山本五十六、本多忠勝両名を連れ、リーザス城に帰還したランスは
配下の兵に二人を別室に連れて行くように伝え、自分は謁見の間に急いだ
リーザス城 謁見の間
そこには、宰相であるマリスと、王女リアだけが存在していた
ランスは謁見の間に入ると、ちょうど中央辺りで立ち止まり
片膝を付きながら、リアに向かって礼をした
「緑の将、ランス・プロヴァンス、ただいま帰還しました」
「今回の急な呼び出し、申し訳ありません
しかし、大分情勢が動いたため、ランス殿の意見も聞きたかったのです」
リアへの礼を終えたランスに、マリスが話しかけた
「それほど情勢が動いたんですか?」
「えぇ、まずは魔人界から魔人ワーグが、リーザス城に派遣されています
アスカ将軍と相性がいいらしく、互いに暇な時はよく遊んでいるようです」
その、僅かに笑みを浮かべながらのマリスの言葉に、ランスも笑みを浮かべた
少女の魔人ワーグにとって、遊び相手がいると言うことはとてもいいことだろう
「次に、魔人レイ殿が前線に復帰しており、対魔人に対する防御も高まりました
そして、カスタムよりミリ・ヨークス、魔想志津香、シィル・プライン
マリア・カスタードの四名が、リーザスへの援軍として送られてきました
しかし、ミリ殿がゲンフルエンザにかかっている恐れがあるとの報告が
検診を受け持った医師から伝えられています」
「なっ!?ゲンフルエンザ・・・大丈夫なのか」
ゲンフルエンザ、現代の奇病と言われ、直す方法が皆無に等しいことで知られている
「はい、まだ潜伏状態であると言うことから、治療は十分可能のようです
しかし、潜伏状態と言っても難病には違いは無いため
治療には最低でも三ヶ月は要するとのことです」
「そう・・か、よかった」
ランスは、マリスの言葉を聞き、胸をなでおろした
そして、頭を切り替えると、マリスとリアに話を切り出した
「実はこちらも報告があります
先のポルトガルの戦いで、有能な将を二人、捕らえてきました
共にJAPANの将であり、それ故に、説得にある方法を用いたいと思い
その方法、JAPANをリーザスが統治するさいに、その両名を
JAPAN統治の太守として迎え入れると事を、お許し願いたいのです」
そのランスの言葉に、マリスは少し考える素振りを見せた
「確かに、JAPANと大陸とは文化も違いますので、特に反対は無いですが
一国を与えても構わないほど、その両名は有能なのですか?」
「はい、それだけの実力は兼ね備えていると思います」
マリスはその言葉に再び考える素振りを見せ、リアの方に視線を向けた
いかに二人が論議しても、最終判断はリアに任されているのだ
リアは、マリスの視線に気付くと頷き、口を開いた
「リアはランス様の意見に賛成よ
ランス様の目に狂いなんてないはずでしょ?」
リアの考えに僅かに苦笑しながらも、マリスは再び口を開いた
「私もリア様の意見に賛成です、説得自体は、ランス殿にお任せします」
「はい、ありがとうございます」
ランスはそう言うと共に、部屋から出ようとしたが
「お待ちください、もう一つ報告があります」
マリスが、ランスを引きとめ、そのマリスの言葉と共に、一人の女性が入ってきた
「お久しぶりです、ランスさん」
レッドの街の聖職者、セル・カーチゴフが、その両手に魔剣『カオス』を持っていた
「セルさん、それに、カオス・・・どうして・・?」
「何、変なナメクジ魔人にセルちゃんが襲われそうになってのう
魔人に渡すくらいならと言う事で、儂の封印をといて
お前さんに渡しに来たんじゃよ」
ランスの疑問に、カオスが答えた
「ランスさん、正直、まだ渡すには、時期尚早だと思ってますが
魔人に振るわれるよりは、ランスさんが振るった方が良いと思いますから
魔剣『カオス』、今、ランスさんにお渡しします」
セルはそう言うと、カオスをランスに手渡した
ランスは、カオスを受け取ると、2,3回軽く振った
「ふむ、やはりお前さんに振るわれるときが一番切れ味がましているようじゃのう」
カオスは、ランスに向かってそう言った
「そうか?まぁ、俺もお前を振るうときが一番安心できるがな」
ランスはカオスに向かってそう言うと、セルが持っていた鞘にカオスを収めた
「では、勝手ながら失礼します」
ランスは、セルとマリス、リアに礼をし、謁見の間から出て行った
早くに五十六と忠勝を説得したいと言う考えがあったからである
マリス達は少々唖然とはしたが、苦笑をすると、ランスらしいと考えていた
リーザス城 来賓室
そこに、五十六と忠勝の両名は案内されていた
二人とも、どこか落ち着かぬ様子で、処分の内容を待っていた
「二人とも、居心地はどうだ?
