──姫と保護者はくっついて。
魔王と魔神は見守って。
ハニワ兵達は喜び回る。
「・・そしてメデタシメデタシな訳ですか」
「ワイ等の喧嘩、何やったんやろ・・」
「・・全くの無駄ですね」
「・・人間・・恐ろしいなぁ・・」
「・・それはちょっと違うと思いますが・・」
何にしろ、全くの役立たずなお二方であった(酷)
「・・おや?・・何かまたやらかそうとしてますねー」
「・・ここでまた静観・・ちゅーか見てるだけ、しとったら──どうなると思う?」
「・・取り敢えず罵倒されて呪われる位はされるでしょうね」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
遠い目をして、溜め息ついて。
「・・人間・・恐ろしいなぁ・・」
「・・アレ等を普通の人間と呼ぶには無理がある気がしますけどね・・」
お二方は、呟いていた。
──あの後。
呼べる奴集めて大広間。
「さて、蛇。オドレ、勿論このままで済むとは思っとらんよなぁ・・?皮でも剥いでハンドバッグにでもしたろかああ!?」
「ヒイィ!?」
「・・ガンバレー」
メドーサへ心の篭らないエールを送ってみたりするアシュタロス。
一応部下だったので、形だけでもと(爆)
「まぁ、喰らって一つになりたいとかいうのは解るで?ある意味究極やもんなぁ・・?」
「解ルノデスカ!!」
「黙れアシュ!!」
「ハイ!!」
銀一の怒声に直立不動。一瞬後に敬礼と共に返事。
「・・だ、だったら何でアンタはあの男に横島を渡したっ!?アンタだって横島がっ・・」
「ああ、好きやで?愛しとるよ。けどなぁ・・」
がしっ!!!
「ぴぎ!?」
頭を鷲掴みにし。
「一つになってどーする?自分で殺して。・・ただの自己満足でそんなんして嬉しいか!?楽しいんかああ!?」
「ひーーーっっ!!?」
「ククッ・・まぁ、誰かに殺される位なら自分の手で・・。その身体も心も喰らい尽くしたいゆーんはこの上無く解るけどなぁ・・」
(魔王ダーーーーー!!!)
(ニ゛ャーーーーー!!!)
二名、悲鳴。
因みに魔神と蛇。
声にも出せない程の恐怖らしい。特に蛇の方は先程のトラウマ(血塗れ説教タイム)のショックが少々残っている為、どーしよーもない。
「けどなぁ・・。それやった時点でただのアホウやボケ。無様な自己満足に浸っとるクソの敗残者に成り下がるで!?大体オドレなんぞ、喰らった奴に逆に内から喰われて、潰れるのがオチやろがああっ!?」
みぢみぢみぢっ!!!
「ふぎゃーーーっ!?みちみち言ってるヨーーーーー!!?」
「惜しい!!メドーサ、みちみちではなくみぢみぢだっ!!」
「黙れ蛇!!へたれ!!」
「ウワーン!!」
「へたれデスカ!!」
「それともオドレ等喰らい合うかっ!?おお!!それもええかもなぁ!!バカ同士の共食いで!!やるなら今やで!?このまんまやと頭砕けて脳味噌撒き散らす事になりそうやからなぁ!!まぁ、蛇にそんな大層なモンがあるかは疑問やけどな!!さぁどうする馬鹿二匹!?脳味噌撒き散らすなんて初めての体験やからなぁ・・記憶に刻んどいたるで!?有り難く思えや!!まぁ、共食いの方が笑える酒の肴になりそうやからそっちの方を推奨したるけどなぁ!!アーーーッハッハッハーーーーー!!!」
「「イヤーーーーーッッ!!?」」
すぱんっ!!
