危うし!タイガー寅吉3
タイガーから詳しい事情を聞いたピートはいかにも彼らしい理屈でパニックを起こしていたタイガーを説得した。
少年A君(14)がエミの弟子(あくまで見習い)だというなら彼はタイガーの弟弟子であり弟の成長に力を貸すと思えば良い。
正論ではある。
鼻クソほじってあさっての方を向いていた横島は何故か青い顔をしている。
いつの間にか熱く盛り上がったピートとタイガーはA君の練習メニューの相談を始めていままで出番の無かった机妖怪の愛子は「これも青春ね〜」とやっと言えた。
横島は「旅に出ます探さないで下さい。」と書いたメモを置いて消えた。
タイガーは生来の人の良さもあってA君の面倒を良く見た。
A君の方も初めて出来た兄貴分(というより大きなおトモダチ?)の言う事を良くきいて修行に励んだ。
数カ月後
修行といってもタイガーに任されているのは体力面なのでやっている事は陸上部あたりの部活動と変わらない。
いつの間にか兄弟子と弟弟子というより部活の先輩後輩の様になって(似たようなモノか)時折ピートも交えて100円ウドンを食ったりした。
A君は大変な努力家なので動きにくいからと髪の毛を坊主頭にして毎日朝夕にランニングや腕立て、腹筋、スクワットなど面倒見の良いタイガーの指導のもと修行メニューをこなしたので良く食べ良く眠り。
すっかり健康的になって身長も伸び体重も増えた。
表情も明るくなって大変結構。
タイガーはA君の為に喜び。A君はタイガーが自分の為に喜んでくれた事を喜んだ。
とても幸福な兄弟弟子だったがその関係は長くは続かなかった。
A君は好青年とはいかないが「虐められっ子」から「普通の少年」になった。
普通の少年?彼の極めて特徴的な雰囲気が消えたのだ。
という事はその雰囲気をつくっていた「ナニか」が消えてしまったのだ。
結果としてタイガーは弟弟子を失い。
エミは「呪い屋」の弟子候補を失った。
思春期の霊能力というのは不安定なものでその根源にあるモノが消えてしまえば霊能力も消える。
横島の様に煩悩が根源であれば簡単には消えない。簡単に消えないから聖職者は一生をかけて修行する。
ある程度霊能力が発達していれば一度覚えた自転車の乗り方を忘れない様に霊能力も安定する。
A君の場合は力の根源であった怨念がタイガーとの修行で昇華されてしまい霊能力を失った。
努力家のA君はエミとの修行もしっかりキッチリやったのだが成長期の肉体がその上をいったのかタイガーのA君への愛によるものか。
これはこれで幸せな事だろう。
かくして
横島は旅から帰り。
タイガーはエミに折檻され命の火が消えようとしている。
あやうし!タイガー寅吉
その後A君は弁護士になって弱者の為に一生を捧げ金には縁がないが人々の感謝に満ちた人生を送る。