夕菜が始めて2-B騒動をみた最初の休日
和樹は、彼にしては珍しく、早朝から起きていた
まぁ、その早朝に起きた理由は、魔道書のメンテナンスの為なのだが
ちなみに正確に言うと、和樹、昨日から一睡もしてなかったりする
魔道書のメンテナンス、ようは文字が薄れている場所があるかどうかのチェックだ
もし薄れていたら、その部分を復元、つまり同じ文字を書き直すのである
だが、魔道書のメンテナンスは、たとえ本人が製作したものでも
厄介極まりなく、死と隣り合わせの作業である
もともと、それ一冊が、何百もの魔術回路によって作成されているものである
それらの組み合わせによって、効果を増大している魔術式もあり
その組み合わされた回路の両方を調整しなければ、そのタイプの式は使えない
どちらか片方だけでも、不良状態を直さなければ、発動は不可能であり
修正したとしても、その再調整後の組み合わせの時に
僅かなずれを生じていただけで、暴発する危険性があるのも、特徴である
まして、和樹の作成したタイプの魔道書となると、なおいっそう厄介になる
何せ、マナを溜め込む術式が、全ての魔術式に組み込まれているのである
つまり、一部分だけでなく、全部分を完全に修正しておかなければ
魔法の威力低下や、発動不可だけでなく、魔道書の暴走すらありえるのだ
「・・・ΛΞив・・・・」
和樹は、最後に何事かを唱えると、本を閉じ、体を動かし始めた
「あ〜・・・やっぱり大人しくルーン文字でかけばよかったなぁ・・
古代ルーン文字じゃあ、解析に時間がかかりすぎる・・・・か」
ここで、簡単に解説しよう
ルーン文字とは、今現代でも使われている、魔法言語の事である
ルーン文字はそもそも神々の時代にまで遡るほどに歴史が深い言語であり
その言葉一つ一つに、魔力がこもっていると言われている
もっとも、その魔力の操作が難しい為に、簡易的な部分のみを抜粋し
現代魔法言語と組み合わせたルーン文字が広まっており
現代で使われているルーン文字よりもはるかに高度であるが、操作が難しい
古代ルーン文字、本当の意味でのルーン文字は、今は廃れてしまっているのだ
だが、和樹は自分を試す為にと、古代ルーン文字で魔道書を書いた
その結果、かなり高度な魔道書が出来たが、その分メンテナンスは厄介になったのだ
和樹は、古代ルーン文字でこの魔道書を書いた過去の自分を呪いつつ
冷蔵庫を空け、適当に朝食になるものを探していた・・・その時
ドスン
「・・・・『ハムハムハム』・・・ゴクン、何か頼んでたっけ?」
部屋の中に、いきなりダンボールが一個転送されてきた為に
ハムを一切れ口に入れていたので、それを飲み込むと、自分の記憶を整理しだしていた
「ん・・三日前までには記憶はない、・・・一週間前も違うし・・・
ウムムムム・・・・」
「和樹さん御免なさい!!、テレポートさせるときに座標が狂ってしまって・・・」
和樹が『深く思い出す』を実行し始めたと共に、夕菜がテレポートしてきた
「・・・・ムムムムムムムム」
だが、和樹はそれに気付かず、まだまだ記憶を掘り返していた
「あ、あの・・・和樹さん?
