犬の始末を決めかねていたときに現れたのは、横島の許嫁、水野 アリスだった。
「なんでアリスがここに?」
「私は用事があって・・・忠夫さんこそなんで?」
「俺は除霊の仕事できてたんだけど・・・」
「・・・・・・・・♯」
自分を無視して話をする横島に怒りがこみ上げる美神。
「横島クン・・・紹介してくれないかしら♯(この子が横島クンの許嫁ね・・・)」
美神は普通に言ったつもりだが横島はびびっている。
「は、はい!え〜と、こいつは昨日転校してきた・・・(怒っとる・・なんかしたか俺?)」
「忠夫さんの許嫁の、水野 アリスです」
ビシッ!!
許嫁の部分を強調して挨拶するアリス。美神のこめかみがピクつく。
この場の空気がいっきに下がったきがするのだが、なぜか汗がダラダラ出ている横島。
「私は横島クンの上司の美神 令子よ♯(なに、いちいち強調してんのよこの小娘は!?)」
こちらはこちらで上司の部分を強調。意味はない。
(なんでこんなに空気悪いんや!?この2人初対面だろ?)
横島は横島で自分のせいだとはまったく気付いてない様子。
「で、横島クンのお友達のあなたがなんでこんなところにいるの?(何しにきたのよ小娘!?)」
あくまでも許嫁のことを認めたくないのか、美神はお友達の部分を強調する。が、
「あ、そうでした!!・・・忠夫さん?」
美神の強調を思いっきりムシして横島に話しかけるアリス。美神の怒りがアップした。
「あの・・・この子逃がしてくれませんか?」
アリスはいまだ眠っている犬のほうに目をむける。
「え?そんなことしたら、また村の畑があらされるんじゃ・・・」
「そうよ!!それにこんな危ない犬逃がしたら、また誰か襲われちゃうじゃない!!」
アリスの犬を逃がしてほしいという願いに反対する2人。美神は怒りのせいか、声がでかい。
「あの〜この子は村の畑を荒らした犯人じゃないんですよ?」
「「へ?」」
「・・・・犬がキャベツを食べると思います?」
「「あ・・・」」
言われてみれば、そういやそうだと思う2人。
村人達も化け物に荒らされたと言っていた。
それに村人達の目撃は夜。こんな真っ黒じゃ見落とすだろうし、見えたとしても普通の犬にやられたと思い、自分たちでなんとかしようとするだろう。
「で、でも!この犬危ないわよ!!現に私達、襲われたんだから!!」
なおも、反対する美神。横島は、
「そりゃ襲われたけど・・・・」
アリスの意見と美神の意見で悩んでる。
「そのことなんですけど、この子は好きで襲ってたわけじゃないんですよ・・・」
アリスが眠っている犬の頭を優しくなでる。犬を見つめる目もとても優しい目をしていて、犬がもうチョイ可愛けりゃ、1枚の絵になっただろうな〜なんて横島は思っていた。
ウガ?
撫でられてる感触のせいか犬が起きた。
美神と横島は離れて構えるが、アリスはそのまま優しく犬の頭を撫でていた。
「ちょ、アリス!!あぶないん「大丈夫ですよ忠夫さん」」
犬は撫でられてるのが気持ちいいのか、しまいには服従のポーズまでとりだした。
「・・・忠夫さんも撫でてやってください。」
「あ、ああ」
横島が近づくと犬が飛び上がり横島を威嚇する。
グルルルルルル!!
横島はビクッと反応するがアリスが犬の頭をなでて、
「大丈夫よ・・・この人達は彼女を傷つける人じゃないわ・・・」
と言うと犬はおとなしくなりまたすぐに服従のポーズをとりだした。
こんどは、横島が近づいても大丈夫だ。
「この子の頭がいいのには、気付きましたか?」
アリスが犬を撫でながら聞いてきた。
「え、ええ〜。たしかに頭は普通の犬よりいいわねこの犬。」
私には劣るけど、と美神が言う。
(犬と張り合ってどうするんですか美神さん・・・・)
横島は苦笑いするが犬のほうを見てるので美神は気付かない。
「自然の動物は勝てない相手は襲わないんですよ。この子は自然の動物より頭がいいから、人間を襲ったりしたら自分が危険な目にあうことは分かっています」
「じゃあ、なんでこいつは俺達を・・・」
横島がそう言うと、犬が立ち上がって、横島のズボンを銜えて引っ張る。
「え?ちょ、ちょっと待った!!そんなに引っ張ったらズボンが脱げるーーーー!!」
さすが突然変異の妖怪。横島の言ってることを理解したか、
グイ!グイ!!グイ!!!
