▽レス始▼レス末
「せめて異なる可能性を・4(GS)」け〜ご (2004.11.24 21:58)

シャドウの試練も無事終わり、基本スペックの底上げもなんとか終わった。
そうして俺の修行も基本に移っていったのだが。

座禅を組み、精神を集中し、体中に霊気を行き渡らせる。

「どうかな?」
質問

「駄目ですね」
返答

『まったく駄目だな』
にべもない

顔で泣き、心でも泣く俺に、
最近すっかり教師モードが板についた小竜姫様が説教を始める。

「まったく、どうして本来ならワンステップ上の事が出来て、こういう基本事項が出来ないのかしら」

いいですか?と正座している俺に対して、耳に蛸ができる程聞いた内容を繰り返す。

なんでもGSというものが妖怪や魑魅魍魎と張り合えるのは霊気のおかげなんだとか。
霊気を全身に行き渡らせて身体能力をあげる。
そのおかげで人間離れした相手にもこちらも人間離れした動きで対抗できるんだとか。

確かに戦っている時には普段では出ないような早さで走れたり、高く跳ぶ事もできた。
その事を話したら、確かにそれはそれでいいらしいがきちんと修行した人に比べるとやはり効率が悪いらしい。

そんな訳で瞑想しながら霊力を全身に行き渡らせてみたのだが、
あっさり一言で切り捨てられたとさ。

「潜在能力は確かにある筈なんですけどねぇ」

『すまぬな、小竜姫様。コヤツには後でちゃんと指導しておく』

教師二人組は俺の出来の悪さに新たなカリキュラムを立てようと話し合っている。
二人と言うのは、勿論一人は小竜姫様だ。
そしてもう一人は俺の頭に巻き付いたバンダナの心眼。

基本の指導ならば彼が適任ですね、と小竜姫様が生み出してくれたのだ。
方法は記憶にあったのと同じく、バンダナへのキス。
その時に俺が暴走して小竜姫様に叩きのめされたのはまた別の話だ。




