キーやん達は、横島が落ちて行った穴を少し離れた所から見ていた。
【なあ、キーやん・・・】
【何ですか、サッちゃん】
【さっきはああ言うたけど、本当に大丈夫なんやろか?】
【ええ、絶対に大丈夫ですよ。何せあの横島君の想いは本物ですから。
ちょっとやそっとの事では揺らぐ筈もありませんよ】
サッちゃんの質問にキーやんが答えていると、穴から龍の咆哮が辺りに響き渡った。
【グウォォォォォォォォォォォォォ!!!】
【ね?言った通りでしょ?】
【ああ、ほんまや。これで、本格的に修行を始めれるな】
横島の修行に関して話している二人の目の前で、
穴から咆哮を上げながら飛び出してくる龍の頭に乗り女性を抱き上げている横島が出てきた。
そして、横島が頭から飛び降りてキーやん達の前に立つと龍は姿を消し、
横島の左の腰に一本の刀が鞘に納まり挿されていた。
【どうやら、無事に『神龍神刀』を手に入れたようやな】
「ええ。にしても、本当に悪趣味な試練でしたよ」
【どんな試練でした?】
「えっとですね。ゆ「あの、横島様」 ん?何?」
キーやんにどんな試練だったか言おうとした横島を、雪菜が遮って何かを言おうとしていた。
「お、降ろしてください」
そう、横島は未だに雪菜を抱き上げたままだった。
初めて抱き上げられた雪菜は顔を真っ赤にして俯きながら降ろす様に横島に言うが。
「ん〜、もうちょっと。だって、この柔らかい体は堪らん!
むしろ、あそこの岩の陰でこの続きとい
【いい加減にしなさい】ぶっ!」
暴走しかけた横島の顔に拳を叩き込んだキーやんは横島から雪菜を奪うと、
地面に降ろして声を掛けた。
【雪菜さん、今までご苦労様でした】
「勿体無いお言葉、ありがとうございます最高指導者様」
【それで、貴方は今後どうしますか?転生すると言うのなら貴方は優先的に出来ますが?】
雪菜はキーやんにそう問われると、未だに地面に倒れ伏している横島を見て一度頷き、
何かを決心した目でキーやんとサッちゃんに視線を返す。
「いえ、私は横島様と行きます。
試練とは言え、数多の男に抱かれた【ちょっと待ってください】 何ですか?」
雪菜の言葉をキーやんが止めると、サッちゃんが横島の腰にあるジロッと睨むと、
刀がカタッと揺れた。
【おい、神龍神刀。何でまだ記憶の改竄をしてないんや?】
キーやんが神龍神刀に向かってそう言うと、神龍神刀から声が聞こえだした。
【いや、試練が終わったと同時に飛び出してしまってな。
改竄をする時間が無かったのだよ。ハッハッハ、今やるので許せ!】
神龍神刀はそう言うと再び黙ったが、刀全体が薄く発光すると、
その光は雪菜に近づくと雪菜に吸い込まれていった。
【これで、嘘の記憶を持っていた事は覚えてますが、
自分がまだ純潔だと言う事も思い出すでしょう】
光が完全に雪菜に吸い込まれると、雪菜は意識を失い倒れかけるが、
何時の間にか復活していた横島が支える事で、地面と接吻する事は無かった。
「おっと。・・・で、俺が受けた試練の内容でしたっけ?
えっと、まず雪菜さんから漂ってくるムラムラとする甘い匂いを我慢して、
その後、雪菜さんがどんな事をされて来たのかの話を聞いて、
一言言ってやろうと思って、神龍神刀の試練を受けたんですけど、
そこでも、雪菜さんを汚れた女だのなんだの俺に言って、
その後、力が欲しくないのかってしつこく聞いてきましたね」
横島の言葉を聞いて、最初は呆れたと言った感じの表情を浮かべていた二人だが、
その直ぐ後に【【まあ、横島君(ヨコッち)ですからね(やからな)】】の一言で納得していた。
「えっと、何で俺だからって納得してるんですか?」
横島がそう聞くと、二人は口の端を持ち上げてニヤリと横島に笑いかけた。
所謂、悪戯が成功した時の悪戯っ子の顔である。
【それはやな〜。あの試練は受ける者によって内容が違うんや】
「はい?」
【例えばですね?村が大量の妖魔に襲われているから力が欲しいと思って神龍神刀の試練を受けると、
雪菜さんは村を災厄から守る為に人身御供になり、その後も永遠の苦しみに囚われる。
と言った感じの内容になるんです。
つまり、受ける人が一番耐えれない事が目の前の人に起こっていると言うのが第一の試練です。
で、第二の試練ですが、これは殆ど変わりはありません。
何の為に力を得たいのか。力を得てその問題を解決した後、何の為に力を振るうのか。
そう言った、心の強さを測るのが第二の試練です】
横島は今のキーやんの話の内容を頷きながら聞いていた。
が、次のサッちゃんの言葉で苦笑いを浮かべる事になる。
【早い話がやな?ヨコッちは女好きで、困ってる女性はほおっておく事が出来んで、
その事で会ったばかりの人の事でも怒る事が出来るって事や。
まあ、あんだけの人数の女性と関係を持ってて、修羅場にならんとこから、
心に入れた人は全員大切にしてるのは分かっとったからな】
「あ、あはははは」
と、和やかな雰囲気が流れていたが、キーやんが横島に修行を始める事を言うと、
場の雰囲気がガラリッと変わり、苦笑いを浮かべながら頭を掻いていた横島も、
真剣な表情に変わった。
【いい表情(かお)ですね。
さて、まず横島君にやって貰う事は、自分の間合いを知って貰う事です】
「間合い、ですか?あの剣客とかの?」
