銃を持ったメイドに追い立てられた三人は、城が木々に隠れて見えなくなるまで遠ざかり、ようやく一息つくことができた。
あまりの出来事に、夕菜は驚きを隠せなかったが、玖里子と凛は立腹中であった。
「和樹を盗るなんて許せないわ!」
「そうです。許せません!」
二人は疲れて座っていた夕菜を無理矢理立たせると、即座の攻撃と和樹奪回を主張した。その目はまさに復讐の乙女だった。
「でもたった三人でどうするんですか?」
夕菜が訊く。
「敵の敵は・・・ねえ、なにか聞こえない?」
「はい・・・だんだん音が大きくなってます」
「あ、あれ!あれです。上を見てください!」
夕菜が空を指した。二人が上を見ると、煙をあげた飛行機がこっちに墜落してきていた。
「キャー!!!」
三人はその場から逃げ出そうとするが、あまりに遅すぎた。だが飛行機は彼女たちからほんの少し離れた所に墜落した。
飛行機から人が出てきた。生存者がいるようだ。他にも多くの人が出てきた。どうやらほとんどの人が無事らしい。怪我も無さそうに見える。
三人は彼らの所に行った。
「大丈夫ですか?」
夕菜が走りながら大声で訊いた。
「ええ、大丈夫・・・・ってあれ、夕菜?」
「松田さん?なんでこんなところに。それにB組の皆さんまで」
「それはこっちのセリフよ。あんたたち、マーシャル諸島に行ったんじゃなかったの?」
「その予定だったんだけど、途中で遭難しちゃって。撃墜されちゃったのよ」
「私たちとおんなじ・・・・」
「同じって、松田さんたちの飛行機も撃墜されちゃったんですか」
和美はここまでのいきさつを話した。和樹たちを追ってマーシャル諸島へ向かう途中、(以下玖里子たちの出来事に同じ・・・)。
「あんたたち、私たちを追ってきたんだ。わざわざこんなとこまで・・・」
「あんたたちから和樹君を取り戻すためよ。あんたたちのとこにいたら和樹君だめになっちゃうからね。・・・・ところで和樹君はどこにいるのよ」
「先輩は極悪なメイドたちによって捕らえられてしまいました」
「メイド?」
凛は、島に落ちてからの出来事を話した。それを聞いたB組み女子たちからは(当然)怒りの炎があがった。
「というわけなんです」
「・・・ねえ、あんたたち協力してくれない?数が多いほうがいろいろ楽だし」
「嫌よ」「え?」
「冗談じゃないわ。元はといえばあんたが和樹君を誘ったのがそもそもの始まりじゃない。さっきも言ったでしょ、私たちは和樹君を取り戻して、あんたたちを退治しに来たのよ。和樹君は私たちの手で取り戻すわ!いいわよね、みんな!」
和美の言葉にB組女子は全員賛同した。
「というわけであんたたちに協力する気はさらさら無いわ。・・・ちょうどいいわね、ここであんたたちを始末するのも・・・・」
和美の手に魔力が集中する。他の女子も同様に魔法の詠唱をはじめた。
「ちょっとまってよ、ねえ・・・・」
「問答無用、消えろーーーーーー!!!!!」
B組女子はいっせいに魔法を放った。三人は急いで別の道に逃げ出した。
「はあ、はあ、くそっ逃がしたか・・・・」
「それよりどうする和美、和樹君のこと」
沙弓が訊いた。
「決まってるじゃない、攻撃よ、一斉攻撃。一刻も早く和樹君を助け出さなきゃ。それで助けたら和樹君に御褒美のキスをもらうの。それから・・・・キャー!恥ずかしい!」
「駄目よそんなの。私がもらうわ!」
沙弓が反論する。他の女子も自分がもらうと主張した。
「じゃあ勝負しましょ。和樹君を助けた人がキスを貰う。それから一週間その人の言うことを聞くこと、これでいいわね?」
「ええ、じゃあいろいろと準備しなきゃね」
彼女たちは攻撃のための準備にかかった。
「もうなんなのよ、あいつらは!」
「杜崎の奴、あんな強力な魔法を使うなんて・・・」
二人は激昂していた。
「もう疲れました・・・松田さんたちどうするんでしょう・・・」
「知らないわよ、あんなやつら!どうせ何も考えずに突っ込んでメイドたちに捕まるのがオチでしょうけどね。和樹のことになるとすぐ頭に血が上るから、あいつら」
夕菜があなたもそうじゃないですか・・・・と、言ったが玖里子は聞いていなかった。
「とりあえず、さっき言おうとしたけど、水銀旅団に合流するわよ」
