<ディステル>
「そうか、では準備を開始しろオグロ」
「わかりました少尉」
そう言って一人の男が去っていく。彼は昔軍にいたときにスカウトした男だ。
そこそこの腕なので信用している。
「・・・やはり、カズキなのか・・・」
監視からの報告で、ターゲットの一人が彼女の知る男『式森和樹』だと確認している。
「・・皮肉だな、そう思わんか?『ビーストマスター』」
「さすがだな、気配は消してたつもりなんだがな」
物陰から現れるのはビーストマスターと呼ばれる青年。
「ふん、で何のようだ?」
この男が何の用事もなく此処に現れるとは思っていない、つまりは連絡事項があるのだと思っている。
「ああフィアールカが到着した、それとヴィペールの回復も間に合ったぞ」
「そうか」
ヴィペールはこのまえなぞの大やけどをし生死の境をさまよっていたがどうやら奇跡的に回復したようだ。
「一つ、聞いていいか?」
「何だ?」
「ターゲットの式森和樹はお前の言っていた男か?」
男は疑問を尋ねる。少なくてもターゲットの名を確認した時からディステルの様子はおかしかった。もっとも彼ぐらいでなければ気づかないほどだが、
「・・・そうだ。気をつけろよ『シド』奴の戦闘能力はお前より上かもしれん」
「なるほど。そいつはおもしろうだな」
男、冬木士度は笑みを浮かべながら頷く。
「話はそれだけか?」
「いや後一つ・・・ヴィペールのことなんだが」
またか。ディステルは内心嫌になっていた。此処最近の自分の部下の奇行でさり気にストレスで胃を痛めてるのは彼女の悩みの一つだ。
「今度は何をした?」
胃の痛みをこらえながら尋ねる。どうせ今度は覗きの現行犯で捕まったとかそういうのだろうな、と思いながら。
「いやな、なんでも生死の境をさまよったときに『神を見た』と言い出してな、任務そっちのけで宗教活動を・・「今すぐつれ戻せ!!」・・そうか」
胃の辺りを苦しげに抑えながら、命令?するディステルに同情しながら士度は港を後にした。
「絶対に失敗するなこの任務」
胃薬を飲みながら、ディステルは断言した。
<和樹>
何故、俺はこんなところにいるのでしょうか?
「遅いですね、伊庭先生」
いやそんなことはどうでもいい、それより、
「兄さんドイツの歴史ですよ、懐かしいですね」
「和樹、大丈夫?」
「和樹〜今日は大人のデートを楽しみましょう」
「式森!変なことをしたら斬るからな!」
上から雫、イヴ、玖里子さん、凛ちゃんだ。
あの後かおりの悪魔の提案でみんなでいくことになりました。
ちなみにリースは人ごみが苦手なのと、調べ物を頼んだので此処にはいない。
「皆さん!今日は私と和樹さんのデートなんですよ!雫さん腕を組まないでください、イヴちゃん手をつながないでください、玖里子さん抱きつかないで、凛さん和樹さん相手に睨まないでください!!」
最近、胃薬を愛用しています・・・ライブでピンチです(涙)
「にしても、本当に遅いわねあの先生」
玖里子さんが一人ごちる。
あの後何とか騒動は治まり俺の胃の痛みも悪化しないですみましたよ。
それでも何故か女性達は俺を見て顔を赤くし、男どもは俺を殺意をこもった視線で睨む、近いうちに血を吐くな多分。
「確かに先生の遅刻も気になりますが、それより式森の格好は何だ!?」
うん?なんか変かな、三人娘は原作と同じ服(オイ)雫は黄色いワンピース、イヴは黒いシャツと白いスカートをしている。俺も原作と同じ服なので説明は省く(いいのかよ?)原作と違うところといえばいつものサングラスをしていることぐらいかな。
「ラフでいいじゃん」
「明らかに手抜な感じがするぞ、しかも似合わないサングラスまでつけて」
ほっとけ!仕方がないだろ、このサングラスは邪眼防止の『魔眼殺し』なんだから、邪眼はほぼ完璧に制御できるので本当はいらないのだが万が一に備え普段は常につけている、学校では目立つのでつけていないが。
「兄さん、いくらなんでも遅すぎます、そろそろいきませんか?」
「そうだね」
俺は頷くが、雫腕を組むな、お願いだからこれ以上兄さんのストレスを溜めさせないでくれ。
「ちょっと!雫さん。和樹さんから離れてください!!」
「何故ですか?兄妹なのですからかまわないでしょう?」
「だめです。和樹さんと腕を組んでいいのは私だけです」
「別に私は兄が誰と腕を組んでも怒りませんよ。まあどこかのストーカー妄想馬鹿女は論外ですけど」
「ふふふ、いい度胸です。今までの恨み此処で晴らさせてあげます」
どこか遠くに行きたい。
ぶろろろ!!
軽い現実逃避をしていた俺の元に一台の車が突っ込んでくる、マテやオイ。
ふと隣を見るとさっきまで言い争いをしていた、二人がちゃっかりとイヴたちと共に安全圏に逃げてるのを見て思ったよ。
みんな敵だ!
