「本日未明、東京旧市街地区にて○○ ○○さん42歳の惨殺遺体が発見されました。○○さんは○○除霊事務所の経営者と同時にまた、○○さん自身も優秀なGSであり、今回旧市街地区に向かった理由は悪霊が住み着く、いわゆるワケアリ物件から悪霊を除去する仕事の為と事務所の社員は証言しております。また彼の遺体の傷口からは大量の霊波の残照が残っておりその霊波の固有パターンから現在ICPO超常犯罪課から指名手配を受けている横島忠夫が今回の犯人と当局は断定しており、東京旧市街地区には立ち入り禁止の規制が布かれております。また、今回の事件に対してICPO超常犯罪課極東本部長オカザキ氏はこうコメントを残しております。」
「今回の事件によって、また優秀なゴーストスイーパーを亡くしました。この事件の犯人である横島は大変許しがたい行為を行っております。また彼は200年前の忌まわしい『アシュタロス戦役』では悪の魔神陣営に取り入り、人類を裏切ったばかりか、汚らわしい魔神の配下の下等魔族の霊基構造を奪取してまさしく化け物と成り下がった存在であり、当局は横島の早急なる捕縛、もしくは破壊を考えておりオカルトGメンばかりでなく、民間GSに対しても当局からその作戦に対しての協力体制を呼びかけております。」
「以上がオカザキ氏のコメントであり、早急な事件解決を我々は望んでおります。では次のニュースです、・・・・・・・・・。」
GSB横島修羅黙示録!!レポート1
横島がそこを通ったのはただの偶然であった。一週間に一度行うかどうかの゛行為″、それをするためにその路地裏の近くを通ったのだ。この近くには大昔に彼が毎日出社していた事務所がある。否あったのだ。昔の事をふと思い出しながらボーっと突っ立っていると、彼の耳に飛び込んでくる女性の甲高い悲鳴。それを聞いた横島はその声が聞こえた場所に足早く向かうと男が少女に向かって霊体を束縛する結界を張っているのが分かる。そして男が少女に対して何かを喋っているのが聞こえたのだ・・・彼にとってのタブーが。
「薄汚い妖怪」
この時点でこの台詞の続きなど聞いた覚えなどない。聞く気になれない。
横島は目の前の男を排除すると改めてその少女をバイザー越しに目を移すと霊体の何箇所かがかなりの損傷を負っているのが分かった。
(酷いな・・)
横島は内心顔をしかめると、右手に中国の陰陽を模したような模様のついたビー球大の玉・・・文殊を取り出し、そこに[回復]と書き込む。そしてその文殊を少女に近づけようとすると彼女は怖がって、身を小さくして目をつぶる。
(目の前で行き成り人を切り倒した所を見たんだから仕方ないよな・・・)
と心のうちで自嘲すると、その少女を安心させようと頭を撫でながら治療する。すると少女はこちらを見上げてきたので自分は何も危害は加えないことを伝える為に微笑んでみせた。それはここ数年、嘲笑と自嘲の為以外に自然と出来た表情ではあるが、そのことを彼は自分では気づかなかった。
「君の名前は・・・?」
自分の名前を彼女に明かして数秒経ってから、自分から彼女に聞いてみる。
彼女は自分の名前を聞いてから何か悩んでいるようだ。無理も無い。自分の名前はTVでは幾度となく流れており、自分の顔はそこら辺で指名手配の顔写真として見ることができる。彼女は精霊ではあるが(最初見たときに気づいたが)そういった情報を手に入れることができるのかな、と心の中で頭を捻っていた。
フルフル
少女は横島の質問に対して、顔を横に振るだけであった。
「名前を・・・知らないのか?」
コクコク
彼女は横島の言葉に対して頷いてみせる。
「最近、昇華したばかりの精霊なのかな・・・そのわりには結構力を持っているように見えるんだけどなぁ。」
精霊とは自然界と共に原初からあるモノとは他に、長年使い付けた物や長年心の清らかな者が死んだときにそこから昇華してなるモノとがある。
長年、物を使い続けたものは九十九神となると言われているが、それは持ち主である人間が大なり小なり霊力を備えており、それが物に宿ることがあり魂をもつのである。それが九十九神というものである。精霊とは単にその霊力がプラスの方向であると精霊になり、マイナスであると九十九神になるのである。(ここでいうプラス、マイナスは決して正邪の関係とは同一では無い)そして、精霊や九十九神となったモノは年月を要して魂を成長させ、霊力を増やしていくのである。その過程でそれは自己に興味をもち、自身で自分を名称付けていくのである。なので彼女はまだ自己に対して興味を持たない状態なのでまだ昇華したばかりだと思ったのだが・・・
(本当に昇華したばかりなのか・・・?もうすでに中級の精霊くらいの力は持ってるように見えるぞ・・・)
彼女のちぐはぐな存在を少し興味を持ったのか横島は彼女に何処で生まれたのか聞いてみることにした。また、また彼女がGSに捕捉されないように自分もついていこうと思ったからだ。まだあの゛行為”を行う時間はまだ来ない。
「君がずっと居たお家は何処か教えてくれないかな?」
少女は後ろを向き、少し歩いたところで振り返る。その目はついて来いと言っている様であった。横島は彼女を後を追った。少女は黙々と歩いていく。
ふと何か見覚えのある建物が見えた
(ま、まさか・・・)