玖里子が宣言した。凜も賛同した。
「えー!あそこもマニアっぽそうだからいやです。それよりも、もう一度メイドさんたちに会って話し合いましょうよ」
「話すことなんて無いわ!あんなのは早急に滅ぼさないと」
「そうですよ夕菜さん。なんであんな奴等を庇うんです?」
「いくらなんでもやりすぎです。和樹さんがメイドの主人になるくらいで」
「あの時も言ったでしょう?和樹の体が危ないのよ」
「あの人とは別に何も無いんじゃないですか。いい感じのメイドとご主人って感じでしたよ。それよりも私はあのセレンって人がなんか許せません・・・・」
「それと一緒ですよ夕菜さん。あの人は直接、行動に出てないだけです。こうしてる間にも先輩の体が危ないんです。あの人は先輩のことが好きなんです!」
「夕菜ちゃんはこのままでいいの?大事な許婚がよその、しかも出会ってまだ一日もたってない女にあんなことやこんなことされて!」
「そんな、私と和樹さんとは別にそんな・・・・」
「・・・・とにかく私たちはこれから水銀旅団に合流するわ。いいわね」
そう言うと二人は歩き出した。結局、夕菜もついて行くことにした。
三人はしばらく歩き回った。それほど狭い島ではない。なかなか水銀旅団に遭遇せず、日が暮れてしまうのではと思われたが、海岸に出ると沖合に停泊している船が見えた。
砂浜に沿って歩く。ようやく荷揚げをしている一団を発見した。彼女たちは面会を申し込む。メイド服なため、最初は胡散臭く見られたが、迫力におされたか、三人は司令部まで連れていかれた。
水銀旅団の司令部は、多くのテント群によって成り立っていた。その中の、「HE−AD QUARTER」の看板が立てられたテントに案内された。
「ようこそ」
テロ組織のイメージと違い、水銀旅団の指揮官は口ひげを蓄えたスマートな男だった。
「私が太平洋方面の指揮官カーボンです。
司令部には彼の他にも、やはり男たちが働いていた。
「お話はうかがいました。全ての女性に汚らわしいメイド服を着せてしまう、あの悪魔の城から脱出されたとか。さぞ大変だったでしょう」
「ええ、最悪でした。それであの、部隊を見せてもらえませんか?」
「ええ」
三人はカーボン卿、何人かの司令部要員と共に、天幕を出た。司令部は小高くなった丘に設置されていた。正面には城があるはずだが、かすんでよく見えない。眼下には、上陸したばかりの水銀旅団兵たちがのろのろと隊列を組んでいるところであった。かなりの人数である。玖里子と凜はそれを見ながら「これだけいればメイドなんかイチコロ」と興奮していた。夕菜は二人と目を合わせず、「普段は冷静なのに・・・・和樹さんが絡むと・・・・私もあんな風になってしまうのかしら・・・・やだ、なに考えてるんでしょう、私ったら、あの人のことなんか・・・・私にはあの人が・・・・」
その後もカーボンの説明が続いた。整理すると、まずこの組織はオタクの集団であること。兵士もやる気があるのかないのか、タバコを吸って寝転がったり、あげくのはてにはトレーディングカードを交換している者までいた。いちおう武器らしい武器はあるにはあるが、攻撃方法は主に、カメラによる盗撮、メイド服を脱がしてパジャマに着せ替えるなど攻撃なのかと疑うものばかりである。写真は即座にアップして世界中の有料サイトに、メイド服はオークションなどに売って金にするらしい。かなりの資金になるのだそうだ。それと、意外なことに実際に水銀を使うことは無くなったらしい。我々も時代と共に変遷している。MMMと違い、柔軟な組織だと言っていた。こんなことを聞いてもすばらしいと言う玖里子と凜に、夕菜はあきれていた。そして
「まあすごいことは分かりました。ある意味で大きなダメージを与えることはできると思います。けどもう少しちゃんとした部隊はないんですか?」
「なに言ってるのよ夕菜ちゃん。これだけいれば十分よ」
夕菜は玖里子を無視して話を続けた。
「戦争するんでしょう?カメラだけじゃなくてちゃんとした武器が使える部隊がないときついんじゃないですか。むこうは本物のマシンガンや戦車だって持ってるだろうし」
カーボン卿は