「ぶぅっ!!」
「・・戻ってこいや、そろそろ・・」
「銀ちゃん、いきすぎいきすぎ。つーか、ベスパ泣くから、それ」
魔王の暴走を止めたのは、やっぱりとゆーか当然最強保護者と姫でした。
因みに姫は魔王の台詞やら態度やらには演技が入ってると思っていたりする。銀一もそれを承知している為の魔王っぷりだ。
そしてベスパは。
「ふえぇ・・。アシュ様ぁ〜っアシュ様ぁぁ〜〜〜っっっ」
・・既に泣きべそかいてました(爆)
流石に慣れていないとあの魔王の姿はダメージが大きいらしい。
「ってアタシは!?」
全然心配されないメドーサが声を上げる。
だが。
「うわーん!!アンタがあんなアホな事しなけりゃアレでフツーにアシュ様帰ってきてたんだよばかーーーっっ!!!」
ぼくっ!!!
「はぐっ!!」
ベスパ、メドーサに大パンチ。
「ああっベスパが子供還りをっ!?」
「ふえぇぇんっ!!」
「いや、大丈夫だ、大丈夫だぞー。ほーら、私は全然元気だからなー」
「ふえぇ・・アシュ様ぁ〜」
「あー、よしよし」
「あ、何かおとーさんっぽい」
「頭撫でたれや、ちゃんと」
「・・冗談やのになぁ・・。ま、ええか。ちゃんとケアしとけやー」
「貴様のせいだろーが魔王ーーーっ!!」
ところで──他の面々は余りの恐怖の為固まっていたりする。
宇宙の卵内での鬼道と横島のやり取りや事情は、それぞれ行動を共にしたハニワ兵達からリアルタイムで、そのままの音声で聞いていた一同。
もう本当に諦めるしかないだろう。皆、もうちゃんと、完全に納得済みだ。
それに、魔王と魔神の二人以外は横島の元へ。その際の横島の様子と、鬼道のいる場所を知ったと同時、自分達を置いてハニワ兵達と共にそこへ転移した横島を見たのだから。
・・これで今更自分達にどーにかできると思う奴もあまりいないだろう。
因みに、一連を聞かれていた事を知って横島と鬼道、二人して真っ赤になったのは余談である。
「・・解った、解ったよ!!謝ればいーんだろっ!?」
と、メドーサが半泣きで、ヤケクソ気味に声を上げた。
「悪かった!!悪かったよ!!元々ベスパの様子見と揶揄いの為に来ただけで!!悪ノリしすぎちまったんだよ!!」
「悪ノリで鬼道刺すなぁぁぁぁっっっ!!!!!」
ずばしいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!!!!
「へごっ!!」
横島のお手製ハリセン炸裂。
「・・あ、あうぅ・・。いやだって、横島には色々やられたしちょっと意趣返しを」
ずべしぃぃっ!!!
「げふぁ!!」
メドーサの言葉が終わる前に、銀一から追随の一発。
「なっ・・なななっ!!」
「・・はっ!!ま、魔王さん、気持ちは解りますが、落ち着いて下さいっ!!」
固まった状態からやっと解放された小竜姫が、思わず声を掛ける。
「・・俺は銀一や。・・つーか、いきなりおかしいやろ、蛇。オドレ今、何かしよーとしとったろ?」
小竜姫の呼び名に訂正は入れたものの、眼はメドーサを冷たく見下ろしたまま、動かない。
(・・魔王で良いと思うのだが・・)
思わずそう心の中で呟いてみる魔神。
・・多分皆思ってる(爆)
「・・まぁ、確かにビッグイーターいうんは周りにおったけどなぁ・・」
鬼道は気付いていたらしい。
それらは既に、壁を一枚隔てた向こう側にて、夜叉丸とハニワ兵達で殱滅済みだったりする。
それを聞き、引き攣るメドーサ。
その事に気付かなかった一同は驚愕している。
「・・まぁ、結界も張られていたからな。普通気取られる事は無いだろうが・・此処は私の塔だぞ?」
ハニワ兵達も動いていたので、あまり気にしていなかったが、未だに縋りついていたベスパも驚いていたりしたので、取り敢えず説明するアシュタロス。
「・・本っ当に面倒な奴だな・・。ヒャクメ、他に企んでる事無いのか?」
横島はメドーサの方に呆れていたりする。
塔で連中と過ごしていた姫は、もう連中の行動に驚く神経は麻痺しているのかもしれない。
「う、う〜ん・・。結界のせいか、視え辛くなってるのね〜。・・でも、これは・・あれ?」
ヒャクメの動きが止まり、顔色が段々悪くなっていく。
「・・どうした?」
「・・・・・・・・・・・・何を考えてるのねアンタはーーーーーーーーーーっっっ!!?」
「ヒャ、ヒャクメ!?どうしたのっ!?」
メドーサの胸倉掴んでがっくんがっくん揺さぶるヒャクメに焦る小竜姫。
「どーもこーもないのねーーー!!!」
「・・ク・・ククッ・・クククッ・・!!もう遅いよ・・!!」
「なっ!?メドーサ!?一体何を・・」
ドオオオオオォォォォォォォォォッッッ!!!!!
