ボロアパート
横島は部屋に入るなり、鞄を放り投げ、布団に倒れこんだ。
アリスのセリフが、頭のなかで繰り返される。
彼女はルシオラの事を知らないはず。なのに、ルシオラと同じ事を言っていた。
(偶然か?)
偶然のように思えるし、そうじゃないようにも思える。
ルシオラの事を知ってるのか?それとも何か狙いがあるのか?
別に悪意があるってわけじゃなさそうだった。
じゃあ偶然か?と聞かれたらそうじゃないようなきもするし〜。
「あかん、あたま痛くなってきた・・・」
普段、悩んだりしない彼の脳味噌は、もはやオーバーヒート気味。
そうして悩んだ末、彼が出した答えは・・・・
「ぐう〜〜(寝息)」
出ませんでした。
「ふっふっふ・・・!洗濯は完了・・・!!また一歩野望に近づいた!!」
(あれは・・・俺!?)
横島の目の前に、逆天号の甲板で洗濯物を干す自分の姿が映る。
(ああ、夢か・・・)
夢の中で横島は、夢の中の横島の上空から全体を眺めるように浮いていた。
「ぷっ。くすくすくす・・・!!」
「!!」
(!!)
「なーに、そのヘンなかっこう!?」
「ル・・・ルシオラ様!!」
(ルシオラ・・・)
(俺がもっと強くなれば、ルシオラを幸せにできたのにな・・・)
目の前で幸せそうに話してる自分とルシオラを見て、胸が痛くなる。
後悔。とてつもなくでかい後悔が横島の心にのしかかる。
もっと強くなっていれば、ルシオラを犠牲にすることもなかったんじゃないか?
もっとうまく立ち回っていれば、ルシオラを助けれたかもしれない。
確かに自分の子供として幸せにすることが出来るかもしれないが、
(恋人同士が、一番よかったよな・・・ルシオラ。)
(それに俺は女にモテんし・・・。子供作ることできんかもしれんしな〜)
横島が悩んでる間にも、2人の会話はすすんでいき、
「ほら・・・!」
逆天号が通常空間に出た。
「ちょっといいながめでしょ?」
「へええー!ちょうど陽が沈むとこっスね・・・!」
「昼と夜の一瞬のすきま・・・!短時間しか見れないからよけいに美しいのね。」
「昼と夜の一瞬のすきま短い間しか見れないから、きれい」
(!?)
アリスとルシオラがダブり、声が2重になって聞こえた。その瞬間、場面が変わる。
(え!?)
場所は下水道。
「ルシオラは・・・・・・俺のことが好きだって・・・・・・命も惜しくないって」
(そうだ、俺には・・・)
「なのに・・・・・・!!俺、あいつに何もしてやらなかった!!ヤリたいのヤリたくないのって・・・・・・・・・・・・てめえのことばっかりで!!」
(俺には・・・)
「口先だけホレたのなんのって、最後には見殺しに・・・・・・・・・!!」
「横島クン、それは違う!!」
「彼女はあんたに会って幸せだった!!アシュタロスの手先で終わるはずの一生を、正しいことに使ったのよ!!それに、死んだのはあんたのせいなんかじゃない!!仕方なかったのよ!!」
「俺には女のコを好きになる資格なんかなかった・・・!!なのに、あいつそんな俺のために・・・・・・!!」
「横島クン・・・・・・!!」
「うわああああああッ・・・・・・!!」
(女のコを好きになる資格なんて・・・なかったんだ)
時間は少し戻り、(横島とアリスが公園で話てる時)場所も変わって、ここは美神除霊事務所。
社長の美神は、買い物に出ており、おキヌは学校、シロは散歩中。事務所には妖狐のタマモしかいなかった。
「はあ〜・・・暇ね」
今日は横島がいない。あいつがいれば暇することなんてなかったし、きつねうどんを集ることもできた。
馬鹿犬も昼間、「少し散歩してくるでござるよ」とかいって出て行ったきり帰ってこない。
美神とおキヌちゃんも帰ってこない。
「はあ〜〜〜」
タマモはソファーに寝そべって、もう読み飽きた雑誌を取ろうと手を伸ばした時、
「ただいまでござる!!」
シロが帰ってきた。
「やっと帰ってきたか馬鹿犬」
「なんか言ったでござるか?」
「別に・・ん?あんたなに持ってるの?」
シロの手にはチラシのような紙が握られていた。
「これでござるか?これは「号外」とかいうものでござるよ。」
「へ〜。で、なんて書いてあるの?」
「それが、拙者。読めない字があって急いで帰ってきたのでござるよ」
「ちょっと貸してみて」
「読めるでござるか?」
「あんたみたいな馬鹿犬よりわね」
タマモはそう言うと、シロの手から紙をすりぬいた。
「拙者は犬ではござらん!!」
シロがなにやら言っているが、タマモはシカトして紙を読み始めた。
「きさまー!!拙者を無視するとは・・・「シロ、これ横島の事が書いてるらしいわよ」・・先生でござるか?」
タマモに今にも襲いかからんとしていたシロが、横島と聞いて急におとなしくなった。
尻尾も元気に横に振られている。
(さすが馬鹿犬ね・・)
「でもなんで横島の事が号外なんかで配られてるの?」
横島は優秀なGSだが、べつに有名タレントでもないし、スポーツ選手でもない。
なのに号外が配られるなんて、怪しすぎる。
「あんた、これどこから取ってきたのよ?」
「先生の学校前でござるよ。ごうが〜いって叫びながら配っていたのをピート殿が貰ってたのでござる。先生のご友人ゆえ、挨拶したら、これをくれたのでござるよ」
よく見たら、学校新聞・号外 と書いてあった。
「それでなんて書いてるでござるか?」
「え〜と、〔3−Dの横島 忠夫に許嫁発覚!!〕って え!?」
「なぬ!?」
「ちょ、ちょっと待って、続きを読むわ」
いきなりの読み出しに面食らう2人(2匹?)
