彩雲、朝霜寮が合体してから、数日がたった
学校を数日休校にしながらも、合体に伴う寮の混乱は一応落ち着いた
ちょうど風呂場は二つに分かれたままだったために
寮食堂、ならびに共有部分になった施設は、お互いに譲り合うと言う結論に達したのだ
ちなみに、その混乱の原因、寮の合体の原因となった和樹とリナは・・・
和樹はその持ち前の知恵で、リナはハーフドラゴンと言う立場もあり
玖里子が学園に話をする前に、その件は不問となっていたので
玖里子の学園に対する交渉の結果、今までのように一学生ではなく
葵学園の特待生として、迎え入れられる事になったのだ
ちなみに、現在特待生として迎え入れられているのは・・・
和樹と同時期に、和樹のお目付け役として迎えられた千早と
『家』のことも関連してはいるが、本人自体も優秀な玖里子と沙弓位である
2-Bのメンバーの中にも特待生として迎え入れられるだけの成績を持つものは多いが
流石に、品行の方面で問題ありとみなされて、迎え入れられてはいないのだ
なら、なぜ『家』と、個人の優秀さも保障されている夕菜と凜が入ってないかと言うと
夕菜は特に問題が内容に思われているのだが、学園での実績が不明な部分があるため
特待生候補として名前はあがってはいるが、特待生にはなっておらず
凜に至っては、神城『本家』の事を嫌悪している部分があるために
自分から、特待生になることを放棄していたりする
後、夕菜と凜以外で、特待生に最も近いのは、松田和美である
成績は、学年二位(主席は和樹)であるため、優秀さは実証されているが
品行が特待生として相応しくなってきたのは、ここ一ヶ月の事であるため
今までの悪事が記録として残っているため、様子見となっているのだ
因みに特待生達は、寮の合体によって生じた男女混合部分の部屋に移動する事になっており
和樹は、戸籍上の『娘』であるリナと同室で
沙弓、千早、玖里子は三人で同室になっていたりする
因みに、混合寮になっている部分の部屋は、合体の際に壁が崩れたのか
男子、女子が別々になっている部分よりも、部屋が広くなっているのだ
因みに、特待生用の部屋の空きは後二部屋だけであり
先に述べた三人が特待生になった場合は、女性陣が二人一部屋になる事になっている
まぁ、それはおいて置いて・・・・
因みに、和樹が学校に言っている間
リナは決して大人しく部屋で待ってはいなかったりする
普段、和樹が部屋にいるときは接着剤でくっついているのかと思うほどに
和樹の背中等に張り付いているほどの重度の依存症であるため
学校に行く際も、背中にピッタリと張り付くか、横に控えているのである
最初は、沙弓や千早、玖里子がリナを説得しようと頑張っていたが
リナの、泣きそうな顔での「パパの近くに居ちゃ駄目なの?」の言葉にKOされ
結局、玖里子が学園側を再説得し、リナが学園にいる事を黙認させたのだ
そして、2-Bの連中が、和樹に『娘』がいると聞いて黙っているだろうか?
否、黙ってはおらず、初めて一緒に教室に来たときに、いきなり尋問を開始しようとした
だが、その尋問は、リナの無邪気な言葉によって、いきなり出鼻をくじかれる
事情の知っている沙弓は、リナが登校してきても呆れ顔をする位だったが
事情の知らない和美が、リナの事を聞こうと和樹に近寄った瞬間
リナが「ママ」と、爆弾発言をしたのだ
ちなみに、リナにはまったく悪意はない、リナの思考において
親と子供は髪の色等が似ている→パパ(和樹)とリナ→髪や目の色が違う
髪等の色は両親のどちらかに似る→ママはリナと同じ髪の色のはず→和美の髪の色はリナと同じ=ママ
という、謎の方程式が成り立ったために、ママ発言をしただけなのだ
ちなみに、このリナの発言が元で、後に『第一次葵学園大戦』と呼ばれる騒動が起こった
まぁ、それも特に関係ないのでおいて置くとして・・・・
まぁ、様々な事件を経て、リナが和樹と一緒に登校している姿が
葵学園における日常の光景になりつつあったりする
そして今日も、リナはパパである和樹の背中に張り付くようにして
一緒に、寮への道を歩いていた
そんな中、和樹は見覚えのある女生徒が前方にいるのに気付いた
「・・・意外に帰りは遅いのだな」
その女生徒、神城凜は、和樹の姿を見ると、口を開いた
「今日はちょっとした用事が重なってたからね
それよりも、神代さんはどうしてここにいるんだい?