『なっ!?』
地響き。
何かが、どこかに出現した為の。
「ちぃっ!?何だっ!?」
モニターに、それが映し出される。
それは、外。
南極大陸の真ん中に、無造作に生えた、巨大な、何らかの装置。
「な・・何ですかアレはっ!?」
「・・・・・・・・・・あやー」
「・・おう魔神。何ぞ心当たりあるんか?」
「・・うむ・・それが・・」
歯切れ悪く、微妙な表情で、アシュタロスが答える。
「・・アレは、宇宙処理装置(コスモ・プロセッサ)だ」
「・・何だそれ?」
「えーと・・。宇宙とか世界とか好きなよーに改竄してヒャッホウ☆な感じの装置だ!!」
「何じゃそりゃ!?」
「クククッ・・驚いてる様だねぇ・・。あそこには、私の可愛い部下がいてね・・うまくやってくれる筈さ・・!!」
「部下!?」
「・・アレは土偶羅がいなければ正常に動かん筈だが?」
「ふん・・もう、一回使ってるんだ・・。情報処理と演算能力は記憶されてるからね・・。後一回位は動くだろうさ・・!!」
「・・え?」
「あの・・アシュ様?」
「使ったって・・」
集中する視線に苦笑いしつつ、アシュタロスが答える。
「いやー、メドーサ達を復活させる時にちょっとな。異次元の方でやったので誰も気付かなかったらしいのだが・・。しかし試運転の時に大した事はできそーもないんでその後は放置を・・」
「すなや!!」
「・・ちょっと待って下さい。メドーサ達を復活って・・。どうやってです!?神魔族で散々探索して、メドーサの霊破片の欠片も見付からなかったのですよ!?」
宇宙での一戦の後。
横島は見付かっても、メドーサの霊破片は見付からず。
それなのに何故、此処にいるのかと。
「いや、それらはお前達が動く前に、こっちで回収しといたのでな」
「行動早ッ!?」
「それに加え、コスモプロセッサで再構築したからな。因みに、コスモプロセッサ壊すとその時復活させた連中は消えてしまうのだが──メドーサには記憶もきっちりあるし、核となる霊破片も中にある。加えて力も与えたので、もー普通に生活できるぞ?元々ベスパの話し相手に復活させたのだし」
『ってオイ!?』
一同突っ込む。
「・・それが余計だったんですよ、アシュ様・・」
「むぅ?」
一人、どんよりとした重いものを背負ってのメドーサの言葉に、アシュタロスが首を傾げる。
「放っておいてくれりゃあ良かったのに・・!!そうすりゃ、こんな望み持たなかったのに・・!!」
「・・むむぅ?」
思い詰めた感じのメドーサの様子に、更に首を傾げるアシュタロス。
他一同も怪訝そうにメドーサを見守っている。
「・・望み、とは?」
その問いに。
「・・フフ・・私の望みは・・完全なる滅びっ!!!」
『・・えぇ?』
メドーサの叫びに、思わず汗ジトで、戸惑い気味の声を上げる一同。
「誰にも、そう、アシュ様にも!!最高指導者達にさえ復活させられないよーにっ!!魂のひとかけらっ!!霊破片の一片すら残らない為にっ!!・・ってゆーか、此処に来てハニワ達にアシュ様のアレっぷり聞かなきゃここまでする事無かったさ!!しかも核収納してるトコに色々愉しげなモンあったからついっ!!」
「・・愉しげなモンって・・」
「・・コスモ・プロセッサと・・エネルギー結晶があったから、つい・・」
流石に暴走している自覚はあるのか、目を逸らしつつメドーサ。
『何ーーーーーーーーーーーーっっっ!!?』
「・・・・・・・・・・あ゛」
「アシュ様ーーーーー!?」
「・・はっはっは。いやー、どーも夢見が悪い頃にぶらっと外に出て少々救出部隊をからかおーかと美神令子の所に侵入(就寝中に。萌え血に沈みまくっていた時期のせいかサッパリ起きなかった)したはいーが、何も思い付かず・・くすねた横島クンの文珠を丁度持っていたのでシャレで結晶取り出そーとしたら・・」