や、やっぱり・・怒って・・・ますよね?」
反応のない和樹を見て、夕菜は和樹が怒っていると思い、怯えつつも声をかける
「・・・・・・」
「そ、その・・・私は、和樹さんの部屋に送る気なんかなくて・・・
えっと、朝霜寮に入る予定だったんですけど・・・
何かの手違いで、到着予定日にずれがでたみたいで
本当は今日だったのに、明日到着見たくなってて・・・
その、入る部屋の修理とか、最終点検が、明日まであるらしくて
ほかの部屋も、ちょうど埋まっちゃってたみたいで・・・
だから、今日は特例で、和樹さんの部屋にある空き部屋を使わせてもらう事になって
その部屋に送ろうとしたら・・・なぜかずれちゃって・・・」
無言になった和樹に、夕菜は必死に弁解していたが
どれだけ弁解しても、なんら反応のない和樹を見て
段々と、目じりに涙が溜まってきていたのだが・・・・
「早く・・・起きなさい!!」
スパァァァン
いつの間にかテレポートしてきていた沙弓が、和樹の頭をハリセンで引っ叩いた
そして和樹は、そのハリセンの一撃で、半目を開けた
「あ・・・あはは・・・、沙弓、ちょっとやりすぎじゃない?」
同じく、いつの間にかきていた千早が、手に持っていた缶コーヒーを和樹に渡す
「ん〜・・・・悪い・・・・」
和樹はそう言うと、ヤジロベエのように体を揺らしながら、コーヒーを飲んだ
「あ・・・あの・・もしかして・・」
「えぇ、夕菜の考えどおり、和樹は寝てたわよ」
その一連の騒動を見た夕菜が、近くに来ていた沙弓にたずね
沙弓も、どこか悟ったような表情をして、深く頷いた
その後、改めて、なぜ夕菜の荷物が和樹の部屋に送られたかの話と
なぜ、沙弓と千早がここに来たのかの話をした
夕菜のほうは、先に述べたとおりの理由であり
沙弓と千早の方は、一言で言えば、和樹達の生活習慣のようなものであった
夕菜が来る前、沙弓と千早は、休日には欠かさず、二人で和樹を外に出していたのだ
和樹は、好んで外に出歩こうとはせず、休日は本気で一日中寝ているのだ
それを知った沙弓と千早が、流石にそれは健康の為にならないと考え
和樹に重要な用事がない限りは、三人で外に出歩いていたのだ
今回も、その習慣で、和樹の部屋に来たところなのである
ちなみに、三人でよく出歩く場所は・・・・・・
近場にある公園か、図書館か、葵学園の保健室に『何故か』ある地下空洞だったりする
ちなみに空洞には、これまた『何故か』野生の魔獣がいたりする
まぁ、流石にAランク以上の魔獣は存在していないのだが・・・
図書館と公園は、純粋に楽しむか、調べ物をする為だが・・・
空洞は、魔道書の実戦テストと、沙弓の訓練が主な理由であり
千早は、空洞に向かう時は、大抵沙弓か和樹の傍にぴったりとくっついていたりする
まぁ、その話はおいておいて・・・・・
「転送ポイントが変えられたって・・・?」
改めて話を聞き終わった和樹が、最初に尋ねたのはその事だった
「はい、和樹さんの部屋の・・・ちょうど向かい部屋が空いてるって聞いて
今日だけですし、無理に騒動の種を作るのもイヤでしたから
魔法を使って、直接荷物を送ろうとしたら」
「何者かの干渉によって、場所を変えられたか・・・・
確かに、この寮も魔法防護の素材で作られてはいるけど
そこまで強力な、しかも転送位置の強制転化はできないはずだけど・・
しかも、空き部屋の結界は解除されてるはずだし
逆に、誰かが入っているところは結界が発動するけど
本来結界がないはずの場所に送ったのに、結界がある部屋に送られたか」
「一応念のために管理人さんに、念話で尋ねてみたけど
やっぱり、和樹君の向かいの部屋には誰も居ないって言ってるよ」
沙弓と千早の言葉を聞き、和樹は大きく溜息を吐いたと思うと、立ち上がった
「どうしたんですか、和樹さん?」
「直接調べたほうが早そうだからね、厄介事の気がするけど・・・」
和樹は夕菜にそう言うと、廊下に出て、問題の部屋の前に立った
和樹に続くように、沙弓、千早、夕菜も、その部屋の前に立つ
「んじゃ、ちょいと開けますか」
軽くドアノブを捻り、鍵がかかっていることを確認した和樹は
手に持った魔道書を開き、指を、そっと一小節の部分にだけ走らせる
すると、そのなぞられた部分と、ドアが、共鳴しあうように淡く光り
光がやんだあと、和樹がドアノブに手をかけ、捻りながら押し開いた
夕菜は、その光景を見て少しだけ呆然としてしまったが
流石にこの間の騒動で免疫が出来始めたのか、
もはや慣れきっている千早と沙弓に僅かに遅れる形で、部屋に入った
「何用じゃ」
夕菜たちが全員部屋に入った瞬間、そんな声が響いた
そして、全員が声をしたほうを振り向くとそこには
8〜9歳くらいの、おそらく中世貴族辺りの服を着た少女が居た
その少女は、よく見ると半透明であり、魔術に関連を持つものなら幽霊だとわかった
「ん・・・?あ〜エリザベート、久しぶり」
その少女を見た和樹が、少しだけ頭を傾げた後、片手を挙げつつ挨拶した
「む?わらわの事を知っておるとは・・・お主、何者じゃ!!
