「まずは挨拶せねばな。わしの名はデモリア。デモラ一族の、長よ」
「そう、デモリア。挨拶してもらったからにはこちらもするのが礼儀ってモンよね。
あたしの名はティオ。
あなた達を封じた先王ダロスの後を継ぐ、魔界の王よ」
「ふえっふえっふえっ。聞いておるよ。
さしたる魔力も芸も無く、ただ運と他人に戦わせる事だけに優れた女王と」
「否定はしないわ。しかし現実にダロスの定めたル−ルに従った戦いの末最後まで残り
長老の承認を得て玉座に座っている。
それは確かよ」
と、いきなり傍らに置いてあった棍を引っつかむと右横の壁に叩き付ける。
「のをぉぉぉぉぉぉぉ」
すると壁からまた一人、ぬるりと姿を見せる若者・・・・ハナヂを出しながら。
「未熟よな、デモンタ−ト。しかし、あながち運だけではないと判ったわ。
とりあえず挨拶も終わったしの。ここは失礼するとしよう」
「あなた達の、いわば最終目的は何なの?」
「当然、破壊じゃよ。
とりあえず魔界を破壊する。魔界の住民を。次は魔界そのものを破壊し、その後は人間界の全てを。
そして壊すものが無くなったら、最後に我等自身を破壊しよう。
それこそは我等一族の永遠の夢、究極の理想」
「そのような事はさせぬ!」
「お主の噂は色々聞いておるぞ、ガッシュ=ベル。
『魔界最強かつ最高の落ちこぼれ』『女王ティオに媚を売り、おこぼれに預かったカス』だのとな。
じゃが噂とはアテにならんもんじゃて。
こうして見ただけでその強さがビンビン伝わってくるわ。
さぞ壊しがいがあるじゃろうな、お主の命は・・・お主の心は」
「絶対にあなた達を止めてみせる!他の誰でもないあなた達のために!」
「よかろう。我等デモラ一族二十六名、止められるものなら止めてみせい。
ホレいくぞぃ」
壁の中に消えていく老人と若者。
後にはただ、若者の流したハナヂが残されていた。
そしてカタンと、宙に止まり続けていたヒトデが床に落ちる。
「先王は・・・ダロスは愛していたのよ。
魔界の全てを・・・魔界の民を・・・
そこに例外など無かった。救いたかったのよ・・・あなた達を・・・」
ぐにゅり
コルルを飲み込んだ泥人形が、姿形を変えていく。
魔物というか、成人女性の姿に。
コルルの面影を残しつつ、二十代半ばっぽい外見に変化したソレは、色気と純真さを併せ持った容貌をしていた。
ちなみになかなかボンッキュッバンである。
「これは・・・見事だわ」
「魔力ガツヨイノカ」
「否定。王位争奪戦の序盤でリタイアしたこともあって魔力は低、体力の類モ極めて低。
だが知性知能一般良識といった『普通さ』が相当高。
しかも・・・おおこレハ!
素晴らシい・・・マスタ−達が望み求められておいでの「アレ」の数値が素晴らしく高。
争奪戦において余程ヨイ相し「『セカン・ナグル』!」
突然ソレの上半身が粉砕される。
泥人形達は周囲を見回し、『敵』を発見する。
「魔王候補『テッド』カクニン」
「捕縛捕縛捕縛」
「『ソルセン』」
後方から魔力を乗せた剣圧が飛来し、多くの泥人形が両断され、崩れていく。
「手前ら・・・女の子イジめたな?楽に死ねると思うなよ!」
「待たれよテッド殿」「なんだよア−ス!」
「そこな少女も居る。ここは引くが賢明であろう」「くうぅぅぅ」
「あううう・・・ゲホンゲホン」
「おお、アンタ無事かい。しょうがねぇな。また今度ブッ飛ばしてやっから楽しみにしてな!」
身を翻し、三十七番目の作戦と決め込むテッドとア−ス。
泥人形達は追撃しようとするが、その時上半身を粉砕された泥人形が触手を伸ばす。
5、6体ほどの同僚を貫くと、自らに取り込んでいく。
やがて再生を果たすが、二十代半ばだったその姿はせいぜい十代半ばになっていた。
それにしてもなかなか『大きく』『くびれて』『大きい』が。
「この地敵首都に極メて近。更なル戦闘は不利益ト認識。
我の得た魔力とアレをマスタ−に献上するこトヲ優先項目の上位に設定」
「了承」「リョウカイ」「肯定」
「アト極めて優先度の高い情報を入手」
「わたし、すこしだけどあのひと(?)に取り込まれて・・・あのひと達の事少しわかったの」
「最優先、かつ最終的目標とスベき存在を認識。そノ優先度女王てぃお以上と推測」
「あの人形さん達のご主人様らが望んでいるのは・・・そして多分一番狙うのは・・・」
「目標存在、個体名」
「「ガッシュ」」
続きます
とりあえずコルル救っちゃいました。
個人的にかなり贔屓なので、あの子。
それにしてもナンか落ち着かないなと思ったら・・・今回ギャグが入ってないな。