▽レス始▼レス末
「Legend of Devil Vol.4 Sunset glow(GS)」鱧天 (2004.12.05 02:10/2004.12.05 02:43)
 「いつも俺はここで夕日を見て、この言葉を思い出す。 アイツの言ったこの言葉を・・・・・・・・・ここが最後に一緒に夕日見た場所なんだ」

Legend of Devil vol.4 Sunset glow

 ガチャ
 横島除霊事務所の事務室の扉を勢いよく開け中に入ってきたのは横島から真実を教えられ、美神除霊事務所の中で唯一横島の現状を知っている娘、金色の髪を九つのポニーテールにしているタマモだった。
 「ねぇ、ヨコシマいる?」
 タマモの第一声はこれだった。横島除霊事務所所員には挨拶そっちのけで横島の所在を確認した。横島除霊事務所発足から3ヶ月経った今ではタマモが押し掛けてくることなど日常茶飯事だったので所員が驚く様子もなかった。
 「あら、タマモちゃんいらっしゃい」
 「こんな時間にどうしたんですか?」
 出迎えたのは愛子と小竜姫である。2人ともキョトンとした顔でタマモを出迎えた。普段ならタマモが横島除霊事務所を訪れるのは昼か昼過ぎ、仕事がないときなんかは朝から居ることもある。しかし、今は夕刻であり、太陽が西に傾きはじめ空を黄金色に染めている。
 「ちょっと美神が暴れ出して・・・・・・・・・逃げてきた」
 「ま、またですか・・・・・・・・・」
 少々呆れたように小竜姫が言った。ここ3ヶ月で美神が暴れることが多くなった。横島が事務所を辞めたことも1つの要因だろうが美神除霊事務所の顧客の殆どが横島除霊事務所に乗り換えたのだ。発足1日目の依頼を完璧にこなしたという噂が即座に広まり、依頼主の口コミが大きな影響を表したのだ。しかも美神除霊事務所に比べ格安(日本GS協会認定料金)だったのだ。
 「ところでヨコシマは?」
 「今は居ねぇぞ」
 コーヒーを啜りながら窓際に立っていた雪之丞が平然と答えた。
 「あら、アンタ居たの? 影薄いから気付かなかった」
 「あ、あのな〜」
 タマモの反応に雪之丞が大きな汗をかき唖然としていた。それを見た小竜姫と愛子はクスクスと笑っていた。
 「なんなんだ、まったく・・・・・・・・・ヨコシマなら多分彼処だ」
 そう言って雪之丞が窓越しに指差したところは夕日の光で橙色となった赤と白の333Mを誇る電波塔だった。
 「東京タワー?」
 そう東京タワーである。横島除霊事務所は首都のビルとしては小さい10階建てだが東京タワーが一望出来るという場所に建っているのだ。
 「あぁ、大体この時間ならいつも彼処にいるぜ。 だが彼処はアイツにとって大事な場所だからな俺たちは干渉しないことにしてるんだ、だからお前も」
 「アリガト! それじゃ!」
 雪之丞の言葉を遮り、それだけ言うとタマモは横島除霊事務所を後にした。
 「アイツをそっと・・・・・・・・・って、お〜い、人の話は最後まで聞け〜」
 雪之丞の言葉もむなしくタマモには届いていなかった。
 「良いのか? アイツ横島ん所まで行っちまうぞ?」
 「えぇ、あの娘には知る権利・・・・・・・・・いえ義務があります。 こうなった以上タマモさんにも協力してもらいますから」
 「でも、“あれ”は本当なんですか?」
 「はい、神魔両方の上層部の決定ですから」
 小竜姫は俯き暗い表情に変わる。
 「どっちにしても横島には横島でいてもらわねぇとな」
 「そうですね」
 雪之丞の言葉に顔を上げた小竜姫が笑顔で答えた。

