シーン2 「垂直落下式パイルドライバー」
失敗する可能性のあるものは必ず失敗すると言うのはマーフィの法則だったろうか?
ポリバケツからパタパタ動く足が生えているというシュールな光景に遭遇した横島とシロはしばし硬直した。
ゴミ満載のゴミステーション中で、バタバタと元気よく動く二本の足が作り出す日常非日常の絶妙なブレンドは、普段GSという非日常の中で活躍する彼らの思考に対し、まったく別のベクトルからその精神に衝撃を与えたのだった。
しかし…
パタパタパタパタ…
パタパタ…パタ…
パタ…パタ……パ…タ…
足の勢いが徐々に弱まり、しまいに擬音に「ピク…ピク」が混じりだした時点でようやく横島は現世に復帰した。
「わ〜!シロ!!そっちの足持て〜!」
「り、了解でござる!」
あわてて飛びつくのんき者師弟。アイコンタクト終了。そのまま阿吽の呼吸でいまやほんのりとヤバめの痙攣を始めた足を引っこ抜く。
スポーーーーーン
景気のいい音ともにひっくり返る横島とシロ。
やったか!?とお互い目で相手に確認を取るが、見るまでもなくここには二人しかいなかったりする。
足の持ち主のかわりにシロの手にあるのはジャージのズボン。
第一次救出作戦失敗…。
見ればバケツからは乙女の白い生足が皮を剥いた長ネギのように生えている。
「くっ!」
条件反射で鼻血を防ごうと手で押さえるが流血の気配はない。
多少の違和感を感じつつも、目の前にある生足がますますネギのように青みがかるのを見て一気に飛びつく。
「まだだ。まだ終わらんよ!」とふざけたことを言いつつ、ほっそりした足首をつかみ渾身の力をこめて一気に引き上げる!!
ズボッ!
抜けた。そりゃあもう見事に抜けた。ミッションコンプリート!
少女を引っこ抜いたそのままの体勢でシロを振り返る横島。
困難な人命救助をやり遂げた男の笑顔がなかなか凛々しかったりする。
そんな師匠の笑顔に一瞬「ポッ」とするも全体図を見れば下半身パンツ一丁の少女を逆さ開脚で高々と吊るしながら「いい笑顔」を見せるという構図に引いてしまうシロ。
その様子をみて横島も我に返る。
振り向き見れば自分の顔面やや下方に乙女のヒップを包む魅惑の布切れがあったわけで…。
日ごろの行い故か「下着を見る=折檻」と条件づけらるているせいか「のわっ!!」と奇声を発して目を覆う横島。たとえそれが色気とは千光年ほどもかけ離れたピグモンのバックプリントであれ下着は下着。なかなか彼にしては紳士的な行動といえよう。
惜しむらくは手を放すのがもうちょっと後なら良かったということだろうか。
ゴンッ!!!!
少女の朝の災難は自由落下運動によって一応の決着を見た…。
シーン3 「連発式ヘッドパッド」
「分析家は何をしてもいいが夢を理解しようとしてはいけない」と言ったのはユングだったろうか?
キライ・・・・
ナニガ?・・・
アナタガ・・・・
ワタシガ?
ソウ…ワタシガキライ…ミンナキライ…デモ…アナタハワタシジャナイ…
おい…
おい…
「おいっ!傷は浅いぞしっかりしろっ!!」
カバッ! ゴチッ! 「へぁっ!」
あ、わかる…最後のは私の声だ…おでこが凄く痛い…
…って…リトライ!
ガバッ!ゴチッ! 「ぬおおっ…!」
こ、今度の声は私じゃないぞ…。それにしても痛い…。ってことは生きているのね私…
とりあえず落ち着け私っ!そ、そうよ。目を閉じたまま起き上がろうとするから駄目なのよ…。
ということで目を開ける。ぼんやりとした視界が晴れるにしたがって私の顔を覗き込んでいる少年の顔が見えるようになる。
あれ?どっかで見た気がするな。頭に赤いバンダナを巻いて心配そうな優しそうな目で私を見てくれている…。ちょっとその目に罪悪感の色があるような気がするがまあ気にしないでおこう。
とりあえず体を起こしてみる。あ、動いた。重大な怪我はないみたい。
えーと。痛いのは…前頭部。これは今の頭突きのせいかな?。
後は頭頂部か…。ってことは自転車から飛ばされた後で脳天から落ちたのかな?
