迫り来る霊団

現在二人の男女はピンチ真っ只中であった

しかし彼女はもう震えていない

彼の顔を見ていればわかる




あぁ、自分は大丈夫だと―――

彼女の顔には笑みが浮かんでいた






――心眼は眠らない　その７――








―――話は少し遡る




舞台はまだ香港であった



「はい！次のシーン行きます！３・・２・・１・・アクション！！」

カメラの前では二人の男女が黒服に追われているシーンであった。
バンダナをした男性は女性を庇いつつ逃走を続ける
黒服たちはそんな男性に霊波攻撃を行う
だがそれを楯状の霊波を形成し防ぐ男性

反撃に霊波攻撃を行い黒服たちは見事に吹き飛ぶ
男女はその間に黒服たちを振り切る事に成功する

「ＯＫです！ハイお疲れさま！しばらく休憩入りま〜す！」
「っふ〜〜」

男、横島はＯＫの合図と同時に大きく息をする。
そこに先ほどの女性が声を掛ける。

「お疲れ様です、横島さん。」

素敵な笑顔を浮かべつつ声を掛ける美女
これに動揺しない男はいないだろう

「おっお疲れさまっす。しかし撮影って疲れるもんすね。」
「慣れたら、そんなに大した事ないですよ。
　何より自分が好きでしていることですから。」

大したことがないというセリフが皮肉に聞こえないのも、
この彼女だからのであろう。
なぜなら彼女は香港映画界ＮＯ．１のスターである
そしてそれを鼻に掛けることを決してしない

気立て、容姿、共に抜群の彼女に撮影開始の時は
よく迫っていった横島であったが、
その都度、うまくかわされ続けさすがに迫るのを自粛気味の横島であった。
まぁそれでも美神たちの目を盗んでは口説いていたが

「しかしＧＳってすごいんですね！
　あれってやっぱり才能とか必要なんですか？」
「どうなんすかね、俺はくわしくはわからないっすけど。
　まぁ俺はあんまり才能ないっすからいつもしごかれてますよ。」

相変わらず、己の実力をよく理解していない横島である。
ちなみに心眼は睡眠中である、いわく
”ワレをこんなくだらない事にまきこむな”ということである
正に時代劇以外、アウト・オブ・眼中らしい

その後も談笑を続ける二人、それを遠くから眺める存在がいた

美神、エミ、冥子、雪乃丞（重傷）、唐巣、ピート

っつーか全員かよってなわけである。（カオスはすでに帰宅










エミは思う

横島についてだ

初めて会ったときの感想は一言

”冴えない”