もしや・・・わらわを消滅させんとする刺客か!!」
和樹の挨拶に、エリザベートと呼ばれた少女が異常なまでに反応した
「カズキだよ、カズキ・シキモリ、そういえば思い出すかい?」
和樹は、あえて自分の名前の発音を変えて、エリザベートに再度話しかける
「おぉ・・・!!カズキであったか、すまぬ、気付かなんだ」
和樹の発音から、やっと思い出したのか、エリザベートが頭を下げつつそう言った
「いや、別にいいんだけど・・・・ん?」
和樹が頭をかきつつそう言うと、千早が服を引っ張っている事に気付いた
「あの・・・和樹君、この人と知り合いなの?」
千早が、目でエリザベートを示しつつ、和樹に尋ねる
「あぁ、千早と沙弓は中学三年までは僕がヨーロッパ方面に居た事知ってるだろ?
その時に、知り合ったんだよ、エリザベート、自己紹介を頼む」
和樹がそう言うと、エリザベートは頷き、大きく息を吸うと、自己紹介を始めた
「わらわはエリザベート、ノインキルヘン伯ゲオルク・フリードリヒの娘じゃ
今は、貴賤などなんら関係ない幽霊となってしまっておるがの」
エリザベートがそう言うと、夕菜、沙弓、千早も自己紹介をしていった
一通り自己紹介が終わると、和樹が、なぜここに居るのかをたずねた
「うむ、この東洋の地に来たのは、観光にきたというだけじゃ
わらわの家は代々占星術等で名をはせておったからな
没落し、再興の野心を捨てたいまでも、それらに対する興味はあるのじゃ
特に、この日本では占星術を独自に改良しておる家が多くてのう
それらを色々調べておったのだが、そのせいか力が不足し始めてての
三ヶ月ほど前からこの近くにあった屋敷に住まわせてもらっておったのだが
亜人の小娘がいきなり屋敷に入ってきての、追い出されてしまったのじゃ」
エリザベートはそこまで言うと、和樹が用意していた紅茶を飲んだ
それを聞いて、沙弓達は唖然とした
今、目の前に居るエリザベートの実力を、沙弓達は僅かにとはいえ感じ取っていたのだ
そもそも、魔力は肉体ではなく魂に宿るのが基本なのである
今現在、エリザベートはカップを持つだけでなく、紅茶を飲んだのだ
いくら数百年単位で幽霊として存在していたとしても
そこまで、普通の人間と変わらぬ行動をとれる幽霊等、滅多に存在するはずがない
つまり、今先ほどエリザベートが紅茶を飲んだ事が
その魔力が、並々ならぬものと言う事を実証しているようなものなのだ
その後、しばらく無言でお茶会が続いた
全員が紅茶を飲み干したのを確認すると、和樹が立ち上がり
「それじゃ、屋敷の方に行ってみよう
その亜人の子供も気になるしね」
和樹がそう言うと、特に反論もなく、全員が和樹の後ろに続く形で歩いていった
洋館につく間、エリザベートと夕菜達は、ファッションの話で盛り上がっていたりした
そして、洋館に着くと、大量の人間が、立ち往生している場面に出会った
「あら・・・夕菜ちゃん、和樹たちも、どうしたの、こんな所にきたりして」
そんな中、夕菜の存在に気付いた玖里子が、夕菜に向かって話しかけた
「そういう玖里子さんも、いったいどうしたんですか?」
「私は、まぁ家の手伝いよ
この屋敷、家の不動産で買い取ったから、早く取り壊しを始めたいんだけど
なんでも、緑色の髪をした亜人の少女に邪魔されちゃってるらしくてね
まぁ、損害こそはないんだけど、その子ごと解体するわけにも行かないし
かといって、その子を捕まえるには、今揃ってる人たちじゃあ無理みたいなのよ」
玖里子はそこまで言うと、小さく溜息をついた
「緑色・・・亜人・・・やっぱりあいつか・・・」
「ん?どうしたの、和樹」
「いや、なんでもない、風椿先輩、一つ頼みごとがあるんですが」
僅かに顔を伏せながら、何事かをつぶやいた和樹に沙弓が声をかけるが
和樹は、そのことを誤魔化しながら、玖里子に話しかけた
「玖里子でいいわよ、堅苦しいのは家と生徒会だけで十分
で、頼みって何なの?
