結局2人で行く事になった妖怪退治。
まあ、もともと美神も横島と2人でいることは、むしろ歓迎なので機嫌がいい。
「美神さ〜ん待ってくださいよ〜」
今は山の中間あたり。とても急斜面な獣道。
横島はいつもの格好に重そうな荷物を背負ってる。
美神はいつものボディコンじゃなく、以前森の中で猫又の美衣達と戦った時の格好だ。
当然荷物という荷物は持っておらず、ナップサックを腰に巻いて、手には見鬼くんを持ってるだけだった。
「はやくきなさいよ。」
美神は横島を待たずにどんどん先に進む。
「ちょ、ちょと待ってくださいよ!そんなに離れたら襲われても援護できないじゃないっスか!?(もう目の前で失うのは嫌だぞ俺は。)」
横島が真剣な目で美神に言う。
「わ、わかったわよ。ほら待っててあげるから早くきなさい」
横島の思いが通じたのか、美神が珍しく横島の意見を聞きいれた。
少し顔が赤い。横島の真剣な顔にやられたようだ。
ただ待ってるだけじゃなんなんで、美神は近くの大きめの岩に登り、霊視もかねて辺りを見渡す。
ところどころに動物霊がいたり、浮遊霊がいたりするが害はなさそう。見鬼くんにもこれといった反応なし。
「目標はいないわ(ズル!!)ねって・・え?」
滑った。
山の岩は滑りやすい(作者体験談)
(やばい!!)
ここで位置説明。
まず獣道。その脇にある大きな岩。そこから落ちる美神。
横島の位置は荷物の重さを考えても普通の人じゃ間に合わない距離。
美神はこのまま落ちて横島のほうに転がり、横島を巻き込んで落ちてしまう図を予想して目を瞑った。だが、
ダン!!
(え!?)
急に落下が終わった。
終わったにもかかわらず、体のどこも痛くない。
美神が目を開けるとそこには、
「大丈夫ッスか!?美神さん!!(ふ〜間に合った〜)」
横島が心配そうに自分を見つめる顔。
「あ、ありがとう・・・」
美神は混乱してるのか素直に礼を言う。そして、自分の今の状況を把握した。
普通の人じゃ間に合わないところを、横島は普通じゃないスピードで移動したのだ。
そして美神をキャッチ!!
もちろんお姫様抱っこというやつだ。
状況に気付いたのか耳まで赤くなる美神。いつもならここで暴れだすのだが、
(別に悪い気分じゃないわね。・・・ありがとう横島クン)
と、えらく素直なことを思う美神。自然は人を素直にさせるのか?
「どうしたんスか?やっぱどっか痛いんすか!?(やべ!キャッチの仕方悪かったか?)」
顔が赤いのは、どっか痛いからだと思いっきり勘違いする横島。
「う、ううん。別に痛くないわ・・・ありがとう横島クン」
自分の腕の中で、もう一度お礼を言う美神は顔が赤くて、可愛いわけで・・・
そんな美神を見た横島は
「み、美神さんが素直にお礼を言うなんて・・・これは愛の告白と取っていいんすね!?美神さ〜〜〜ん!!」
「あほかーーーーーーー!!」
キスをせまった横島の顔に美神の容赦ないパンチがめり込む。
ムード台無し。
「痛い・・・・・・(ゾクッ!!)な!?」
そのとき横島は、後のほうから敵意のある霊気が迫ってくるのを感じた。
(やばい!!)
ここは獣道。戦闘には向かない。横島が走り出す。
「ちょ、どうしたの!?」
美神は気づいてないが、自分を抱えて走る横島の顔が真剣だったので何かあったと、きずく。
「う、後・・・」
「後?・・・あ!?」
美神がいままで通ってきた方を見ると、なにか自分たちのほうに向かってくるのが見えるが、
「え・・・?うそ?全然霊気を感じない?」
生き物は生きてる限りどんな生物でも霊気を出すが、追ってくる何かからは美神が眼を細めてよーく霊視しなけば見えないほどの、わずかな霊気しか出してなかった。どう見積もっても1〜2マイトぐらいにしか見えない。生まれたての普通の赤ん坊ぐらいだ。見鬼くんも全然反応していない。
「ちょっと横島クン!?あれめちゃめちゃ弱そうに見えるんだけど?」
美神は、逃げることないじゃない!!さっさとおろしなさいよ!!と言いたげだが、
「美神さん・・・気づいてないっすか!?」
「なにを!?」
「あれ、今は霊気を隠してますけど、多分もっと霊気ありますよ?」
横島の言ってることは正しい。普通、自然の生き物は獲物に近づく際に、気配を殺し、匂いでばれないように風下から獲物を狙う。昆虫にしても擬態をして獲物を待つ。自然の生き物には気配を殺すのは当たり前のことなのだ。今回の突然変異の妖怪も、元が動物だったため、気配を、すなわち霊気を隠すのはお手の物。というか本能的なものだ。
横島がそのことを説明してる間に、わりかし広いとこに出た。
といっても、団地の中にある小さな公園ぐらいしかなく、足場も草と石などで悪い。
しかも左は崖っぽく、右は岩壁。前は木が生い茂り、獣道すらない。
「(ちっ、追い詰められてたのか!!)ならば、ハンズ・オブ・グローリー!!」
「よ、横島クン!?」
横島はいったん美神を下ろし、右手に栄光の手を作った。そして、目の前の木の中からできるだけ丈夫そうな木をみつけ、
「伸びろ!!」
シュン!・・ガシッ!!