ずがあああん!
俺めがけて突っ込んできた車を横に飛んでかわし、車はガードレールに激突する。
「・・・・俺幸運Eなんだろうなきっと」
朝から車にひき殺されかけるなんてへビィ過ぎるぞ。
「いやははは、失敗、失敗」
大破した車から現れたのは、伊庭かおり。
「顔色悪いがどうした」
「ゲームやりながらの二日酔いだから平気さ」
「そうか」
俺たちは何事もなかったように歩き出そうとするが、
「待ってください、車はどうするんですか」
夕菜が叫ぶ、まああのままじゃまずいよな。
「ああ、大丈夫、あれ紅尉のだから」
「ならよし!」
いざ大ドイツ展に
ドイツ展中央ホールです。
そこで俺達は何処に行くか話し合ってます。
「わたし、このドイツ王室秘宝が見たいです」
「兄さん私はこの帆船がいいです」
「私は雫と同じでいい」
「刀剣・防具一覧もなかなか」
「ヨーロッパいい男祭りとかないの」
「俺は帰りたい」
それぞれ勝手なことを言う。俺は帰りたいんだよ。
「だったら端から見てけば良いだろう。そうすれば全部見られるだろうし」
何処からか眼鏡を取り出し意見を述べるかおり、俺の意見はシカト?
「先生なんで眼鏡を」
「美青年対策さ」
大丈夫かかおり?陽光にやられて頭がおかしくなったか。
「はあ?」
「思わず私に目を奪われるほどの美青年に口説かれるのを阻止するためさ」
「和樹、かおり大丈夫なの?」
イヴが俺に尋ねる。
「イヴ覚えとけ。あれがだめな大人の見本だ」
未だアホなことをほざくかおりを指さしイヴに答える、イヴは黙って頷く。
納得したようだうん。ちょっとづつ成長しているねイヴ、俺は嬉しいよ。
「色んな車がありますね」
夕菜が感心した声を上げ、他のみんなもそれぞれ楽しんでいるようだ。
(そういえば、襲ってきた車もドイツ製だったな)
俺はみんなから少し離れ考えている。
ここ数日何者かの視線を感じていた、それは間違いない。現にリースも似たような視線を感じていたらしい、となると、
「少年、何難しい顔をしているんだ?」
「わかってて聞いてるのか?かおり」
俺は少し睨みながら答える。
「・・・別に、今のところ何もないだろ、だから大丈夫だよ多分」
「だといいがな」
今朝になってその視線が急に消えた。俺はそれが引っかかる。
・・・・此処に来るのも仕組まれたことじゃないよな。
「和樹さん!!なんでそんなところにいるんですか!!こっちに来てください」
そして夕菜に強引につれてかれる俺・・・立場弱いな俺、
「いっぱいありますね」
今いるのは新館、主に歴史に関したものもがあり武器などもおいてある。
「本物ですかねこれ?」
夕菜が展示品を見ながら尋ねる。
「いや、レプリカだ。本物を展示して盗まれでもしたら大損害だからな。だからこういったところではたいてい本物そっくりのレプリカを置き防犯対策をしているわけさ」
まあ俺はドイツで何個か本物を見たことがあるから断言できるのだけどね。
「ということは、兄さん、此処にある武器防具の類も、レプリカですか?」
雫が俺に尋ねる。
「ああ、よく見ろ、どの武器も刃をつぶしてあるだろ。テロ対策のためとはいえ本物の刃をつぶすわけにもいかないしな、・・最も西洋の剣は、元々斬る為ではなく、叩き斬るための剣だから重いんだ、そのため刃がつぶれても使えなくはないぞ」
「そうなんですか」
「「「「「・・・・・・・」」」」」
雫は納得しているが何故か皆さん黙り込む。視線が痛いのですが。
「和樹って妙なことに詳しいのね」
「ああ、しかも剣の用途まで知っているとわな」
「和樹さん確かこの前のテスト全部赤点ぎりぎりでしたけど」
・・・・・やっちゃった。そういえば俺学力低い設定だったけ。
雫が嬉しそうに聞くからついつい答えちゃったよ。
イヴはすごいって目線をしているが、元凶の雫と、中立のかおりは
「「下手に隠すからこんなことになる」」
と目線で訴えてます。まあ確かに本気だせば全教科八十以上は軽いがめんどくさいのよね。
しかも何故か男子の何割かは俺を敵視してるしその上勉強までできたら、殺されそうだしな。こうなったら
「ひどいやみんな、俺がたまたま知ってた知識を披露しただけでそんな目で見るなんて、嫌いだ、うわあああああん」
そう言って俺は一人走り出す、これぞ奥義○ーリーダッシュ止められるものはいないぜ!
