▽レス始▼レス末
「せめて異なる可能性を・3(GS)」け〜ご (2004.11.24 20:51)

険しい山道をなんとか上りきり、目の前に見える小竜姫様の住み処。
ちょっと前に壊れたばっかなのに今はもう立派に建て直されている。
門には相も変わらず、装飾の様に張り付いた鬼門達。

「よ、鬼門達」

「む、横島とかいったな。何用か」

「修行しにきたんだ。小竜姫様いるか?」

馬鹿でかい鬼門の顔を見ながら尋ねる。

「確かにおられるが…」
「まず我らにその実力を示せ!」

門の左右から鬼門達の体が出てきて、俺に向かってくる。

内心やっぱりな、と溜息をつく。
こいつらには悪いがもう対策済みだ。

「行くぞ!左の!」
「おう、右のよ!」




鬼門達から修行希望者が来たとの連絡が来た。
最近はどうも忙しい。
少し前に美神さん達が来たばかり。
以前から、まだ一年もたたない内に次の修行者がくるというのは此処では稀有の事だ。

っと、早いですね。
もう試験を始めたのですか。
私も急がなければなりませんね。


まず、修行希望者の姿を見て驚いた。
以前美神さんの付き人として同行してきた横島さんだ。

次に驚いたのは既に勝負がついていた事。
私が見れたのは横島さんが左の鬼門を霊気を纏わせた手で殴り倒している場面だけだった。

かかった時間は15秒。
最短記録には及ばないが十分に早い記録だ。
潜在能力はあると思っていましたが、
あれからこんな短期間で鬼門達を倒す実力を身につけるとは、驚くべき才能です。
これは逸材ですね。




襲い掛かってくる右と左の鬼門。
悪いけどまともに相手するつもりは無い。

「必殺!サイキック猫だまし!」
まずはコレ、視界を封じる。

以前に美神さんが使った方法のアレンジ。
あれは確かに変則的だが、実に良い方法だった。

「ぬぉっ!何も見えんぞ左のっ」
「俺もだ右のよっ!」

狼狽してる所悪いが…これでチェックだ。
猫騙しと同時に展開したサイキックソーサーを右の鬼門に投げ付けるっ!

―豪ッ

小爆発、崩れ落ちる鬼門。
そして『栄光の手』を手に纏わせ、左のに殴りかかる。

「うぉぉぉぉぉっ!」

鬼門の膝を踏み台にして、『栄光の手』で腹部を殴る。

「がぁっ!」

同じ様に崩れ落ちる左の鬼門。
と、同時に

「そこまでっ!」
勇ましく戦いを止め、門が開らいた小竜姫様の姿が見えた。
「お久しぶりですね。横島さん」

相変わらず綺麗な人…というより可憐な人だ。
この俺がそんなお人を目の前に何もしないでいられるだろうか?
いや、いられないっ!

「お久しぶりです、小竜姫様っ!再会の喜びを僕と布団の上で―ぐばぁっ!」
その姿を確認した瞬間、半ば本能的に飛び掛かってしまったが一瞬で叩きのめされた。

「前にも言いましたが、あまり無礼な事をすると―」
首筋に冷たい感触、小竜姫様の神剣だ。

「―こうですよ?」

にっこりと華も咲くような笑みでえらい物騒な宣告をなされた。

「は、はひ…」



あの後、なんとか剣をおさめてもらえた。今は中の修行場へ向かいながら今後の事について話し合っている最中だ。

「では一年近く此処に?」
少し驚かれた様な小竜姫様。

「この前霊能力に目覚めたばっかりなんで、基本のキの字も解らないんスよ」
笑いながら
一応、基本からのコースもあるんですよね?
と聞くと呆れた様な視線が返ってきた。