栄光の手は丈夫そうな木の天辺に突き刺さった。横島は右手を引っ張るが抜けそうにない。
(よっしゃ!!うまくいった!!)
横島は左腕で美神をかかえると、
「縮め!!」
横島がそう言うと栄光の手が縮みはじめる。当然、体重の軽い横島達が引っ張られるのだから横島達は木の上の方に引っ張られた。
ある程度引っ張られたら、栄光の手の縮むのを止め、できるだけ丈夫そうな枝に美神を降ろし、別の枝に荷物を掛けて、自分も別の枝に降りた。
一連の動作はまるで、人を抱えたまま飛ぶバットマンかスパイダーマン。
「へ、へ〜!やるじゃない横島クン♪」
抱きかかえられたのに顔を赤くしながら、横島を褒める美神。だが、褒められた横島は、
「ぜ〜ぜ〜ぜ〜。死ぬ・・・疲れた。」
疲れきって、バテていた。
「ちょ、ちょっと、私を抱えて走るのが、そんなにキツイってゆうの!?(体重は変わってないはずよ!・・・・たぶん)」
めちゃめちゃ理不尽なことで怒り出す美神。
横島は、美神+荷物を持って坂道ダッシュ&栄光の手を使って自分達を木の上にあげる。ってことをやったのだ。
疲れないほうがおかしい。(やれた時点でとうにおかしいが・・・)
「い、いや美神さんだけならここまで疲れないっすけど・・・(美神さん、ええ感触やった〜)」
荷物もありますしと言う横島に自分の体重のせいじゃなっかたことに安堵する美神。
ガサ、グルルルルル!!
そこに、今まで追ってきていた妖怪登場。
「あれは・・・犬?」
「たぶん、野犬かなんかの突然変異ね」
そう犬。大きさも普通の犬と変わらないが、その姿が普通じゃない。
すべてが黒い。目も、耳も、鼻も、足も、舌までもが真っ黒なのだ。
しかもハンパな黒さじゃない。自然じゃ絶対に出ないだろうというぐらいの黒。
唯一違うのが口の中。だが口の中の色は真っ赤で血の色をしていた。
突然変異の犬妖怪(以降犬)と横島との目があう。
「目を逸らしちゃダメよ!!」
横島と犬とのガンつけあい勝負。
ガルルルル!!ウゥーーーー・・ガウ!!
サッ!
横島の負け。
「コラーー!!なにやっとるかーー!?」
「し、しかたなかったんやーー!!そ、それに大丈夫っスよ!俺達、木の上にいるんスから」
犬は木に登れない。そう言う横島に犬はニヤリと笑った。
(なにかくる!?)
美神はそう感じて構えるが、犬のほうが速かった。
犬が口をあけると、
ガーーーー!!
口から霊波砲みたいなものがはなたれる。だがそれは美神達には向いておらず、美神達の乗ってる木の根元に向いていた。
ドガーーン!!グチュブスグチャ・・・
当たった部分が腐食しはじめて、木が倒れる。
「や、やばい!!横島クン!!」
「ハイ!!」
美神の言葉と共に、横島が文殊を出し自分達が落ちるだろうポイントに文殊に文字を込めて投げる。文字は『柔』。
ドスン!!ぼふっ! ガウ!!
文殊で柔らかくなった場所に着地する2人。その瞬間を狙って犬がつっこんでくる。
狙いは美神。美神はよけようとするが地面が柔らかくてうまく動けない。
ドカン!!
突っ込んでくる犬に横から横島の放ったサイキック・ソーサーが当たる!!
その隙に美神は犬から距離をとる。
「大丈夫っスか!?」
「大丈夫よ。でも厄介ねこいつは・・・」
犬はサイキック。ソーサーにはじき飛ばされたが、すぐに立ち上がりこちらを睨んでる。
「横島クン。文殊は?荷物は?」
「文殊はあと2つ、荷物は・・・・げ!?」
横島は荷物をみつけた。が、
「木につ潰されとる・・・・」
さっき倒れた木に潰れていた・・・。
「このどアホーーーーー!!」
「仕方ないじゃないっすかーーー!!」
戦闘中なのでシバキはないが、横島をせめる美神。
とりあえず2人は今の状況を把握する。
美神のナップサックには神通根が2本。お札5千万円が5枚。携帯1つに飴玉3つ。ポケットにハンカチとちり紙。あと横島の文殊が1つ。
横島は文殊が2つ。ポケットにガム半分。ラーメンの半額権が1枚。
敵は霊波砲のようなものは触れると腐食する。足速そう。ほかにもなんかあるかも・・・・。
((とりあえずここは・・・・))
2人の心が1つになる。そして目で合図して、
「「戦術的撤退!!!」」
と言って後を向いて走り出すが、
「「しまった!!行き止まりだったんだ!!」」
同じボケをする2人。今の2人なら、どっかの巨大メカにとりこまれるぐらいのシンクロ率だ!