「なぁ、俺って本当に才能あるのか?」

朝の修行も終わり、今は門前の掃除の真っ最中。
誰も来ないのに掃除する意味はあるのか、疑問になるが、
これも修行の一環と言われれば否は言えない。

『才能ならば間違いなくある。小竜姫様のシャドウさえも倒したのだからな』

「そうだ、我らをあっさりと倒したのだ。自信を持て」
と、心眼と鬼門達。

でもなぁ…

「基本も満足にできてないんだぞ?」

『そう焦るな。おヌシの成長は早い。これも本来なら二年や三年では修められない様な事なのだ』

「そうか…」

気を取り直して箒でゴミを掃き、雑巾で鬼門達を磨いてやる。

「お、おぅ、すまぬな横島殿」

風雨にさらされて薄汚れてしまっている鬼門達だ。
たまには綺麗にしてやらんとな。

「なに、気にすんな。これも修行だ」

手の届かない場所は『栄光の手』を伸ばして拭いてやる。
…霊能力をこんな事につかっていいのかと疑問は残るが。

「む、横島殿。来客のようだ。内に入られい」
と、誰かが来たらしい。

「ああ、がんばれよ。右の、左の」

掃除用具を片付け、重い門が閉まる。


さて、どんな奴が来たのだろうか。
門の横にある覗き口からそっと外の様子を窺ってみる。

「―の内側に入りたければ我らを倒し―ぐはぁ!」

「あぁ!?左のぉっ!」
って、いきなりやられてるな。

一体誰なんだ?と更に様子を窺ってみると…

「って、親父ぃっ!?」

そんな馬鹿なと記憶をあさってみると確かにこの時期に親父が来日していた。

それにしても―
「よくも、左のをぉっ!許さんっ!」

「えぇぃ、やかましいっ!化け物なんぞ怖がっていて日本のサラリーマンが務まるかぁっ!」

人間離れした動きで右の鬼門の攻撃をかわして、手に持ったナイフで切り掛かる。

「ぐ―ぬぅ…無念…」

がっくりと崩れ落ちる右の鬼門。

「はーっはっはっ!企業戦士を舐めるなよ!」

ナイフを掲げ高笑いする親父。怪しい事この上ない。
職務質問レベルだ。

『お前の父親は本当に人間なのか?』
言うな、俺にもわからん。
とにかく門を開けなきゃならんだろう。

中から門を押し開き親父に声をかける。

「親父…こんな所まで何しにきたんだ?」

声かけた瞬間高笑いをピタリと止め、骨が折れるんじゃないかと思うような速度で振り向く親父。
その表情は幽鬼のようで非常に怖い。

「た〜だ〜お〜、探したぞぉ〜」

「な、なんだよ?」

「なんだもクソもあるかぁっ!この馬鹿息子がぁっ!」
一閃
頭を思いっきりはたかれた。





どうもこの親父、久しぶりに帰国したら俺の姿が見当たらないので、あちこち探し回ったらしい。
それで此処にたどり着いたらしいのだが

「なんと美しいお嬢さんだ。どうです、僕と愛を語らいませんか?」

「なるほど、貴方が横島さんのお父様ですか」
納得しましたといった表情の小竜姫様

「ええ、大樹と申します。愚息が世話になってるようで」
と、小竜姫様の手を握る親父。

「何やってんだ、このクソ親父」
今度は俺が頭をはたいてやる。

「でっ、何しやがるこの愚息がぁ」

「愚息愚息五月蝿いわっ!この中年エロ親父。こちとら今から訓練なんだから邪魔すんなよ」
午後からは小竜姫様の体術訓練だ。

朝に霊力、昼に体術、夜は自主練というのが此処での生活のローテーション。
その合間に掃除などの雑務が入ることになっている。

「…ほぅ、訓練ですか。見学してもよろしいですか?」
何を思ったのか妙な事言い出す親父。

「ええ、それくらいなら構いませんよ」

「なんだよ、もう帰るんじゃないのか、親父」

「何、少しばかり確かめたい事があるだけだ」

わからん事いいながら、妙な笑みを浮かべる親父を伴い、俺達は修行場へ向かった。







痛みで目が覚めた。

「っつー」

体の節々が痛む。
毎日の様に体術の訓練をしているが一向に小竜姫様に勝てる気がしない。
シャドウの時の事を根にもってるのかは知らないが、本当に容赦ない。

「目、覚めたか?忠夫」

ふ、と横を見れば親父。
訓練中もずっとこちらを見ていたが、
小竜姫様も引き上げたのにまだ此処にいるのは驚いた。
親父の事だから小竜姫様についていくと思ったんだが。

「まったく…暫く見ない内に一人前の男の顔するようになりやがって」
この野郎と頭をぐしぐしなぜてくる。

なんだか酷くこそばゆい。

「ったく、やめろよな」

だからその手をはねのけた。
そんな事には全く意に介さずに話を続ける親父。

「此処に来たのはな、学校ほうり出して、バイトもほうり出した馬鹿息子を一喝しにきたんだがな」

俺の顔を見据え直してくる。

「こんな男の顔になって、そんなボロボロになってまでやってるんだしな。好い加減な気持ちじゃぁ無いみたいだな」

「親父…」

何処か遠い目、そして優しい目をしながら俺を見詰めてくる。

「ま、協力してやるよ。学校に休学届けだして、アパートの家賃も払っといてやる」
だから満足するまで此処にいるんだな、と立ち上がる。

「そうだを餞別をくれてやる。希少金属採掘場を襲って来たゲリラから巻き上げたもんだ。」
胸元からナイフを取りだし、俺に渡す。

「何人もの血を吸ってる業物だぞ。それに鬼退治もできる」
鬼ってのは鬼門達の事だな。

俺は、呵々と笑いながら帰ろうとする親父を呼び止めた。

「親父!その…ありがとう。迷惑かける」

そんな俺に軽く手を上げて応え

「ま、母ちゃんにもうまく言っといてやるよ。じゃあな、忠夫」

そう言って立ち去る親父の後ろ姿に、
何か敵わないなと感じた。

『良い父上だな』
なんだ起きてたのか心眼。

「…だろう?最高さ」

いつかあんな男になりたい、そう感じさせられた久方ぶりの出会いだった。




<後書き>
今回は親父と息子の話。
まぁ、親父が理解ある人だったり、強かったり無茶苦茶です。
勢いのまま書いたのでいつもより荒い部分があるのはどうかご容赦してください。
これでイメージが固まってる部分は書き終わってしまったので更新速度は落ちる事でしょう…
まぁ、テンション次第になりますが…
それでは次のお話までさいならですー


