「スネーク・バイト」
俺は男に向かって右腕を振り下ろす。
ズシャ!
肉を裂き骨を砕く感触が生々しく伝わる。
「くそ、撃て!!」
黒ずくめの男達が一斉に魔術を放つ。
「ちっ!」
俺は木を背にしかわす、男達はなおも魔術を打ち続ける。どうやら俺が『スネーク・バイト』しか使えないと判断し遠距離攻撃で片付けるらしいがいいのか?お前らの目的は俺の捕獲じゃなかったのか。
「よし、いいぞ!このまま、あの『悪魔』を追い詰めろ」
なめられたものだな、貴様らごときが俺を殺そうなど千年早い。
「気孔掌」
俺は木から飛び出し男達のリーダー格に打ち込む。
「がは!」
血を吐き木に激突しそのまま倒れこむ。
「何だと!」
魔術ではない遠距離攻撃に男たちに動揺が走る。
その間に俺は左手にありったけの気を溜め込み上に上げる。
「覚えとけ、魔術を使わなくてもこれぐらいの芸当は可能なんだよ『吼竜波』」
その言葉と共に左腕を振り下ろす。竜の頭の形をした闘気が男たちに直撃し爆発する。
全部で六人残っていたが避けたのが一人、魔術で防いだのが一人か、残りは吹き飛び生きてはいまい。
「くそ!引け、話がちがひいい」
何か言おうとした男のそばに俺が現れ男がびびる。
「うおあああああ」
男が錯乱して魔術を撃つよりも早く俺の「スネーク・バイト」で男を切り裂く。
ずしゃ!
血の水溜りを作り出し男が倒れこむ。
「残りは貴様だけだな」
俺は残った男に近づく。
『・・・・・・り』
「ひいいいうあああああ」
男が恐怖に負け俺に背を向け逃げ出すが、
どごおおおおおん!!!
何処からかやってきた火球の直撃を食らい、消し炭と化す。
『し・・・・・・り・・きろ』
「ずいぶんと容赦がないな?」
俺は火球の飛んできた方向を見る。そこから現れたのは金髪の女性、間違いなく美人の部類に入るが、彼女の纏っている雰囲気は俺たちと同じ殺人者だ。
「恐怖に負け、敵前逃亡をする愚か者には当然の処置だと思うがな、カズキ」
「怖いね、あんたまで出てくるとはね『血まみれ』ディステル」
「・・・たいした化け物だな、これでもこいつらは賢人会議(ワイズメン・グループ)の魔術師狩りの精鋭部隊だぞ。百人近くいたはずだが全滅か」
『しき・・り・・きろ』
「そう思うなら見逃してくれると嬉しいのだがね」
そう言いながら俺は逃げる算段を立てる。何しろ今までの戦いで体力、気、両方をかなり消費したからディステルの相手は正直きつい。
「悪いがそれはできないな。今のお前なら私でも何とかなるかも知れないしな」
かんべんしてください。
『いいかげん・・・・きろ』
「・・仕方がないな、死んでも恨むなよディステル」
そう言いながら俺は構える、相手が相手だ。今の俺では本気でいかなければまずい。
「ふん、『彼』のために我々と来てもらうぞカズキ!」
そして、俺とディステルの殺し合いが始まる。
『いい加減、起きろ式森いいいいいい!!!!!!!!!』
すぱーん!!
俺の頭に衝撃が走る。・・・なんだ?
「やっと起きたか式森」
ふと見ると担任の伊庭かおりが俺を見下ろす。
「あれ?なんでかおりがいるの?」
「それはわたしの授業だからだ」
「そういう台詞はゲームボ−イアドバンスをしまってからいえ」
俺はかおりの右手に持つアドバンスを睨みながら答える。
「ほっとけ!こんな昼間から堂々とどんな夢を見てたんだ?」
「・・・ドイツで金髪美女とダンスをする夢」
「昼間から変な夢を見るな」
変てあなたにも関係ありますよ?
「誰ですか!金髪美女って!!!」
夕菜が突然怒鳴りだす。
「夢の話だ夢の」
「そうだぞ、宮間夢だから落ち着け」
実際は過去本当に会った出来事だがそんなこと言ったらまずいよねきっと。
「たとえ夢とはいえ浮気は浮気です、覚悟してください、キシャー」
俺の目の前が閃光に包まれる。
なんでですか?