なおのこと強く引っ張った・・・。
「い、いやーーー!!犬に脱がされるーーー!!」
「あらあら、この子忠夫さんのことを気に入ったみたいですわね♪」
ズボ!!
脱げちゃった・・・
犬は横島のズボンを銜えて獣道へとはいって行く。
「ついて来いって言ってるみたいね・・・」
「ええ、多分襲った理由を説明したいんですよ。」
美神とアリスは犬のほうに集中してるがチラチラと横島を見ている。ほのかに顔が赤い。
「ううう、犬に無理やり脱がされた・・・・」
横島は下半身パンツの姿で、地面に突っ伏して泣いている・・・。
「横島クン!!行くわよ!///」
「行きましょう!!忠夫さん!!///」
横島に呼びかけるも見ようとはしない2人。
横島は仕方なく、このまま犬を追いかけることにした・・・。
そして犬を追いかける事数分・・・。
アリスが登場した時にいた場所にたどり着いた。
大きな蛹。そして、その前で犬がおすわりをしている。
美神は蛹の大きさに驚き、アリスはその隣に立っている。横島は落ちていたズボンを見つけると急いで穿いた。
「これは・・・蛹?」
「たぶんモンシロチョウの蛹だと思うんすけど・・デカイっスねー!」
ズボンをはいた横島が美神の隣に立ちながら言う。
目の前にある蛹は、大人1人入るんじゃないのかという大きさ。
普通の蛹に比べればはるかにでかい。
「この蛹はついこないだまで、幼虫だったんです。」
「あ、ああ〜なるほど〜!!」
アリスの言葉に虫に詳しい横島は気付いたようだ。
「どうゆうこと?」
「モンシロチョウの幼虫はキャベツを食べるんっスよ。でも、こんだけでかいと多分幼虫もデカイっすよね?」
「ま、まあこんだけデカイなら・・・」
美神は虫には別に詳しくないため横島の言葉にもハッキリと返せなかった。
「だから村のキャベツを食べる量がハンパじゃなくて、村の人も前みたいに荒らされたと思ったんですよ。でっかい幼虫なんて化け物にしか見えませんし。」
横島の説明に納得する美神。だが、
「じゃあ、なんでこの犬は私達を襲ったのよ?」
と、犬のほうに指をさした。
「それはたぶん・・「この蛹を守ろうとしてただけなんです」・・・アリス?」
横島が言う前にアリスがはいってきた。
「この子は蛹を守ろうとしてるんです。忠夫さん達は、畑を荒らした化け物を退治しにきたんですよね?だからこの子は蛹を守ろうとして・・・」
アリスは犬を撫でながら説明する。
この犬の知能は高い。現に人間をただ襲うだけなら村まで行くだろう。
だがこの犬は、山から下りていないし、蛹を狙ってないアリスには襲いかかってない。
蛹狙いだったから横島達を襲ったのだ。
「・・・・どうします?美神さん?」
「まあ、これから先、人間を襲わないって言うなら別に犬はほっといてもいいんだけど・・・」
とりあえず、犬のほうは知能があるし、人間を襲わないならほっといてもいい。
「でもこの蛹どうすんのよ?」
「あ、彼女なら大丈夫です」
美神の質問にアリスが答える。
「彼女ってどーいう意味よ?それに大丈夫って・・・」
「私が結界をはります。外から人が入って来れないように・・・。彼女っていうのはこの蛹はメスのモンシロチョウの蛹なんですよ・・」
アリスはポケットから数枚のお札を出した。これで結界をはるらしい。
アリスは蛹を中心に木にお札を貼り始める。横島もそれを手伝ったが、そのせいで美神の機嫌か悪くなっていく。
お札を貼り終えたアリスは呪文を唱えて結界をはった。これで蛹にはだれも近づかない。
3人は山を降りた。なぜか犬も付いてきている。
「で、少し色々と聞きたいんだけど・・・」
「・・・・答えられる範囲でなら答えますが・・・。」
美神はアリスに対して色々と質問をする。
なぜ、結界が張れるのか?なぜあの場にいたのか?横島クンとの馴れ初め?は?などなど・・・。
それに対しアリスは、
「父がGSで私も目指します。だから簡単な結界ぐらいなら張れます。」
「私はあの蛹に呼ばれたんです。」
「それは・・・秘密です♪」
などなど・・・。
最初の質問は納得できる。だがあとの質問は納得できない。特に秘密ってところ・・・。
「呼ばれたって、あの蛹テレパーシーでもあったのか?」
横島も疑問に思ったのかアリスに尋ねる。
「いえ、それは・・・私の能力の一つなんですよ。会話をすることができない者の心を読むっていうか・・・動物や妖怪の言葉がきこえるんです。」
「テレパスみたいなものね・・・」
美神はアリスの言葉を聴いて、自分の父を思い出した。
「う〜ん。そうですね・・・。でも、美神さんや忠夫さんの心の声は聞こえないんですよ・・・。理由は分かりませんが、聞こえる対象が、コミニケーションを会話じゃできない生き物が対象なんです。しゃべれる妖怪の心の声も聞こえません・・・。あの蛹の心の声はとても大きくて、私まで聞こえてきました。私を守るためにこの子が危険な目にあう。だれかこの子を助けてあげてって・・・。」
アリスは自分の能力を説明した。
「それで、俺達が戦ってた場所に来たのか・・・(ええこやな〜)」
「ハイ。」
つまりアリスは蛹の声を聞き、犬を助けにきたのだ。わざわざ学校をサボってまで・・。
横島はそんなアリスの優しさに感動していた。
(うおーー!!こんな優しくて可愛い子が俺の許嫁!?生まれて初めて感謝するぞ!!親父!!お袋!!)
