ある立派な建物の中の一室に一人の少女が寝ている。
見ているほうが眠たくなるほどの爆睡っぷりである。
そこに眼鏡をかけた生真面目そうな青年が入ってきて、
ベッドで丸くなって寝ている少女を見ると深いため息をついて
起こし始めた。
「おい・・いい加減起きないか。」
「ふみゅ？」
「いつまで寝ているつもりだ？」
「ふみゅうぅ・・？」
「・・・起きるんだ！トリス！！」
青年の叫びでようやく少女―トリス―が目を開ける。
「ふぁ・・・おふぁよぉ、ネスぅ。」
が、明らかに頭が動いてない。
それを見て青年―ネスティ―がまたため息をついた。
「おはようじゃないだろ！？
いくら君でも、今日に限って寝坊はするまいと思っていたが
用心して見に来てみれば、案の定とは・・・」
トリスはそんなことを言っているネスティに
今気がついたのか、伸びをしてから疑問の声を上げる。
「んー・・・はれ？
あたし、ネスとデートの約束してったっけ？」
それを聞いて心底疲れたようなため息を吐くネスティ。
・・・苦労人である。
「これだ・・・今日は君が
一人前の召喚師になるための試験の日じゃないか！」
「・・・あ、そっか。」
ネスティの言葉を聞いてやっと合点がいったのか
納得の声を上げるトリス。
「さっさと支度しないと
間に合わなくなるぞ？」
そんなトリスを見ながらネスティは呆れた様な声で急かす。
「はいはい、わかってますって。」
それでも反省の様子を見せないトリスに
ネスティは説教を始める。
「そもそも、君は派閥の一員であるという自覚が足りなさすぎだ。
授業はさぼってばかりだし、たまに顔を見せたかと思えば、
居眠りばかりしているし・・・」
そんな小言を言い続けるネスティを見て
トリスが少し嫌そうにつぶやく。
「よく見てるわね、ホント・・・」
「君は・・・！」
（やば！！聞こえちゃった！！）
その言葉を聞きつけて、ネスティの小言がさらに勢いを増し
それから数分たってようやく終わりに近づく。
「・・まあ、いい
とにかく、試験の日は来てしまったんだ。
結果がどうなるにしろ全力をつくすんだぞ。
今日まで不真面目な君の面倒を見てくださった
ラウル師範のためにもな。」
「だいじょーぶだってまかせてちょうだい♪」
トリスの気楽な答えを聞いて
またネスティの小言が始まりそうになるが
「はいはい・・・でさ、ネス？」
「・・・なんだ？」
「そこにいると、あたし着替えられないんだけど？」
というトリスの言葉に動きを止める。
それを見て、トリスはチャンスとばかりにネスティをからかう。
「ま、別にネスが見たいっていうなら、
あたしは構わないけどぉ？」
「・・・誰がっ！？」
それにネスティは怒り
乱暴に扉を閉めて出て行ってしまう。
「あらま・・・
ホント、冗談が通じないんだから・・・」
ネスティの行動を見て、そうつぶやきながら
トリスは自分が此処に来た経緯を思い出す。
生まれも定かではない自分が、
ある日たまたま拾ったサモナイト石を
暴走させてしまい、町を滅茶苦茶にしてしまったこと。
そのせいで召喚術の素質が自分にあることがわかり、
この蒼の派閥につれてこられ、選択の自由もなしに
訓練を受けさせられてきたことを・・・
《補足》
『サモナイト石』とは召喚術師が
召喚を行うときに用いる、石の名称である。
他の世界との繋ぎとなる重要な〔鍵〕の役目を果たす。
そんなことを思い出しながら着替えを終えたトリスだが、
急に足元がふらつき、壁に寄りかかった。
「なんだろ・・？
体の調子がおかしい・・・？」
壁に寄りかかったまま数分過ごすと
次第に体の調子はよくなっていった。
「なんだったんだろ？さっきのは・・・？
って、いけない！試験に遅れる！！」
自分の体の調子に疑問を持ったトリスだが
試験に遅刻しそうになったため、それ以上気にすることができなかった。
・・・そのため、自分の魔力がいつもより
活発になっていたことに気がつかなかった。
そしてそのことがある事態を引き起こすことになる・・・・
「蒼の派閥、召喚師見習いトリス
ただいま参りました。」
そう言って試験場に入ってきたトリスを見て
温和そうだが精悍な顔つきをした老人が
孫を見たように目を輝かせる。
「おお、待っておったぞ、トリスよ。」
そして遅れてやって来たトリスに、
試験場にいたもう一人の
いやらしい感じの顔をしている中年が嫌味を言う。
「時間ぎりぎりか・・・
てっきり試験を受けるのが怖くなって
逃げ出したかと思っておったぞ。」
が、それを無視して
ほのぼのとした会話を始めるトリスと老人―ラウル―
そしてそれが気に障ったのか
しつこく嫌味を言ってくる中年―フリップ―
「ふん。たいした自身だな
どこの馬の骨とも知れぬ『成り上がり』の分際で。」
（むぅ！）
それを聞いて少し腹を立てるトリス。
そしてラウル師範がフリップの発言を諌める。
