ヨコシマ、霊力を上げて! このままだと私に吸収されてしまうわ!!」
肩パッドにいるヨコシマに向かい叫ぶルシオラ。
『悪い…。お前が復活できたと思って気緩めちまった・・・』
横島の意識は今にも失われかねない状況だ。
「畜生!こっちもこれ以上余裕がねぇ!!」
一同を代表するかのように汗を額に浮かばせ雪之丞が叫ぶ。
元々万全でなかった霊力も限界に近づきつつあった。
「ダメ、ヨコシマ! あんな思い二度としたくない!!
だから、だから諦めないで!!!」
横島に呼びかけるも反応はだんだんと鈍くなっていく。
もうひとつのGS美神IF
〜ルシオラ復活 漢たちの友情〜
真なる後編(シリアスバージョン)
―――――――――――――横島視点―――――――――――――
ルシオラの気配を感じたとたん、思わず集中が途切れてしまった。
慌てて再度集中するが、どんどん力が抜け、体が溶けていくような感じがする。
南極で美神と合体したとき以上のスピードでそれが行われていくのがわかる。
思わず諦めかけたその時、声が聞こえた。
「ダメ、ヨコシマ! あんな思い二度としたくない!!
だから、だから諦めないで!!!」
ルシオラのその叫びに横島は頭を殴られたような衝撃を受けた。
自分は何をやっているんだ!
大切なものを失う悲しさをルシオラにさせるのか。
そんな為に自分は行動を起こしたわけじゃない!
仲間に声をかけたわけじゃない!
諦めるものか!
諦めてたまるかっ!!
横島は改めて精神を集中し始める。
不思議と今まで以上に自然に集中できた。
『本当に必要なとき、おまえは力を発揮するんだから・・・!』
いつぞや聞いたルシオラの声を思い出す。
そうだよなルシオラ!!
そして横島はベスパの結界を自力で解いたときの力を発揮し始める!
『うぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!』
その声と共に肩パッドの横島の姿が鮮明になっていく。
「!? そうよ横島。後もうちょっとだから頑張って!!」
ルシオラの顔がブレ始め、横島の顔に変わりかける。
―――――――――――――雪之丞視点――――――――――――
ダメなのか。
もう自分の大切な人がいなくなるのはみたくない。
その為に今までさまざまな修行をしてきた。
それなのに!
もう限界だ、そう心の中にいるもう一人の自分が諦めかけた時、突然
『うぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!』
と横島の声が聞こえた。
アイツはまだ諦めてない!!
それなのに自分は!
これじゃアイツのライバルなんていえねえじゃねえかっ!
若干自嘲気味に笑う。
そして自分に喝を入れ、再び精神統一をする。
アイツが限界を超えたなら俺も超えてやる!!
そしてそれを開放する!
――――――――――――西条視点――――――――――――――
ふざけるな!
ふざけるな!
ふざけるな!
こんな結末を見る為に横島クンに協力したわけじゃない!
オカルトGメンにいるわけじゃない!!
横島クンの、あんな沈んだ顔なんて見たくない!
彼はボクに悪態をついているくらいでちょうど良い。
悲劇は小説の中で十分だ!
そう西条が諦めかける自分、悪化する状況に抗っていると横島の霊力が元に、いやそれ以上になっていった。
ハハハッ、流石は横島クンだ!
じゃあボクもやってやろうじゃないか!
そして西条は自分の限界へと挑戦する。
―――――――――――ピート視点――――――――――――――
横島さんは久しぶりに出来た友人、親友と呼べる存在だった。
そして700年生きてきた自分が驚くようなことを色々やってくれた。
そんな彼と一緒にいる時間は楽しかった。
そんな彼に恩返しが出来る機会なのに自分の力はここまでなのか!
自己嫌悪に陥りそうになっている最中、急激に横島の霊力が上がり始めた。
それを見て彼は思う。
『横島の友人』
それを名乗るは今の自分に資格はない。
それを名乗るなら今までの自分ではダメだ。
それを名乗る資格は諦めず彼を助ける事!