「取り出せた、と?」
「うむ!!」
『オイ!!』
「いや、私の力も加味していたとはいえ・・まさか魂からキレイに取り出せるとは思わなんだ!!」
『アホーーーーー!!!』
まぁ核の置いてある所にそのままあった訳では無く、そこに放置してあった異次元に繋がる扉があり、それを偶然メドーサが見付けた為の事態な訳だが。
「え?あ!?でもそれだと時期がちょっとあいませんよ?」
「ああ、復活させた時は結晶無しで他からエネルギー持ってきたのでな。そのせいで数名しか復活させられなくてなー。まぁ、ベスパの話し相手確保の為だったので別にそれで構わんかったのだが」
「・・アシュ様・・」
何か瞳をキラキラさせてアシュタロスを見詰めるベスパ。
「アホー!!そこは感動するトコじゃないだろベスパ!!散々命令されて、どーにかこなそーとして、失敗して挙句にやられて!!いきなり復活させられたと思ったらこの事態っ!!そりゃ私だってねー、アシュ様が望んだ事ならと!!諦めてベスパの相手に徹しよーとすりゃベスパは愚痴るわアシュ様は人間共にしてやられてるわもうアホかと!!だから嫌がらせとか諸々込めて横島ブッ殺して、私もこのアホ世界から塵も残さず消えよーとっ!!そして残された奴等は皆して無力感にうちひしがれて悔しがれってね!!!」
・・とどのつまり。
ストレスが溜まり、爆発し、暴走したという事らしい。
・・随分とお粗末な感じだが、仕方無いと言えば仕方無い。
今までが今までだ。
シリアスに(ビミョーだが)やってきたと思ったら、大ボスがコレである。やってられんというのが本音だろう。
「って、それで鬼道刺すって何だテメーはっ!?」
「何言ってんだい!!さんざやられたんだよ私はっ!?アンタの絶望に満ちたツラも見たいじゃないかっ!!」
「性格悪ッ!!」
「今更だねっ!!」
ぎゃいぎゃい言い合う二人の間にひょい、と入り。
「・・横っち殺す気だったんか?」
冷えた瞳と声で問うてくる銀一に。
「・・ウウン、あの血塗れ説教男様ト魔王様ニ会って本気でそんな気ナクナッタヨー」
メドーサ、何だかぷるぷる震えつつ弁明。何か発音とかもおかしい。
・・そんなに怖いかあの二人が。
「・・本気で?」
「ウン、部下がね、横島喰ってみたいとか言うカラー、まー状況によっては生かしとこーカナーってー」
「・・アンタが横島喰うとか一つになるとかは?」
そこに鬼道も加わる。
メドーサは眼を逸らしまくって、
「・・ジョウダンデスヨ?」
「皮剥ぐで?」
「説教耐久五日程いこか?勿論ハリセン付きで」
「キャー!!愛憎は裏表だからそれもいーかなと思ったダケでー!!どーせ私消えるつもりだったし一緒に消えるのもアシュ様とかの鼻あかせるかなーと思ったダケナンデスヨー!!大体魔族にとってはポピュラーですヨ!?そういう相手を蹂躙して征服して絶望にまみれたそいつを殺して喰らって血を浴びて悦に浸りつつ共に逝く!!実の所後の事なんざどーでも良かったけど!!あの横島が私にいいようにされて私の道連れとなる・・フフフ、想像しただけでも・・ハッ!?イヤイヤジョウダンデスヨ?それにちゃんとやめマシタヨ!?可愛い部下のチャンスの為に!!貴方様方の恐ろしさのタメにー!!」
・・哀れな程の壊れっぷりを晒すメドーサ。
喰らうのも目的の一つではあったらしい。ビッグイーターで石にして飾るとかは、ただ単に横島を手にした鬼道に喧嘩を売りたかっただけかもしれないが。
そしてやめた理由は確実に後者だと思われる。
「・・消えたい癖に皮剥がれんのは嫌なんか?まぁ、簡単に死なさんけどな」
「ウワーン!!」
蛇を壊した魔王は容赦が無かった。
「説教はきっちりとさせてもらうしな」
血塗れ説教男様と言われた最強保護者も同じく。
「ウワーーーン!!!」
(早く私を滅ぼして!!私の可愛い部下!!)