ガーーーー!!
背をむけた2人につっこんでくる犬。位置的に近い横島に腐食する霊波砲(以降、腐食砲)を放ち、美神には噛み付こうと突っ込んでくるが、
バシ!! ウガ!?
犬の動きが止まる。足元を見ると『縛』の文殊。
そこに美神の神通根が変化した鞭(以降、神通鞭)が襲う。
バシ!!ビシ!!バシ!!
犬がズタボロに鞭で叩かれる。はたから見れば動物虐待だ。
「うまくいきましたね美神さん!!」
犬の放った腐食砲を文殊で避けた横島が近づく。
「まあね♪こんな犬畜生ごときに手こずる私じゃないわよ・・・それに」
美神が犬に近づく。犬は『縛』の文殊から逃れようとするが、これはメードサさえも取り押さえた力がある。
犬畜生ごときでは、まず逃れられない。
美神は戦術的撤退をする前に文殊に文字を込めて、横島のほうには行かず自分を襲ってくると読んで、後を向いてダッシュすると同時に、犬には自分の体で見えないように文殊を設置。読みどおり(横島への腐食砲は予想外だったが何とかするだろうと思った)自分に向かってきた犬はあえなく『縛』の文殊の餌食となった。
横島のほうも、目で合図したときに、何かする気だと気付いていたため、腐食砲から自分を守ことだけに集中していた。
前世からの付き合いであるこの2人のコンビネーションにかなう敵はいない。・・・たぶん。
「あんた・・人の言葉分かるでしょ?」
ギク!?
犬はあからさまにギクっとした。
「人の言葉がわかるんすかこの犬?」
「ええ、さっき横島クンの言葉を聞いて笑ってたし、知能はあるわよ、こいつ。」
美神は犬のほうに目を向ける。
「それにわざわざ近い横島クンには行かず、遠い位置にいた私のほうに来たでしょ?あれって文殊を警戒したんでしょうが・・・」
そのとおりだよ糞女!!みたいな目で美神を見るあわれな犬。
「私が文殊を持ってないなんて一言もいってないもんねーー!!」
(どこのガキですかあんたは・・・)
犬にむかって高笑いする美神にあきれて苦笑いする横島。犬はとても悔しそう。
「で、どうするんスかこの犬?」
目の前の犬は文殊で捕まってはいるものの、敵意剥き出しだ。
「お札で封印しようにも封印のお札は、あんたのせいでダメになっちゃたし・・・」
「あれって俺のせいなんスか!?」
横島のセリフをシカトする美神。
「とりあえず・・」
「とりあえず?」
「つれて帰って保健所に引き渡しましょ!!」
「こんな危ない犬なんて渡せるかーー!!つーか連れて帰るのもいやーーー!!」
「あれ?いま忠夫さんの声が聞こえたような気が?」
ここは同じ山の横島達がいるところより頂上に近いとこ。
「気のせいかしら?」
山の中を少女が1人で歩いている。
その子の名は水野 アリス。
アリスが歩いていると目の前に不思議なものがあった。
「やっとみつけたわ。・・・あなたが呼んだのね?」
それは蛹。
突然変異で大きくなったモンシロ蝶の幼虫の蛹。
「あなたが私を夢の中で呼んだ・・・あなたは私になにをして欲しいの?」
アリスが蛹に向かって話かける。
「・・・・わかったわ・・とめればいいのね?」
そう言うとアリスは山の中を歩きはじめる。向かう方向は横島達がいる場所。
結局、犬をどうするか決めかねてる2人。犬のほうは横島の文殊で眠らされてる。
「もう、殺すしか手はないんじゃない?」
「ん〜できれば殺したくないんだけどな〜」
「今なら寝てるし・・・安楽死よ?」
「んな物騒なこと言わんでくれーーー!!」
「じゃあどうすんのよ!!ほっといたらまた被害がでるわよ!?」
さっきからこの調子なのだ。美神が案をだすが横島が却下。
いつもなら下僕のぶんざいでーー。なのだが横島の優しさは美神も認めてるため言えない。
ガサガサッ
急に後から草木を掻き分ける音に反応する2人。
敵か?と思い身構える2人の前に出てきたのは、
「・・・・アリス!?」
「忠夫さん!?」
「・・・・なに?♯」
横島の許嫁。水野 アリスだった。
{あとがき}
話がうまく進まないと悩んでる義王です。
滑った岩について
作者体験談です。そんなに滑りやすくないと言うかたもいるかもしれませんが、俺は滑りました。
漢字について
火水さんに検索サイトのgooの辞書機能を教えてもらったのですがすんません。どうやれば使えるのかわからんとです。
やっぱり間違ってたりするかもしれませんが前も書いたとおり、優しい目でみてください。