「あるにはありますが・・・・あまり使いたく、いえ、あまり彼女たちを戦いにだすのはどうも・・・」
「彼女たち?」
「ピンクパジャマ中隊といいます」
「ピンクのパジャマですか?」
「はい、パジャマを着た少女だけで編成された精鋭中の精鋭です」
カーボン卿の目が妖しく光る。夕菜は「また変なのが・・・」と小声でいった。玖里子と凜がその隊はすごいのかと訊いた。
「ピンクパジャマ中隊さえいれば、敵は恐れおののいて戦意を喪失し、味方の士気は百倍して疲れしらずとなることでしょう。しかし、今回は彼女たちの力は必要ありません。男共だけで大丈夫でしょう」
「そんなの駄目よ、そんないい部隊があるなら戦闘に参加させなきゃ!!」
「そうですよ」
二人はカーボンの考えに意義を唱えた。
「我々の愛するピンクパジャマたちに損害が出たらどうするのです!」
「和樹を助けるための戦いよ!損害の一つの二つくらい・・・・」
「なりません!後方にいるだけで、兵のやる気は出ます。彼女たちはシミ一つない、ワンサイズ大きいだぶだぶパジャマを着ているからこそ精鋭なのです。その姿が泥や硝煙で汚れるなど、そ、そ、そんなことは全世界の寝間着愛好家たちが許さんのです!」
だが玖里子と凜もゆずらなかった。やがて三人は口論になった。そしてついに凜が、カーボンに刀を突きつけた。そして
「あの部隊を出しなさい。先輩の貞操の危機なんです。出し惜しみしてはいけません。今あるものはすべて戦闘に投入しなさい。言うこときかないと、あなたの首をはねます。最近斬ってませんからねえ、このこも血を欲しがってるんですよねえ」
「ほらほら、凜にはねられる前に出しちゃいなさいよ。まだ死にたくないでしょ」
「・・・・・わかりました・・・・・」
カーボンはそう言うと、彼女たちを連れてくるよう、一人の兵士に指示した。しばらくすると、兵士は彼女たちを連れてきた。
彼女たちは一糸乱れぬ、という形容がぴったりなくらい、同じ格好で整列していた。全員同じような年齢の少女たちだ。パジャマのたるんだ皺の形まで揃えているようであった。正面を向き、武器を備え、じっと命令を待っている。すきあらば私語をはじめ、メールアドレスの交換をする兵たちとは、明らかに違っていた。
列の中から、一人が進み出た。その女の子だけ、赤い色のリストバンドを巻いている。
「あなたは?」
夕菜は彼女にたずねる。
「ピンクパジャマ中隊中隊長、アリシアです」
「ご苦労様。休んでいいわよ」
玖里子が言う。アリシアは中隊に「休め」を命令した。パジャマたちは一斉に足を開き、武器の台尻を地面につける。身じろぎもしなかった。
「ずいぶん強そうに見えますね」
「自分たちも最強の兵であると自負しております。ですが、命令もなく戦いに参加するほどうぬぼれてもいません」
「そうですか」
パジャマの女の子たちを眺めた。どの娘も大きめのパジャマを着ている。きっとだぶだぶのほうが可愛いからとか、そんな理由だろう。それでも緊張感に満ちた表情は、同時に水銀旅団最強の部隊であることを物語っていた。しかし、夕菜は彼女たちが、皆精悍であるのに、同時に憂いを帯びていることに気づいた。
「アリシアさん、ちょっといいですか?」
「どうぞ」
「皆さん、よく訓練されていることは分かります。でも、何かストレスでも溜めているのですか?なんだか重いものでも飲み込んでいるみたいで・・・・・」
「ご賢察です」
アリシアは言った。
「我々は皆、戦いを求めています。機会こそありませんが、戦って自分を取り戻したいのです。それも水銀旅団のためではなく、己自身のために」
「どうしてですか?」
「全員同じ理由です。我々は裏切り者なのですから」
夕菜は首をかしげた。
「裏切り者なのですか?」
「はい。我々は皆、元メイドなのです」
アリシアは感情を排した声で、静かに語った。
「ピンクパジャマ中隊に志願した理由は様々です。元捕虜であったり、俗世に嫌気がさしたり・・・・・・。しかし全員、メイド出身であったことは共通してます。かつては属していた組織を裏切り、しかも弓すら引く。心が重くなるのは当然です」
「でもあんなメイドだらけの場所から逃げ出すなんて、それだけでも凄いです。私は裏切り者だなんて思いません」