とりあえずタマモが続きを読み始める
「〔今日、3−Dに転校してきた美少女こと水野 アリス(17)が同じクラスのわが高校が誇る煩悩魔人、横島 忠夫(18)の許嫁であることが発覚した。〕ですって」
ガーンなんて効果音が出そうなぐらい落ち込むシロ。尻尾もさっきと打って変わって、弱弱しく垂れている。
タマモも少し元気が無い。
「先生・・・・許嫁がいたでござるか?」
「らしいわね。しかも記事によると、横島に会うためにわざわざ転校してきたらしいわ」
「「は〜〜〜」」
シンクロする2人のため息。
「先生はなんで拙者に許嫁のことを言ってくれなかったんでござろうか?」
「あんたに言ってもどうなる事でもないからでしょ」
「そうでござるが・・・でも黙っとくなんて酷いでござる!」
「別に酷くないでしょ」
「タマモ!!お主はそれでいいでござるか!?」
「私は別に・・・・・いざとなったら横島さらってドロンするし」
「拙者はよくないでござる!!拙者、いまから先生のところに行って来るでござるよ!!!」
話してるうちにヒートアップしてきたシロは、タマモの危ない発言をいい具合に聞き逃した。
「ちょっと待って。あんた今日これから、除霊の仕事があったでしょうが」
「ギクッ!!」
「あんた仕事サボったら、あとで美神が怖いわよ。」
「う〜しかし」
「しかも、〔仕事サボって横島のとこに行ってました〕なんて言ったらどうなるかしら」
「・・・・わかったでござる。明日にするでござるよ」
美神除霊事務所では、フルメンバーでの除霊作業はめったにない。だいたいいつも2人か3人での、ペアーで行う。
前衛に美神かシロ。後衛におキヌかタマモ。どっちでもいいのが横島。
今日は廃ビルに出る悪霊退治で複数の悪霊が漂っているとの事。メンバーはシロとおキヌとタマモのメンバーだ。
前衛のシロが後衛のおキヌを守り、タマモの狐火とおキヌのネクロマンサーの力で悪霊を一掃。ってのが今回の作戦。
シロがいなきゃ、おキヌを守れない。
「「ただいまーー」」
そうこうしているうちに、美神とおキヌが帰ってきた。
「ただいまシロちゃん、タマモちゃん」
「おかえり」
「・・・おかえりでござる」
タマモはいつもどおりなのだが、シロに元気が無い。
まるで「私は元気がありませんオーラ」を全身から出しているような・・・。
「どうしたの?シロちゃん」
「どうせ横島クンがいないからでしょ」
「あ、そういえば、横島さん休みでしたね」
おキヌは心配するも美神のセリフに納得してしまう。まあ、たしかに横島絡みだけど、
「・・・ちがうでござるよ。」
「え?ちがうの?」
「じゃあなんでそんなに落ち込んでるのよ?」
そんな中、タマモが例の「号外」を
「はい。これが理由。」
と、美神に渡した。
ピシッ
「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」
美神とおキヌ。内容を読み、ともに石化。
「はあ〜馬鹿ばっかり」
シロ落ち込み状態。美神とおキヌは石化。
1人冷静なタマモは石化が解けたあとの騒動と、今日の除霊のことを考えて頭がいたくなったそうな。
{あとがき}
こんな駄文を読んでいただき、ありがとうございます。
めちゃめちゃ勘がいい人は前回の夕焼け・3と今回の夕焼け・4を読んで、アリスの能力がわかったかもしれませんね。
ちなみにピートですが、なんか、だんだんといやな奴になるかもしれません。ピートファンの人ごめんなさい。