それだけだった。ただ令子に対する絶好の道具であっただけ
その後も情けない所ばかりであった。しかし

ＧＳ試験、あの雪乃丞戦からは違った
迫り来る霊波砲を巧みにかわしていき、
止めに強力な一撃

あたしは接近戦は専門じゃないけど
あんな動き素人にできるわけがない

横島の行動にはいままで良くも悪くも驚かされてきたけど
あれはいままで一番驚かされたワケ

第一、あの勘九朗の剣舞に飛び込んでいくなんて正気の沙汰じゃないわ（令子は除外
しかも倒してるし

メドーサのときなんかあの一撃を防いでるし
あんなに必死な顔しちゃってね
普段の間抜け面を見慣れてるから思わずドキっとしちゃったワケ（ゆるしてねピート

まぁ結構使えるようになってるし改めて勧誘でもしようかしら
時給を今の１０倍でもいや飛びついてきそうだけど
（注意＊エミは美神が時給上げたの知りません）

ほんと、――――















冥子は思う

横島についてだ

初めてあったときから告白されたり変な人だとわかってたけど
ここまで変だとは知らなかったわ〜

ＧＳ試験までただ変な人だったのに
あの時の横島クンの真剣な顔みたら
胸がドキドキしちゃった〜

横島クンあんな顔もできたんだ〜

あのメドーサのときも一歩も引かず戦って
すごくカッコよかったし〜

でもあの変な盾とか剣っていつの間に覚えたのかしら〜

ほんと、横島クンって―――











雪乃丞は思う

横島についてだ

アイツが美神令子の弟子と知った瞬間
ぜひとも戦ってみたいと思っていた

陰念戦のときは確実に自滅を待っていたりと
俺のアイツへの評価はかなりのモノだった。

だが―――

俺の評価は見事に間違っていた

俺はアイツを見誤っていた

戦闘開始後、俺は様子見などせず速攻で叩くつもりだった
霊波砲を放てばアイツは何らかの行動を取る
その瞬間に一気に決めるつもりが事もあろうことに
あの野郎

完璧にかわしやがった

むかつた俺はすかさず次の霊波砲を放つがそれもかわしやがる

”なんでかわしただけでむかつくんだ？”って

普通はな、あんな距離で霊波砲を撃たれれば回避に専念するか
防御するかどちらかなんだ、すかさず攻撃ができるもんじゃねぇ

しかしあの野郎は俺の霊波砲を前に進みながらかわすんだぜ
まぁ接近戦は望む所だったんだが

いざ殴ってやろうと思いきや、いきなり目の前が光に包まれるし
気付いたら結界付近までぶっ飛ばされちまったぜ

このままじゃ悔しいからその後、
次は勝つって言ってやったがな

香港に渡ってからは今まで以上に修行を行ったつもりだったんだがな
先の勘九朗戦で一瞬だったが自信無くそうになっちまったぜ

でも心眼ってヤツはいいやがった
”強くなるために必要な事は目的を持つことだ”って
なら俺の目標は一つに決まってる

横島、お前に――――








唐巣は思う

横島についてだ

ＧＳ試験まではただの一般人だと思っていた少年が
雪乃丞、勘九朗の両名に手傷を負わせるまでに化けたのだ

勘九朗戦に関しては一間違えただけ死が待っているというのに
あの時、彼を動かしたのはなんだったのか
少し前までただの一般人であった彼が
最高クラスのＧＳに渡り合う相手に
怯むことなく向かっていったのだから