横島の口元が限りなく引き攣る。少女はそういった横島の葛藤を全く気にせず、その建物の中に入っていった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
考えていても仕方が無い。横島はその建物に入っていった。その建物を囲う柵のプレートには『この建物はピエトロ・ド・ブラドーの地所であり何者の侵入を禁ず』と書かれている・・・横島はそれを極力見ないように中に入っていった。
中は凄い埃だらけであり、置いたままになっている机や椅子には埃が溜まっており人が生活している跡は全く見られない。しかし床には一対の足跡が残っていた。その足跡をよく見ると大の男くらいのサイズだと分かり、先ほど排除したあの男がここに立ち入ったものだと判断した。
何故、ピートが買い取った土地にわざわざ入ったのかと考えたがすぐに答えが分かる。・・・ここは伝説の最強GS美神令子の元事務所なのだ。何か霊的アイテムがないかと荒らしていこうとしたに違いない。そしてあの少女を見つけたのだろう・・・。
トントントントン
体に染み込むように覚えている・・・この階段の上ればいつも自分達・・・今はもういないメンバーと寛いでいた居間が現れる。そしてそこの横の扉を開ければそこには・・・
「・・・・・・・・・・・・・」
横島には少女が誰なのか心当たりがあった。長年ここに゛存在″していたモノ・・・昇華したばかりなのに既に中級の精霊の力を持つ少女・・・それは
ガチャ
『遅いわよ、横島君!!』
何処からか 幻聴が聞こえてきた気がする
そこはその建物にとっての玉座であり、所有者を得た時はそこは彼女・・・美神の執務室であった。
そこに佇んでいる少女は何百年と所有者をなくしてもそこにある存在
それは何処か親をなくして泣きながら親を探す子供の様にも横島に見えた。
横島は少女に一瞬
『人口幽霊壱号か!?』
と問いたくなったがそれは今はもう意味の無いこと。人工的に生み出されたその存在は生前に成長を重ねた霊魂ではないし、無機物として作り出される過程で魂を込められ、齢を重ねた物でもない中途半端な存在。それが精霊になる前の人工的な魂魄の時の記憶など泡沫の夢に等しい。それが横島には分かっているからこそ、今更記憶の無い時のことを少女に問いかけても逆に困惑し、その存在を揺らがせるだけである。ここまで冷静に考えた彼だが、次の考えに至った時横島は自身に対して怒りを感じる。
(何故自分はこの少女がこんな表情をするまでこの事務所に立ち寄らなかったのか)と・・・。
(何だ。俺はただここに来ると昔の事を思い出して悲しい思いをしたくないだけだからここにこなかったのか?俺は何時から自分を悲劇の主人公と陶酔したのか?俺はただ過去を引きずっていただけじゃないか!!)
自分の間抜けさ加減に心底怒りを通り越して憎くさえ思ってしまう。悪いのは誰でも無いのだが、横島は自分の元よりある半身を憎んでいるのですぐに自己嫌悪に走る。いかしその自己嫌悪でさえ全て悪いのは自分である。というある種の開き直りがあるのを自分では気づかない。それさえも陶酔であると彼に教え、正せるのは昔、本当に昔から彼の弱さを知っている存在でしかないのだ。
そして少女はそんな彼をずっと眺めていた・・・それは何処か懐かしい想いにとらわれており、それは何処か心地よい昔を思い出させるような行為であった。
彼は少女のそういった視線に気づく。それは何処か母親が子供を見る目を同じような・・・慈しむような目で見られていた。彼はその瞳によって何かが救われる想いを感じる。
ふと 気づくと部屋は西から入る太陽によって赤く染まっていた
「あ、今からある所に寄っていくんだけど君も来る?」
コク
横島は彼女が承諾の意思を見せると、少女の手を取り反対の手で文殊を出し、[転移]と文字を書き込み発動させる。
東京旧市街地区中央部・東京タワー
昔はここ東京の名物となっていた東京タワー。しかし今は、誰も近寄らなくなった旧市外地区の中央に位置する為、誰も寄らなくなった鉄塔・・・。そこの頂上付近の展望タワーの屋根の上に二人の人影が現れる。
横島と少女の姿であった。横島はそっと銀色のバイザーに手を触れる。『彼女』が亡くなってから数年は毎日欠かさずここにきて、『彼女』を想い祈る為に来ていたのだが、ある時を境に余り立ち寄らなくなっていた。
「・・・・・」
「・・・」
二人は何も言わずじっと沈んでいく夕日を眺めている・・・。
「・・・俺と一緒に来ないか?」
横島忠夫は自然と彼女を誘う・・・。
それは少女をあの寒々しい部屋の中に一人残して放って置いてはいけないというある種の強迫観念に近い物に囚われたからでもあったが、ここ数十年で無くしたと思っていたあの暖かい空気・・・それは復讐を誓う彼にとって決して近づいてはいけないものであったが、彼が歩んできた幾星霜もの時の間に渇ききった彼の心は自己を自制する事は出来なかった。
・・・コク
だったら、何か名前がないと不便だよな
コクコク
そうだなぁ・・・俺の娘として通したいから・・・蛍でいいかな?
コク
よろしくな、蛍
ニコ
あとがき
少女の正体について、ここで書いてみましたがなんか、かなり文体がまずくなったかなぁ。批評感想お願いします。