どうやら僕を待ってたみたいだけど」
和樹は、リナが少し警戒態勢に入ったのを悟ると、体を揺さぶりリナを宥めつつ
視線は、凜から一切話さずに、そう問いかける
「あぁ・・・、先日はすまなかった
本家からの反発心が先立ってしまい、つい刃を向けてしまった
謝ったところで許されることではないだろうが、本当に、すまない」
凜は、和樹の真正面に立つと、頭を深く下げながら、そう言った
「まぁ、こっちも特に傷とかはなかったから別にいいけど・・・
用件はそれだけ?」
「いや、もう一つある・・
式森、魔道書の担い手として、頼みたい事がある
私に、力を貸してくれないか」
凜は、真剣な顔で、和樹にそう言った
ちなみに、式森和樹が『魔道書』を使っていると言う事が全校に知れたのは
先に述べた、第一次葵学園大戦の際であり
つまり、以前和樹の部屋に来たときは、魔道書の担い手と言う事を凜は知らなかったのだ
和樹は、凜の真剣な顔に呼応するかのように、真剣な眼差しで言う
「確か、『神城』の家は退魔の仕事で名をあげてるそうだけど・・・
仕事絡みの依頼になるんだったら、断らせてもらうよ」
「いや、個人的なことであって、仕事に関するものではない」
凜も、和樹から目を離さずに、そう言い返した
はたから見れば見詰め合っている様にも見えるので、リナの機嫌は降下中だったりする
リナの機嫌低下には気付かずに、和樹は聞き返した
「仕事絡みじゃないんなら・・・どうして僕の力を?」
「それは・・・・・!!」
凜が和樹の問いに答えようとしたとき
どこからともなく『影』が現れ、凜に向かってきた
凜は、紐を緩めていた竹刀袋から刀を取り出し
その、一直線に向かってくる影に向かって斬りつける
だが、影はその攻撃を避け、空に向かって飛び上がった
凜も、それを読んでいたのか、刀の軌道を変え、その影を追撃する
だが、影はさらに、空中で軌道を変え、凜の真後ろへと着地する
そして、影の手が、凜を掴もうとした瞬間
パシィィィン
そんな音が響き、影は凜から離れた所に着地していた
「やれやれ・・・あのタイミングで雷撃かい?