《補足》
『成り上がり』とは代々続く家系から出た
召喚師ではなく、ぽっと出の召喚師のことを言う。
故に歴史ある家系を持つ召喚師は『成り上がり』を嫌うことが多い。
「・・・コホン、では試験を開始する！トリス。」
「はい。」
「目の前のサモナイト石を用い、
お前の助けとなる下僕を召喚してみせよ。」
「はい、わかりました。」
トリスは目の前の召喚石をじっと見つめ
赤いサモナイト石を手に取った。
ウォン
そのとたんトリスの足元に魔方陣が浮かび上がる。
古き英知の術と我が声によって
今ここに召喚の門を開かん・・・
我が魔力に応えて異界より来たれ・・・
新たなる誓約の名の下に
トリスが命じる
（よし！調子もいいし、これなら！！）
トリスが思っているように召喚は万全に見えた・・が！
呼びかけに応えよ・・異界の者ものよ！！
ゴゥン！！
「ッ！！」
トリスが召喚の終盤の誓約の言葉を唱え終えた瞬間、異変が起こる！！
（な、魔力が暴走してる！！）
「いかん、召喚をやめろ！！」
かつて町を滅ぼしたこともある
召喚術の暴走にトリスの顔が青ざめる。
そして見守っていたラウル師範が止めに入ろうとするが、
すでに召喚は終盤の段階に入っているため止められない。
（こうなったら、魔力を全部魔方陣に注ぎ込むしか・・！！！）
トリスは召喚を止められないことに気づき、
自分の全魔力を制御に注ぎ込んだ！
「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！」
キュウン！！
ドゥン！！！！
「きゃああぁぁぁ！！」
トリスの努力によって召喚の制御に一瞬
成功したかのように見えたが、
鼓膜が破れそうな轟音と瞳を焼くような閃光が走り
魔方陣が崩壊した！
・・・そして周囲の床などが破壊され煙が立った。
「コホッコホッ・・・
・・・いったい、どうなったの？」
「おい、タマモ、シロ！どこにいる？！大丈夫か？！」
「・・・若い男の人の声？」
トリスはここのメンバーには
いなかったはずの若い男の声を聞き少し混乱して周囲を見渡した。
そして近くに倒れている三つの人影とそのうちの二人を
起こそうとしている人影を見つけた。
そのとき
魔方陣が破壊された余波によって立っていた煙が収まり始め、
人影の詳しい姿がはっきりとわかった。
そして人影を助け起こそうとしていた
バンダナをつけた青年と目が合った。
「「あ」」
その瞳を見てトリスはとてつもない驚きを感じた。
なぜなら、その瞳から自分の感じていた絶望と
とても似たものを感じ取れたから・・・・・・・・・
絶望をもたらし希望をつむぎながら
運命は慈悲なく回り始めた
今此処に悲しみと罪を背負った罪人達が出会った
ここから始まるは誰も知らぬ物語
絶望を背負いて生きるものたちの運命の物語
願わくば彼の者たちに救いを・・・
後書き
皆さん、レスを貰えて本当にうれしかったです。
もしかしたら誰からも貰えないのでは、と思っていたので
とても励みになりました。
え〜、今回の話ですが
最後の文は特に意味はありません（ォ
それと文章が長くなってしまい
戦闘場面などは次に持越しになってしまいました（汗
なるべく速く続きを書き上げたいと思いますので、
見捨てずに読んで貰えると、ありがたいです。
さて
この場を借りてレス返しをさせてもらおうと思います
＞ろろたさん
＞どんどこどんさん
＞砂糖さん
私もパッフェルは出そうと思っているのですが
一話書くのにこの有様なので、いつ出せるかわかりません（泣
とりあえずがんばってみますので、気長にお待ちください。
・・・ところで、パッフェルはよく武器を振り回しているという
イメージがあるのは私だけでしょうか？
＞狼豚さん
＞.........?さん
私は初めはクロスなんて難しいものを
書くつもりはなかったんですが、気がつくとこうなっていました。
くじけぬよう頑張りたいと思います。
＞水カラスさん
はい、仰られたとおり暴走です。
違う世界の横島たちを呼ぶにはこれが一番いいかなぁ〜、と
思いましたので。
装備品のほうはまだ考えてません、っていうか
アイテムを装備させるかどうかすら考えていませんでした（汗
＞飛竜のしっぽさん
私もプレイしていてそう感じたことがあります。
いきなり召喚して相手を攻撃したら、はい、さよなら〜って
感じですので、そこら辺についても話の中で
書ければいいな、と思っています。
＞川崎さん
横島たちと一緒に呼ばれたのがハサハかどうかは
（ばればれですが）次回を楽しみに、ということで（マテ
＞Ｄ，さん
私も初めはそれも考えていたんですが
双子で出すと、私の技量ではさばききれなくなってしまうので
諦めました。
サモンメンバーも上記の理由で出せるかどうかわかりません。
出せたとしても、かなり後半になると思います。