リーザス軍がMランド防衛を成功し、ポルトガルへと進軍した翌日
JAPAN軍は平野部にて陣を敷き、リーザス軍に備えていた
リーザス軍はそれを知り、両翼を突出させた陣形で進軍をしていた・・・
ポルトガル近郊 JAPAN軍陣地
そこで、一人の女性と、男性が言い争いをしていた
女性の名は山本五十六、先の戦いでランスがその才を見抜いた武将であり
もう一人は織田健一、JAPAN軍総大将、信長の血縁者であった
「このような陣形では大陸の兵は支えきれぬ!!
某は先の戦で大陸の兵の力をこの目で見てきた
騎馬無き今の我が軍では、この陣形で大陸の兵を抑える事など出来ぬ!!」
「それは勝家が無謀な特攻をしたせいであろうが!!
我らJAPAN軍が大陸の兵などに劣るものか
それに・・・五十六、貴様はもう後は無いのであろう?
それゆえ、長期戦にする事で、指揮する弓兵の戦果を高めたいのであろう?
安心するが良い、この戦に勝てば私が信長様に恩情を出すように頼んでやる」
「っ!!某を侮辱するか!!」
五十六が健一の言葉を聞き、今にも抜刀しようとしたとき
「報告します、大陸の兵が現れました!!」
兵が、健一に向かってそう報告した
「ほぅ・・・陣形はいかなるものであった?」
五十六も健一も流石に冷静になり、兵の報告を聞く事に集中した
「両翼を突出させている陣形をとっており
右翼は約4000の兵、左翼が約5000、中央が約9000と言った所です」
その兵の報告を聞き、健一は僅かに笑みを浮かべた
「雁行陣と言うわけか・・・面白い
我が軍は円陣で応戦する!!鼓を鳴らせ!!出陣だ!!」
事実上ポルトガル在住軍の総指揮官である健一の言葉に従い
五十六は、不服そうな表情を浮かべながらも、大人しく自分の軍へと戻った
ちなみにその円陣の構成は・・・
先陣に織田健一率いる武者兵6000
中陣にMランド戦で逃亡して来た兵を加えた前田のべる率いる足軽兵9000
その内訳は、先陣の方に3000、後陣の方に6000である
後陣に、山本五十六率いる弓兵が2800と言う陣形であった
中陣の半分以上が後陣の方に偏っているのも、この陣の特徴であった
円陣が敷き終わり、JAPAN軍が出陣して間もなく
雁行陣をしいたリーザス軍がJAPAN軍の視界に入り
両軍とも、進軍を停止した
ポルトガル近郊 リーザス軍 中陣
「ふむ・・・エクス将軍の言う通りになりましたね」
「えぇ、相変わらず、あの読みは凄いわよね」
JAPAN軍の陣形を見たリックとレイラが、そう声をかけあった
「なら、我らは任務を達するまで・・・
全兵!!突撃!!
敵中軍だけを狙え!!
我ら赤の軍の力、とくと見せ付けるぞ!!」
「オォーーー!!」
リックは激励と共に突撃を開始し
それに呼応して、赤の軍全軍が突撃を開始した
リーザス近郊 JAPAN軍
「敵軍が突撃を開始しました!!」
「愚かな、全兵迎撃用意!!敵を迎え撃て!!」
健一は、雁行陣を敷きながらも中軍が突撃して来た様子を見て
大陸の兵は、ここまで統率が取れていないのかと思い
いかに敵が多勢でも、恐るるにたらずと考え
円陣を敷いたまま、リック率いる赤の軍へと応戦を開始した
そして、それが戦場の趨勢を決する物となったとは、考えてもいなかった
リック率いる赤の軍総勢9000対織田健一率いる武者兵総勢6000
その衝突は、一見互角に見えたが、その実、赤の軍が僅かに押していた
リーザス軍右翼にいたエクスは、その情勢を見て僅かに微笑んだ
「予定通り・・・と言う所だな」
同じく右翼にいたランスが、エクスにそう声をかけた
「えぇ、正直に言えば、予想以上ですけどね
そろそろ頃合です、バレス将軍に合図を!!」
エクスがそう指示を出すと共に、狼煙が上がった
その狼煙が上がったと共に、リーザス全軍の動きが目に見えて変わった
そう、陣形を戦闘の真っ最中に再編したのである
「確かに、雁行陣相手ならば円陣も効果的な陣形かもしれませんが
鶴翼陣相手なら・・・どこまで耐えられますかね?」
戦闘の真っ最中にもかかわらず、乱れることなく陣を変える自軍を見て
エクスは、不敵な笑みを浮かべながらそういった
JAPAN軍 中軍
「えぇい!!ひるむな!!猪兵ごときに遅れをとるでない!!」
織田健一は、押されがちである兵を必死に叱咤し、前線を支えていたが・・
「報告!!敵、雁行陣から鶴翼陣へと陣形を変更いたしました!!」
「何!?いかん、後陣に前に出るように伝えよ!!