 タマモは鳥の姿に化け、東京タワーに向かって飛んでいった。展望台の上に横島を見つけ、驚かせてやろうと気配を消しつつ横島に近づいていった。
 「・・・・・・・・・タマモか?」
 夕日を眺めつつ横島が言った。その表情には笑みの中に哀しみが折り重なったように見えた。
 「な〜んだ、バレてたんだ」
 割と普通に答えたタマモだったが驚きは隠せなかった。気配を完璧に消し、霊気をかぎ分けることが出来るシロであっても気付かれない自信があったからだ。
 「まぁな」
 一言二言の会話ではあったが、その間も横島は夕日から眼を離そうとはしなかった。その表情の下に隠された心をタマモは聞きたかったが聞くことが出来なかった。
 「あっ!! 日が沈む!」
 いつの間にか夕日は地平線の向こうに沈み始めていた。
 「わたし、日没見るの初めて・・・・・・・・・綺麗」
 自然とタマモの表情が微笑みに変わっていく。
 「昼と夜の一瞬の隙間」
 「え?」
 「短い間しか見れないからより一層綺麗に見えるんだ」
 タマモは顔を紅く染め、横島の顔を眺めていた。
 「な、なによヨコシマ、随分ロマンチックな事言うじゃない」
 「アイツが言ったんだ」
 「え?」
 「いつも俺はここで夕日を見て、この言葉を思い出す。 アイツの言ったこの言葉を・・・・・・・・・ここが最後に一緒に夕日見た場所なんだ」
 消えていく太陽を細目にして見ながら横島は答えた。
 「・・・・・・・・・ゴメン、わたし知らなくて」
 タマモは横島とルシオラの2人の場所に立ち入ったことを詫び、その場から立ち去ろうとした。
 「いいよ、俺だって思い出に浸る為に来てるんじゃないんだ。 明日を生きる勇気をもらいに来てんだ。 また一緒に夕焼けを見るって約束しちまったからな」
 そんな会話をしている内に太陽は完全に沈みきっていた。
 タマモはここに来たことを後悔していた。横島の心の中にはルシオラしかいないことがハッキリしてしまったからだ。
 (だからってわたしは諦めないわよ! これくらいで諦めるほど安い女じゃないわ!)
 新たな決意を胸にタマモの日々が始まるのだった。
 「さて、そろそろ帰るか」
 「そうね」
 横島も言葉にタマモが笑顔で答えた。
 「あれ、そう言えば何でここに来たんだ?」
 「そうだ!! 美神が怒ってたわよ『今週の文殊はまだか〜!!』って」
 「わ、忘れてた・・・・・・・・・」
 明日を生きる勇気を手に入れた横島だったが、即刻死刑宣告を出された横島だった。横島に幸せあれ!


続く



あとがき
 こんにちわ。鱧天です。
 今回のLegend of Devil Vol.4 Sunset glow(夕焼け)は如何でしたか? 取り敢えず横島とタマモが一緒に夕日を見る。 というモノが書きたかったので書いてみました。
 いつもは3部構成で話を書いてましたが、今回は挿話みたいなモノなので1話完結でした。
 前回、「魔界とかも絡んできて話を大きくしていこうかなと考えています。」などと書いたのですがそれは次回より、ということでよろしくお願いします。

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△記事頭
  1. 今回も面白く読ませてもらいました。今後も頑張ってください
    nanasi(2004.12.05 09:48)】
  2. 挿話だったら長さはこんくらいですね。タマモのあきらめないって姿勢が嬉しかったです。横島のひたるんではなく再確認って向き合い方も。
    なんせ最終的には復活させれる可能性もありますからね〜。今までよりは気合入るでしょう。そして他の女性陣からしても、復活さえしてしまえば遠慮する必要ないんですもんね。相手がいたらあきらめなきゃいかんって誰が決めた?
    九尾(2004.12.05 10:30)】
  3. タマモの前向きな所がよかったです。
    ルシオラの復活には前途多難ですが可能性は残ってますから、頑張れよ横島。

    『今週の文殊はまだか〜!!』って闇金かい・・・美神。(汗)
    それに技術レベルが同程度で値段が安いとなればそっちに流れるには自然なことだろうに、魔鈴の時に経験済みだろうに・・・。
    理解してなかったんかいアンタは。
    sirius(2004.12.05 11:03)】

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