「お嬢様、よろしゅうございますか」
「何かしら?」「日本の、清麿さまからお電話です」
「とうとうわたしの望みを受け入れる気になったのかしら?それともまた何かゴタゴタ?」
「いかがいたしましょうか」
「そうね、ちょっと待ってもらってて。手を洗ったら行くわ」「承知致しました」
そしてシェリ−は横に転がっているソレに一瞬目をやり、高級香水入り石鹸で手を洗う。
血に塗れた手をしっかりと。
「といやぁ!」「死ねぇ!」「なんと」
妻と知人が公園に佇んでいるのを見かけたので、ジュ−スをいくつか買う。
近くによって見ると、三人娘中で一番元気&パワフリャなのがバトルってるようだ。
相手は・・・ツインテ−ルの少女と犬と・・・執事?
他の二人は仲間を応援している。
知人にボアジュ−スを、妻に知り合いの外科医に薦められた「ストロベリ−シュガ−ミルク」を渡し、自分は間違えて買った「どろり特濃ピ−チ味」をすする。
独特の咽喉越しがナンともいえん・・・
「ナニやってんだ、ありゃ?」
「さっきまでは普通に公園の施設で遊んでたんですがね、あのツインテ−ルの少女が丸っこい犬と戦いながらやって来たのに薫が乱入したんですよ。
そしたら砂場から執事が生えてきましてね」
「・・・生えた?」
「ええ。それで何故か四つ巴の戦いになったんです」
「あの少女は・・・『大戦鬼』じゃないか」「知ってるの?」
「ああ。近所の『鬼丸飯店』って食堂の子だよ。
ただ豪快かつ乱暴にしてケンカ好き。いつのまにやら誰が呼んだかついたアダ名が『大戦鬼』。
ちなみにあの犬はその娘と互角に戦いうる『地上最強の犬』こと敏行だ」
「死ねぇ!」
「これはご無体なお言葉。しかし生憎27番目の婚約者ミレ−ニュに頭が悪そうで乱暴な女性と
一生胸の小さそうな少女の言葉は聞き入れてはならぬといわれておるので」
「「死なす」」
「で、どうなったんです?」「君には言えない」
「?」「君に言ったらあの爆裂トリオに伝わるだろう。そしたらあの娘らも巻き込む。だから秘密」
「じゃああたしには言ってくれるのね」ここで夫婦から離れる皆元君。
「ああ。ほぼ当事者だからな。・・・ガッシュ絡みのゴタだ。
狙いは俺たち、十年前の戦いでの上位進出者のパ−トナ−。
とりあえずシェリ−には連絡しておいた」
「というと?」
「詳しい事は後だ。とりあえず『敵』はKOした後、地下室に広げたビニ−ルプ−ルにアレを入れて、肩まで漬かって貰っている。
当分動けんだろうな」少々顔をしかめる。
「向こうに行かなきゃならん。ビッグボインの協力も無いと無理だが、合流出来るのは早くて明後日だ。
それまで危険なんで柏木さんとこの旅館に身を隠そう。
シェリ−ももう向かってる」
「ヤツらの名はデモラ一族。あまりの凶暴さと獰猛さに、先代の魔王ダロスが封印した連中よ」
「デモラ?聞き覚えがあるのぉ」
「当然ね。魔界では自分をコントロ−ル出来ない輩のことを『デモラのような』と表現するわ。
名がことわざ扱いされる程よ。
あまりに危険なので三千年前、ダロスは魔王玉座争奪戦に参加させて、いわば洗脳しようとしたわ。
しかし彼らに破壊欲と闘争心はあっても権力欲を持つのは殆どいなかった。
玉座に就くよりいわば魔界を破壊したかったのね」
「なんて連中だ・・・」
「彼らは本当に危険だった。罪を犯して空間湾曲牢獄に幽閉されたデモラの一人は、何も破壊できないので
最後には自分を破壊したわ」
絶句する一同。
「だからあまりにも危ないと判断したダロスは直属の最精鋭を率いて彼らの村に侵攻。
激闘の末彼らを打ち倒し、亜空間に封印したのよ」
「それ程危険なら、なぜ滅ぼさなかったのです?」
「あなたは、どう思う?」「ウム、是非聞きたいの」
「どうかって聞いてるんだ。答えろよ!」
パム−ンがヒトデをひとつ、手裏剣のように壁に投擲する。
すると、おお!見るがいい!そのヒトデが壁に突き刺さる直前に静止するではないか!!
「ホゥ、気付いておったのか」
いかにも好々爺な感じの声が聞こえると、壁から一人の老人が姿を現す。
「まずは挨拶せねばな。わしの名はデモリア。デモラ一族の、長よ」
続きます
少々盛り上がりに掛けますね、今回は。
ところで少々変更致しました。
ベルギムは魔力を取り上げられておりません。
あとツァオロン、デモルトも女王の許可によりある程度魔力を取り戻せるようになっています。
「ツァオロン、デモルト魔力15%回復許可!」「承知致しました」てな感じで。
この危機にあの連中を遊ばせておくのも無駄ですし。