急ぎ方陣を敷くように伝えるのだ!!」
織田健一はその報告を聞き、焦りの表情を隠せず、そう兵に伝えた
今回、JAPAN軍が引いた円陣とは、後陣が厚みを持っているものなのだ
雁行陣は中央の軍が後方へと引いた形で、その中央の軍の軸を対称軸とし
右翼左翼の両軍が突出する形となっている陣形であり
その両翼の軍をもって、相手を包囲する事に特化している陣形なのだ
その陣形の弱点は、中央に陣を敷く軍が早期に前線に到達することが難しく
両翼のどちらか片方が崩れた時点で、即座に崩壊する陣形なのだ
そのため、織田健一は包囲を阻むために後陣を厚くする円陣を敷いた
ちなみに先ほど命令した方陣は、全包囲の攻撃に平等に当たれる陣形であり
可も無く不可も無く、と言った陣である、だが、それ故に臨機応変に当たれる
健一は雁行陣によって包囲を狙っていると考えていたために方陣を敷かず
後陣の厚さによって耐え、両翼を崩壊させうる円陣を敷いたのだ
だが、リーザス軍は戦闘のさなかに、鶴翼陣へとその陣を変えた
鶴翼陣は雁行陣と同じように、包囲攻撃用の陣形ではあるが
左翼、右翼がやや突出してはいるのだが
その両軍を繋ぐ中央軍の位置が、雁行陣に比べると比較的前方なのだ
一般的な将軍なら、雁行陣の前に鶴翼陣を敷き、敵兵を減らした後に
雁行陣へと変え、包囲殲滅するのが、兵法としての基本であると考えるだろう
だが、エクスはあえてその逆をしてみせた
最初から鶴翼陣を敷けば、おそらく敵は方陣を持ってでてくるであろう
方陣であれば、かなりの兵を損失させねば、鶴翼陣から雁行陣へと移行は難しい
エクスはそう考え、あえて雁行陣を敷き、方陣以外の陣形を誘った
もし、相手に冷静な軍師と、赤の軍の突破力を知るものがいたのなら
雁行陣は誘いであり、鶴翼、もしくは錐行陣を狙っていると考えたであろう
エクスは、勘付かれても、即座に対処する策を練ってはいたが
自分の予想した内での、最善の戦況となり、満足そうな笑みを浮かべ続けていた
「えぇい!!ひるむな!!戻せ〜〜〜!!」
JAPAN兵の多くは、陣形を戦闘のさなかに、混乱も無く変化させた
大陸の軍、リーザス軍の力と統率に、恐れを覚え始めていた
戦闘の真っ只中で陣形を再編するなどそう簡単に出来る事ではない
まして、JAPANの戦では陣形の優劣が戦況に大きく影響していたからこそ
平野での陣変えとはいえ、混乱も無く変えた軍に畏怖を抱いたのだ
その畏怖は、陣形の持つ力をよく知っている武者兵に、特に影響していた
しかも、リーザス赤の軍は、武者兵達を苦も無く討ち取っていっているのだ
JAPANでは最強の歩兵と恐れられた武者兵達であったからこそ
赤の軍の力を感じ取り、その力に畏怖を抱いていた
それでも崩れなかったのは、武者兵の覚悟によるものであろう
JAPAN武者兵の多くが、戦場で散る事こそ最善の散り方と思い
まして、猛者と戦い散れたのなら、悔いなど一切無いと言う考えだったのだ