流石にJAPAN風の場所は用意できなかったが、それなりの部屋のはずだけど」
ランスが、そう言いながら二人のいる部屋へと入ってきた
二人は、緊張した面持ちになると、ランスの言葉を、処分内容を待った
「それじゃあ、二人の処分内容を伝える
山本五十六並びに本多忠勝両名は
リーザス軍の将として、これからの戦いに参戦する事を命ずる
なお、働き次第ではJAPAN領の太守へと昇進させる準備もある」
そのランスの言葉に、五十六と忠勝は驚いた
自分達を殺すのではなく、将として迎え、さらにJAPANを任す用意もあると言うのだ
「ん?どうした?この条件じゃあ不服か?」
ランスが二人の様子を見て、そう話しかけた
「い、いや、不服などではない、なぜ、そこまで厚くもてなすのかが疑問なのだ」
五十六が、ランスの言葉に、いまだ冷静になれきれずに返した
「まず第一に、JAPANの統治は大陸の人間には向いてない事
文化の違いが大きすぎるからな、ならば現地の人に任せた方がいい
次に、現在リーザスは魔人との戦いに備えている最中だ
優秀な将は多いほうがいいに決まってる
その二点だけだが・・・不服はあるか?」
「・・・後ろから刺される事を考えておらぬのか?」
忠勝が、ランスに向かってそういった
「その時は俺の見る目が無かっただけだ」
ランスがそう言い切ると、五十六は僅かに笑みを浮かべランスに手を差し出した
「貴君を信じさせてもらう、山本五十六、今より貴君の指揮下に入ろう」
「この忠勝も、姫と共に指揮下に入らせていただく」
「二人とも、ありがとう」
そういうと、ランスは五十六の手をしっかりと握った
「それじゃあ明日、早くに長崎に向けて出立するから
二人とも、準備を終えておいてくれよ」
ランスはそう言うと、二人のいる部屋からでて行った
「五十六さんもう少し、力を抜いたほうがいいぞ
可愛さが、力を入れすぎて台無しになってる」
去り際にランスが、なんら含みの無い言葉を五十六に言い
それを聞いた五十六が、顔を真っ赤にしてしばらく硬直していたりもしたが
リーザス城 美樹の部屋
魔王である美樹には、別室が与えられていた
魔人来襲の際に、一番守りやすい部屋が、美樹の部屋であった
その部屋の主は、本日はご機嫌であった
長い間昏睡状態であった、小川健太郎が目を覚ましたのだ
身体の衰弱もあるため、まだリハビリ中ではあるが
彼の覚醒を一番待ち望んでいたため、とても喜んでいた
そんな彼女の元に、一人の男性が訪れた
「美樹様、失礼しますよ」
そんな言葉と共に入ってきたのは、茶色い髪に緑の鎧を着込んだ男性
ランス・プロヴァンスだった・・・
いや、ちゃんと冷静に見れる人物なら、即座に気がついていただろう
そのランスが、偽者であると言う事に
だが、美樹は健太郎が起きたという喜びのほうが大きかったため、気付かなかった
「あっ、ランスさん、今日はどうしたんですか?」
「健太郎殿が目覚めたと聞いたので、その事を知っているかどうか気になりましてね」
「はい、私もついさっき聞いたばっかりなんです」
「そうですか、ちょっと失礼しても良いですか?」
ランスの姿をした男が、美樹に入室の許可を求め、美樹は許可を出すと
ランスの姿をした男を部屋へと招きいれ、お茶の準備をしだしたのだ
そして、男は音も無く立ち上がると、短刀を出し、美樹の背後につこうとした瞬間
「人の顔と声をかってにつかわないでくれるか?」
ランス・プロヴァンス当人が、カオスを携え、男を睨みつけていた
「えっ!?ランスさんが二人!?」
美樹が、その事に気付き混乱すると共に、男は美樹に斬りかかったが
キィン
「私を忘れてもらっては困りますよ」
日光が、密かに美樹の前に割り込み、その攻撃を受け止めていた
「どこの誰かは知らないが・・・・死んでもらうぞ!!」
ランスは、カオスを構えると直に、その男に突きをはなった
狭い部屋の中で、できるだけ、部屋の中を荒らさずに攻撃しようとしたからだ
男は、ランスの突きをかわすと、即座に窓辺に走りより、ランスの方を向き
「やはり、このようなやりかたは私の紳士道に反しますのでね
正直、止めていただいてありがたい」
そう言い放ち、変身をといた、その男の姿は・・・
「おぅ、いつぞやのナメクジ魔人じゃないか」
「くっ・・・魔剣カオスか・・・私の名前はジーク
その様な呼び方はやめていただきたい」
見た目は大きなナメクジの魔人ジークであった
「でっ、どうするんだ、ここで死んでいくか?」
ランスが、普段以上の殺気を放ちながらジークを睨みつけていった
ランスがここまで殺気を放つのは、美樹が狙われたからに他ならない