そうして彼は今までの自分の殻を破り始める。
――――――――――――タイガー視点――――――――――――
横島の霊力がだんだんと弱くなる。
自分の霊力も限界が近い。
横島は自分が日本に来て始めてできた友人で、彼を通して出来た縁で恋人も出来た。
そんな恩人である彼のピンチに自分はもう何も出来ないのか?
自分のふがいなさに嫌気がさす。
タイガーがくじけそうになるその瞬間、横島の、そして他の者達の霊力が上がり始めた。
まだ終わりじゃない!
皆諦めていない!
だったら自分も諦めない!
タイガーはこの時初めてエミの笛なしに自分の力を百%コントロールすることに成功する。
――――――――――――唐巣視点―――――――――――――――
目の前の光景を見ていると自分の信仰が揺らいでくるのを感じる。
己のすべてをかけ人類を守った彼に対し、何と自分は、自分の信仰は無力なのか!
そんな葛藤の最中、彼の目の前で奇跡が起こる。
横島の、雪之丞の、西条の、ピートの、そしてタイガーの霊力が以前以上に上がり始める。
いやまだだ、まだ奇跡は起こっていない!
彼を、そして彼女を助けてこそ奇跡!!
そして彼は祈る。
自ら信じる神に。
彼は頼む。
自分の周りにあるこの世界を構成するものに。
そして彼は感じる。
主の心を、存在を。精霊の力を。
後は今まで以上に感じるそれらを後は横島に託すのみ!
そして今まで以上の力が皆からに横島に注がれる。
横島は感じる。
友の、仲間の心を。
力を、想いを。
そして脳裏に思い描く。
この場にはいない友人達、仲間たちの姿を。
自分は一人じゃない!
こんなにも、自分にはもったいない位の多くの人に支えられている。
「そうよヨコシマ。あと少しだから頑張って!」
ああ、そうだなルシオラ!!
そしてオーバーフローが起こりキャラクターが再度横島になる。
―――――――――――――カオス視点―――――――――――――
冷静になれ!
冷静になれ!
胸中で呪文のようにそう呟きながらカオスは打開策を考える。
諦めそうになる自分を叱咤し、次の策を考える。
考えろ!
考えろ!
自分はヨーロッパの魔王、ドクターカオスなのだから!!
そして彼の目の前で信じられない光景が展開する。
限界と思われた横島達がこれまで以上の霊力を発揮し始めた。
これだから人生は面白い!
さまざまな場面を想定していたこの光景は予想外だった。
これなら成功するだろう。
いや間違いなく成功する!
後は自分が合図すれば事は成就する!!
さあ、すべての準備は整った。
残るはハッピーエンドの幕を開けるだけ!
「今じゃ、小僧!!」
「了解!」
カオスの指示に横島は従い、合体を解く。
あたりはまばゆいばかりの光に包まれる。
やがてそれが晴れるとそこには幼き子のように横島の胸を叩くのルシオラと横島がいた。
「バカ、バカ、バカ、バカ、ヨコシマのバカ! 私が復活できてもおまえが犠牲になってどうするのよ!!
怖かったんだから! 本当に怖かったんだから!!」
子供のように泣きながら横島を叩くルシオラ。
横島はただ
「ゴメン」
と呟き、ルシオラが泣き止むまで背中をなでるしか出来なかった。
そんな二人の様子を見守る男が六人。
誰かが言ったわけでもないが、示し合わせた様にこの場を去っていく。
ある者は己が愛する者に電話をかけ、ある者は仕事へと戻り、ある者は己の家へと帰っていった。
六人に共通するものは満ちたりた顔。
限界以上の力を出せた達成感。
そして一組の男女の今後の幸せを祈る気持ち。
あとがき
いかがだったでしょうか?
人様の熱い、カッコイイSSを読むたび
「ああ、自分には到底書けないな」
と思っていましたが、今回無謀にも書いてみました。
前編でも書きましたが、色々無理ある設定ですがその辺はご勘弁いただきたいです。