横島達が3人で幻海のもとで修業を始めて3日が過ぎ4日目に突入していた。
修業(4日目)おキヌの場合
おキヌは全身真っ黒な黒い人型の式紙と戦っていた。凄まじいスピードで攻撃を仕掛けてくる式紙の攻撃をややぎこちなさもありながらおキヌは裁いていく。
「痛っ!!」
裁ききれなかった攻撃がおキヌの肩口をかすり、おキヌは苦悶の悲鳴をあげる。だが、そこで一気に決めようと大振りの一撃を放ってきた式紙の隙をおキヌは見逃さなかった。
「はっ!!」
式紙の腕を掴み、そのまま投げ飛ばす。勢いを利用され、大きく放り投げられた式紙は地面に叩きつけられる。そして式紙が起き上がってきた瞬間、おキヌは一気に踏み込んだ。
「えいっ!!」
掌ていを式紙の胸に叩き込み、同時に横島の霊光寸剄同様、霊力を相手の体内に放つ。相手の力に誘爆させることこそできないが、同クラスの相手にはその威力は強大で、式紙は風船のように膨れ上がり爆発した。
「驚いたねえ。まさか、4日目であのレベルの式紙を倒すなんて。」
戦いを観戦していた幻海は彼女にしては珍しく本当に驚いた顔をしている。
「横島より資質あるかもね。いっそ、横島の代りにあんたを継承者にしてやろうかねえ。」
「そ、そんな、私なんか。」
冗談めかして言う幻海はおキヌが慌てた表情を見せる。それを見てさらに笑う幻海。
「あんたはほんとに素直だねえ。まっ、とりあえずは残り3日、がんばりな。」
「はい!!」
修業(4日目)・雪之丞の場合
「おい、あんた、いつまでこんな事続ければいいんだ?」
雪之丞は3日間、ひたすら基礎、霊力の制御ばかり学んでいた。一日目こそ、そのハードさに文句を言う余裕もなかったが2日目、3日目と同じ事を繰り返すうちに雪之丞はそれに不満を持つようになってきていた。
「まったく、あんたは飽きっぽいねえ。いいさ、その成果を知れば少しはやる気がわくだろう。ちょっと魔装術を使ってみな。」
そんな雪之丞に幻海は溜息をつくと、仕方が無いという風に雪之丞に魔装術を身に纏わせるよう指示する。
「ん?ああ、わかった。魔装術を使えばいいんだな。・・・・・これでいいのか?」
言われた通り雪之丞は術を身に纏う。それを見ると幻海はさらに指示を出す。
「よし、あんた確かサイキック・ソーサーが使えるって言ってたね。魔装術を纏ったままそいつを使うイメージで霊力を右手に集中させてみな。」
そう言われて雪之丞はそれを試す。すると、右腕の魔装が膨れ上がり、パワーが増し、逆に他の部分が薄くなる。
「こいつは!?」
それに驚く雪之丞、幻海はそれを見て満足そうに頷く。
「あんたの霊力が強くなった事と制御力が上がった事でそういう事ができるようになったのさ。今はまだその程度だけど、最終日まで続ければ状況にあわせていくつかの形態に変化させる事ができるようになる。ま、それ以上はあんたの精進と想像力次第だけどね。」
その幻海の言葉を聞いて基本的に単純な雪之丞は俄然やる気をだした。そして、修業最終日までに、彼は幻海の想像を超える進歩を見せることになる。
修業(4日目)横島の場合
「死ぬううううううううううううう。今度こそ、ほんとに死ぬうううううううううう。」
*過激すぎて書けません
その修業は更に苛烈を極めていた。
そして、修業は7日目最終試験の日を迎える。
「さて、ここまで良くがんばったね。」
その言葉におキヌはともかく横島と雪之丞はびびる。なぜなら、二人は幻海から労いの言葉などかけられたことはほとんどないのだから。
「さて、最終試験の内容を発表するよ。まず、おキヌ、あんたには式神と契約してもらう。」
「式・・・・・神ですか?」
幻海の言葉におキヌは驚いた表情をみせる。幻海はそれを見て頷く。
「そう、式紙ではなく式神、400マイトの霊力を持った単独で見れば六道のより強力な奴だ。あんたの支配力じゃあ、普通にやったら従わせるのはまず不可能。心を通わせるにしてもこいつは使い手の力を認めさせないと絶対に契約してはくれない。まず、こいつと戦い弱らせてそれから契約しなくちゃならない。けど、今のあんたはそれが出来るだけの力が十分に備わっている。後は、修業の成果が実戦形式の中で生かせるかどうかだ。」
「がんばります!!」
幻海の励ましにおキヌは元気よくこたえる。幻海はそれを満足気に見ると、次に雪之丞の方に視線を向ける。
「あんたは、こっちに近づいてきている魔族と戦ってもらうよ。」
「「「・・・・・・・はっ?」」」
さりげなく言われたとんでもない発言に3人は呆気にとられ、埴輪顔になる。
「ちょ、ちょっとそれどういうことですか!?」
3人の中で最初に正気に戻った横島が幻海に詰め寄る。とりあえず落ち着けと言わんばかりに一発かます幻海、どつかれた頭を押さえ横島がうずくまる。
「ああ、明らかに悪意を持った魔力の持ち主が一人、いや他に使い魔かなんかが一匹いそうだね。こっちに近づいてきているんだ。まあ、たいした奴じゃないよ。精々横島の2倍程度の魔力しか持たない奴だからね。それを撃退するのがあんたの役目って訳だ。まあ、万が一あんたで勝てそうに無い相手だったらその時は助けに行ってやるよ。」
「へっ、横島はそれより遥かに強いあの女魔族に勝ったんだ。俺だってそのぐらいやってやるよ。」
幻海の言葉を聞いてやる気まんまんな姿勢を見せる雪之丞。そして幻海は最後に横島に視線を戻した。
「そして、横島、あんたにはあたしと戦ってもらう。」
「んなっ!?」
その言葉に横島が先ほど以上の驚愕を見せる。それはおキヌも雪之丞も一緒だ。彼等は幻海の強さを嫌と言う程知っているのだから。
「勝てとは言わないよ。あたしにほんの少しでもダメージを与えられたらそれで合格だ。けど、それができなければあんたは今度の戦いには参加させてやらない。ここまで鍛えたっていうのに犬死にされるってのは御免だからね。その時はあたしが代りに戦ってやるから端から事の成り行きでも見守ってな。」
横島という人間を掴み、それが最も効果的と思われる言葉を投げかける。その言葉に横島は真剣な表情に頷き、言った。
「わかりました。必ず合格してみせます。」
(後書き)
次回で修業編は終わりの予定です。
現段階での霊力
(修業開始前)
横島 212マイト→236マイト
おキヌ 79マイト→ 91マイト
雪之丞 84マイト→118マイト(魔装術使用時182マイト)