私は彼の行為を尊敬する
彼の行為は誰かの命を救ったのだから

ピートを学校に安心して送れたのは間違いなく
彼の存在が大きかった

彼はピートを吸血鬼とか関係なく接してくれる
それがどれほど大変な事か分かっているのだろうか
ＧＳなら妖怪の恐ろしさがわかるためなおさらな事である

彼は必ず、大きな男になるだろう
私はそれを見守って生きたい
あぁ最後に言っておかなければ・・・



あぁ神よ・・・彼を美神くんのようには――――









ピートは思う

横島についてだ

横島さんは初めて会った時から変わった人だとわかったいた
何せ、僕の容姿で五寸釘を打ち出すんだから。吸血鬼とか関係ないのかな。

ＧＳ試験での事は僕は途中退場してしまっため、人づてでしか聞いていない。
ただ先生は”彼は尊敬に値する行為をしたよ”と語ってくれた

僕はその後、学校に入学する事になった
横島さんがいたおかげで僕は普通の学園生活を送れている
本当にあなたには感謝しきれないです

だからこそくやしかった

先日の勘九朗との戦い、何の役のも立てず
結局は横島さんのおかげで状況を覆す事ができた
横島さんは怪我を負ったばかりだっていうのに

僕は誓います

あなたに少しでも――――











―――休憩時間終了



「それでは次のシーンに入りたいと思います！」

アシスタントの声が響く

「それじゃがんばりましょ、横島さん」
「はいっす！」

女優の声に反応し、元気よく返事をする横島

皆は所定の配置についていく

そのとき



「グォォォォォォ」



大量の霊団が現れた

「っち！多分、先日の件で浮遊霊達に異変が起こったんだわ！
　皆！映画スタッフ達を守って！」

美神の指揮により連携を取るＧＳチームであったが
横島と主演女優が孤立してしまっていた

「みッ美神さ〜ん！！」
「キャーーー！！」

向かってくる浮遊霊を栄光の手で除霊する横島であったが
確実に敵の数が増えていく

「横島ーーーー！！！彼女に傷つけたらどうなるかわかってんでしょうね！！」

美神のありがたい声援を聞きつつも追い込まれていく横島（お休みタイムの心眼


横島の後ろでは彼女が震えている
徐々に追い込まれる横島であったが彼女を見て

「大丈夫っす！安心してください！
　俺が何とかしますから！」
「えっえ！？」

彼女は男の真剣な顔に思わず見とれる
これが先ほどまでの頼りなさそうにみえた人なのだろうか
ただ理由も無く安心感をくれる

「しっかり離れないでくださいね！！」
「はっはい！！」

横島は彼女の手を掴みその場から離れる
美神たちと合流するにも距離があり間には大量の霊団

霊視で霊団を操っているの親玉を見つけるも自分の場所からは遠い


だったら美神たちが親玉を倒すまで逃げ切るしかないだろ


迫りくる霊団を霊を栄光の手で排除しきれなりつつある


「あぁ前からも！！」


彼女の悲鳴が聞こえる


だが横島は


「大丈夫ッす！男、横島、女性にはかすり傷一つつけさせやしません！！」


横島は彼女を落ち着かせるため普段の態度で接する


前後から迫る霊団


横島は彼女を抱き寄せ栄光の手を頭上に伸ばす


栄光の手の先には信号機


それを掴み


「よし、縮め！！」
「キャッ！」


横島たちの体が一気に上昇する


霊団はお互いぶつかり合い目標を見失う


「じゃ、逃げますよ」
「っえ？・・・・・あっお願いします！」


信号機の上からすかさず栄光の手を伸ばし近くにあった建物の二階にかけ
移動する。




―――しばらくして霊団は消失した















美神は思う

最近の横島の成長振りに関してだ

キッカケはＧＳ試験であったかもしれない
雪乃丞戦、勘九朗戦では自分の予想を超える回避能力を見せた彼であったが
それは心眼のおかげであろうと思ってさほど気にする事はなかった
勘九朗戦に限っては自分達が先に戦っていたから、
横島は最後に止めを指したにすぎない。
そう自分に言い聞かせた。

横島の初仕事の際、一応従業員が死なれては目覚めが悪いと考え
後をつけていった。決して誤魔化した謝礼を受け取りにいったわけではない（多分
案の定、現場について見れば逃げ回る横島とオキヌちゃん
いつもの光景に何故か安堵を浮かべながらボーガンの準備を始めようとする

突然聞こえるオキヌちゃんの悲鳴、見てみれば横島が悪霊に突っ込んでいる
その後の悪夢を阻止するため手を動かそうとするが間に合いそうにない
だが自分の想像とは裏腹に横島は悪霊を除霊する事に成功する

その時の霊圧は瞬間であったが自分に匹敵していた
下手すると・・・

納得できるわけがない、横島と違って自分は幼い時から
母を憧れてＧＳを目指していたのだ
霊能に目覚めたばかりの新米と一緒にされては迷惑だ

しばらくの間、八つ当たりといってもいい事を横島にする
あいつは全然悪くないのに

その後も横島は学校で除霊に成功したりする

極めつけはアレだ、ホテルでスライムの除霊であった時だ
自分が見逃してしまったとスライムに不意打ちされようになった時
助けてくれた横島に八つ当たりなんかしてしまっている

本当に情けない、普通なら弟子に成長は喜ばなければならない事なのに
（もう一回注意＊美神は師匠らしいことはほとんどしてません）

ハーピー戦の時なんか、私が自暴自棄になった時に
あの馬鹿は生意気にも私を励まそうとしている
・・・全くもう

路地裏に追い詰めた波いいが、自分がハーピーにやられそうになると
後先考えずに全力で自分を助けてくれた。

ほんと、バカみたいに必死になってさ

いつの間にだろう、独りでいるのが寂しいと思えるようになったのは
本当に困ったやつだ

先の事件ではピートに聞いた話だと、勘九朗が私の事を
何か言った瞬間に致命傷を与えたらしい
心配しなくても私は世界が滅んでも生きていける美神令子なのに

メドーサでの対決でもあいつは私が反応すら出来なかった一撃を
防ぐどころか二撃すら防いで見せた。
あのような防ぎ方自分には不可能だ

なんてでたらめなヤツ

結界が消えた後、いつものように倒れたあいつだったけど


そう言えば、まだいってなかったけ。
まぁ一応お礼だけは言っとくわ・・・









あっありが・・・・・・・・・やっぱなし！








――心眼は眠らない　その７・完――







余談ではあるが霊団が襲われたシーンはカメラがしっかり回っており
横島たちの逃走シーンは劇中で使われることになった

このときの主演女優の顔が、その年の映画ベストショットに選ばれるのはまた別の話である










あとがき
今作は今、皆がどんなことを横島に対して思っているかです
美神を素直にしすぎたかもしんない・・・（どうですかね？
でもハーピー戦で横島がボケなかったら実際こんなもんだと・・・
それにしても冥子が書きづらいし〜

香港の女優さんですが、公式で名前があったら教えてください。
ないなら考えます


修正しました。
名称詐称主義さんご指摘ありがとうございます

いままでの投稿の分も誤字だけはとりあえず直しました。

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