訂正、優しいアリスが自分の許嫁であることに感動していた。
その後村人に化け物は退治したと説明(蛹と犬ことは省く。もっとも蛹が孵ったらチョウになるため畑が荒らされることはない。村人は美神を呼び損)
犬は美神達が帰るまで付いてきたがその後、山に戻った。(たぶん見送りのつもりだったんだろう)結界が張られてるため蛹に危険がなくなり人を襲うことも無いだろう。
そして今は美神の車。「横島が送りましょうよ」と言い出して美神は渋ったが、結局送ることにした。(2人乗りのため横島はトランク)
「・・・ねえ?」
「はい?」
美神がアリスに話かけた。
「横島クンの許嫁なんでしょ?・・・いいの?」
「なにがですか?」
「なにって横島クンなんかの許嫁で・・・」
「・・・・・・私は忠夫さんと出会ってまだ2日しか経ってません。」
美神の質問にアリスがゆっくりと答えだす。
「・・・でも、忠夫さんは素敵な人だと思います。」
「素敵?あんなのガキでスケベなだけよ?」
「・・・でも、自分に正直で、どんなに傷ついても、どんな人にも優しくできる人。」
「なんで言いきれるの?(それぐらいわかってるわよ)」
「今日のワンちゃんが、忠夫さんが自分に止めを刺すの拒んでたって教えてくれたんです。自分は彼を襲ったのにって・・・」
「で、でも・・・」
「それにそんな忠夫さんだから美神さんも好きなんですよね?」
「な!?(そうよ)」
心の中はえらく素直な美神。もう自分の心には気付いている。だけど意地っ張りな彼女は言い出せない。
彼女の中では(丁稚で下僕に惚れるなんて・・・私のプライドが許さないわ。・・・でも・・・いつかきっと・・・)だったのだが『きっと』と思っているうちに許嫁登場。
美神は焦っている。不安なのだ。いきなり現れたアリスに横からとられるんじゃないかと・・・。
アリスは横島のよさにいきなり気付いている。小鳩のように・・・。
「私は・・・別に・・・(好きよ・・・)」
「そうなんですか?」
アリスの言葉に答える自分の言葉が・・・痛い。
「私のことは別にいいのよ!!あ、あんたはどう思ってるのよ!?」
「私は・・たぶん」
「たぶん?」
「好きです。・・・いえ、好きになると思います。まだ会ったばっかりですし・・。」
「・・・そう。」
美神の言葉と共に車内は静まり返る。
好きになると思う。
まだ会って2日。それでも彼に惹かれ始めているアリスにはそう答えるしかなく・・・美神は愛子同様(この子は横島クンを好きになるわ)と確信していた。
{あとがき}
は〜。頭が痛い・・・。義王です。
アリスについて
アリスには風になってほしかったんですよ。俺は・・・。警戒しあって&横島の鈍さのせいで関係が進まない横島をとりまく女性達。
そこに許嫁のアリスを入れて動きだす・・みたいな感じで・・。
なんかうまくいかなくて頭痛めてます。
アリスの横島に対してのおもいについて
まだ会って2日目ですから・・・。
美神&おキヌ達(横島がらみの女性陣)について
色々と動いてもらいます。
アリスの能力について
まあ、そのままです。グレムリンやマーロウの心の声は聞こえるが、シロやタマモ、美衣やケイの心の声は聞こえない。
文について
なんども申してますように漢字についてはもうご愛嬌ということで
これからについて
正月にむけて色々忙しくなりそうです。更新が遅れるかもしれませんが、がんばって書きたいと思います。
次はアリスが現れ、日常が少し変わってしまった横島です。
義王