「えっと、もしかして無いとか?」
そんな表情されると不安になる。

「いえ、あるにはありますよ。ただ…」

「ただ?」

「普通は基本のキの字もしらない人は鬼門をあんなに簡単に倒せないんですよ」

だから少し呆れてるんです、と小竜姫様。

なるほど
まぁ、俺は色んな意味でズルしてるから、そう言われるのも仕方がない。

「それで結局どうします?」

「え?あぁっと…。とりあえず、この前美神さんのやったシャドウの訓練をしたいっスね。その後、基本を修めて、最後に一番キッツイのお願いします」

はぁ、とまた呆れた様子の小竜姫様。

「普通は基本を修めてからシャドウの試練を行うんですがねぇ。まぁ鬼門を倒す実力があれば大丈夫でしょう」

こちらで書類へのサインと着替えを、と部屋に案内された。





書類へのサインも無事終わり、以前と同じ導師服に着替える。
以前と違うのは修行をうけるのが俺だという事だ。

「修行の方法は以前見てたからわかりますね?では、そこの法円に」

シャドウかぁ…。
以前と同じ道化だったら嫌だなぁ。
などと思いつつ法円の上に立つ。

「―っぅ」
瞬間、体の奥から何かがズルリ抜き出される感覚。
思わず呻いてしまったが、目の前のシャドウを見て、今度は絶句した。

「へぇ、道化の次は女性のシャドウですか。短期間でここまでシャドウが変わる方も珍しいですね」

そう―それはルシオラに良く似た姿をしていた。

「どうしました?始めますよ?」

自分のシャドウを見て絶句してる俺を妙に思って尋ねてくる小竜姫様。

「え?あ、はい。宜しくお願いします」

慌てて礼をする。

「では…剛練武でませいっ!」
小竜姫様の声と共に舞台に現れる巨人。

「よろしいですね?では…始めぃっ!」
声と共に唸り声をあげながら、こちらに向かってくる剛練武。

―さてルシオラ…力を貸してくれ。
そう念じながらシャドウと意識をつなげる。

その一瞬だけ

―シャドウの顔がこちらに向かって微笑んだ気がした―

「―っ。行くぞっ!」

その瞬間、何か意識したわけでもない。
ただ自然に俺はシャドウであり、シャドウはルシオラであって、俺でもある事を理解した。







剛練武をだし、試合の合図を出した後でさえ、横島さんは微動だにしなかった。
ただ、じっと自らのシャドウを見詰めているだけ。

その動きが変わったのは横島さんが自分のシャドウに呼び掛けた瞬間だった。

一瞬でシャドウと完璧に同調し

―少し前まではまともに動かす事さえできなかったシャドウを

一瞬で剛練武の懐にもぐり込み

―美神さんのシャドウをも上回る早さで

一瞬で剛練武の目を潰した

―圧倒的な破壊力でだ


茫然とする。

これがシャドウを満足に動かせなかった者の動きだろうか?

これが何の攻撃力をもたなかったシャドウの攻撃だろうか?

あまりに急激な成長だった。


「あの、小竜姫様?次の奴は…」

ただただ唖然とした様子の私を不自然に思ったのか横島さんがこちらに呼び掛けてきた。

「あ、はい。その前に…これで霊耐久力が上がりました」

私の竜気と剛練武の残滓をブレンドして横島さんのシャドウに与える。
装具が増え、見た目にも力を増した事がわかる。
ただ、何処か悲しい目でシャドウを見ている横島さんが些か気になった。
それでも、試験は続く。

「次っ!禍刀羅守でませいっ!」

眼前に現れるは蜘蛛のような生物。
それは奇妙な声を発しながら合図も待たずに飛び掛かろうとする、が

「禍刀羅守…また仕置きされたいのですね」
私はスッと眼を細め、小さな声で呟く。
途端動きを止めて油の切れた機械の如く頷く禍刀羅守。
どうやら『教育』の成果はあったようですね。


「それでは…始めっ!」
合図と共に猛然と襲い掛かる禍刀羅守。

それをシャドウは円を描くように後退しながら捌いていく。
妙ですね、あれ程のシャドウなら、禍刀羅守程度力で無理矢理御せる筈なんですが。

そこで彼の狙いに気付く。
痺れを切らした禍刀羅守はますます攻撃を激しくするが

―そこに出来る隙

横島さんのシャドウが動く、禍刀羅守の攻撃の『後』を取り…霊波を纏わせた左手を下から振り上げるっ!

轟音。

そして舞い上がりながら消え行く禍刀羅守。
…………
まったくもって空恐ろしい力です。

先ほどと同じ様に禍刀羅守の残滓と竜気をまぜ、シャドウに与える。

「これで、霊攻撃力が上がった筈です」
と、見た目には何も変化はないようですね。

「次は私とです。先ほどまでの様に上手くいくとは思わぬ事ですね」

気を引き締めなければなるまい。
今までの結果からもわかるが、尋常な力ではない。

「その前に少し休んでもいいですか?」
と、横島さん。

「まぁ、いいでしょう」

私は身にシャドウを纏い、壇上にあがった。
横島さんはと言うと、目をつぶりながらシャドウと向き合っているだけだ。

「そろそろ宜しいですね?」

「あ、はい。宜しくお願いします」

シャドウをこちらに向かい合わせ、構えらしきものをとらせた。

「それでは…行きますっ!」

自らの出した開始の合図と同時に一息で切り掛かる。

どうにも嫌な予感がする。これは―長引かせたくはない

この一撃で決めますっ!