凜が彼女たちにそう言った。
「ありがとうございます。ですが、もと同僚たちはそう思ってはくれません。我々が捕らわれても、捕虜としての最低限の待遇すら許されないのです」
淡々とした口調の中にも、無念がにじみ出ているかのような感があった。アリシア自身、そのような事例を目撃しているのかもしれない。
「メイドは我々を裏切り者として、二度と太陽を拝めないほどの拷問をおこないます。捕虜となったパジャマの中には、スペイン宗教裁判ばりの『クッションの刑』に処せられた者もいるのです。誰もそんな、人間としての誇りを切り裂かれたくはありません。ですからピンクパジャマ中隊は降伏よりも死を選び、一切の甘えを捨てて戦場におもむきます」
玖里子と凜は彼女たちの背負う運命を想い、そっと目頭を押さえた。夕菜は小声で「もう帰りたい・・・・・・」と嘆いていた。アリシアは最後に少しだけ、力を込めた。
「もし我々が必要になりましたら、いつでもお呼びください。ピンクパジャマ中隊は全力で戦います」
「・・・・分かったわ。さっそく協力してちょうだい」
一方、和樹はリーラとセレンに城の中を案内してもらっていた。いろいろ回り、地下室へと移動した。そしてある部屋を開けたとき、リーラが顔を赤らめ、すぐ扉を閉めた。
「失礼しました。間違った部屋をお見せしてしまいました」
「いま鎖が見えたんだけど」
鎖の先には鉄輪がつけられ、天井から下がっていたのである。
「こちらをお見せするべきでした。申し訳ありません」
隣の扉を開ける。がらんとしてなにもない。
「いや、それよりさっきの部屋・・・・」
「・・・・あそこは、その、ご主人様がメイドへのお仕置きとして考えられたものでして―」
「ていうか、三角形の馬とか、鞭とか、鉄球とかあったけど!?」
「ご安心ください。一年前から使用されておりませんので」
リーラは鍵を元の場所に戻して、さっさと上がっていった。
階段を上り、テラスのようなところに出た。城の中程にあり、外に張り出している。天気がよかった。眼科に見えるジャングルと青い海も、目にまぶしい。
「こちらへ」
リーラが誘導した。テラスの片隅に、真っ黒な機銃が置いてあった。かなり大きく、銃身が四本も上空に伸びている。傍らにはメイドがいた。操作要員のようである。彼女は和樹が近づくと、さっと目を伏せた。リーラが怒ったように命じる。
「顔を上げろ」「はい・・・・・・」
その娘は言われた通りにしたものの、伏し目がちでまともに和樹を見なかった。なんだか落ち込んでいるようであった。
「あれ、エーファじゃないか」
要領の悪い、眼鏡のメイドであった。なんだかかなり元気がなさそうである。はじめて会ったときから暗かったが、今はもう真っ暗だ。リーラが訳を話した。和樹たちの乗った飛行機を撃墜したのは彼女だったらしい。
「も、申し訳ございません!知らぬこととは言え、式森様の乗機を狙うとは、大変な不祥事です。どうかお許しください」
「つまり、君が飛行機を?」
「は、はい・・・・。まことに申し訳なく・・・・・・・」
「メイドたるものご主人様への忠誠は絶対不可欠。分かっているのか」
リーラが、身体を小さくしているエーファに言い放った。
「なのに、銃口を向けるとは、神をも恐れぬ暴虐。運良くこうしてお会いできたからよかったものの、陸上に墜落したらどうなっていたと思うのだ。しかも式森様をお部屋にご案内するときにも、粗相があったというではないか」
「転んだだけだったけどな」
和樹が付け加えたが、それでもエーファはしょげていた。
「仰るとおりです。どのような罰でも受けます。お許しを」
リーラは和樹の方を向いた。
「と、申しておりますが」
「でも、俺たち助かったしなあ。別にいいんじゃないか」
「いけません式森様」
リーラがたしなめるように言う。
「信賞必罰は世の習い。それはメイドも同じです。次期主人として権威をお見せになるチャンスです。なんらかのお仕置きを」
「お、お仕置き?」
いきなり処罰を迫られ、戸惑う和樹。
「でも・・・・・・・どんな?」
「そ、それは・・・・・お仕置きです」「は?」
「その・・・・私の口からはちょっと・・・・」