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△記事頭
  1. あいかわらず、まじめモードだと強い親ですね。
    横島も横島です!以前の君なら、石像とはいえ男の体を洗うなんてこと、バイト代が減ってもしなかったはずなのに!!!
    まさのりん(2004.11.24 22:22)】
  2. 父親のイベントはこうなったのですか。確かにあのグレートマザーほどでないにしても父親なんですから、息子が知らせもせずに学校やめてたら確かめにいきますよね。敬意を表して親父ではなく父親と表記させていただきます!
    このあと気合入れて自分をはめたあの部長をたたきのめしにいく姿が目に浮かびます。いつも以上にやる気に満ちているような気がします。
    九尾(2004.11.24 22:28)】
  3. まじめモードだと言い父親ですね、大樹。
    横島が鬼門の体を洗うとは!
    今の時点で心眼が登場ですか。
    紫苑(2004.11.24 22:57)】
  4. はじめまして。レスを初めて書かせてもらいます。たしかに、このような父親になってみたいですね。男気を大いに感じさせます。この横島も多くの場所で、不遇な目にあっている鬼門にもやさしいですし。次回も頑張ってください。
    十六式(2004.11.24 23:03)】
  5. >「はーっはっはっ!企業戦士を舐めるなよ!」

    あんたは野○社員ツキシマか!?
    kuesu(2004.11.24 23:10)】
  6. 親父、なんと言っていいのか・・・・流石にゲリラを”証拠”として連行(?)して帰国するだけはあります。
    そう考えると”まじめモード”があるからこそ”伝説のOL”を口説けたんでしょうな。

    鬼門よ、そこまでしてもらったのって初めてじゃないか?
    他のSSでは「自分でする」か「放置」しか見てないぞ。
    sirius(2004.11.24 23:14)】
  7. 初めてのレスです。義王(ぎおう)といいます。

    大樹かっこいい!!エロいのはしょうが無いとして・・・。
    大樹もここで修行していけばいいのに・・。たぶんかなりの実力者になると思う。
    義王(2004.11.24 23:16)】
  8. さすがはオラオララッシュで悪霊を殴り倒した漢。鬼門さえ倒しますか。(汗
    いつか乗り越えるべき壁を立ち去る後ろ姿に映して去っていた大樹さん。何というか、久々に「父親」を見させてくれた御方でした。
    大仏(2004.11.24 23:18)】
  9. 久し振りに父親らしい大樹を読んだ気がします。
    横島の霊力が高いのは、前世が陰陽師だけではなく悪霊をボコる大樹と、何故か神通棍が使える百合子の息子だからでしょうね。もしこの夫婦がGSだったら、最凶夫婦として恐れられそうだ。
    ろろた(2004.11.24 23:40)】
  10.  横島が規格外なのは、両親の規格外さを受け継いだからとか?(^^;;;;
     でも大樹がボクシングスタイルで悪霊を殴り飛ばしてるのはアシュ編で出てるし・・・・・・もしかして横島家って何かあるとか?

     最後に!小竜姫様は意外に負けず嫌いと・・・・
    D,(2004.11.25 00:04)】
  11. イイ親父してますねぇ大樹…
    鬼門は、横島君に洗われてこのお話では扱い良いのかな?…と思ってたら一応一般人な大樹に叩きのめされてるし…でもその方が鬼門らしいw
    偽バルタン(2004.11.25 03:20)】
  12. 大樹さん、凄ぇ。そして何だかんだと、いい父親ですよね。きっちりと、見るべき所は見て、認める事ができるんですから。しかし学校とか家賃とか、何もしないまま来てたんだね、横島くん・・。
    それから鬼門・・掃除してもらえて良かったねぇ。横島くんもいい子だなぁ(笑)
    柳野雫(2004.11.25 04:01)】
  13. 考えたら、横島夫妻って結構良い両親なんですよね。
    自分の息子のことをちゃんと理解してますから。

    でも、この大樹ハイパーモードの発生はなんかのフラグなのかw
    水カラス(2004.11.25 06:15)】
  14. 「愚息」と言う言葉はあまり使わないほうがいいですよ、
    ギャグ作品だからいいですけど、実際にあれはかなり傷つきます。
    横島君が才能ありながら直ぐに開花しなかったのは美神と親父のせいだと思ってます。
    強くなったのは小竜姫のおかげですね。
    謎の横島ファン(2004.11.25 09:06)】
  15. 初めまして、亮といいます。
    親父さん、鬼門を倒す最短記録を更新したのでは?相変わらず親子共々常識の通じない奴等ですね。
    親父がくれたナイフは、横島の今後のメインウェポンですか?GSの試験のときはそのナイフを持ち込むとか・・・?
    (2004.11.25 18:49)】

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