横島は語る。
自分が過去に戻ると決めた、その理由を・・・。
「俺が過去に戻る決心をしたのは、このまま崩壊が進んでいけば誰も助からない。
だけど、俺にならそれが止める事が出来るかもしれないって聞いたからなんです。
一年前はまだ、ルシオラの事も吹っ切れていなかったし、
俺の大切な人は皆助けたいっていう気持ちだけが先走ってた時ですよね?
そんな時に、そこの二人が俺の前に現れたて、
その時に全ての世界が崩壊を始めているって聞かされたんです。
行き成りそんな事を言われた俺は、二人にどうすれば皆を助ける事が出来るか聞いたんですよ。
そしたら、今の状況だと止める事は不可能だって言われたんでけど、
俺が過去の世界からやり直して、聖魔神が狂った理由を突き止めて崩壊を止める事が出来れば、
全ての世界が辿る筈だった未来へ修正されるって言われたんです。
そう言われた俺は、過去に戻って原因を突き止める決心をしたんです」
一気に理由を説明した横島の瞳からは、先程まで止まっていた涙が再び流れていた。
その涙が意味する物とは何なんだろうか?
その意味に気付いた訳では無いが、疑問を感じたのか美知恵が横島い質問した。
「ねえ、横島君?横島君は自分が過去に戻ってその崩壊の原因を突き止めれば、
全ての世界が元通りに戻るって今言ったわよね?」
美知恵の質問に、横島は頷き返した。
「それで、これが聞きたかったんだけど。他の世界の横島君はそのままよね?
じゃあ、今ここにいるあなたはどうなるの?解決出来た時に、ここに戻ってくるのかしら?」
この美知恵の質問に、横島は首を横に振って答えた。
それを今まで黙って見ていた者達は横島に食って掛かろうとしたが、
キーやんとサッちゃんが続きを話す事で押し留めた。
【その事については、私達が説明します】
【えっとやな?ヨコッちが過去に飛んだと同時に、
この世界から『横島忠夫』って言う存在が抹消されるんや。
でな?それと同時に、この世界の生きとし生きる物達から
『横島忠夫』に関する記憶が消える事になってるんや】
サッちゃんの話が一旦止まった時に、声を荒げて爆発した者がいた。
その者とは美神 令子。
「ふざけんじゃないわよ!?
何で横島クンの記憶を消されないといけないのよ!私がどれだけ待ったと思ってるの!
千年よ千年!?やっと自分の気持ちに素直になった矢先に横島クンがいなくなって、
更に記憶も消される?そんなの・・・そんなの、嫌よ!?」
そう言った美神は両手で顔を覆ってしまうが、指の間から光る滴が伝って落ちて行った。
それを見た横島が美神の所に行こうとしたが、キーやんに肩を掴まれ止められてしまう。
【あ~、泣かんで欲しいんやけどなぁ~。・・・この話にはまだ続きがあるんや】
【確かに貴方達の記憶は消えてしまいますが、人に対する想いという物は消える事はないんですよ。
そこで私達は、その想いだけを横島君と共に過去に送る事にしました】
キーやんのこの言葉に誰よりも驚いていたのは横島だった。
それもそうだろう。横島自身は自分一人で過去に戻る事に覚悟を決めていたのだから。
先程見せた涙。それは皆との決別を意味する涙だった。
「想いを・・・送る?」
【はい。さすがに横島君と同じ様には遅れないんですが、皆さんの想いだけでも、と思いまして。
・・・皆さんにご迷惑ばかりかける私達からのせめてもの償いです】
そう言ったキーやんの顔は、キーやんが発する光で見る事は出来ないが、
悲愴な顔をしているのは雰囲気で全員がわかった。
【・・・ヨコッち、悪いんやけどな?そろそろ、この世界を隠すのも限界なんや。
だからこそ、わいらが直接ここに来て結界を張ってるんやけどな。
もう少しならもたせられるから、別れの挨拶をしてくれや】
サッちゃんがそう言うと、その場にいる全員がこれで横島と話すのが、
最後になる事を分かっているのか、静かに涙を流す者、唇を噛み締め拳を強く握り涙を我慢する者、
笑顔で送ろうと必死に泣き笑いの顔を作ろうとする者等がいる。
それを見ながら、横島は別れの言葉を紡ぎ出した。
「皆ごめん。俺も出来る事なら皆と同じ時を歩みたかった。
でも、皆を助ける事が出来るのは俺しかいないみたいだからさ・・・」
横島はそう言うと、一人一人の前に立って話しだした。
「唐巣神父」
「なんだい、横島君」
「皆を宜しくお願いします」
「わかった、任せておきなさい。あと、一つだけ言わせて貰うね?