何故か頬を染めて、視線をそらす。
「まああれだよ」
あくびをかみ殺しながら聞いていたセレンが言った。
「リーラも女だから、言いづらいんだろ。つまり和樹のでっかい×××をエーファの×××に××××で××××しても構わねえぞってことだ。
和樹の顔が赤くなった。あまりにもダイレクトである。リーラも横を向いて聞こえないふりをしている。
「お仕置きって言ったらこんなもんだろ。主人の特権みてえなもんだ・・・・ひょとしてシタことないのか?」
「ねえよ」
「へえ・・・・モテるみたいだからもうヤってんのかと思った。意外だなじゃあ卒業するチャンスじゃねえか。エーファはいいんだろ?」
「はい・・・・・式森様がお望みであれば・・・・」
「ほら、ヤりたい放題だ。よかったじゃねえか」
「ちょ、ちょっと・・・・・」
「なんなら私とヤるか?」
セレンの顔が赤くなる。
「駄目だ駄目だ!」
「しかし式森様」
気を取り直したか、リーラが言った。
「なんらかの処罰を下していただかないと困ります。ご威光に関わることですし、なによりエーファ自身が償いを望んでます」
エーファが上目遣いに和樹を見た。
「そんなもんなし!!そんあなお仕置きなんて、野蛮な風習はなしだ。そんなことしたら変態になっちまうよ」
「よろしいのですか」
「問題ねえよ!エーファはメイドなんだから、働いてもらったほうがいい。そのほうが効率も上がる」
リーラは納得した様子は見せなかったが、エーファに言った。
「聞いたか。式森様はこのように寛大な心をお見せになられた。お前の処分は保留とする。通常の勤務に復帰し、いっそう精進せよ」
「かしこまりました。二度と、式森様のお手をわずらわせることはいたしません」
「行け」
エーファは深々と腰を折り、小走りで去っていった。和樹はほっと胸をなで下ろした。
「・・・・・ちっとあますぎねえか。一発やれるチャンスだったのに」
「そんなことしたら、ほんとに夕菜に変態扱いされちまうよ」
「セレン、下品だぞ」
リーラがくぎを刺した。それから和樹に
「お見事な処断でした」
「そ、そうか」
「はい。エーファはきついお仕置きを覚悟しておりましたが、耐えられるかは不明でした。ここで寛大な処遇をされたことで、彼女はずっと式森様に忠誠を尽くすことでしょう」
「そう?」
「人間にはプライドというものがございます。へたにきつく扱ってはエーファも逆らうでしょう。全員揃ったところでああされては『甘い』と取られてしまいますが、ここには私とセレンしかおりません。むろん、全てのメイドに慈悲を与える必要はございません。ミスにはきつくあたり、むしろ強制的に閨を共にさせるくらいはしても構いません」
「でもなあ・・・」
「式森様の威厳に関わります。その方がメイドたちも従うでしょう」
「いい、いい!」
和樹の返事を聞いて、リーラはなにか考える風であった。
「そういうことは、好みませんか」「ああ」
「でしたら私が・・・・・いえ、分かりました」
彼女は一人うなずくと、また歩き出した。
城内に戻り、司令部に案内された。
「ここが司令部です。中隊本部は前線に据えられますが、情報分析等はこちらでおこないます。戦闘中、ご主人様はこちらで情勢をご覧になることがほとんどです」
「へえ・・・・・・」
メイドが一人、紙片をリーラに渡した。彼女は文面に目を落とした。
「式森様、偵察班の報告です。メイド服が敵内部に見られました。また無線傍受班によると『メイド超萌え。1919と1920』の暗号通信があったようです」
「・・・・なんだそれ」
「1919のほうは、メイドからの転向者が水銀旅団に加わったという意味です。やはり奴らは敵になるようです」
(・・・・・・・夕菜たちだな)
「思った通りです。水銀旅団の手先となって式森様を奪い、私たちを皆殺しにするつもりでしょう。ピンクパジャマ中隊を使って、今夜ここに攻めてくるそうです。もうすこし慎重に攻めてくると思ったのですが」
「玖里子ねえたちに掌握されたんだろう・・・・・さっきも言ってたけどピンクパジャマ中隊ってそんなに恐ろしいのか?」
リーラは和樹にピンクパジャマ中隊のことを話した。
「元メイドか・・・・・1920のほうは?」