つまり、畏怖を覚えさせるほどの赤の軍が相手だったからこそ
武者兵達は逆に奮い立ち、必死に応戦していたのだ
それでもなお、織田健一が必死に戻そうとしているのは
赤の軍の突破力が、あまりにも高すぎるためであった
そして、織田健一は、最大の不幸に見舞われる事になった
「ぐわっ!!」
「グハッ!!」
突如近くで聞こえた兵の声に驚き、健一がそちらを向いた瞬間
「バイ・ラ・ウェイ!!」
ドサッ
赤い閃光が、健一の体をつきぬけ、その首、腕、足が、胴体と別れていた
そう、健一にとっての不幸は、リックの突破力が尋常ではなかった事だった
リックは、単身突入を果たし、健一の首を狩る事に成功した
単身での敵陣突入、更に健一を一瞬で殺害したその剣の腕
そして、先ほどからリックが浮かべ続けている僅かな笑みを見て
指揮官を失った武者兵のうち数名が逃亡を開始し、それが他の兵にも伝染した
武者兵達は必死に支えていたが、足軽兵は次々と逃亡を開始した
なにせ、リーザス軍が再び雁行陣へとその陣形を変えだしたのだ
それにより、包囲殲滅されるという意識がJAPAN軍全軍に広がり
士気低かった足軽兵の多くが、即座に逃亡を開始したのだ
そして、それこそがエクスの最後の狙いでもあった
弓兵は指揮官の有能さから、武者兵は兵の性質からそう簡単には引かないだろう
それならばと、士気が低い事が予想された中軍を切り崩すことを考えたのだ
エクスの考えどおりに、事は進み、JAPAN軍は恐慌までとはいかなくとも
逃亡する足軽兵によって、指揮の乱れが生じ始めていた
JAPAN軍 後陣
「くっ、流石は・・・大陸の正規軍と言う所か
友軍の退路を確保する!!矢を惜しむな!!」
弓兵の指揮官である五十六は戦況を読むと、即座に自軍に指示を出し
リーザス軍の右翼、左翼に一斉射撃をしかけ、足止めを始めた
それに呼応し、後陣に位置していた足軽兵が奮い立ち
リーザスの両翼の軍に攻撃を開始し、更にその進軍を食い止めていた
だが、リーザス軍もその程度で止まりきるほど弱くは無かった
特に左翼はバレス率いる黒の軍であり、見事に足軽兵、弓兵の攻撃に対応し
その進軍速度は、ほとんど落ちてはおらず
また、右翼に位置している白・緑の軍連合軍は、緑の軍が足軽兵を受け持ち
エクスが、戦況を冷静に読み、被害を最小にしながらも、包囲をしていた
「くっ!!もはや、逃げ道は無いと言うのか・・・!?」
必死に攻撃を続けながらも、リーザス軍の包囲速度がさほど変わっていないのを見て
流石の五十六も、諦めを抱き始めた頃・・・
パカッ カカッ パカカッ カカカッ
五十六達、JAPAN兵にとってはある種馴染みのある、
ウマが、そう、騎兵が駆けている音が聞こえてきた
五十六は、先の戦いで敵の将軍の一人がウマに乗っているのを見ていたため
その将軍が、単身突撃を仕掛けてきたのかと、弓で射る準備をしていたが・・・
「本多忠勝推参!!
