では、キーやん達に連れて行かれた横島を見て見る事にしよう。
行き成りだが、横島は何処かの荒野にボロボロで寝そべっていた。
「拝啓、美神さん。どうやら約束は守れそうもありません。
多分俺は、もう少ししたら天に召されそうです。
・・・・・・てか、何で俺は死にかけているんだろう?」
(ん〜、面白いから?)
「ひどっ!」
天の声に突っ込む横島はほっといて。
問題の横島は死にかけていた。
何故死にかけているのか。その話はここに連れて来られた時に遡る。
キーやん達に連れて行かれた横島は、直ぐに過去に戻ると思っていたが、
それはいい意味で裏切られる。
【さて、横島君には過去に戻る前にここで修行をして貰います】
「はい?」
【今のまま戻っていいんやけど、それだと誰も助けられないで?】
【力が無いのに戻っても何も出来ないでしょ?】
その言葉に横島は素直に頷く。
皆を助ける為に過去に戻るのに、助ける事が出来ないのでは意味が無いからである。
「えっと、それでどれ位修行するんですか?」
【【さあ?】】
ズルッ
「いや、さあ?って・・・」
二人の言葉に横島はこけるしかなかった。
【そんな事言われてもやな〜。分からんもんはわからんのや】
【今から私達が横島君に修行をつけます。
それで、私達と同じだけの力を付けて貰いますが、それがどれだけ掛かるか分からないんですよ】
キーやんの説明に横島は三つの事に驚いた。
一つは神界と魔界の最高指導者に指導を受ける事。
もう一つは、付けなければいけない力が最高神クラスの力だと言う事と、
その期間が不明だと言う事に。
「いや、ちょっと待ってください。
俺は人間ですよ?そんなに力を付けるのに、数十年で足りるんですか?」
横島がそう言うと、何故横島が驚いているのか分からなかった二人も、
納得がいったという感じで頷くと、説明を始めた。
【どうやら、まだ気付いていない様なので説明しますね?】
【えっとやな、ヨコッち。ヨコッちはもう人間やないんやで?】
「・・・・・・はい?」
横島は数秒答える事が出来ず、答えを返した言葉も疑問系だった。
【えっと、ヨコッちが『抑止力的存在』って言うのは説明したな?】
その言葉にまだ混乱はしている物の、頷く事で返事を返した。
【抑止力的存在って言うのはですね、その体に極少量ながら神通力と魔力を持っているんですよ。
その二つなんですが、横島君がルシオラさんの霊其構造を体に取り入れた事によって活性化して、
貴方は既に三界で唯一の存在になっているんですよ】
【早い話がな?ヨコッちはルシオラっちゅう彼女のお蔭で、
皆を守る為の力が更に上がったっちゅう訳や】
横島はこの二人の言い方に、既に切れかけていた。
まるでルシオラを物の様に言い、更にはその力を自分が手に入れた事を喜んでいる様な言い草に。
「
・・フザケルナヨ?お前等、何様のつもりだ?
お前等はあの時俺達に何をしてくれた?アシュタロスの所為で何も出来なかったのは誰だ?
お前等だろ?そのお前等がルシオラをそんな風に言っていいと思っているのかよ?おい!?」
横島がそういい終わると同時に、荒野に荒ぶる風が巻き起こる!
その風の色は、白・緑・黒。
白い風は何処か神々しい感じを放ち、緑の風は優しい感じを放ち、
黒い風は何処か破壊を齎す様な感じを放ちながら、全てを包み込む様な感じを同時に放っていた。
【これは・・・予想外の力ですね】
【ああ。まさか、今の段階でここまでの力を発するとは思わんかった。・・っ!】
少し離れた所で話している二人に、横島は三色の風を身に纏いその姿を消す!!
【【これは、神速!?】】
姿を消したと思った瞬間には既に二人の前に姿を現し、殴りかかった!
横島が姿を現した瞬間は驚いていた二人だが、そこは両界の最高指導者。
横島の拳をキーやんが受け止めるとそのまま手を掴み地面に叩き付ける!
叩き付けられた横島は、肺の中の空気を一瞬で吐き出し「ガハッ!」と目を見開いた。
叩き付けられた横島の腹に、サッちゃんが拳を捻り込むと横島はうめき声を挙げるが、
その両目からは光が失われない!
その眼光を見た二人は横島から飛び退き、再び距離を取った。
「ゲホッゲホッ!・・さすがにこのままじゃ無理だな。
お前等の言葉で理解出来たよ・・・
俺は人間と言う殻の中にいる雛だって事がな!!!」
横島がそう叫ぶと再び横島の体から風が巻き起こり、その風は背に集まり翼を象る!!
その翼の色は白と黒。三枚ずつ現れ広々と広げられる!!
緑の風は何処に集まるのか、横島の様子を黙って見ていた二人は驚愕の色を露にする。
【ちょっと待て!ヨコッちの足にあるあの緑色の光は!?】
【まずいですよ!?あれは『神速』を理解し、その頂を見た者のみが出せる『無の歩法』!?】
二人がそう叫ぶと同時に横島の立っていた場所が爆ぜる!
【【ガハッ!?】】
地面が爆ぜると全く同時に二人の腹に拳が減り込む。それと同時に横島は意識を失った。
【ケホッ!・・これは驚きましたね。神魔の翼だけでなく、『無の歩法』までその身にあるとは】
【フィ〜、まったくや。『最高の抑止力』もここまでくれば大したもんやな】
二人は腹を抑えながらそう言うと、口の端を持ち上げた。
【いくら私達が下級クラスまで力を落としていると言っても、
一撃を入れるとは・・・これは先が楽しみですねぇ〜♪】
【まったくや。これはいいおも・・ゲフンゲフン。いい逸材を見つけたな】
(おい、今。なんかすっごくやばい事言わなかったか?)
