Legend of Devil vol.5 Assault その2
「はい! 調査の結果、人間横島忠夫の魔族化時に現れる別人格通称αの魔力はアシュタロスと同等若しくは大きく上回ると思われます」
『そうですか』
『なかなか厄介やな』
ジークの報告に光り輝く人物2人が答える。
『生まれたての人格でそこまで力持っとると本能だけで動くやろな』
『殺戮と破壊ですか』
『そうなったら消すしか無いやろな〜、ええ〜人材なんやけど・・・・・・・・・おっ、もう戻ってええで』
「は、はい!」
光り輝く人物にそう言われたジークは颯爽と部屋を後にした。この光り輝く人物言うまでもなくサッちゃんとキーやんである。
『しかし、どうするんですか?』
『そうやな〜、横島が横島のままやったら魔神として受け入れるのが一番やろ』
キーやんの問いに手に顎を乗せながら答えるサッちゃん。
『そうですね、そうすれば神魔のバランスも元に戻りますし・・・・・・・・・しかし、私のところもサッちゃんのところも黙っているとは思いませんが』
『アシュタロス一派のことやな? 間違いなく横島を襲うやろな〜』
『お互い苦労しますねぇ』
俯きながら悩むキーやんとサッちゃん。
『まぁ何とかなるやろ』
『ずいぶんと楽観的ですね』
『なんなら賭よか?』
不適な笑みを浮かべながら言うサッちゃん。
『いいですね、それなら私は“大丈夫”に賭けますよ』
『それじゃ賭けにならへんやん』
『そうですねぇ・・・・・・・・・それじゃぁブッちゃんやアーちゃんにも交ざってもらいましょう』
手をポンと叩きながら提案するキーやん。
『おっ! それええな』
常に人間界を見ているサッちゃんとキーやんは段々俗世にはまっていく。ちなみにこれは横島に魔神への催促をした3日前の出来事であった。
それから11日後、横島に魔神への催促をし、斉天大聖が修行の準備に取りかかってから1週間が経ち、横島とタマモが一緒に夕日を見た翌日の午前中、横島除霊事務所に一人の来客があった。
「久しぶりなのね〜」
「この前あったばかりだけどな」
「うっ、冷静なツッコミはいらないのね〜」
そうヒャクメである。妙神山から直通の扉をくぐり挨拶をしたヒャクメに雪之丞が冷静なツッコミを入れた。
「今日はどうしたのですか?」
「仕事は巧くいってるの?」
「まぁまぁだな。 と言っても今日はけっこう暇なんだ」
小竜姫の言葉を無視し、横島に話しかけるヒャクメ。それに対し律儀に答える横島。と言っても後頭部に大きな汗をかきながらかなりタジタジである。なぜなら・・・・・・・・・
「今・日・は・ど・う・し・た・の・で・す・か・!?(#)」
小竜姫が背中に活火山を背負い今にも噴火させそうなのである。横島はそんなにも無視されたのが嫌なのだろうかと思っていたが、実際は横島に擦り寄るヒャクメにムカついていたのだ。
「そ、そんなに怒ると小皺が増えるのね〜(汗)」
火に油。
「私はまだ皺の出る年じゃありません!!」
噴火。
小竜姫はヒャクメの裏襟(奥襟)を掴み妙神山に戻った。10分後やけにスッキリした顔つきの小竜姫とボロボロになったヒャクメが横島除霊事務所に戻ってきた。
それを見た横島、雪之丞、そして愛子は小竜姫には逆らってはいけないと心に深く刻み込んだ。
「んで、今日はどうしたんだ?」
愛子が全員のお茶を煎れ、1つの机を囲んで座り、お茶を啜りながらフウと一息吐いたとき横島がヒャクメに聞いた。ちなみに愛子は自分自身(机)に座っている。
「実はさっき人間界に魔族が数人侵入したのね〜」
「何か問題あんのか? 魔族なんていっつも居るじゃねぇか。 ワルキューレとかジークとか」
ヒャクメの話しがそれほど大事ではないだろうと思い、首を傾げながら雪之丞が言った。
「それは申告してからの行動だから別に問題にはならないのね〜」
「つまり、申告のない魔族が人間界に侵入したと」
珍しく頭の回転が速い横島が真剣な面持ちで言った。
「そうなのね〜、まだ誰かまでは分からないけどそれなりの力は持っているようなのね〜」
「まさか!?」
「そうなのね〜神界でも魔界でも不穏な動きがあるのは確かなのね〜。 十中八九横島さんを消そうって言う連中なのね〜」
小竜姫の驚きの言葉をヒャクメが肯定した。現時点では自分に被害が出るとは考えていなかった横島もヒャクメの言葉に驚きを隠せない。
「そんな能力を制限された状態で魔族と戦うなんて無理ッスよ!!」
「・・・・・・・・・そうですね、老師に特例を認めてもらうしかありませんね」
そう言って立ち上がった小竜姫をヒャクメが制した。
「無理なのね〜」
「「え?」」
「ここに来る前に聞いてきたのね〜。 これも修行の一環として能力制限を守って戦えって言ってたのね〜」
弱々しく言葉を震わせ、俯きながらヒャクメが答えた。
「そんな・・・・・・・・・」
「まぁなんとかなるだろ、俺や小竜姫様が居るんだ。 横島を守って魔族を追い払うことぐらいならなんとかなるだろ?」
「そうですね」
雪之丞の言葉に小竜姫と愛子は安堵の溜め息を吐いたが、横島の言葉が3人を驚愕させた。
「待ってくれ雪之丞! 今の俺の力が魔族に何処まで通用するのか知っておきたい。 これは俺一人にやらせてくれ。 小竜姫様もお願いします」
「な、何を言ってるんですか!!?」
「大丈夫ですよ、師匠がそう言ったって事は何か勝算があるんですよきっと」
慌てて否定しようとする小竜姫だったが、笑顔で答える横島に言いくるめられてしまった。
「・・・・・・・・・分かりました、ただし危険であると判断した場合は私と雪之丞さんで加勢します。 いいですね?」
「はい」
その頃妙神山では
「ふう、新しい空間を造るのは肩が凝っていかんのう、・・・・・・・・・魔族か、まぁ小竜姫や雪之丞がおるんじゃ大事にはならんじゃろうて。 お〜いパピリオ! バナナ持ってきてくれんか〜?」
サルがバナナを食べていた。
続く
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