・・・・『お前とは出会い方がちがければきっと友人以上の関係になれただろうな』・・・
俺はおそらく敵でありながらかなり心を通じ合わせたであろう、金髪美女の台詞を思い出し意識を手放した・・・
「えらい目にあった」
俺は屋上で昼飯を食べながらため息をつく。
「大丈夫ですか兄さん?」
隣で一緒にご飯を食べている雫が心配そうにたずねる。
「とうぜんの報いです」
なんでだよ。
「兄さん本当に大丈夫ですか?このストーカー馬鹿女に怪我させられて何かあったら私は・・・」
「(ムカ)誰がストーカー馬鹿女ですか!ブラコン女狐」
「別に一言も宮間さんだとは言ってないですよ?もしかして自覚あるんですか」
「・・・未来の義姉に対してずいぶんな口の聞き様ですね」
「・・もう末期ですね。ご冥福を祈ることかできませんよ、『宮間』さん♪」
「どうやらあなたとは永遠に分かり合えない関係のようですね」
「そうですね。せめて私の手で眠らせてあげますよ」
「・・二人とも落ち着け」
「「兄さん(和樹さん)は黙っててください」」
「ハイ!」
怖いです。・・・ああなんか胃が痛くなってきた。
「キシャー」
「マジックアロー」
二人の魔術が激突する、今日もまた争いが始まります。屋上をたむろっている鳥さん私もあなたのように自由になりたいです。
<ディステル>
車の運転席でディステルが目を覚ます。
いつの間にか眠っていた、普段ではありえないなと思う。
(待機とはいえ任務中に眠りこけるとはな)
しかも懐かしい夢を見た。夢の内容は強大な魔力の持ち主でもある少年の捕獲だ。だがそれはいづれも失敗、その少年の化け物じみた強さの前では何の意味も成さなかったがディステルは不思議とその少年に恐怖を感じなかった。
いやむしろ好感を覚えた、どこか弟に似た雰囲気を持ちながらもまったく違う男に。
(何故だろうな?彼に私の本名まで教えたのは)
本名を教えるなんて愚の骨頂でしかない。名前さえ知れば今の世の中たいていのことはわかってしまう、だから本名を教えるなんて本来ならありえない
だがディステルは不思議と後悔していない。
(・・・・・カズキ)
こんこん
窓を叩かれ目を向ける、そこには一人の男がいた、黒髪のつんつん頭、鋭い目つきをしたバンダナをした男。
「何のようだ?」
窓を開けディステルが男に聞く。
「定期連絡だ、ターゲットはいつもどうりだとさ。それと根回しの方も八割がた完了している。」
「そうか、このぶんなら今週中には行動が開始できそうだな」
「『血まみれ』とも呼ばれるあんたがずいぶんと慎重だな、此処は『魔術』関係者にとっては中立だろ?」
「その代わりクロノスの影響が強い。現にこの国の高官の五分の一がクロノスの幹部だ。下手に奴らにちょっかいをだしナンバーズにでてこられたら面倒だ。いくら『ビーストマスター』と呼ばれる君でもナンバーズの相手はつらいだろう?」
「確かにな、負ける気はないが面倒なのは確かだ」
男の肩に一匹の鳥が止まり、泣き出す。しばらく黙って聞いていたが突然ため息をつく。
「動物の言葉がわかるというのは便利だな」
最初は正気を疑ったが、今では納得している。魔術ではない異能の力、それゆえに男が体験した悲惨な過去も創造できる。
「まあな、人間はこいつらの言葉に耳を傾けようとしないからな」
皮肉気に言うがディステルは気にした様子はない。元々男は自分の部下ではなく雇われの身だ。腕は確かなのでたいした問題ではないしそこそこの付き合いなので信用もしている。
「ところで、さっきのため息は何だ?」
「・・・ヴィペールが幼稚園児相手に本気でナンパしているらしい」
「・・・・帰りたいと思うのは、不謹慎か?」
「同情するよ、ディステル」
<夕菜>
「宮間さん」
夕菜は突然声をかけられる。
「えっと、菫さん?」
「はい」
菫と呼ばれた女性がうなずく。彼女は半月ほど前に転校してきたのだが、特に目立つところもないため特に注目はされてない。
「宮間さん歴史に興味ありますか?」
「少しは」
「良かった!実はドイツ展のチケットがあるのだけど、私ちょうどその日用事があっていけないのよ。でも捨てるのはもったいないでしょ、だから」
「え、でも」
「くす、式森君を誘えばデートになりますよ」
「え、えっどうして」
夕菜は驚いた、和樹が学校では「恋人」とか「付き合う」といったことを嫌がるため、学校ではあまり言わないようにしているのだ・・・あくまで本人の感覚では、
「見ればわかります、式森君とは何処まで?」
「全然です」
そう夕菜と和樹の関係はまったく進んでいない。それどころか最近では紅尉の親戚らしい少女や夕菜の天敵のブラコン妹まで現れ、夕菜はあせっていた。
「だったら是非、これでデートしてください。きっとうまくいきますよ」
「はいありがとうございます」
このとき夕菜は和樹とデートで浮かれていて気づかなかった。菫の薄気味悪い笑いに。
<和樹>
「久しぶりだな、こうやって一人で帰るの」
疲れた、何せ夕菜達が来てからのんびりとできたことなど一度もない。しかも最近は雫が夕菜に絡むからストレスが倍増です。
最近胃薬を愛用し始めているのは悲しいです。リースやイヴからは「「平気?」」と悲しそうに言われましたよ。
明日は休みだしリースとイヴの三人でのんびりしたいね・・・
ききー
突然車が俺の隣に止まり、ドアが開く。
「何ですか?」
男が口を塞ぎ車の中に押し込もうとする。
(誘拐ですか?勘弁してください)
「和樹さん!」
遠くから夕菜の声が聞こえる。その声を聞き男達が慌てる。
「早く出せ」
出されても困るんだがね。俺は捕まえてる男の足を思いっきりふんずける。
「つ!!」
男の力が緩んだ隙にひじで相手の鼻をぶつける。
「貴様」
そしてそのまま男の右腕をつかみ。
「スネーク・・」
バイトを放つ前に爆発音がなり俺は爆風で飛ばされる。
痛い(涙)
「くそ、出せ」
男を乗せると車はそのまま走り出す、なんだったんだいったい?