よく生きていたな…私。目の前の少年が助けてくれたのかしら?
「大丈夫か?頭痛くないか?」
少年が問いかけてくる。心配してくれているのかな?ちょっと嬉しい。でも…その冷や汗は何?
少女が覚醒したのを見て安堵の息を漏らす横島とシロ。
横島にしてみれば自分が止めを刺したのではないか、との思いもあり気が気ではなかったのだが…。
横島にはそれ以外にも罪悪感を感じる理由があった。
少女が気絶している間に怪我が無かったかどうかを調べようとしたのだが、相手は見た目で言えば年下か同い年の少女。しかも美少女と言ってよい。
肩で切りそろえられた栗色の髪は清楚な美しさをかもし出しているし(ちょっとタマネギの皮でデコレートされているが…)、整った目鼻立ちといい、薄桃色の唇といい、少女らしい清潔感がある。(あちこちにまとわりついている魚の骨とかを見ないことにすればだが…)
まあそんな感じの少女をいかに怪獣パンツ愛用者とはいえ、胸部が関東平野並みとはいえ、男の横島が怪我を確認するわけにもいかず、同性であるシロに任せようとししたが…。犬(狼でござるっ!)の天敵、腐ったタマネギ臭の前にあえなく挫折。
仕方なしに横島が「陰」の文珠で周囲の好奇の視線を隔絶した後、彼女のジャージを履かせ怪我を診たのだった。幸い頭頂部のたんこぶ以外には大な外傷もなく気絶している彼女を起こそうと呼びかけていて不意打ちの頭突きを連発でくらった次第である。
シロは己の良すぎる鼻を厭わしく思いつつ、美少女の下着姿に煩悩を炸裂させない横島を不思議に思った。が、まあ「先生の守備範囲外なんでござろう」と深くは考えなかった。年齢的に言えば自爆ものの考えだが一応、少女と比較すれば浅間山並みであろう己の胸部に優越感を感じたというのも一因であったりする。
「大丈夫か?頭痛くないか?」
自由落下式のパイルドライバーをかました横島が冷や汗を隠しつつ少女に聞く。
文珠で治療しようとしたが不用意に使うことは美神に禁止されている。
見える傷を癒した後で見えない疾患が発覚したときのことも考えれば、まずは意識の確認と覗き込んだのが命取り。渾身の頭突きによりお互いに打撲を負うということになった。
「うん…大丈夫。ちょっと頭のてっぺんが痛いけど・・・って…ああーっ!!」
そう言いながら頭の天辺にできた見事なこぶをなでていた少女がいきなり叫ぶ。
「な、何?」
もしやパンツ(あれは間違ってもショーツとか呼べるものじゃない 横島談)を見てしまったことに気づかれたか?と思わずあせる横島。故意ではないとは言え少女を生ゴミへ叩き込んだのが自分であるという事実はすでに忘却のかなただ。
その横島の問いにじっと時計を見つめていた少女は横島を見上げると
「遅刻しちゃうよう…」と涙目で答えた。
後書き
どうも。犬雀です。連投になってしまって申し訳ないです。
投稿の分量がどうにもつかめなくて、今回はシーン2、3の同時投稿となってしまいました。少しずつ慣れていくよう努力しますのでお許しください。
>シロガネ様
確かに普通の人なら死ぬかも。たまたま落ちた先が野菜くずのたんまり詰まったゴミバケツということでご容赦ください。
>九尾様
過分なるお褒めの言葉ありがとうございます。今後も精進いたします。
>MAGIふぁ様
笑っていただけて幸いです。
彼女はオリキャラですが彼女の正体は次回で明らかになると思います。
タイトルどおりメインは除霊委員たちのつもりですが…なかなか横島が学校にいけません。(苦笑)