メドーサ、泣きながら心の中で部下へ懇願。
「って!!今はコスモ・プロセッサを止める事が先決ではないのですか!?」
「・・気付くの遅いで、オドレ」
「ぐうっ!?・・あ、貴方だって何も言わなかったじゃないですかっ!?」
「いや、言う必要あらへんし」
「はぁ!?どーいう事ですっ!?」
「・・アレ見るのね〜、小竜姫・・」
「えっ!?」
疲れた様にヒャクメがモニターを指す。
そこには──
「・・あー、勘九郎かー。・・まー、そんなとこだろーなー」
気絶していた為外に出していた救出部隊の面々の、多分に八つ当たりだろう、メドーサの言う部下だったらしい、勘九郎いじめと。
「・・究極の魔体、持ち出されてしまったなー」
黒い、殆ど怪獣な巨人に、コスモ・プロセッサがボッコボコに破壊されてる光景が映し出されていた。
黒光りする身体は禍々しいが、額からぽこん、と生えているのは。
「ってハニがあんなトコにーーー!?てゆーか何だアレ!?何やってんだよオイ!?」
意識はきっちりあるらしく、ぽーぽー言いつつ、短い腕をぶんすか振り回していたりする。
その動きを元にしているのか、その巨人──究極の魔体とやらの腕もぶんぶん動き、コスモ・プロセッサを容赦無く破壊中。
「・・むぅ、ハニワ兵が動かしているのか。・・ふっ、立派になったものだ・・ハニワマン・・」
しみじみ呟くアシュタロス。しかしマントも仮面も付けてないのにハニワマンは如何なものか。
「ってオイ!?ハニ大丈夫なのか!?アレ!!」
「・・勇ましいんはえーんやけど・・ちゃんとあそこから抜けられるんか?ハニワ・・」
慌てまくる横島と、どこか呑気な鬼道の横。
「・・え、えう?」
その光景に呆然とするメドーサに、
「ま、何にせよ──身も蓋も無く、もーオシマイやな、蛇」
トドメが刺された。
「ぽー!!」
「ぽぽー♪」
「ぽー!!」
コスモ・プロセッサをぶち壊しまくる究極の魔体を観戦しつつ、くるくる回り、喜びを表すハニワ兵達。
「・・ハニワ兵にあんなもん動かせる程の意思があるなんて思いませんでしたよ・・」
「・・しかもアレに取り込まれて動かすの決めたのあのコ達だからねぇ・・。まぁ、エネルギー残り少ないらしいし、万一暴走したら破壊してでも止めてくれ、なんて健気な願いには応える必要は無いらしいね」
「・・弱点教えてもらったとは言え、滅茶苦茶な頼みですけどねー」
・・究極の魔体を送り出す手伝いをさせられた大人コンビが、喜ぶハニワ兵達の隣で、溜め息を吐いていた。
更に。
「・・何じゃつまらん。あのデッカイのぶっ壊す為に至急マリアに飛行ユニットや武器諸々を取り付けたのにのー」
「ドクター・カオス。破壊行為・極力避けた方が・無難・です」
「・・ぶーぶー」
「・・ジジイがそれやっても可愛くありませんよ、ドクター・カオス」
「・・小僧が生意気な口を・・」
「まーまー、二人共・・」
その二人を苦笑いしながら宥めるのは唐巣神父。
究極の魔体──それを起動させたのは、カオスだったりする。
あれは、アシュタロスの目的が姫を手に入れる事に変わった時にぶっちゃけ不要となったものであり、何かの為に一応、と地中深く眠らせておいたものなのだ。
他の輩に利用されても困るとの事で結界と封印を施しており、それを解除したのが、ハニワ兵達に頼まれたカオスである。
