サッちゃんが言ったように、横島は深層意識の中で一匹の龍と対峙していた。
【まずは改めて挨拶しておこう。
我が『神龍神刀』に宿りし龍だ。我の名は刹那、以後よろしく頼む】
「ああ、分かった。俺も改めて挨拶しとくな。
名前は・・・さっき言ったからいいだろ?で、俺は世界に作られた『抑止力』だ」
横島の最後の言葉を聞いた刹那は一瞬驚いた様子だったが、
その様子も直ぐに形を潜めると軽く笑っていた。
【クックック・・なるほどな。通りで、あの二人が我の所にお主を送った訳だ。
さて、それでは先程の修行の内容だが、お主、何か武術をやっていたか?】
「いや、武道なら小竜姫様って言う竜神になってたけど、
武術ってのは習った事ないな」
横島が刹那にそう言うと、刹那は何かを考え出した。
【(ふむ・・・余計な癖はついていないと言う事か。
それに小竜姫という者から習った武道も基礎だけを教えた段階の様だ。
ん?それにしては、先程の修行中に避け続けていたな。と言う事は・・・)
お主に一つ聞いて置きたい事があるのだが】
「何だ?」
【お主は今までに、死に繋がる攻撃をまともに喰らった事はあるか?】
刹那にそう聞かれた横島は、「ん〜」と唸りながら考え出した。
「いや無い、かな?一回だけあるけど、それはまあ聞かないでくれ」
【わかった、その事は聞かないでおこう。
で、その一回以外無いのだな?】
刹那の確認に横島は頷き返した。
【(やはりな)なるほど。お主、無意識の中で“風”を感じ取っているな】
「“風”?」
【うむ。間合いを測るのは何も気配だけではない。
っと、その前に、お主は『間合い』がどう言った物か理解はしておるか?】
「まあ、何となく。さっき、キーやんに説明されたからな」
【なら問題なかろう。でな?『間合い』を測るのは気配だけでは不十分なのだ。
体の二感を使うのだ。体で気配を感じるのはいいな?
もう一つは体も使うが霊力も使って“風”を感じるのだ】
「霊力で“風”を感じる?」
横島は首を傾げながら問い返した。
【論より証拠を見せた方が理解も出来るだろう。
お主、霊力の基礎は出来ておるな?
それの応用だが、体に薄く霊力を纏ってみよ】
「へ?どんな人も霊力を薄く纏ってるんじゃないのか?」
【うむ。確かに纏っておる。但し駄々漏れの状態でな?
だが我が言っているのはそれとは違う。
我が言っているのは、垂れ流れている霊力を“風”の如く体の周りに廻らせ、
常に体の周りに霊力を纏い、体で感じる触感だけでなく、
霊力で全ての物事の流れを感じ取る事を言っておるのだ。
これを『霊気風』と言う】
「ん〜〜・・・。つまり何か?
垂れ流れている霊力を体に押し留めて、体の回りに霊力の膜を張るって事か?」
刹那は横島の解答に頷いた。
【簡単に言えばそうだな。
そしてこれが重要なのだが、最終的には『霊気風』を体の周りではなく、
普通の剣豪などの間合いと同じ範囲まで広げる事が出来る。
これがお主が目指す『間合い』だ】
「へ〜。あ、一つ聞いてもいいか?」
【何だ?】
「その『霊気風』だっけ?
それって霊力を持ってる人なら誰でも覚えれるのか?」
横島の質問に刹那は首を横に振り答えた。
【いや、難しいだろう。
これは霊力の凝縮と操作に長けている者が覚えれる物だからな。
それがどうかしたのか?】
「いや、何でもない。気にしないでくれ」
【わかった。それでは口での説明はこんな所だな。
後は体感するしかない。始めるぞ?】
横島は刹那の言葉に頷き目を瞑ると、今まで聞いた事を頭の中で繰り返していた。
「(体から出ている霊力を体に廻らせる・・・“栄光の手”と同じ要領でやってみるか。
あれも手に霊力を纏わせているんだから、要領は一緒だろ)」
横島は頭の中でそう結論付けると肉体を一つの手と考え、
栄光の手を出す要領で霊力を練り上げていく。
【ほお・・・たったあれだけの説明で理解を示すか。
いや、元々似たような能力を持っていたのだな。それならば納得も出来る】
刹那の眼前では、横島の霊力の色である『緑の霊力』が体に、
まるで“風”の様に纏わり付いて行った。
ヒュウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・
「(まだだ・・・栄光の手みたいに一つの形に固定出来ていない。
思い出せ。栄光の手はどう言うイメージで練る。
刹那が何も言って来ないんだから、これでやり方は間違っていない筈だ)」
横島が更に意識を『栄光の手を出している時』に近付けて行けば近づける程、
横島の体から発せられる“風”は勢いを増していく。
フォオオォォォォォォォォォォォォォ!!
「(よし、固定し始めた。)
ここで一気にイメージを固める!
