現実に少しずつ戻って行った横島は、
後頭部に
何故か柔らかく気持ちのいい感覚があった。
「(う〜〜ん、疲れたぁ〜・・・。・・ん?
頭の後ろが何か気持ちいいな・・・)」
横島はそんな事を考えながらゆっくりと目を開けていくと、
目の前に微笑みながら自分を見下ろしている雪菜の顔があった。
逆さまで!(ここ重要)
「雪菜さんか。あれ?何で雪菜さんの顔が逆さまに見えるんだ?」
「それは、私が横島様に膝枕と言う物をしているからだと思いますよ?」
雪菜は横島の頭を慈しむ様に撫でながら、横島の疑問に答えた。
「あ〜なるほど・・・・・・って、
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??
す、すみません!直ぐに退きますんで!!」
そう言って、横島が頭を起こそうとするのを、
雪菜が横島の頭を押さえて止めた。
「いえ、お気になさらずにもう少し休んでください。
最高指導者様達も、もう少し休む様にも言ってますんで」
「はあ、分かりました。じゃあお言葉に甘えて・・・」
そう言って横島は抵抗を止めたが、
その顔はこれでもかと言う程真っ赤になっていた。
それに、私ももう少しこれをしていたいですし」
「え?何か言いました?」
「い、いえ!何も言ってませんよ!?
////////」
「そ、そうですか。・・・じゃあ、もう少し眠りますね」
横島はそう言うと体の力を抜いて、
広野に吹く心地の良い風を全身で感じ始めた。
そして、暫くの間その場を心地の良い沈黙が包んでいたが、
不意に雪菜が横島に話し掛けた。
「横島様、起きてらっしゃいますか?」
「はい、起きてますよ雪菜さん」
「それでは、そのまま私のお話を聞いて下さい」
雪菜のその言葉に横島は何も言わずに、話の続きを待っていた。
それが分かった雪菜はゆっくりと話始めた。
「まずは、お礼を言わせて頂きますね。
あの場所から解放して下さってありがとうございます」
その言葉にも横島は何も言わない。
雪菜が話を続けるのを分かっていたからだ。
「先程まで覚えていた事全てが嘘の記憶だったんですよね?
最高指導者様達に聞きました。
でも、嘘の記憶だったとしても、今まであった事を私は覚えています」
雪菜の最後に言った言葉に横島は少し反応したが、それだけだった。
「その記憶を消す事も出来ると言う事でしたが、
私は消さない事にしたんです」
「何でですか?その記憶は、雪菜さんにとって良い事では無いでしょ?」
今まで黙って聞いていた横島は、初めて雪菜に話し掛けた。
そして、横島の問い掛けに雪菜は微笑みながら答えた。
「確かに、良い記憶とは言えません。ですが、私が今まで過ごして来た記憶でもあります。
今でこそ思い出している事ですけど、この時まで嫌な事だけではなかったんです。
確かに『神龍神刀』の継承者は横島様が初めてですけど、私を気に掛けてくれた方達もいたんです。
女性だけではありません。その中には本当に優しい男性の方達もいたんです・・・」
雪菜がそこまで言うと、横島は頬に何かが落ちて来ているのを感じていた。
目を瞑っていて見る事は出来ないが、横島はそれが雪菜の涙だと言う事に気付いていた。
「ですが、その方達も選ばれる事はありませんでした。
『神龍神刀』の力に呑まれたてしまい、死んで行きました・・・。
刹那様は私がその事で傷つくのを防ぐ為に、記憶の改竄をしていてくれたんです」
横島は目を開け、雪菜の涙が伝う頬を撫でながら黙って聞いていた。
「そんな私の前に横島様が現れて、私を優しく抱きしめて開放してくれたんです・・・」
「・・・そっか」
横島はそう言うと体を起こし、立ち上がると雪菜の手を掴み立ち上げた。
立ち上げられた雪菜は涙を流しながらキョトンとしていたが、急に視界が暗くなった。
しかし、頬に感じる暖かさと心臓が刻む心地の良いリズムを聞き、
横島に抱き締められている事に気付き顔を赤くした。
「雪菜さんもそのまま俺の話を聞いて欲しい・・・」
「・・・はい」
雪菜も横島の出す声に横島の苦しみが含まれている事を感じ、真剣に聞く事にした。
「俺はね、雪菜さん。雪菜さんが思ってる様な男じゃないんだよ。
俺は大切な人を守れなかったんだ。いや、守れなかったと言うよりも、俺が殺した様な物かな?
その人の名前は言えないんだけどね。で、その後、暫くの間誰もが信用出来なくてさ・・・。
あの時は皆が持てる力を全部出し切っているのは分かっていたのに、
誰かが力を出し惜しみしているんじゃ無いかって疑ってさ。
周りの人に当り散らしていたんだよ。八つ当たりだったんだ」
横島の独白を雪菜は抱きしめられながら黙って聞いていた。
「そんな時ついに切れちゃってさ。
切れた理由は、その大切な人がまるでいなかったかの様に皆が振舞っていた事なんだ。
で、俺は俺を心配してくれてた美神さんって言う人を叩いちゃったんだ。
『何で皆は、〜〜がいなかったかの様に生活しているんだ!