「さっき撃墜した飛行機のことです。水銀旅団ではなかったんですが、転向者たちの知り合いだそうです。奴らから今回のことを聞き、誓約を阻止するためにこちらも今夜ここに攻めてくるそうです。ですがこちらは問題ないでしょう。数も20人程だそうです。我々の秘密兵器を使えば楽に倒せるでしょう」
「その秘密兵器って」
リーラは説明した。
「そ、そんな便利なもんがあるんだな」
「これで大丈夫でしょう。問題は水銀旅団、ピンクパジャマ中隊です」
「そう・・・・・・少し疲れた。部屋に戻ってもかまわないか?」
和樹は部屋に戻り、これから起こる戦闘を止める方法はないかと考えていた。やがて彼はうとうとしだし、眠ってしまったため、部屋にリーラが入ってきたことに、最初は気づかなかった。
「式森様、式森様?」
彼女は何度も呼びかけるが和樹は起きない。最後に呼ばれたとき、和樹はようやく目をさまそうとした。が、そのとき
リーラは和樹の服のボタンを外しはじめた。
全てのボタンを外し終え、和樹の胸があらわになった。リーラは和樹の身体を何どもさわった。やがて彼女は和樹の乳首をこねくりまわした。そして、ついに彼女は和樹の乳首を舐めようと近づいた・・・・・・・・・・・が、
ぴーぴーぴーぴーぴー
放送禁止用語の消し音みたいな音がした。リーラは腕時計が赤く点滅している。彼女は気勢をそがれたか、うんざりとした息を吐くと、服のボタンをはめなおし、部屋を退出した。
彼女が退出した後、和樹は起き上がった。顔が真っ赤になっていた。
「はあ・・・・はあ・・・・はあ・・・・なんだったんだ、今のは」
和樹は落ち着こうと別のことを考えだした。
今夜の戦闘のことを思い出した和樹は、リーラのところへ行った。
「式森様、もうすぐ戦闘が始まります。ご自分のお部屋に避難していてください」
「いや、ちょっと用があって」
「・・・・なんでございましょう?」
「城の主人は今どこにいるんだ?」
「ご主人さまなら、ご自分の部屋にいらっしゃいますが」
「ありがとう」「案内しますが」
「いや、いいよ。自分で行く。この城のことは大体分かったから。リーラは戦闘に集中してくれ」
「そうですか・・・・・・わかりました」
リーラと別れ、和樹は主人である老人の部屋に向かった。
あとがき。
どうもみなさん、イジー・ローズです。
えー今回は自分でもなに書いてるのかよく分かってないんですが、どうでしょうか。まーなんとか、ちゃんとした話にはなってるとは思うんですが。
次回はついに三つ巴の戦いが始まる・・・・のでしょうか?それではまた。
レスです。
MAGIふぁ様、D,様>
本来なら凜がその位置にくるべきなんでしょうが、玖里子がきてしまいました。なんか、凜よりも玖里子のほうが書きやすかったんです。
紫苑様>
出来れば、前回レスしたオリジナルキャラも出して欲しいです。>
私はあまり月姫という作品はよく知りません。ジョジョのDIOにいたってはまったくわかりません。もうすこし詳しく教えてくれませんか。特に口調。どういう風に喋るのかを知りたいです。
斎様>
私もそう思います。でもこの話はそうなってはくれません。
アポストロフィーエス様>
前話でレスするの忘れてしまいました。改訂版にはちゃんと書いています。申し訳ありませんでした。
33様>
それにしてもネリーとセレンの扱いがいい事は私個人としては望ましい!>
ありがとうございます。そういってもらえると嬉しいです。
あと、第二と騎兵のことなんですが、出すには出します。でも今のところ出す予定はありません。
ゴマシオナイト様>
そうならないようにがんばります。
雷樹様>
はじめまして、イジー・ローズです。読んでくれてありがとうございます。
これからも私の作品を読んでくれれば嬉しいです。
ジャッカー様>
こういうことになったんですがどうでしょう?自分でも説明不足かなって思ったりしています。原作の第4章から第6章からいくつか引っ張ってきて、それにオリジナルを合わせた感じです。まあなんとか形にはなったと思っています。
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