り合いの存在も無いし」
・
・
・
ニヤリ
【どうしたのだ】
「良いことを考えた。メドーサの後を追う」
「それとバンダナだと横島と間違えられそうだ。龍美、サングラスに移すぞ」
[移]
【これは・・・文珠!!】
「博識だな龍美」
自然と笑みが出る。
龍美が驚いたのがちょっと楽しかったから。
【私は小竜姫様の知識も大体受け継いでいる】
バンダナから俺が掛けていたサングラスの左眼に移された龍美。
唯のバンダナとなった布をポケットに仕舞い歩き始めた。
-------龍美視点----------------------------------------------
「ん、勘九郎が暴れ始めたか」
会場から聞こえていた戦いの音がさらに大きくなっていた。
(・・!何を呆けていたのだ私は!)
(本当に何者なのだ、この男。横島と同じ気配を持ちながら、何か別な物も感じる。何より、この男の底が見えぬ。心眼の名も役に立たぬとは)
「俺は俺だ。気にしても分からないだろ。納得するしかない」
ニヤリと笑った界人。
それが嫌とは感じなかった。逆にどこか少し・・・
(ふふ・・・、どこか安心してしまう)
【・・・お主、心が読めるのか】
この男なら出来るかもと、一瞬でも思ってしまった。
「いや、そんな感じがしたんだ。それに生まれて間もない奴の考える事なんか簡単に分かる。一応自称賢者だぞ」
(ぬぅ、子供扱いされておるようで気に入らぬ)
だがこの気持ちは、美神と言い争った時よりも穏やかな気がした。
【・・・それで自称賢者よ、これからどうするのだ】
「そうだな、お前に名前をつけて体を与えるか」
【そのような事が可能なのか!? 神魔族にしか出来ぬ事だぞ】
私は驚いた。
それもそのはず、神魔族の中級以上の力有る者にしか出来ぬ事だからだ。
それをさも簡単だと言うように。
(こやつ、神族か? いや、神気も感じぬし・・・それは間違いない。しかし、魔族とも言えぬ、謎の多い男だ)
私は界人に興味を持ったようだ。
こんな事も初めてだ。
生まれて間もない私は、知識としては知っているが自ら体験した事は少ない。
それを楽しいと、何処かで感じているらしい。
「ああ、自称賢者を舐めるなよ。兎に角任せとけって。で、お前の性別は?」
私は嬉しく感じた。
拒否権は無いと言っていたが私にも意見を聞いてくる。
それがとても嬉しかった。私と言う存在を求めてくれている。
そう感じられたから。
本来ならば役目を終えて消えていたはずの私を。
【小竜姫様の竜気より生まれたのでな、一応女性型だ。バンダナでは無意味であったが】
虚しく、そして恥ずかしいと感じた。
(仕方が無かったとは言え・・・女風呂を覗いたのだった・・・)
これも初めての感情だった。とても落ち込んだ。
「了解、名前は・・・そうだな、龍美(りゅうび)でどうだ」
【龍美か、まだ体も無い私に美と付いてもな。
相応しいか分からぬ】
美しい名だった。
だが私は不安だった。
その名が、唯のバンダナに・・・と。
「なぁに心配するなよ、美の相応しい体を作ってやるよ」
柔らかく界人は微笑んだ。
感情がまた揺れた。
(な、何だこのざわめきは!? 心が・・躍る)
「さて、そろそろ移動するか。皆出てくるだろうし」
私は自身の心の動きを悟られぬように素っ気無いように聞いた。
【何処へ行くのだ?】
「何処が良いかな・・・知り合いの存在も無いし」
・
・
・
ニヤリ
何か思いついたようだ。
とても楽しそうな、悪戯小僧のような表情をしていた。
【どうしたのだ】
「良いことを考えた。メドーサの後を追う」
(メドーサの後を追う? 私ですらメドーサを感じる事など出来ぬのに・・・)
「それとバンダナだと横島と間違えられそうだ。龍美、サングラスに移すぞ」
[移]
【これは・・・文珠!!】
(文珠能力者とは! こやつ、もしかしたら下手な上級神魔よりも・・・)
「博識だな龍美」
界人が微笑んだ。
くすぐったい様な、恥ずかしいような良くわからない感情が湧き起こる。
【私は小竜姫様の知識も大体受け継いでいる】
感情が言動に出ないように必死になった。
そして、バンダナから界人の掛けていたサングラスの左眼に移された。
元の宿をポケットに仕舞い、界人は歩き始めた。
無限の魔人 第五話 〜心眼改め〜
end
あとがき
心眼擬人化フラグ? いや、もう決定してますが何か?
あー予想通り? いや、期待通りですか!?(ご、ごめんなさい
今回はちょっと2人の視点で物語が進みました。進んだって言っても同じ話を別の視点から見ただけですが・・・今回のように自分のスタイルを見つけるため色々とやってみようと思います。
読みにくかったりしたら言ってください。頑張って読みやすい方法を見つけます。
レス返し
>紅さん
ドラえもんの話を知っていましたか!あの作品はとっても好きなのでいつまでも記憶に残っています。(未だにドラえもん見て笑えますが何か!?
>紅眼の狼さん(てか私です)
貴方はアホです。
>九尾さん(レス神様)
ぷ・・ぷくく・・わ、笑ったりしたら駄目です。横島君が頑張ってる姿を涙して見守らねばなりません(笑いすぎの涙?
>匿名希望さん
やっぱり根本の異界渡りは気になりますよねー。
辻褄あわせが大変です(ぇ
>MAGIふぁさん
>単に霊波砲が当たる寸前に灰はなんかと“入”れ“替”えたら文珠2個ですんだ気が。
あああああああ、なんてこったあああ_| ̄|○
文珠って「あの文字ならもっと楽なんでは?」「あそこでアレよりはこっちでしょ?」何て事がかなり言い易い技ですよね・・・・今更ながら。
作者の能力の底が窺えてしまう、脅威の自爆技・・・ああああ。これから自爆しても気にしないで・・・ふ。(諦めの境地を開く
>「自分を信じろ」と言い残すより状況に放り込んだほうが何とかしたとゆーのは>横島らしく思えますねー。
そこまで読み取ってもらえるとは!?脱帽です。
>トレロカモミロさん
>心眼救出、力ずくですな。小賢しくなくとも、彼らしいゴキブリのような華麗な>ステップではないでしょうかw
フォロー有難うございます(感涙)
それと読み通りに次の目標は「住む所」ですw
>それから、転んでも只では起きないのは『怪我の功名』でしょうかな?
ぅぅ、教えてくださって有難うございます。もう二度と間違えません(多分
>無貌の仮面さん
初めましてー。横島君の能力は決して低い訳では有りません。彼の能力は素人にしてはかなり強い部類ではないでしょうか? 彼の一瞬で女性に近寄る素早さ、覗きの為に命まで懸ける大胆さ、そして何より・・・あの美神の攻撃を日々受けて無事で居られるタフさ・・・・これだけの能力を持っていてGSになれないなんて・・・考えれません!
>紫竜さん
界人君の一番の目標は「異界渡りの謎を解く」ですから、基本的には横島君と関らないと思っていたんです・・・・が!?(いつか続く
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