神剣を一気に振りおろす。

とった!

そう確信し、剣を振り下ろした瞬間―横島さんのシャドウは霞と散った。






目をつぶりシャドウと向き合う。
確かにコイツはルシオラで、俺で、やっぱりルシオラの化身なのだ。
再確認し終わった所で小竜姫様の声がかかる。

よし…これで行こう。

小竜姫様はもう臨戦体制に入っている。
後はお互い勝負の時を待つだけ。

「それでは…行きます!」
って、いきなり全開か小竜姫様。

だが、今回に限って言えば好都合。

小竜姫様がシャドウに切り掛かる、が

「なっ…!」

そのシャドウは幻。
本体は空振り、たたらを踏んだ小竜姫様の横。
その無防備な首に麻酔を叩き込む。

―幻影と麻酔、ルシオラの技だ。

「きゃぁ…!」

不安定な体制を後ろから叩かれた上に麻酔まで使われたのだ。
流石の小竜姫様も倒れるしかないだろう。
俺は倒れ伏す小竜姫様に声をかける。

「ふぅ…勝負は俺の勝ちですね。小竜姫様」


………


って、小竜姫様?

駄目だ、寝てるみたいだ。

竜神族に麻酔がどれだけ効くか知らないが当分目は覚めないだろう。
困った事態になったな…
仕方ないか、俺も寝よう。

妙神山を登りきり、スグに修行だ。流石に疲れた。

空を見上げる様に寝転ぶ俺、感じるひざ枕の感触。
見上げればシャドウの顔。

コイツは俺で、ルシオラで、やっぱり俺。

妙な気分になりながらも、
悪くはないな、と体を預ける。

何時か会うだろう、この世界のルシオラ。
彼女への思いを馳せながら、俺は静かに目を閉じた。



<後書き>
こんな文でいいのかと戦々恐々としながら投稿してるけ〜ごです。
おかしな点不自然な点があったらどうぞご指摘お願いします。
しかし禍刀羅守を倒した時に上がる能力ってなんなんでしょーね、と疑問に思いながら書いてました。
次はあの人がやってくるお話。
拙い作品ですが見捨てないでくださいね。
では…
追伸、文殊の色は緑でしたか(汗
このSSではもう青色ということでお願いしますね(泣

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△記事頭
  1.  横島の現在のシャドーはルシオラをベースに、横島の因子も受け継ぐって感じですねぇ・・・・・ある意味横島とルシオラの子供か、ルシオラが横島の子供として産まれた状態ですかねぇ・・・・
     あと、禍刀羅守は攻撃力が上がったと・・・・・・私が昔書いた蛍(横島の娘)やルシオラは格闘タイプでしたから・・・・私がパワーアップさせるとしたら、手甲とか、スネ当て、などの接近戦格闘武器の強化ですかねぇ・・・・

     最後に!!横島にはどんな変化をもたらすんだろ・・・・・・

     叫び!!基本のキの字も知らない横島にあっさり負けた小竜姫が落ちこみそうだ!!!!
    D,(2004.11.24 21:16)】
  2. 前も思いましたが、面白いです。
    横島のシャドウがルシオラそっくりですか。
    潜在能力を持っていると、横島の事を考えている小竜姫様は凄いですね。
    これだと、GS試験での小竜姫様のキスイベントは起きないんですか?
    紫苑(2004.11.24 21:17)】
  3. こっちの世界のルシオラと出会ったときの小竜姫様の反応がどうなるんでしょうね。
    まぁ、原作ではルシオラと小竜姫様がガチで出会うというのは無かった気がしますがこっちではどうでしょう。
    それに、妙神山にはヒャクメが来る可能性が大。
    ペスとして、逆天号に乗るからなにやらばれる可能性が……
    水カラス(2004.11.24 21:43)】
  4. まずは基本スペックのUP成功ですね。完全に同調した時の流れは、心がつながったという感じで感慨深かったです。
    ここの横島が仮に魔装術をやったらどういう姿になるんでしょうね?
    九尾(2004.11.24 21:48)】

▲記事頭


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