「大丈夫ですか和樹さん?」
「夕菜がやったのこれ」
これとはさっきの魔術だ、あんな至近距離で爆発して俺に傷一つつけないなんてかなり高レベルの魔術師の仕業だ。
「いえ・・その私もいきなりのことで何もできなくて・・ごめんなさい」
夕菜が謝る。夕菜じゃないとすると、
「あーらら、いっちゃったか。メルセデスの280SEクーペなんて、また渋い車使ったもんだね。修理するのに金、かかるぞあれ」
「先生」
やはりかおりか、
「で、犯人の心当たりは?」
「さあ」
此処はかおりのマンション。一応治療のためお邪魔しているが、相変わらずゲームしかないな、一応いい年した女性だろお前。
「まあ君が狙われることなんてなさそうだしね」
「そんなことありません、和樹さんは世界一の魔術師です。だから狙われたんですよきっと」
「そうか?」
夕菜の意見に俺は首をかしげる。正直いまさら俺を狙う組織がいるとは思えない。何せブルーやらアルトが圧力をかけたりしているし、実際俺を狙った組織は俺の手でほぼすべて壊滅している。
「でもそれはご先祖だろ」
俺自身は魔法回数七回の落ちこぼれだし。
「そういえば、君ってすごいご先祖様がいたんだっけ」
かおり借りにも教師なんだから忘れるなよ。
「まあ家でおとなしくしてますよ」
めんどくさいし。
「それが一番だ、まあ少なくても今度の土日はおとなしくしていろ」
「だめです!!」
かおりの意見に夕菜が叫ぶ。
「今度の休みは私とデートするんです、だからだめです!!」
マテやこらはじめて聞いたぞ。
「宮間、一応式森は狙われたんだぞ?少なくても落ち着くまで外出は控えたほうが」
「だめです!!絶対デートするんです!!今週が最後なんですよドイツ展」
ドイツの歴史なんて興味ないぞ、俺は。
「・・・・仕方ないな、じゃあこれならどうだ?」
かおりのナイスな意見で、俺のストレスがまた溜まりました。
<ディステル>
「勝手なことをしてくれたな」
ディステルは目の前のヴィぺールを睨む。
「仕方がねえだろ、これは海より深いわけがあったんだからよ」
「その結果鼻骨骨折、右腕もひびが入る怪我か?」
「くっ」
ディステルの言葉にヴィペールが黙り込む。
「そうかしら、確かに失敗はしたけどやれるときにやるのは正しいわよ」
黙って聞いてた小柄な女性が口を出す。
「フィアールカ、その結果対象の護衛に邪魔されターゲットに警戒されてもか」
「彼にだって理由があるはずよ」
「良くぞ聞いてくれたフィアールカ!実はかすみちゃん五歳の住所をあと少しで聞きだせると思ったら警察に通報され追われてむしゃくしゃしてたところにターゲットがいたからつい勢いで・・」
「「死ね!!ばかもの!!!!!!」」
ずががあああああん!!!!
女二人の魔術がヴィペールを消し炭にする。
「どうするんだ?この『人類の敵』のせいで計画が大幅にくるったぞ」
「・・・大丈夫よ、ターゲットは今度の土曜に必ず例の場所に現れるわよ・・・多分」
「だといいがな・・・」
ディステルは頭を抱えながら外にでる。
・・・・・たぶんこの計画は失敗するな、と思いながら。
あとがき
がんばります、次回あたりから戦闘が始まります。
まだ賢人会義編はかかりますが、見捨てず応援してください。
レス返し>
紫苑様>イセリアル・ブラストですか・・・どうでしょうか?使ったら問答無用な強さを持ちそうな気がしますが・・
33様>これからも雫嬢を応援してください。
555様>一応元ネタは、雷樹さまの言うとうりダイの大冒険ですよ。でも夕菜のエッグカードを使ったら問答無用で「デビルキシャー」になるような気がしますけど。
MAGIふぁ様>此処のヴィペールはある意味原作以上に恐ろしい存在です(苦笑)
D様>夕菜たちが濃すぎるだけだと思いますが・・
雷樹様>これからも応援してください。
武井雅考様>和樹の過去はそのうちちょっとずつ明らかになります。」