きっと君がこれから歩んでいく道は、誰もが歩んだ事が無いほど困難な道だろう。
だけど、君なら挫ける事なく歩み続けて行くと僕は思っているよ」
「・・・ありがとうございます」
「隊長」
「何かしら?」
「美神さんとひのめちゃん、おキヌちゃん達をこれからも支えてあげて下さい」
「ふ~、やれやれね。いい?これだけは言っておくわね?
令子やおキヌちゃん達を支えてきたのは私じゃないわ。横島君、君よ。
どれくらい過去に戻るか私にはわかりません。でも、その事をよく覚えておいてね?」
「・・・わかりました」
「パピリオ・・・」
「ヒクッヒクッ・・・ヨコチマ、本当に行っちゃうんでちゅね?」
「ごめんな、パピリオ・・・本当にごめん」
「ウワァ~~~ン!嫌でちゅよ~!もう寂しいのは嫌でちゅ!」
横島は、自分の胸に顔を押し当て泣き出したパピリオを優しく抱きしめた。
「大丈夫。お前は一人じゃない。小竜姫様もベスパもいる。寂しくなんてないんだ」
「ヒクッ・・・グスッ・・・・・・ス~・・ス~・・」
暫くの間、横島に抱きしめられて泣いていたパピリオは泣き疲れてしまい、
そのまま眠ってしまった為、美知恵に預けた。
「ピート」
「横島さん、どうかお元気で」
「ありがとう。お前も頑張れよ?人間と妖怪が共存する世界を目指すんだろ?」
「はい。この夢は横島さんと出会えたからこそ、実現できると思いましたから」
「そっか・・・俺もその夢を手伝いたかったけど、俺の分まで頑張ってくれ」
「はい!どれだけ時間が掛かろうと、絶対に実現させてみせます!」
「タイガー、雪乃丞」
「横島しゃ~~ん!わっしは!わっしは!」
「ちっ!結局、俺はお前に負けたままだったな。・・まぁ、それもいいな」
「俺からお前達に言う事は一つだけだ」
「何ですかノー?」
「何だよ?」
「絶対に魔理さんと弓さんを幸せにしろよ!?俺と同じ様に大切な人を亡くすな!
どんな事があっても守りきれ!今、俺と約束しろ!」
横島の言葉に二人は黙って頷く事で答える。
「もちろんジャー!任せんシャイ!」
「分かったよ、絶対に幸せにしてみせるぜ。お前に約束する」
二人の返事を聞いた横島は
「お前達がそう言ったんだから、守るだろうな。
じゃあ、俺もお前らに約束するな?
・・・絶対に崩壊を止めてみせる!
お前達が笑って過ごせる世界を守る為に!」
横島は雪乃丞達と別れを済ませると、自分に好意を寄せる女性達の所に歩み寄って行った。
九話に続く
あとがき
横島と皆との別れ・・・悲しい物ですね。
でも、横島は皆の新しいタイトル通り、皆の笑顔を守る為に過去に行くんですね。
人に優しすぎるというのも、問題があるんですね。
横島はその辺をしっかりと自覚してもらいたいものです。
あt、ご意見が多数あったのですが、こういう意味があってあの二人はこの場にきたんです。
前話だと、その事を説明していなかった私がいけないんですけどね。
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