その後は・・見た通りだ。
西条と唐巣も連れて来て、先程の暴走した時の対処を頼み、コスモ・プロセッサを破壊しに出撃したのであった。
一方。
「ふん・・横島を狙った罰だ、お前はあの魔王に爆弾巻き付けて投下する事に決定したぜ・・頑張れ勘九郎!!」
目が覚めた時には流氷の上。何が何だかの時にいきなり生えた装置と見知った顔、そしてその聞き捨てならない叫びにキレて魔装術全開の雪之丞、発想が外道気味。
「復活したと思ったらそんな役ーーー!?ちっ、違うのよー!!メドーサ様に御自身の抹消を頼まれてっ!!その後は好きにしていいってゆーからちょっとしたお茶目であのボウヤを今までの恨みとかを込めてちょっぴり蹂躙したいと思っただけなのよーーーーー!!!」
「・・何ですか?此処で死滅希望ですか?キサマが蹂躙されれば良いあの魔王にっ!!!」
最初の勘九郎の叫びに既に眼は紅く染まり、本性モロ出しに牙を剥いていたピート、更にキレた。
「ああっ失言っ!?」
「うふ、うふふ、うふふふふ・・逝きなさい♪」
・・一番キレてるのがおキヌ。笑顔で昇天強要。勿論手にはネクロマンサーの笛。
「あああっやめてぇーーーっ!?私が天へ昇っていくーーーっ!?」
「うふふ、何言ってるんですか♪・・貴方の逝くべき所は地獄の底のそのまた底じゃあないですか♪・・堕ちろ♪」
「イヤーーーーーーーー!!?」
黒増加(爆)
その頃。
「うぅ・・ピートの馬鹿、ピートの馬鹿・・!!」
薄暗い場所で、呟きと──呪詛が響く。
「・・ピートの・・バカーーーーーッッ!!!」
えいえいっと藁人形に釘を打ちつけているエミだったりする。
救出部隊の中にはいなかったらしい。・・ピートあんなんだし。
だがその呪いは──
「いたっ!?いたたーっ!?何っ!?この胸に釘を刺されて打たれまくっているよーな痛みはーーーっ!?」
・・何故か勘九郎へと届いていた。
そしてシロタマ、タイガーは。
「怖いでござる、怖いでござる、武士といえども拙者はぁぁっ!!!あああっ!!先生、不甲斐ない拙者をお許し下されーーー!!!」
「ううっ・・。おキヌちゃんが、おキヌちゃんがぁ・・!!お怒りをお鎮め下さいぃ・・羅刹女様ぁ・・それとも鬼子母神様・・?とにかくお怒りをお鎮め下さいぃぃ・・!!!」
「魔理さん・・ワッシは・・ワッシはもう帰れんかもしれません・・。しかし魔理さん・・ワッシは貴女に会えて・・幸せで・・し・・」
ガクリ
・・片隅でぷるぷるぶるぶる震えていたり何かが違うよーなそこはかとなく危険そーな事を呟いていたりやっぱり死に掛けだったりしていた。
特にタイガー、キレた連中や妖怪であるシロタマと違ってモロに極寒の地の空気に晒されているので本当に死にそうである。
ところで、一応救出部隊の一員でありながらも、この場にいない冥子はというと。
「く〜すぴ〜・・ん〜・・むにゃむにゃ〜」
・・外に出すのも危険な気がした為、塔の中の一室に。
そしてすやすやお昼寝中。
この騒ぎにも起きる様子は無い。
──それはともかく。
勘九郎は死滅コース。
コスモ・プロセッサもそろそろ跡形も無くなる。
そんな時。
「ぽーーーーー!!?」
究極の魔体の額のハニワ兵が、声を上げた。
次いで──
ドオオオオオオオオオオオオオオオオォォォッッッ!!!!!
