夢から―覚めた。
「ここは…俺の部屋…だよ…な?」
わからない、今まで見てた夢。
俺は確かに昨日はパイパーを倒して、
無事元に戻った美神さん達と一緒に事務所に帰って…。
いつもの様にシャワーを覗いて叩きのめされて
ボロボロになって帰った…んだよな?
なんだ?―今の夢。
GS試験に元始風水盤、死津喪比女、妙神山で修業?訳がわからない。
アシュタロスだって?
それにルシオラ…?
なんなんだよ、今の夢は…
さっぱり訳がわからない。
頭の中を整理するために水を飲む為に立ち上がると
「…文珠?」
間違いない。
夢の中で俺が使っていたもの、それが目の前に浮かんでいる。
刻まれてる文字は「記憶」、「模写」、「継承」。
訳も解らないまま文珠に手を延ばす。
瞬間、光が炸裂した。
遠のく意識―何かが書き込まれるのを感じた―
『よぉ、起きたか?』
真っ白な世界。
目の前には何処か見覚えのある顔したおっさん。
「―――?」
『わからんか?俺だ、俺。お前だよ』
一瞬、目の前の男が何を言ってるか解らなかった。
が、すぐに理解した。
確かに俺らしい。
夢の最後の方に出てきた俺だ。
『俺の記憶を追体験したろ?』
「―っ!って、ありゃなんなんだよ!?おれは知らないぞ、あんな事!」
喚く俺に呆れた視線を向ける『俺』。
『あったり前だろーが、ありゃ未来の事だ』
俺に言葉が浸透するのを待ってから話を進める『俺』。
『このまま行ったら、お前は同じ事を体験する。
だが、今ならまだ変える事は出来るはずだ』
「ちょっ!?待て待て待てーい!俺にあんな事できる筈ないだろ!?」
『いーや、できる。お前次第だがな。それに感じないのか?ルシオラの鼓動を』
確かに…感じる。
俺の胸の中に広がる優しく暖かい鼓動。
そんな俺の様子に気付いて満足そうに微笑む『俺』。
『俺は救う事ができなかった。お前が救ってやるんだ』
だが―
「出来る訳ねぇだろ!?だって俺だぞ!」
『出来なけりゃ失うだけだ。お前も体験したなら解る筈だろう?』
「―っぅ」
『ほんの少しだけ…より良い未来を進みたければ努力するんだな。
俺が出来るのはここまで。後はお前次第だ』
じゃあな、と手をあげて『俺』は俺に微笑む。
またしても遠のく意識の中。
お前ならできる、お前じゃなきゃ出来ないんだ。
最後に声と共に見えた『俺』の微笑みは酷く―悲しげに感じた。
「はぁっ!」
跳び起きた。
今の夢、さっきの夢…。
胸に手を当てるとわかる。
たしかに広がる暖かい鼓動、俺のものではない鼓動。
―夢なんかじゃない、たしかな現実だ。
ルシオラを失った時を思い出す。
五体全てが引き裂かれるような悲しみ、後悔。
だから理解った。どうして微笑みがあんなにも悲しげだったのかが。
もうゴメンだった。あんなにも悲しい思いをするのは。
とにかく現状確認だ。今の俺に何が出来るか。
手の平に霊気を集中させる。
ほどなくしてサイキックソーサーが表れた
さらに集中。
手を覆うように霊気を収束させる。
『栄光の手』だ。
そして最後だ。
『栄光の手』を解除し、手に今までとは比較にならない程の霊気を収束させる。
より強く、より圧縮し…。
「よしっ」
軽いガッツポーズと共に握りしめられた手。
それを開くと小さな玉が出現していた。
文珠だ。
しかし…
「色が違う?」
記憶の中にある文珠は冷たく醒めた蒼い色していた。
でもこれは―紫。
手の平にのっている文珠を見つめる。
そしてわかった。
妙神山での修行を受けてない、まだまだ未熟な俺にルシオラが力を貸してくれたのだと。
それだけで涙がでそうになる。
ルシオラを感じられた事が嬉しくていつまでも文珠を眺めていた。
が、気付けばもう朝を過ぎ昼前になってしまってる。そこで気付いた。
「バ、バイトに遅れるーっ!」
駆け足で事務所のドアをあけた。
「スイマセン、遅れました」
怒られるのはもう覚悟した。
大体しばかれるのなら慣れてるし。
…って、アレ?何もこないぞ。
美神さんの方を見れば何やらおキヌちゃんとごしょごしょと話している。
モロに聞こえているが。
「美っ、美神さん。何か横島さん変ですよ!