もう少しで直撃するところだったよ」
その影、二十歳過ぎと思われる男は、本を開いたままの和樹に向かって話しかける
「こっちとしては、かわされるとは思っても見なかったんですけどね」
和樹は、一切の油断なく、本を手に持ち、男をにらみつける
「あぁ、そんなに警戒しないで、僕は君に敵対する気は「パパをいじめるな〜!!」って!!」
ボォォォォォォゥ
いつの間にか和樹の背中から降りていたリナが、男の話をさえぎり、火を噴いた
男は、焦りながらもそれを回避し、別の場所に降り立った
「リナ!!落ち着きなさい!!」
「やぁ〜〜!!パパの敵はリナの敵なの〜〜!!」
「だからあの人は敵じゃ・・・こら!!火を噴くんじゃない!!」
和樹は、その男に追撃をかけようとするリナを必死に押し止めていた
しばらくの間、和樹の隙をついてリナが男にファイヤブレスを吐き
男がそれをかわし、和樹がもう一度宥めるといった光景が続き
なんだかんだで落ち着いたのは、最初のブレスから16分後の事だった
「す、すみません、家のリナが迷惑をかけちゃって・・・」
「いや、いきなり攻撃を仕掛けたのは事実だしね
その子が僕を敵と見るのも仕方ないよ
しかしハーフドラゴンの幼児か・・・・始めてみたよ」
まだ、どこか拗ねた様なリナを背負いつつ、和樹が必死に頭を下げ
男は笑いながら、和樹に話しかけていた
ちなみに、リナが火を噴いたのは、魔法を使っての事ではない
それは、ハーフドラゴンの『ブレス』の特性によるものである
そのドラゴンの血が何のドラゴンかで、ブレスの種類が決まり
一般的に有名なのは、リナの吹いた『ファイヤブレス』であり
後は、『アイスブレス』、『サンダーブレス』等が現在確認されている
『ブレス』は成長と共に強大化していく特性も持っており
今のリナのブレスでは、火傷をおわせるので限界だが
成長しきった場合、人を瞬時に焼き尽くすほどの火力を持つブレスとなるのだ
「っと、そういえば自己紹介がまだだったね
僕の名は神城駿司、凜の・・・まぁ保護者みたいなものかな?」
男性、神城駿司は、和樹の方を見ながら、そう言った
「じゃあ、次は僕の方ですね
僕の名は式森和樹、こっちが、僕の娘のリナです」
和樹が、どこか不満そうなリナの頭を撫でつつ、そう自己紹介をする
「娘・・・?」
「あぁ、娘と言っても血の繋がりはありませんよ
色々あって、リナの保護者をやってるんです」
駿司は、和樹の言葉を聞くと軽く頷き、凜の方を向いた
「反応はいいけど、まだまだ速度が遅いね
連日の修行で少しは強くなったと思ったけど・・・
これは、本家で修行のやり直しかな?」
「ふざけるな!!私は本家には戻らないと何度もいっているだろう!!」
駿司の言葉に、凜が怒りの感情をあらわにして言い返す
「式森君を婿に迎え入れる計画が中止された以上
凜がここにいる目的はない
力ずくでも本家に戻せと言われてるんだよね〜」
駿司は、凜の怒りを受け流すかのようにそう言った
「・・つっ!!修行なら・・・ここでも出来るだろう!!」
「確かに出来るかもしれないけど・・・
今の凜にそれを実証できるかい?
それが出来ない以上、僕は凜を連れ戻さないといけないんだけどね」
駿司の言葉に、凜は、反論も出来ず、ただ睨みつけるだけだった
「まぁ、凜の方にも色々思う事はあるだろうから・・・
一週間だけ、期限をあげよう
一週間後、本気の僕と勝負をしてもらう
その勝負で勝ったら、凜は葵学園にこのまま残る
負けたら、大人しく本家に戻ってもらうよ
ただ、人狼の僕の本気と、凜一人じゃあ勝負は目に見えてるだろうから
一人だけ、助っ人を認めよう
詳しい日時はおって説明するから、今のうちに精進しておくんだね」
駿司はそこまで言うと、いつの間にかその場から消えうせていた
「・・・・くっ!!・・式森」
凜は、しばらく駿司が居たところをにらみつけていたが
何かを決意した表情をすると、和樹の方を向いた
「先ほどの頼みは、さっき駿司が言った戦いの助っ人に変更してもいいか?」
凜は、先ほどまで以上に真剣な表情で、和樹に話しかける
「良いも何も・・・もともとは何を頼むつもりだったの?」
和樹は、普段と変わらぬ、だが、どこか冷たい表情で、問いかける
「・・・式森は魔術に造詣が深いだろう
だから、一時的に自らの身体能力を上げる魔法について聞きたかったのだ
図書館などでも調べてみたのだが・・・詳しくはのってなかった
だが、式森なら、知っているだろうと思って・・・・」
和樹は、凜の言葉を聞くと、軽く溜息をはいた
「それはそうだろうね、魔術によっての肉体強化はかなり厄介な魔法だから
学校にある本には、それに関する記述はほとんどないはずだよ
肉体強化魔法の多くが、無理やり力を跳ね上げるものばかりだから
その代償は、筋肉痛とかですんだらまさしく奇跡
大抵は筋肉の断裂か、骨折、最悪、再起不能になるからね」
和樹はそこまで言うと、魔道書を右手に持ち、凜の方に向けた
「だから、僕は肉体強化魔法を教える気はない
だけど、信頼できない人と共同戦線を張るつもりもない
神城さん、貴女は僕を信じきれるかい?