雑兵どもが、道を開けよ!!」
五十六にとって、あまりにも馴染みのある声が戦場に響き渡り
僅かに包囲を始めていたリーザス軍を蹴散らしながら、
少数の騎兵が、戦場を我が物顔で駆け抜けていた
「忠勝!!」
その騎兵が駆ける様を見て、五十六は思わず叫んでいた
その声を聞き、騎兵の先頭を駆け続けていた男が五十六の方を向き
即座に、五十六の方に向かい、他の騎兵達も、それに続いていた
「姫、ご無事で何より」
騎兵の先頭を駆けていた男、本多忠勝は、五十六の前まで行くとウマから降り
五十六の前で膝をつきながら、そう言った
本多忠勝、彼はJAPAN随一の猛将であり
織田家が山本家を降すまでの間、山本家に仕え続けていた忠義の士でもあった
今、山本家は五十六以外に血を引くものがおらず
JAPANの風習上、山本家は潰れたも同然の物であったが
忠勝は、五十六を主君と慕い、信長ではなく五十六に従っているのだった
「いや、忠勝が来てくれねば危うい所だった
しかし、何故忠勝がここに?」
五十六が、感謝しつつも、膝をついている忠勝に尋ねた
本来、忠勝は長崎の治安維持を行っているはずなのだ
援軍にしては、少数過ぎるため、五十六は忠勝が何故ここに来たのか疑問に思っていた
「Mランド近郊の戦にてJAPAN軍が敗れたと聞き
姫に何かあっては一大事と思い、手勢を率いて急ぎ推参しました
独断行動にはなりますが、姫の御身を気遣っての出兵
罪に問うと言うのなら、この忠勝のみを裁いてくださいませ」
忠勝は、より深く頭を下げ、五十六の問いに答えた
「いや、某は罪は問わぬ、むしろよくぞ来てくれた、その忠義、ありがたく思う
忠勝、お主の忠義は、某には過ぎたるものだな・・・」
五十六が、自嘲気味にそういった、忠勝は、それを聞くと頭をあげた
「お言葉ではありますが、某の忠義など、取るに足らぬものでございます
姫は、山本家再興の為に必死に戦っておられるのですから
某が姫の為に、山本家の為に忠義を尽くすことなど、至極当然の事
むしろ、その様なお言葉をかけて頂けて、身に余る光栄にございます」
五十六は、その忠勝の混ざり無き言葉を聞き、僅かに苦笑した
「さて、ならば急ぎこの包囲から逃れねばな・・・
できれば、敵将の首を取って行きたくはあるのだが・・・」
「姫は先に逃れてくだされ、某が殿を務めましょうぞ
ついでに、敵将の首を一つくらい奪って、帰還いたします」
忠勝はそう言うと共に、再びウマに乗り、リーザス軍へと突撃した
「・・・・忠勝・・・すまぬ・・・・・
全兵、一斉射!!弓が切れ次第即座に撤退せよ!!」
五十六は、再度突撃していった忠勝に向かって一言だけ発し
ありったけの矢を、リーザス軍に放ちながら、撤退を開始していた
リーザス軍 右翼
「くっ!!少数と思ったのが過ちでしたね・・・
誰か、急ぎランス将軍に伝達を!!
あの将は、ランス将軍でなければ太刀打ちできないでしょう
迂闊に近寄ってはなりませんよ!!」
エクスは、思わぬ痛撃に、苦渋の表情を浮かべていた
総勢僅か100程度の騎馬兵に、完全に足止めされてしまっているのだ
しかも、中でも恐ろしいのが、鹿の角のような兜を被っている騎馬兵であり
その騎馬兵は、縦横無尽に駆け巡っており
その凄まじすぎる武勇は、白の軍に恐慌を与えていた
エクス、ハウレーンが必死に兵を鼓舞し、その騎馬兵、忠勝を避けているからこそ
何とか、崩壊せずにすんでいるというのが現状であった
「このままでは・・・あの弓兵の指揮官に逃げられますね」
思わぬ足止めから、完全な包囲陣を引くのがほぼ不可能になってしまったために
エクスは、今回何としても捕虜にする予定であったあの女性指揮官が
既に、撤退行動に入っているだろうと予測したのだ
だが、今の自分達では、忠勝を抑えられないのも事実であった
「大陸の兵はこの程度か!!