【いえ、言ってませんよ?】
【言うわけないやん】
(ふむ・・・気のせいか)
【さて、まずは横島君に渡す武器ですがどうしますかね?】
気絶した横島を無視して今後の話を始めた二人。
(いいのか、それで・・・)
【気にすんなや。・・・そうやな〜。さっきの動きから見て、まず武術の才能はあるやろ?
それと武術の才能があると言う事は、恐らく剣術の才能もあると思うんやけど?】
【ええ。それで間違いないと思いますよ?と言う事は、かなり神域の高い刀剣類か。
付属魔力の高い刀剣類ですね。そんなのあります?】
キーやんがサッちゃんにそう聞くと、悩みながら幾つかの例を出す。
【そうやな〜。まず、ヨコッちに耐えれそうなのを挙げると、
ジークフリードの魔剣グラム。アーサー王の聖剣エクスカリバー。スサノオノミコトの草薙の剣。
使い手がいない妖刀村正。ローランが所持していたデュランダル。天照大神の小烏丸。こんな所やな】
その例を聞いていたキーやんは暫くの間考えに耽ると頷き口を開いた。
【どれも、完全覚醒した横島君には耐えれないでしょう。
唯一耐えれそうなのは地球が鍛えたエクスカリバー位でしょうけど、
どうやら横島君の本質は『剣』よりも『刀』寄りみたいですから、うまく扱えないでしょうね】
【なら、『あれ』はどうや?】
サッちゃんが『あれ』と言うと、キーやんも頷いた。
【ええ。私も『あれ』がいいと思います。横島君なら喰われる事も無いでしょう】
【そうやな。ヨコッちにはあの特性があるから大丈夫やろ】
【【人外に好かれると言う特性がね・・・ふふふ(クックックック)】】
(こんなのが最高指導者で大丈夫なのか?・・・まっ、いっか)
キーやん達が話し終わると同時に、タイミング良く横島は目を覚ました。
※そして冒頭に戻る
「拝啓、美神さん。どうやら約束は守れそうもありません。
多分俺は、もう少ししたら天に召されそうです。
・・・・・・てか、何で俺は死にかけているんだろう?」
(ん〜、面白いから?)
「ひどっ!」
横島が目を覚ました事に気付いた二人は横島の所まで移動し、先程の事を謝った。
【すみませんでした、横島君。貴方に力を覚醒して貰う為に暴走という形を取らせて頂きました】
【堪忍や、ヨコッち。悪気があった訳やないんやで?これもヨコッちが目覚める為にしかたなかったんや】
そう言われた横島は先程何があったのか考え出した。
「(あれ?俺謝られる様な事ってあったか?ん〜・・・・・・・・・・・・あっ!?)
ルシオラの事か!?・・・まあ、そう言う理由ならしょうがないですね。今ならわかります。
あのお蔭って言うのも変ですけど、どうやら『抑止力』として覚醒出来たみたいですから」
横島がそう言って力を籠めると先程とは違い、二色の風が吹いた。
【どうやら、まだ完全には覚醒してないみたいやな】
【まあ、あれを出すのも修行の一つに織り交ぜてやりましょう。
先ずは、武器を手に入れてきてください】
そう言われた横島は、風を止めて二人に聞いた。
「武器・・・ですか?」
【はい。それぞれの神魔族には神器と言われる専属武器が多数あります。
なので、横島君にも専属武器を手に入れて貰おうと思います】
【と言う訳で行ってこいや!】
サッちゃんが指を
パチンッ
と鳴らすと、横島の足元に深い深い穴が開いて横島は落ちて行った。
「
なんじゃこりゃ〜〜〜〜!?!?」
【頑張ってくださいね〜】
【頑張りや〜】
と、二人は横島に温かい(?)言葉をかけるのだった。
十一話に続く
あとがき〜
ふ〜、やっと修行編が始まりました。
色々と設定が大変です。行き成り強くするのは嫌だけど、それなりの力は持たせて起きたいし、
修行を付けるのは誰にしようかとか、色々と考えた結果上記の様になりました。
皆さんの温かい感想をお待ちしてま〜す。
レス返し〜
D,さんありがとうございます。
取り敢えず、前話でレス返しはしているのですが、ここでも返させて頂きます。
>えっと・・・・・横島とのキスで御懐妊ですか・・・・・・・(^^;;;;;
えっとこれはですね、今回の話では全くそう言う話が出ていないのですが、
『何人か告白している』って言いましたよね?
で、その時に横島は保留にしているんですけど、彼女達に迫られて、
まあ、やってしまったわけです。はい。
九尾さんありがとうございます。
>子供が出来て迷わず産んでる時点で、これって忘れてると言えんのか?って嬉しく苦笑してました。
この事で喜んで頂けて幸いです。
やっぱり、記憶自体が消えて想いも過去に飛ばしたと言っても、
今まで横島と過ごした絆は消えなかったと言う事だと思います。
大神さんありがとうございます。
>想いの絆は、例え記憶から消え去ったとしても断たれなかった・・・
はい、その通りです。
キーやんも言っていた様に、確かに記憶は消えてしまいますが、
人に対する想いという物はどんな事があっても消える事はないんです。
俺はただその事を書きたかったのかもしれません。
柳野雫さんありがとございます。
>皆、横島くんから貰ったものを、大切なものをなくしてませんでしたね。
>横島くんは残せてたんですね。大事なものを、たくさん。
そうですね。大切な物を残せたからこそ横島も頑張れるのだと思います。
それに、自分にとって本当に大切な物っていうのは、失われないですから。
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