ランスは、自分が守ると決めた人物が襲われると、徹底的に冷酷になるのだ
しかも、敵の姿しか見えなくなるほどに、熱くもなってしまう
事実、ランスは気づいてなかった
自分が殺気を強めるごとに、美樹の体が、震え始めていた事を
「貴方と戦うのは、また後日にさせていただきます、では、失礼しますよ」
ジークはそう言うと、即座に窓から飛びさっていった
「ちっ・・・・厄介な能力だな、対抗策を練らないと・・・」
ジークが去っていく様子を眺めながら、ランスはそう呟いた
「・・・喉が・・・渇くよぅ・・・」
小さな声で、美樹がそういったのに気付き、ランスと日光が美樹の方を向くと
「なっ!?」
「ランス殿!!避けてください!!」
日光の声に反応し、ランスは、飛びかかってきた美樹を避けた
「喉が・・・渇くの・・・ランスさん・・・血・・飲ませて・・・」
ランスに避けられた美樹は、そう言いながら、再びランスに飛びかかった
「ちぃ!?どういうことだ!!一体何があったんだ!!」
ランスは、ある程度余裕を持って美樹を避けていたが
美樹の身体能力が明らかに強化されていること
さらに、血を飲みたがっている事を理解し、半ば困惑していた
「わかりません、何らかの要因が原因で覚醒が早まったのかもしれません
ですが、ヒラミレモンさえあれば、まだ、抑えられるはずです」
日光は、美樹から発せられる魔王としての気配がまだまだ微弱な事から
覚醒を抑制するヒラミレモンなら、抑えきれると考えていた
「ヒラミレモンか・・国庫に2,3個あったかもしれない
急いで、取ってきてくれ、俺の名前を出していい
リア様には後で俺から説明する!!」
美樹を部屋から出さないように、上手く誘導しつつ避けながら
ランスは、日光に急ぎ取ってくるように頼んだ
「わかりました、血を何としても吸われない様にしてください
もし吸われたら、その時点で覚醒しきってしまいます!!」
日光はそう言うと、即座にヒラミレモンを取りに向かった
「美樹ちゃん、しっかりしろ!!闇に飲まれるんじゃない!!」
「器・・・・満たす・・・闇・・・渇く・・・喉が・・・」
ランスは、必死に美樹の自我を保たせようとするが・・・
美樹は、意味不明な事を言っては、ランスに襲いかかり続けていた
その様なやりとりが10分ほど、続いた後
日光がヒラミレモンを持って帰ってきた
そして、ランスが囮になり日光が美樹の口に、ヒラミレモンを放り込んだ
正気に戻った美樹は、ヒラミレモンのすっぱさに混乱していたが
ある程度時間がたって、どうしてああなったのかを簡単に話した
「ランスさんがあのナメクジみたいな人と戦っていたら・・・
急に、変な声が聞こえ始めたの
『器を満たせ、絶望の闇で、殺戮の血で、穢れた空気で
器を満たし、覚醒せよ、闇に、王に、破滅の神に』
・・・そんな感じの、凄い、冷たい声だった
そして、なんだか頭の中がボーってしてきて・・・・
ランスさんを襲ってるのはわかったけど・・・止められなかったの」
その美樹の言葉に、ランスは深く考え込み始めた
日光もまた、前回の衝動との酷似点を悟り、考えていた
美樹の覚醒が早められるのは、ランスが近くで戦闘した時だけ
日光が、そう言う結論に達すると、ランスにある事を頼んだ
まず一つに、自分を美樹の護衛として戻して欲しい事
カオスを振るう危険性は日光も理解しているが
それでも、美樹が魔王に覚醒するのを抑えなければならない
ランスも、その意見に賛成し、日光の提案を受け入れた
次に、美樹の近くでのランスの戦闘を控えて欲しいとの事である
ランスも、その詳細を聞く事で納得し、その事も快く受け入れていた
次々と目まぐるしく変わり始めた大陸の情勢
その中で、一番大きな要因なのは、魔王の覚醒に関することであろう
美樹の覚醒周期が異様に早まっている事、それがどのように影響するのであろうか
いや、その周期の早まりすらも、何か大きな事象に影響しての事かもしれない
その真相を知るものは、大陸には存在せず
人々は、目の前の戦乱の火を消すことに集中していた
後書き
待っている方がいたかどうかはしりませんが、久しぶりの投稿です
正直スランプはいってて・・・結構きつかったんですが
ある某大手サイトのランスリンクに、私の作品の名前が出ていたので
火がつき、何とか書きあげる事に成功しました
次回、やっと作者が書きたかった覚醒編スタートです
何度も何度も推敲しつづけているので、更新は遅れますが
何とか書き上げますので、皆さん、気長にお待ちください
11/20 16:27分盛大な誤字を修正
長らくはなれていると誤字が多いなぁ・・・
17:16分 再修正w