この間は和樹に迷惑かけちゃったし、多少の事なら聞けるわよ」
玖里子は微笑みながら、和樹に向かってそう言った
その笑みは、異性だけでなく、同性すらも引き付けそうな笑顔だった
実は玖里子、この間の和樹の騒動の際に家と真正面から喧嘩をしたのだ
和樹の特性について、家に報告すると
風椿家は、身近の存在である沙弓や千早を人質に、和樹を道具にしようとしたのだ
まぁ、その意見は、ある意味しかたがないだろう
和樹の持つマジックドレインの性質、その力は、全ての魔法を無効化しうるのだから
完全なる対魔法の存在、それは、この魔法世界ではかなり大きな切り札になる
だが、玖里子は、その意見だけは、どうしても許せなかったのだ
玖里子自身、世界の闇の部分はかなり見てきている
前回、和樹に迫った時も、家の思惑を把握しきった上での行動だった
その時は、わざと自分に嫌悪感を抱かさせ、思惑をつぶす気だったのだが・・
沙弓や千早を人質にとる計画に協力するように言われたときに、玖里子は、爆発した
長い間たまった鬱憤もあったのだろう、真正面から抗議したのだ
玖里子の姉である麻衣香は、玖里子の抗議を真正面から受け返していたが
どれだけ情勢不利になっても、決して折れようとしない玖里子に何かを感じたのだろう
人質をとって、和樹を道具とする件は、完全に白紙にしたのだ
その代わりに、現在進行予定のプロジェクトを、玖里子に渡した
それが、現在玖里子が洋館の前に居る原因になっており
また、そのプロジェクト着任も、自分の意思で、自分の意見を貫く為に
家の押し付けなどではなく、あくまで等価交換の形で得たものだったので
今回は、玖里子の、本当の意味での笑顔が出ていたのだ
その笑みに、和樹も僅かに見惚れたが、直ぐに冷静になって話しかけた
「いや、僕がその亜人の子供を捕まえますので
この幽霊・・エリザベートが住める場所を提供してもらえませんか?」
「別にそれくらいならいいけど・・・
個室とかでもいいのかしら?」
玖里子が、エリザベートに尋ねる
「うむ、かまわぬ、長旅の疲れを癒す為の場所じゃ
一応、この地の観光をしておる間は拠点にする気じゃが
もともと物などないのでの、休める部屋があれば十分じゃ」
エリザベートがそう言うと、和樹は即座に屋敷の方に歩いていった
「交渉成立みたいだし、ちゃっちゃと終わらせるか」
そういいながら、和樹が屋敷の扉を開けた瞬間、屋敷の中から影が飛び出し
グワシィィィ!!
と、擬音がつきそうな勢いで、緑色の髪をした少女が、和樹に抱きついていた
「にゅ〜〜〜〜♪」
「・・・やっぱり・・・リナだったか・・・」
自分に抱きつき、胸に頬擦りしながら至福の表情を浮かべている少女を見て
和樹は、大きく溜息をつきながら、頭を抱えていた
「え・・・・えっと・・・和樹さん、その子も、お知り合いなんですか?」
「ん、この子は僕の「パパ〜」」
「へ〜・・・そうなんですか〜」
夕菜がそう言うと、沈黙のときが流れ・・・・・・
「「「「ええぇぇぇ!!!」」」」
周囲5キロの範囲に響き渡りそうな叫びが、夕菜達を発信源とし、放射された
「な、ななななななな・・・か、和樹!!
