「やります! 俺はアイツを、ルシオラを復活させるって誓ったんです!」
Legend of Devil vol.5 Assault その1
ここは魔界のとある鍾乳洞、そこに向かい飛んでいく一人の女性の姿があった。ベスパである。これと言った表情も見せずに無表情のまま鍾乳洞に向かっていった。
地に降り立ったベスパは鍾乳洞の中へと進んでいった。
「やぁ、やっと来たね」
少女のような魔族がベスパに話しかけた。闇に閉ざされ顔が確認出来ない。
「こんな所に呼び出してなんの用だい?」
声を掛けてきた魔族に対しベスパは不満げな表情で問い掛けた。
「ふん、なに、私らと手を組まないかと思ってさ。 正規軍に入ったと言っても魔神でもない一魔族のアンタだ、ハグレになってもさして問題はないだろう?」
「お断りだね」
ベスパは即答し、踵を返して立ち去ろうとしたが、
「ゲバハハハ、そう言うな」
「用件だけでも聞いて行けよ」
更に2人(一人と一匹?)の魔族が現れた。一人は少年のような出で立ちである。一人(一匹)は蠅のような姿である。双方とも闇に閉ざされ顔が確認出来ない。
「お前らまで生きていたのか」
少々驚いたような顔でベスパは言った。
「コスモプロフェッサが破壊される前に霊格を固定しておいたんだ」
と少年。
「んでアイツを殺す為に集まったのさ」
と蠅。
「アイツ?」
ベスパの顔が険しくなる。それでも一応話しを聞こうとするベスパ。
「横島忠夫さ、アシュ様が殺されたんだ、アンタだって少なからず恨んでるんだろ? 大体、アシュ様を殺した人間がアシュ様の後釜!? ふざけるんじゃないよ!!」
少女(?)が答えた。ベスパには三人(二人と一匹?)の表情は確認出来ないものの彼女らの怒り、憎しみは手に取るように分かった。
「なら、なおさらお断りだね」
ベスパは腕組みをした状態で答えた。
「なんでさ!?」
「ポチ・・・・・・・・・いやヨコシマはアシュ様の最後の願いを叶えてくれたんだ。 それに姉さんを復活させようとしているんだ。 私は感謝の念すらおぼえるよ」
少女の問いにベスパは笑みを浮かべて答えた。
「じゃぁ私たちの邪魔しようってのかい!?」
少女の言葉に三人(二人と一匹?)が戦闘態勢に入り構える。
「なんだい? アンタ達が今の私に敵うと思ってんのかい?」
「「「ぐぅ!!!」」」
ベスパの言葉に合わせた冷たい視線が三人(二人と一匹?・・・・・・いい加減しつこいな)が体を固くした。
「ふん、アンタ達の邪魔なんかしないさ。 勝手にやりな」
そう言うとベスパは踵を返し鍾乳洞を後にした。
(あんな奴ら一人で倒せないようじゃ到底姉さんの復活は出来ない。)
「・・・・・・・・・頑張ってくれ、ポチ」
あれはタマモと横島が一緒に夕日を見た一週間前、事務所発足から3ヶ月経った頃のことだった。
「はい?」
妙神山修行場の応接間のような部屋で横島は素っ頓狂な声を出していた。
「ふむ、横島には魔神になってもらおうと言うことになったのだ」
「それってどういう・・・・・・・・・」
ワルキューレの言葉の意味がイマイチ良く分からない横島。
「それについては僕が説明します」
ジークが真剣な面もちで語り出した。ちなみにここにいるメンバーは横島、ワルキューレ、ジークは当たり前として、小竜姫、斉天大聖、ヒャクメ、そしてパピリオの7人が集まっていた。
「まず、横島さんの魔族化については先日お話しした通りです」
フムフムと首を縦に振る横島。
「問題になったのは魔族化したときの横島さんの霊力値の事です」
「何かあったのか?」
「調べた結果驚くべき数値がでたのね〜。 少なく見積もってもアシュタロスクラスの魔神と変わらないのね〜」
横島の問いにヒャクメが割り込んで答えた。ジークは額に血管が浮かんでいるように見える。
「それは僕が調べたことだ!」
「うっ、最近出番がなかったからちょっと目立ちたかったのね〜」
「それは僕とて同じだ! そう言うことは作者に言え!」
「だいたい、作者の力量が足りないからこういう事になるのね〜」
うう、二人が虐める・・・・・・・・・
「あの〜論点がずれてるんだけど」
ありがとう横島くん!
「そうだったな、まぁそのことを神魔双方の最高指導者たる方々に報告した結果(報告はジークにやらせたが)、横島を魔族側に魔神として受け入れようと言うことになったのだ」
「今はアシュタロスが消えたことで神魔のバランスが崩れています、それを補う意味でも上としては正しい処置でしょう、それに・・・・・・・・・」
ワルキューレと小竜姫が答えるが小竜姫は浮かない顔をしている。横島が魔神となるのは嫌だが致し方ないと諦めモードに入っている感じだ。
「それに?」
かなり大きな話しである筈だがあまり驚かないというか平然と聞いている横島。
「神界魔界のいずれも魔神クラスの魔族を放置しておくことは出来んのじゃ」
口ごもる周りに見かねてフウと溜め息を漏らし斉天大聖が答えた。
(なるほど)
横島は顎に手を付け考え込むように納得した。
「それでだな横島」
「あん?」
「この決定はあくまで横島が横島である事が最重要事項なんだ」
「それで?」
イマイチよく分かっていない横島に全員が溜め息を漏らしつつ小竜姫が答えた。
「さっき言った能力値は魔族としての力です。 つまり、魔族化に伴い出てくる横島さんとは別人格の魔族が得られる力であると言えます。 よって、横島さんにはこの3年間の内に人間の身でアシュタロスを超える力を会得しなければならないんです。 そうでなければ神魔双方から抹消という形で存在を消されてしまうんです」
フムフムと頷いていた横島が一瞬止まった。石化したとも言えるだろう。
「なに〜〜〜〜!!!! そんなアシュタロスを超えるってそんなん無理じゃないッスか!」
全員の顔が暗く俯いた状態になりただ黙り込んでしまった。・・・・・・・・・一人を覗いて。
「無理ではないぞ」
斉天大聖である。
横島の顔に光が差す。横島にしてみれば頭の左右に天使が飛び、目をキラ点かせて「神様ありがとう」状態だろう。まぁ取り敢えず神様だし、サルだけど。
「・・・・・・・・・老師、やはりあの修行を?」
暗い表情のまま小竜姫が問い掛ける。
「それしかあるまいて・・・・・・・・・横島よ」
「なんスか?」
現実世界に戻ってきた横島が答える。
「手はあるが、地獄を見るぞ」
「いっ!?」
「黙って存在を消されるか、先に地獄を見て生き延びるか2つに1つじゃ、どうする」
斉天大聖はそのような質問をしたが横島の答えは誰もが安易に想像出来た。
「やります! 俺はアイツを、ルシオラを復活させるって誓ったんです!」
「そうでちゅ! ヨコチマ頑張るでちゅよ!」
「うむ! それでは準備に一月ほどかかるのでな、それまでは今まで通りの修行を続けておれ! 良いな?」
「はい!」
続く