横島の質問にサッちゃんが答える。
【ああ、そうや。その間合いや】
【横島君は今も霊波刀の間合いも満足に知らないと思います。
それは武術や剣術をやってきていない事が大きいんですが、
その間合いを知って貰わない事にはお話になりません。
そもそも間合いとは、今で言う制空権と言う物です。
自分が持つ武器や自分の拳が絶対に届く範囲を自分で把握し、
その範囲に入った物や者を感覚で感知する。これが間合いです】
「はあ・・・」
キーやんの説明に横島は気の無い返事を返すが、これは仕方の無い事だろう。
今まで基礎もまともに習っていなかった横島に行き成り、
『間合い』の話をしても理解出来るわけが無い。
と言っても、武術ではなく武道の基礎は小竜姫に、霊力の基礎は美神親子に習っていたが。
【まあ、行き成りこんな話をしても分かるとは思ってません。
と言う訳で、習うより慣れろ。体で覚えてくださいね?】
「はい?」
【まあ、頑張りや〜】
サッちゃんがそう言いながら指を鳴らすと、横島の周りが暗闇に包まれる。
しかし、不思議な事に自分の体はぼんやりと光っていて、
どんな状態か確認する事が出来る様になっていた。
しかも、何時の間にか腕の中にいた雪菜も消えている。
「すんませ〜ん。周りが全く見えないんですけど〜。それと雪菜さんは何処っすか?」
【ああ、それでいいんや。あと、雪ちゃんはわいらの所におるで】
【貴方にはこれから目で確認せずに、間合いに入った物を神龍神刀で斬って貰います】
「って、行き成りですか!?」
横島がキーやん達に突っ込みを入れるが、
二人は何処吹く風といった感じで流し話を続ける。
【心配は要りませんよ。『今は』死ぬ事なんか無い物でやりますから】
「って、めっちゃ不吉な事言ってるやん!?しかも今だけ!?」
【大丈夫やって。その頃には把握できてるやろ。
多分な】
「オイッ!って、うわぁ!?」
サッちゃんの言葉に突っ込もうとした瞬間、
顔の横を何かが高速で飛んで行った。
「ちょっと待て!何か今のすごい速さでしたよ!?」
【大丈夫やって、当たっても死なんから】
【それに避けてたら修行になりませんよ?
いいんですか?今も確実に崩壊は進んでいるんですよ?】
キーやんが『何か』を止めて、泣き叫びながら斬らずに避け続けている横島にそう言うと、
横島もピタッと動きを止めると腰の鞘から神龍神刀を抜いた。
「そうだった。俺は皆の笑顔を守る為にここに来たんじゃないか。
すんませんでした。もう一度お願いします」
【分かりました。行きますよ?】
〜〜数分後〜〜
体の彼方此方がボロボロになっている横島が地面に横たわっていた。
【先は長そうですね・・・】
【まったくや・・・。でもまあ、やる気はさっきのキーやんの言葉で十分になったから、
後は神龍神刀が深層意識の中でレクチャーするやろ】
キーやんとサッちゃんの前にはボロボロで呻きながら横たわる横島と、
そんな横島の腕を抱えた雪菜がいた。
あとがき〜
会話が長すぎて、修行が全然書けなかった!?
どうもすみませんでした。
次回は修行が殆どを占めると思いますんで、見守ってください。
レス返し〜
神逆さんありがとうございます。
>内容も素晴らしくて感動しました。
嬉しい言葉を本当にありがとうございます。
これからも頑張っていきます。
九尾さんありがとうございます。
>実はつくられた記憶ですと言われても、本人が区別つかないほどリアルに犯されてる
>記憶なんか植えつけられたら女としては同じことだと思いません?
全くその通りです。
つまりそう言うことで、雪菜はこれが現実に起こった事と意識の深い所から、
認識してしまったと言う事です。
D,さんありがとうございます。
>一瞬ランスの日光さんのノリですか
ランスって名前は聞いた事あるんですけど、そういう内容があるんですか?
やった事無いんで知らないんですけど、もし同じ様な設定だったのだとしたら申し訳ないです。
>最後に!試験に受けにくるのは男しか居なかったのだろうか
この事については、今回の話の中で説明させて頂いてます。
ncroさんありがとうございます。
初めまして、ですね。
>まぁ読んでしまえばそれぞれに不愉快な試練ではありますが、
>そもそも愉快な試練ってありえないでしょうし
そうですね。試練って言うのは受ける人にとって、耐え難い事ばかりだと私は思います。
横島が受けた試練も、横島にとっては耐え難い事でしたから。
AKさんありがとうございます。
後、初めまして。
>これからも、もっとこの作品がみたいので頑張ってください。
こんな嬉しい事を言ってくれてありがとうございます。
これからも、期待を裏切らない作品を書いて行こうと思います。
大神さんありがとうございます。
>試練ってのは・・・己が内に潜む欲望に
>負けず!飲まれず!乗りこなす!ってな感じですかね〜
そうだと、私は思ってます。
自分の弱さの部分を認めながら、それを乗り越えていく事が試練だと思うんですよ。
そういう弱さに負けた人が悪の道に入る訳ですから。
ラグさんありがとうございます。
それと、初めまして。
>完結までつっぱしってください!!
はい!突っ走ります!
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