皆が今生きていられるのは、〜〜が犠牲になってくれたからだろ!?』ってね」
横島が何故自分にこんな大切な、
そして自分が傷つく様な話をしてくれるのか、雪菜には分からなかった。
「そしたらさ、叩かれた事を怒りもしないで俺に謝るんだよ・・・。
『ごめんなさい、横島クン』ってさ・・・俺が悪いのにね・・・・・・。
それに、そんな人達と別れてここにいる・・・。
でね?俺が雪菜さんの試験に耐えられたのは、
そんな人の想いが俺を待っているって事を知っているからなんだ。
だから、決して雪菜さんが思っている様な優しい男じゃないんだ。
俺はそんな身勝手な男なんだよ・・・」
横島の言葉を聞いた雪菜は、無言で横島を抱きしめ返した。
「雪菜さん?」
そんな雪菜の行動を不思議に思った横島が雪菜に疑問の声を掛けると、
雪菜は横島の胸に当てていた顔を上げて、話始めた。
「そんな事ないですよ、横島様」
「え?」
「現に、今も私を優しく抱きしめてくれているじゃないですか。
それに、本当に身勝手な人だったら、そんな話を私にするとは私は思いません」
「・・・・・・」
「それにこうしていると、横島様の暖かくて優しい心を感じますよ?」
雪菜はそう言うと、微笑みながら横島を見た。
その微笑みは全てを許す聖母の様な微笑みだった。
「雪菜さん・・・ありがとう・・・」
「横島様・・・」
そう同時に呟いた二人の顔が少しずつ少しずつ近づいて行き、
二人の唇が触れあ・・・わなかった。
【はい、そこまでや】
ガシッと言う音と共に横島の首根っこが掴まれ、
後方にポーンと投げられた。
「どわっ!?・・・痛ってぇ〜〜。
サッちゃん!行き成り何するんですか!?」
投げられた横島は体を起こすと、講義の声をサッちゃんに掛けた。
【いくら、いい雰囲気に成ったからって、行き成りそれは無いでしょう?】
「げっ!キ、キーやん・・・。あ、あははははは。はぁ〜〜・・・」
サッちゃんと同じ様に、唐突に横島の後ろに現れたキーやんは、
横島の肩に手を置くと話し始めた。
【ふっふっふ・・・それだけの元気が戻れば、修行の続きが出来ますよね?
ほら、あちらで『アシュ』・・・ンンッ!修行の準備が出来てますから】
「いや、本気と書いてマジで待て。
今、めっちゃくちゃヤバイ事言わなかったですか、この野郎?」
【クックック。ワイらにそう言う口が聞けるんなら、大丈夫やな】
そう言う二人の顔は、キーやん、あんた本当に神族?と聞きたくなる程の。
サッちゃん、あんたやっぱり魔王のトップだわ。と言わせる程の『笑顔』だった。
「いや、待って。す、すんません。俺が悪かったです。
だからここは穏便に・・・駄目?そんな事言わないで。ね?
・・・ちょっ!キーやん!その赤い槍は何!?
ギ、ギャアアアアアアアアアアアア!!??」
・・・多分、『間合い』の修行をしてると思います。
きっと、恐らく修行だろう!壮絶な修行内容だから絶叫が出るんだ!
〜〜数分後〜〜
「死ぬ・・・今回はマジで死んでしまう・・・あ、あはは・・・・・。
ルシオラァ〜、待てよ〜〜」
【こ、今回はやり過ぎましたかね(汗】
【・・・ま、まあ、ゆっくり休みやヨコッち(汗】
二人の後ろで、その様子をオロオロしながら見ていた雪菜は、
その余りの壮絶差に途中で意識を失っていた。
あとがき〜
・・・ラブコメ?今回はラブコメですか?
ま、まあ、前回頑張った横島へのプレゼントって事で(汗
レス返し〜
九尾さん、ありがとうございます。
>しかし、寝てもさめても修行してますな。大丈夫だろか。
まあ、横島なら平気でしょう(多分
大神さん、ありがとうございます。
>横島君が何処まで強くなるか・・・
きっと世界最強を目指すかとw
D,さん、ありがとうございます。
>最初って・・・・だれも刹那を振るう事が出来なかったって事ですか!!??
>凄いものだったんですねぇ・・・・・
何せ、刀剣類最強の刀で、尚且つ神龍入りですからw
柴竜さん、ありがとうございます。
>しかし一体横島は何処まで強くなるのでしょうか
大神さんへのレスと変わりありませんが、目指せ世界最強ですw
>最後に紫龍じゃなくて紫竜です
大変、失礼しました。
今後この様な事が無い様に気をつけます。
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