ハアアァァァァァァァァァァァ!!!」
気合を籠めた声を横島が発すると同時に、
今まで体の周りで吹き荒れていた“風”がピタッと止まる。
一瞬の静寂
そして、霊力の爆発!
ォォォォォ・・・・・カッ!!
ズドオオオォォォォォォンンンンンンンン!!!!!!
【こ、これ程までの力を内包していたのか・・・。
だが恐らく、これでもまだ完全には覚醒していない筈・・・。
クックックック、これは扱きがいがありそうだな】
刹那が驚愕し、言葉を発すると同時に爆発の余波が治まって行くと、
爆発の中心部には、体を薄く緑色に発光させた横島が立っていた。
「これでいいのか?」
余波が完全に治まると同時に横島は刹那に確認をした。
そう言われた刹那はすぐさま満足気に頷き答えた。
【うむ。それが『霊気風』の第一段階だ。
第二段階の『間合い』の範囲まで広げるのは、『間合い』を把握すれば自ずと出来るだろう。
それで、どんな感じだ?】
刹那が横島にそう聞くと、横島は手を握ったり閉じたりを繰り返した。
「不思議な感覚だな。
体全体に布を被った様な感じがしながら、ここに吹く微弱な風も体全体で感じれる」
【うむ、その矛盾こそが『霊気風』の特徴だ。
どれ・・・】
小声で刹那が何かを言うと、横島の背後から拳程の石が飛来した。
先程までの横島なら確実に当たっていただろう。
しかし、今の横島は体に『霊気風』を纏っている為、
石が飛ぶ事によって発生する微弱な風の動きを体で感じ取っていた。
パシッ!
その飛来した石を、横島は刹那に目を向けながら受け止めた。
「なるほど、こんな感じなのか」
【うむ。これで間合いも把握しやすくなるだろう。
それではそろそろ現実世界に戻れ。我はもう少し眠る事にする】
「分かった」
横島はそう答えると体が浮き上がって行き、現実世界に戻って行った。
深層意識に残った刹那は誰にも聞かれる事の無い呟きを発していた。
【クックック・・・まさか、初めて我を振るう者が最高の主とはな。
神魔族の最高指導者達には感謝しなければな】
刹那はそう言うと、ゆっくりと眠りに付いて行った。
あとがき〜
ふぅ〜、これで横島も間合いを掴みやすくなると思われます。
さて、現実に戻ったら横島はキーやん達のおもちゃになって貰いましょうw(オイ
では、また次回会いましょ〜
レス返し〜
漆黒神龍さんありがとうございます。
>某所の作品から読んでいました。
>めちゃ面白いので、ぜひ頑張ってください。
ありがとうございます。そう言っていただけると、俄然やる気がでます!
D,さんありがとうございます。
>最後に!雪菜がどうするか楽しみですねぇ・・・・・
ふふふ・・・読者の皆さんの期待は裏切らないと思いますよw
九尾さんありがとうございます。
>神龍神刀やハヌマンあたりは、普通なら死行である自分たちの試練を超えた男がよもやこんなんだと
>知ると唖然とするんでしょうねえ。なんでそう両極端なんだと。そしてあっという間に身に付けていく>のを見てまた驚くんでしょうね。
前話で基礎は出来てると言ってはいるのですが、本当に基礎中の基礎ばかりですからねぇ〜。
九尾さんが仰る様に、応用もまともに出来ていない横島が自分達の試練を受けている事を、
あんまりいい気持ちでいれませんねw
眞戸澤さんありがとうございます。
>キーやん、だめやん…
>右を顔面に叩き込んだらすかさず左を!!
まったくですね。でも、それをやったら横島は瀕死になるかとw
あっ、でも美神のシバキを耐えてたから大丈夫かw
紫龍さんありがとうございます。
>一体私だったらどんな試練になるのでしょうか
それは、自分が本当に起こって欲しくない事や一番嫌悪感を感じる事を想いか浮かべればいいかと。
大神さんありがとうございます。
>横島は女性関係ってことは〜タイガーやらユッキーとかだったら
>どんなのなってたんだろうw見てみたい気が激しくしますね(笑)
えっとですね、タイガーだったら雪菜は大切な人を守りきれずに死んでしまい・・・みたいな内容で、
ユッキーだったら戦い続け、その戦いの中で大切な人を助ける事が出来なかった。
みたいな内容になるかと。
AKさんありがとうございます。
>これからどんな風に横島が成長し活躍するのが楽しみです。
>頑張ってください。
私も横島の成長の過程を書くのは楽しいですねw
だから、皆さんが楽しめる様に書けてれば嬉しいですね。
はい、頑張ります!
tカズさんありがとうございます。
>応援しているので頑張って下さい。
はい、ありがとうございます。期待に副えるように頑張っていきます。
>強さのインフレには気をつけて下さい。
はい、気を付けます。
横島は過去に戻る時にある処置をするので、行き成りめっちゃ強いって事は無いんで、
安心してください。
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