この首討てる者はおらぬのか!!」
忠勝は、持っている豪槍『蜻蛉切』を振り回し
次々と、リーザス白の軍兵の首を、何の苦もない様子で刈り取っていた
「ならばこの俺が相手だ!!」
流石にもはや耐え切れず、兵が逃亡を開始しようとした瞬間
報告を聞き、急ぎ駆けつけたランスが、忠勝に切りかかった
ガキィィン!!
「ぬぅ!!中々の腕前・・だが、某を討つにはまだ足りぬ!!」
ランスの攻撃を防いだ忠勝が、反撃を加える
ギャリィィン!!
「それはこっちの台詞だ!!」
ランスも、その反撃を防ぎ、忠勝に反撃を加える
キャン カッ ギャリィィ!!
キャリ ガキャリィィン!!
勝家の時とは比較にならぬほどの金属音が周囲に響き渡り
その周囲の兵は、ただただ魅入っていた
「オォォォォォ!!」
「ウラァアアア!!」
両者、鬼神のごとき表情で、恐ろしいほどの打ちあいを繰り広げていた
ほんの少しでも、その打ちあいに近づいたならば、間違い無く斬り捨てられるだろう
そう、忠勝、ランスの両者とも、意識して斬り捨てるのではなく
ただ、両者が放ち、打ち合い続けてる、凄まじい勢いの斬撃によってである
もはや、ランスも、忠勝も、互いに見えているのは、一人だけであった
相手を討ちとらんと、鬼気迫る表情、凄まじい殺気の中でありながらも
二人は、好敵手に出会えた、歓喜の笑みを浮かべていた
そんな二人の打ち合いは、ある兵の報告によって止められる事になった
その報告とは、山本五十六を捕らえたと言う報告であった
両者とも、其の報告を聞き、即座に打ち合いを止めた
そして、打ち合いを止めてまもなく、五十六が忠勝の前に現れた事により
忠勝は蜻蛉切をおき、大人しく降伏したのであった
少し時間はさかのぼるが、何故五十六が捕まったかを説明しよう
忠勝が特攻を開始してまもなく、五十六は撤退を始めていた
バレス率いる黒の軍が、それを必死に追うが
足軽兵の攻撃により、捕らえるには少々距離が空きすぎていた
必死に逃げる五十六軍と、それを追う黒の軍
ポルトガルが見え始め、五十六が助かったと思った瞬間
五十六軍のちょうど前方に、見慣れぬ旗の軍が存在していたのだ
さらに、その軍の先頭に立っていた女性が、全軍に指示を出した
その指示の内容は、五十六の士気を損なうのに十二分過ぎる物であった
「JAPAN軍の足を止めろ!!
今こそ、ランス将軍への恩を返すときだ!!」
そう、その見慣れぬ旗の軍は、ポルトガルの近くに位置する都市
闘神都市の騎士団長、サーナキア・ドレルシュカフが率いる軍であった
サーナキアはかつてはランスと衝突していたが
ランスに騎士のあり方を教えられ、今ではランスを尊敬しているのである
そのランス率いるリーザス軍がJAPANとの戦闘になっていると聞き
ポルトガル近郊で、戦端が開かれたと聞くと即座に
闘神都市の守備軍の中で志願者を集い、援軍として出陣したのだ
その数はそう多くはなく、僅か500程度の歩兵集団ではあったが
五十六達の士気を完全に失わせるには、十二分であった
五十六は、急ぎ自分を取り戻し、撤退の術を考えていたが
進軍が止まった事を見たバレスが即座に包囲陣を敷き
そして、バレスが降伏勧告をしたため、兵の命の安全を保障する代わりに
自らが投降し、忠勝を止める事を誓ったのだ
そして、五十六が現れた事から、忠勝はその事を悟り
即座に、大人しく投降したのであった
サーナキアはバレスが五十六を降伏させたと共に闘神都市へと戻っていった
なんでも、いまだに治安が不安定であり、そう長くは離れられないとの事であった
ランスは、忠勝と五十六をリーザス城へと送るように兵につたえ
自分は、僅かな手勢を率いて、ポルトガルへと向かった
ランスが到着した時、ポルトガルは、既に多くの家が破壊されていた