い、一体どういうことなのよ!!」
「和樹君に・・・子供・・・夢だよね、うん、そう、夢に決まってるよね
悪夢、悪夢だよね、今はまだお昼みたいだけど、本当は眠ってるだけだよね」
「か・・・和樹さんに・・・子供・・・・・キュウ」
「あ・・・あはは・・・、案外・・手、早いのねぇ・・・・」
沙弓は、動転しながらも和樹に詰め寄っているが、舌がうまくまわっておらず
千早は、現実逃避を開始しており、もう少しで蝶を追いかけだしそうだ
夕菜は、この中では一番一般人なので、気絶と言う逃避方に走ったらしく
玖里子は、一見冷静だが、心の中ではかなり慌てふためいていたりする
「あ〜・・・全員落ち着いて、説明するから
夕菜もちゃんと起こして、あとリナ、少し離れなさい」
「うぅ〜・・・パパの意地悪〜」
和樹はそういいながら立ち上がると、ネコを持つように張り付いていた少女を剥がした
全員が、現世に復帰するには25分ほどの時間がかかった
全員の復帰を確認すると、和樹は、口を開いた
ちなみに、全員が復帰する前に、和樹の胸に張り付いていた少女は
和樹の背中に、その張り付く場所を変えていたりする
「まずは・・・リナ、挨拶しなさい」
「は〜い、私の名前はリナ・シキモリです、よろしくお願いします」
少女、恐らく5〜6歳であろう少女が、和樹に張り付いたまま挨拶をした
「はぁ・・・っと、ごめん、皆、リナには悪気はないんだ、許してあげて」
「あの・・・それより・・・どういう関係なの?和樹君とリナちゃんって」
千早が、まだどこかショックが抜けきらない様子でたずねる
「ん〜・・・まぁ、戸籍上は僕はリナの保護者になってるよ
ちなみに、血は繋がってはいない
まぁ、僕がヨーロッパ方面に居た時に、孤児だったリナを拾ってね
何でかしらないけど、パパって懐かれちゃって・・・
因みに、リナは亜人、それもハーフドラゴンだよ」
「は・・・ハーフドラゴンの孤児って・・・」
「わらわが生きておった時代でも、聞いたことがないぞ・・・・」
玖里子とエリザベートが、その言葉を聞き、頬を引きつらせていたりする
この世界において、亜人はそう珍しいものではないのだが
流石にハーフドラゴンと呼ばれる亜人は、あまりにも珍しすぎるのだ
いや、正確に言えば、ハーフドラゴンだけが、珍しいと言ってもいい
そもそも、ドラゴン種自体が、天然記念物級に珍しい存在であり
まして、ドラゴンは誇り高く、人との接触を極端に嫌う所があるのだ
それ故に、ドラゴンの加護を受ける存在だけでも珍しく
ハーフドラゴンの、しかも孤児となると、何億分の1所の話ではなくなるのだ
しかも、ハーフドラゴンは、その魔法回数が桁違いに高い事でも知られている
だからこそ、ハーフドラゴンは国際法で保護されてもいるのだ
現在、世界に居るハーフドラゴンは僅か60人
その全員が、犯罪などに巻き込まれぬ様、国際法で保護されている
場合によっては、国連の魔法兵部隊が直接保護するほどである
それほどに珍しい存在が、今、自分達の目の前に居るのである
驚くな、というほうが無茶であろう
「まぁ、リナは見てのとおりの年齢だから、普通に接してあげてほしいんだ
それよりも・・・リナ、どうしてお前はここに居るんだ?
確か、僕が迎えに行くまで、いい子で待っててくれるっていってなかったか?」
「パパは・・・リナと会うの・・・嫌なの?」
和樹の言葉に、リナは、今にも泣きそうな声で返した
「・・・嫌なわけないだろ
それよりも気になるんだよ、確かスイスに居たはずのリナが
どうして、この日本に、しかもあの洋館に居たのかが、ね」
和樹は、背中に張り付いていたリナを前に持ってくると
頭を撫でながら、そう言った
「リナね、パパに会いたくて、神様にお祈りしてたら
目の前がピカーーって光って、気付いたらここにいたの
でもね、パパの匂いは近くでするんだけど
どこからするのかわからなくなっちゃって・・・
あのお家で、パパの事聞こうと思って・・・・
そしたらね、お化けが出てきてね、怖くて・・エッグエッグ」
「あ〜・・・よしよし、そういえばリナは幽霊とかが苦手だったよな〜」
泣き出したリナを慰めつつ、和樹は苦笑しながら玖里子のほうを向いた
「すいません、玖里子さん達を攻撃しちゃったの
リナが恐怖で暴走してたからみたいです」
「まぁ、そういうことならいいわよ、こっちは特に被害はなかったしね
それに、こんな小さな子供を脅かしちゃったこっちの方が悪かったわよ」
玖里子はそう言うと、泣き止み始めたリナに近づき
ポケットの中に入っていたキャンディを、リナにあげた
リナは、感謝の言葉を述べながら、キャンディをなめ始めていた
「所で和樹、この子の戸籍とかはどうするの?」
「あ〜・・・こっちに移すしかないですね
多分、無理に返しても同じことの繰り返しでしょうしね」
「そう・・・それじゃあ、今私のやってるプロジェクト、手伝ってもらえないかしら?