・・背にあった大砲から、高出力のビームが、空に向かって発射された。
──究極の魔体。
本来ならば、結晶の力で動く筈のそれ。
だが、今は溜まっていた予備エネルギーとハニワ兵の意思にて動いていたそれ。
実の所、エネルギーは残り少ない。
アシュタロスがメドーサ復活の為、コスモプロセッサに使ったエネルギーはこの魔体から取り出したものだったからだ。
そしてほどなく魔体のエネルギーは切れ、それと同時、コスモ・プロセッサ破壊という目的を終えたハニワ兵はそこから脱出する筈だった──のだが。
コスモ・プロセッサを破壊し終えた拍子に、結晶が勝手に魔体に取り込まれ──ハニワ兵の意思を無視し、暴走し始めたのだ。
「しまったぁ!!元々アレの為の結晶だったので、エネルギー少ないからと自動で取り込みおったか魔体!?」
「説明口調で驚いとる場合か魔神っ!?」
「あああっハニがぁぁっ!?」
「・・いかんな・・暴走か・・ハニワには抑えられんよーやし・・」
額にいるハニワ兵、実は横島と一番付き合いの長いハニワ兵である。
捕虜時代から塔の生活中に至るまで、よく行動を共にしていたハニワ兵。
他の面々には解らなくとも、この四人に解らない筈も無く。
「止めるぞっ!!アシュ、どーすりゃいいっ!?」
「解らんっ!!取り敢えず魔体ぶっ壊してその間際にハニワ兵取り戻すかっ!?」
「何やその役立たずっぷりは!?オドレが作ったんやろーが!!」
「仕方無いだろーが!!実際にアレの中に入った事は無いのだからっ!!」
「とにかく外出るでっ!!大体、あんなもんが暴れ回ったらシャレにならん!!どーにか止めな!!」
「ハニに何かあったら許さねぇからな!!アシュ!!」
「私だけのせいではないのにーーーーー!!!」
・・そんなこんなと。嵐の様に、横島達は外へ。
そして、残された一同は。
「えっ・・えええーーー!?ちょっとぉ!?横島さんーーーーーっ!!?」
「・・物凄い息合ってるのね〜・・。此処での共同生活は伊達じゃないのね〜」
「そんな事言ってる場合でちゅかっ!?」
「余達も行くぞっ!!」
「了解っ!!」
「メドーサは・・ベスパ!!貴様が見張っていろ!!」
「何でさー!?私もアシュ様と一緒にぃ!!」
「ふ・・ふふ・・ふふふふふ・・。もう私は駄目だよ・・燃え尽きた・・燃え尽きたよ・・真っ白にね・・」
・・何かもう、大変だった。
「・・暴走・・しましたね・・」
「・・したねぇ・・」
「破壊するしかないのー」
「!!横島さん・塔から・出てきました」
「・・何か皆いるね・・。まぁ、アレの破壊を頼まれたのは僕達だから・・憎まれ役は僕位が丁度良いんで、神父は此処に残ってて下さい」
懐から精霊石を取り出し、視線を空に向け、念をその空の何処かに飛ばす。
「し、しかし・・」
「ぽー・・」
躊躇う神父の言葉を遮る様に、ハニワ兵達がぴょこぴょこ寄って来て、二人に、そしてカオスとマリアにも頭を下げた。
「ぽぽー・・」
「・・元々・あの魔体は・壊して貰うつもりだったと・言っています」
ハニワ兵の言語も理解できるのか、マリアが通訳する。
「ぽー!!」
「・・そうしなければ・アシュタロス・罪に問われる材料が・追加・・」
壊してしまえば、罪は軽減されるのではないかという事らしい。
何だかんだと創造主。一応大切ではある様だ。
・・その割りにその存在を晒してしまってはいるが、コスモ・プロセッサを壊す為だ。仕方が無かったのだろう。