いつもと何か違うじゃないですか! 昨日やっぱし叩き過ぎたんじゃ…」
「知らないわよ、私のせいじゃないわ。」
…………。
まぁ、いいけどな。
「美神さん、ちょっと相談したい事があるんスけど」
こちらに来る途中に決めた事を話す事にした。
「何よ?賃上げ交渉なら却下よ、却下。大体遅れてきといて相談なんて―」
あ、ヤバイ
「―百年早いわっ!」
振り下ろされる神通根。
咄嗟に後退してかわす。
「―っ、時給255円の分際で避けるなぁ!」
「避けるわぁっ!」
続いて第二撃が来るっ
避けても、避けへんでも殺られるー!
―ゴン
後ろは壁ぇぇー!?
「極楽に―行きなさいっ!」
いやじゃぁぁぁ
―琴
甲高い音と共に神通根が止められる。
「…へ?」
俺が出したサイキックソーサーだ。
「これなんスよ、相談したい事っていうのは」
「ふ〜ん、朝起きたら突然霊能力に目覚めていた、と」
「ええ、そうなんですよ」
胡散臭そうに俺を見てくる美神さんとは対象的に、
おキヌちゃんはフワフワと浮かびながら
凄いですねー横島さん、と微笑んでくれている。
うぅ、やっぱりええ娘やのぅ、おキヌちゃんは。
「ま、でも四六時中私の霊波浴びてたんだから有り得ない話じゃないわよね」
例え、横島君と言ったってね。と足を組み直す美神さん。
「で、アンタまさか私に霊能力を教えて欲しいって言うんじゃないでしょうね?
嫌よ、お金にならないし、面倒だし」
断る理由の第一にお金がくるのは流石美神さんと言った所か。
「多分そう言われるんじゃないかと思ったんで、
朝方から考えてたんですよ。で、妙神山に行けばいいかなぁって」
「あら、中々冴えた考えじゃない。たしかにあそこはそういう場所だしね」
その前に死ぬかもしれないけどね等と勝手な事を言っている。
「そんな訳で暫く休みを貰えないかなぁ…と。いいっスか?」
断れたら事務所を辞めざるをえないな…。土下座までする覚悟を決めておく。
「別にいいわよ」
「って、いいんですか?次のGS試験の頃までって考えてるんですが、それでも?」
あまりにも簡単にOKをだされたので少し慌てる。
「確かに長いけど、横島君なんかじゃ
それ位修行しなきゃ使い物にならないと思うしね。」
「ありがとうございますっ!」
深く頭を下げる。
「何よ、大袈裟ね。そこまで感謝される謂れはないわよ。
行くなら早く行きなさい、夜になるわよ」
「ええ、それじゃ急ですが、行ってきます。お世話になりました」
「横島さん、頑張ってくださいね。なるべく…早く帰ってきてくださいね…」
軽く手を上げて応える。
そして事務所のドアに手をかけ、出ていく…前にだ。
「出てく前に美神さんの温もりをーーっ!!」
結局しばかれて、半ばたたき出される形で事務所を出た。
この方が何か、らしくていいだろう。
お世話になった事務所を振り返り、
脳内に深く焼き付けてから俺は妙神山に出発した。
<後書き>
各キャラクターの性格、横島の現在の強さ、文殊の色等
自分でも首を傾げるような状態です。
おかしな所あったら指摘お願いいたします。
次回はお決まりの妙神山の修行。
今回と同じように携帯でポチポチと入力してつくってます。
それでは…次回までさよならです
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