その礼に、さっきの部屋の件と、その子の戸籍と、学園の説得を受け持つわよ」
「プロジェクト・・・ですか?」
和樹がそう言うと、玖里子は手に持っていた書類を、和樹に手渡した
「朝霜寮がちょっと開発計画地に引っかかっちゃっててね
移動させるにしても、かなりの時間と資金がかかるから
和樹だったら、地脈とかを利用して何とかなるかな、と思ってね」
「朝霜寮を彩雲寮の近くにまで移動ですか、地脈図は・・・これか
地脈の繋がりから見れば決して不可能じゃあないですけど・・・
結構大掛かりな術式を使わないと無理ですね
準備には最低二週間はかかると思いますよ
まぁ・・・僕の魔法を使えば「そこまでしなくていいわよ」・・どうも」
和樹が、自分の魔法を使えば即座にできると言おうとしたとき
玖里子は、間髪いれずに、真剣なまなざしでその提案を拒否した
和樹の、残り魔法回数は僅か7回
それを使い切れば、和樹の体は灰となってしまうだろう
だからこそ、玖里子は、和樹に使わせると言う考えはなかった
自分達の家のことで、和樹の命まで削らせたくはなかったのだ
「んにゃ?これを、ここに移動すればいいの?」
リナが、図面を見て難しい顔をしていた和樹と玖里子の間に割って入るようにそう言った
「え・・えぇ、そうなんだけど」
玖里子が、リナに少々驚きながらもそう答えると・・・
「・・・・ハッ!!リナ、魔法はつか「えぇ〜い!!」・・・遅かったか」
和樹が、何かを思い出したように声を上げるも、リナが両手をあげるほうが早かった
リナが両手をあげ終わるのを見た和樹は、頭を抱えた
「一体どうしたの?」
「・・・寮を見てみれば解るよ」
和樹のその反応に、沙弓が声をかけるも、和樹はそう答えるだけだった
その言葉に、沙弓達はまず近くにある朝霜寮の方に向かったが
本来あるべき場所に、建物がなく
動揺しながらも、彩雲寮の方へと向かうと・・・そこには
彩雲、朝霜の二つの寮をくっつけた形をした建物が存在していた
「こ・・・これって・・・」
「や・・・やっぱり、朝霜寮と彩雲寮・・・だよね?」
「い・・・一体どうやって繋がってるんでしょうか・・・」
その光景を見た沙弓、千早、夕菜は、今日何度目か分からない驚きの表情を浮かべていた
「やれやれ・・・やっぱりか
リナ、あれだけ魔法は控えるようにっていっただろ?」
「にゃぅ・・・・御免なさい」
「・・・リナちゃんの魔法の効果なの・・・これ?」
「あぁ、正確には、リナの魔法の500発分の魔力で動かしたんでしょうけど
いくらハーフドラゴンの特徴で魔力回数が高いっていっても・・・
こんな使いかたしてたら危なすぎますからね
早いうちに、リナの教育を急がないとなぁ・・・・」
和樹は、どこか悲しげな口調で、そう言った
その後、玖里子は約束どおり、エリザベートの新住居とリナの戸籍
さらに、リナの希望もあった為に、リナと和樹の同居を学校に認めさせたのだ
和樹の両親は不在の為、葵学園で特待生として迎え入れる事にしたのだ
和樹は、少々この対応に行き過ぎと思ってはいたが
リナとの同居が出来る=リナの教育時間が設けやすいと考えた為
その特待生としての待遇を、受け入れる事にしたのだ
因みに、沙弓達はリナと結構良好な関係を築いていたりする
新たな嵐の目を加えつつ、歴史は動いていく
少年、式森和樹を中心とした物語はどういう終焉を迎えるのか
それは、ラプラスでさえも、見抜けないものであった・・・・
あとがき
なんだか微妙なところですが、収拾つかなさそうなのできります(ぉぃ
今回のオリキャラ シキモリ・リナ穣ですが
髪の色はエメラルドグリーン、瞳はスカイブルーで
体は5歳児ほどであり、魔力限界回数は45万と言う非常識キャラです
後、まだ和樹君自身の魔法を一度も使っていませんが・・・
闇人の巻最終章で、使いまくってもらう為です
最終章の敵は、和樹君にとって最悪であり、最高の相手になるでしょう
因みに闇人の巻が、原作のにんげんの巻のようなものですw
次回、駿司編にはいるか、過去編になると思います
後、前回の作品でのレス返し、出来なくて申し訳なかったです
今回以降も、レス返しできるかどうかは危ういですが・・・
最低でもレスは見るようにしておりますので、お許しください
PS:鬼畜将ランスは、しばしお待ちください
スランプ+ランス6がようやく手に入ったので情報再整理中のため
まぶらほが一段落着き次第、続きを更新いたします
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