信じきれると言うのなら、この本に手を置いてほしい
でも、先に言っておくよ
この魔道書は、審判の魔術式を表面に組み込んでいる
審判の内容は、『式森和樹を信じ、共に戦える存在であるかどうか』だ
もし、ほんの少しでも偽り、つまり僕を共闘の味方として信じ切れないなら
この本による魔法で、神城さんの意識は刈り取られる
無論、命までは奪わないけど、でも、意識を失った場合
僕は、何があったとしても、君との共同戦線は張らない
君は、僕を信じきれるかい?」
凜は、和樹の話が終わると共に、手を本の上に置こうとした
「むしろ、式森が私を信じてくれないのではないかと思っていた
この戦いは、私の私闘に過ぎない
それに式森を巻き込もうというのは、私のわがままだと、自覚している
私の我侭に付き合って戦ってくれるような御人好しを信じられない程
私は人間不信ではないと、そう、信じている
式森、頼む、力を・・・・貸してくれ!!」
凜は、そう言いきると、手を本の上においた
本は、何の反応もなく、ただ、その場に存在していた
「・・・どうやら、審判は神城さんの勝ちの様だね
明日の放課後から、コンビネーションの特訓をしよう
神城さんの実力はあらかた、さっきの小競り合いで分かったから
今日中に、コンビネーションの案をいくつか作ってくるよ
でも、神城さんを主力にしてのコンビネーションにするからね
私闘だと分かってるんだったら、神城さんの手で終わらせるんだ」
凜は、和樹の言葉に、深く頷いた
和樹は、そんな凜の反応に微笑むと、拗ね始めていたリナを肩車した
「それじゃあ神城さん、僕はちょっと買い物があるから
また明日の放課後、この辺りで落ち合おう」
和樹は、そういうとリナを肩車したまま、街の方へと歩いていった
リナと一緒に買い物をしながらも、和樹は、頭の中で戦いの事を考えていた
神城駿司、彼は、自分の事を人狼といった
人狼は、亜人種の中でも特に瞬発力に秀でた種族である
さらに、人狼等、獣の亜人種達の最大の能力である獣化も視野にいれなければならない
和樹は何度も何度も、頭の中で戦いをシミュレートしていた
たまに、思考に深く沈みこんでしまい、リナに引き戻されたりしていたが
和樹は、買い物をしながらも、頭の片隅でシミュレートを続けていた
ハーフドラゴンを抜かせば、亜人種でも最強と言える実力を秘めた人狼種
果たして、和樹と凜は、その人狼種である神城駿司を倒せるのだろうか?
それに、なぜ駿司はわざわざ一週間の猶予を与えたのだろうか?
様々な疑問と不安を内包しながらも、時はただ進み続けていく・・・
あとがき
微妙な点で区切りになってしまいまいした・・・orz
実は今回、一種のお試し版のようなものです(ぇ
今まで、一話の中に強引に押し込むのが私の書き方だったのですが
今回以降、どうにも一話ずつでは収まっていきそうにないので・・・
第?章 第?節 といった感じで、区切っていこうとたくらみました(ぉ
今回の駿司編は、第三節で終りになると思います
この区切り方に関する皆さんの意見、お待ちしております
作品本体の方は・・・生暖かい意見でお願いします(ぇ
因みに葵学園大戦は・・・要望が多ければ外伝にするかも・・・
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