途中無精ひげを生やした、聖職者の格好をした陰気くさいおっさんをひいたような気もするが気のせいだろうなきっと。
「遅いなみんな」
銃などが展示してあるところまで一人走り出したが、みんなが追いつくまで壁に寄りかかり待つことにする。
やはり皆さんの視線が痛いよ、もうちょっとましな格好をするべきだったかな。
「遅いね〜」
のんきに待つがふと、懐かしい気配を感じそちらを向くすると、そこには金髪の美女がいた。モデル張りの美人で深みのあるブルーの瞳がどこか懐かしいような、悲しいような目で俺を見る。
「なっ!」
俺は眼を見開く、見間違うはずがない。
賢人会議(ワイズメン・グループ)の実力者でもあり、その中でただ一人俺と戦い生き残っている人物、『血まみれ』ディステル。
「・・・・」
彼女は動かない、俺だと気づいているはずなのだが、そのまましばらく見詰め合う・・・・変化なし、仕方がないので俺は彼女に向かって微笑を浮かべる。
何故かブルーやアルトはこの笑みを浮かべることを『封印指定』並に禁止してるんだよね、あと母と雫も禁止していたな何故だろう?
「(ポッ)・・・なっ////」
ディステルが急に顔を赤くし人ごみの中に消えていく。
「ま・・」
いきなり消えたので追い掛けようとするが・・
「和樹さん!」
夕菜の声がし立ち止まる。他のみんなも追いついたようだ。
「夕菜か?どうした」
「どうしたじゃありません。追いついたと思ったら何故かボーっとしているし」
「えーと、・・」
なんて言おうかな、
「大方、どこかの女にうつつをぬかしていたのだろう」
凛ちゃんきついよ、夕菜を見ると顔つきが阿修羅も真っ青になっていく、雫とイヴがすさまじい殺気を放つのは何故?
「そうなんですか、和樹さん?」
なんて答えろと・・ふっわかってるさ、違うと答えても「嘘をつかないでください」とかいって攻撃するんだろどうせ、なら抵抗してやる覚悟しろ
「ああ、夕菜とは比べるのも愚かしいほどの美女がいたさ!!」
言っちゃった、だけど後悔はしてないぞ、そうこれは人類にとっては小さな一言だが俺にとっては偉大な一言なのさその結果、
「浮気者にはお仕置きです。キシャー」
どごおおおおおおん!!
夕菜の魔法の直撃を食らっても平気さ・・・・・帰りたいな本当に(涙)
<ディステル>
(・・・・カズキ・・・)
ディステルは会って確信した。あれは間違いなく和樹だと。ただ自分の知る和樹と比べて穏やかで暖かい雰囲気を出していたし何より
(この気持ちはなんだ)
胸が苦しい、さっき和樹の微笑を見てから体の調子がおかしい。
(まさかな、・・・・こんな感情捨てたはずだが)
笑顔を浮かべ自分の考えを落ち着かせるが
「ディステル」
びく!!
いきなり背後から声をかけられ思わず銃を取り出すが、
「シドか驚かすな思わず撃つところだったぞ」
「そうか、それは悪かったなだがあんたらしくないぞ、こんな簡単に後ろを取らせるなんて」
「・・・・そうだな」
そう言いながらディステルは落ち着く。和樹とは敵同士だ余計なことは考えるなと心を沈ませる。
「それで用件は?」
「準備が整った、宗教活動をしていたヴィペールもフィアールカが捕まえ、トラップの準備も整ったが」
「どうした?」
「いや、いったい何処の上級妖魔を捕まえるのかと思ってな」
確かに普通の人なら士度ようなリアクションをするだろう、何しろ異常ともいえるほどの配備だ少なくても二人の人間相手の準備ではない。
「念には念をだ。何せ相手は和樹だ、これでもまだ足りないと私は思うがな」
「それほどの化け物なのか?式森和樹は」
「戦えばわかる、奴は並みの妖魔、魔族などとは桁外れの化け物さ」
「そうか・・・どうした・・・・・わかった」
「どうした?士度」
士度の足元にねずみが現れなにかを伝えたみたいだが。
「もうすぐあんたにも連絡があると思うが言うぞ、ヴィペールが何者かに轢かれ重傷だそうだ」
「・・・あいつは私に何か恨みでもあるのか?」
急に痛み出した胃を押さえディステルがうめく。
「苦労するな」
「ああ」
士度が同情する。
その結果作戦開始時刻が一時間ほど遅れたのは秘密。
あとがき
本来ならこの話でバトルに入る予定ですが、思ったより長くなったので次回に伸びました、すいません。
未熟私を見捨てず応援してください。
レス返し>
アポストロフィーエス様>日本の戸籍を紅尉がが用意したためてっとりばやく親戚にしました。
D様>もはや夕菜を元に戻すのは不可能かと
紫苑様>確かに(苦笑)でもきっと見たらいけないパンドラの箱なんですよ
武井雅考様>夕菜は間違いなくSですねきっと
MAGIふぁ様>ご安心をヴィペールはただの間抜けになります、原作のような鬼畜さはありません(苦笑)
33様>雫とタナトスの関係は今のところ60%ぐらいの確立で成立しそうです。
555様>どういった技ですか?私は知らないのでできれば教えてくれるとありがたいです。
雷樹様>夕菜は人の言うことを聞かないで勝手に暴走するので、士度でも無理かと
イジーローズ様>ヴィペールがこんなキャラなのでダークやバイオレンスはありません。シリアスもかけるか不安です。