勿論、横島──姫を護る為というのが大部分だったが。
「・・壊してあげるって。弱点教えて貰ったしね」
言いながら、手に持つのは──ライフル。
「・・西条君。それ、何処から──」
それと共に。
「ほう、面白い物を持っとるではないか」
いつの間にやら、西条の横にはバイクの様な、しかしどこか奇異な形をした乗り物が出現していた。
「・・これは?」
「ルシオラ君の造ったものです。因みにこっちのライフルもそうですね。もし僕が横島クンを見付けて、手にする事ができたら、横島クンを渡すって約束で貰い受けました」
その乗り物に、先程取り出した精霊石を喰わせながら答える。
・・どうやら──生き物(?)らしい。精霊石は餌なのか燃料なのか。
「・・何だい、その・・取引?は・・」
「いやぁ、僕は令子ちゃん狙いだって言っておいたんですよ。横島クン狙ってるのはポーズで、本当は・・って」
笑顔でのたまう西条。
「・・で、実際は?」
「横島クン手に入れたらこれで横島クン攫って逃げるつもりでした♪」
・・大人って汚い。
「・・爽やかな笑顔で言っても・それは重大な・違反行為・です」
「はっはっは。だからやめたじゃないか♪」
マリアの突っ込みにも笑顔で返す西条。
此処にも黒発生。・・元からかもしれないが。
「・・でもやるつもりだったんだね・・。そんな事したって逃げられないだろーに」
「いやー、バレないよーに連れ出して異界空間にでも監禁して、その後何事も無かったかのよーに合流して、目ェ血走らせて横島クン捜す連中に混ざったりしつつ、隠れてうまくやろーかと♪」
「・・バレない訳がないと思うのは、間違いかな?」
「そん時ゃそん時でしたねー。ま、今はやる気ありませんよ?・・何せ、聞きましたしね、横島クンと・・あの男の想い」
此処でもリアルタイムであの二人のやり取りは中継されていたらしい(音声のみだが)
「・・そうだね。大体、今も企んでたら言う筈ないしね、それ」
「ですね。じゃ、行ってきます」
よいせ、とそれに跨って──
「あ、それには及びませんよー」
「ここらで何かせな、あの魔王に何言われるか解ったもんやないしなー」
・・唐突な声と突如現れた膨大な霊力と魔力に、そしてそれのもたらすプレッシャーに、思わず固まる唐巣と西条。
その一瞬後に気配は消えたが──二人は、暫くそのまま動けなかった。
「・・ふぇ・・ふぇぇぇ・・何?結晶奪られた事にも気付かなかった訳・・?あぅ・・私が・・この私がぁぁ・・!!」
「・・騙された・・騙されたのね私・・どーせ私は経験の少ない詐欺男のカモでしかないイモ娘同然の存在なのよーーー!!!」
・・未だ宇宙の卵内。
二人を見付けたハニワ兵達からダダ漏れ情報を色々聞いてしまい、自暴自棄に陥っている美神とルシオラ。
伏して泣く二人にオロオロしつつ、二人の頭をいつも姫がしてくれていた様に、優しくなでなでしてあげるハニワ兵達。
・・大丈夫かこの二人。
何だかこのまんま終わる気がしてならない(哀)
──が。
「あの詐欺男・・覚えてなさい・・!!!」
・・取り敢えず、某道楽公務員の末路は決定したっぽい。
この無理な展開は怒られないだろうか(汗)
そしていつの間にやら西条さんが外道に堕ちてました(爆)これは黒ではなく外道だ・・_| ̄|〇
すまん、取り残された乙女達・・(核爆)
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