JAPAN軍の撤退部隊が、破壊して行ったと、バレスは言っていた
その破壊行動も、サーナキア率いる軍が来たために、中途半端に終わっていた
もしも、サーナキアが来るのが遅かったら、破壊されつくしていただろう
軍事拠点どころか、貿易拠点としても、一個の都市としても使えぬほどに
ランスは、そんなポルトガルの様子を眺めると、兵達に指示を出した
『破壊された所に、孤児や、家を失った人がいる可能性が高いため
そういった人達を保護し、リーザスへと送るように』 と
その命令を受けた兵達はそれぞれ行動を開始し、ランスも、独自に動いていた
ランスが、各家を見回していたときに、ある光景が目に止まった
紫色の髪の少女が、廃墟から何かを探している様子だった
ランスは、その少女の顔に浮かぶ絶望と、諦めの色を感じ取り
ウマから降り、その少女に声をかけようとした瞬間
その少女は、ナイフを手に取り、自分の首に突き刺そうとしていた
「くっ!!」
ザクッ
ランスは、即座に自分の腕をその少女の首とナイフの間に割り入らせ
自分の右腕を突き刺させる事で、かろうじて、少女の命を救った
「どうして・・・邪魔するんですか・・・?」
少女は、ランスの腕に刺さったナイフと、血を見て一瞬驚いた表情を見せるも
抑揚の無い、感情のこもってない声で、そうランスに問いかけた
「何故、死のうとした?」
ランスは、少女の目を真剣な目で見ながら、そう言った
少女は、ランスのその目をじっと見続けると、ポツリポツリと、語りだした
自分は、特異な体質であると言う事
その事に目をつけたプルーペットと言う名の商人が、自分を商品にした事
特殊な装置をつけられ、感情の無い、人形にされていた事
そして・・・・自分の意思とは無関係に、男性に抱かされていた事等
そんな事を語る少女の目は、絶望と悲しみに彩られており
その少女の声は、ほんの僅かに、怒りと、悲しみに、揺れていた
「・・・君は、その商人が憎くはないのか?」
ランスは、その少女の話が終わると、そう問いかけた
「・・・憎いです、けど、私に・・なにが・・・穢れた私に・・・」
ランスは、そう言いだした少女の顔を、両手でつかみ、自分の方を向けて言った
「何が穢れだ!!そんな事を気にしてなんになるって言うんだ!!
憎いのならば、何とかして復讐すればいいんだ!!
殺すだけが復讐じゃあない、その商人を追い詰めてやることも復讐だ
その商人は、おそらくリーザスにもパイプを持っているだろう
もし、生きていたなら、顔を出すはずだ・・・なら
その時、君が証人になって、奴の悪事を暴くんだ
今のリーザス法では、そのプルーペットが行った事は重罪だ
少しでも、憎いと思うのなら、立ち上がるんだ!!」
「でも・・・でも・・・私は・・・私は・・・!!」
「君は、俺が軍人になる前、何をしたかしっているか?
俺はな、親父に拾われる前に、人を何人も殺した
わかるか?人を、この手で、軍人としてじゃあなく、個人の意思で殺したんだ
もし君が穢れているのなら、俺だって、酷く穢れている
だがな、そんな俺だって、こうやって生きているんだ
君が穢れているとか言う奴がいたら、俺が叩きのめしてやる
だから、生きるんだ、君にとっての本当の意味での幸福を、その手に掴むまでは」
少女は、ランスのその真剣なまなざしと、声を聞き
涙をこぼしながら、小さく、本当に小さく、頷いた
ランスは、その少女、レベッカを保護した
その後、バレスとハウレーンに頼みこんで、レベッカを家で雇う事になった
バレスも、ハウレーンも、レベッカの事を聞いて、特に何も言わずに承諾した
バレスは、自分の軍にも権力者に娘を売って、架け橋を作っているという
そんな黒い噂を持つ兵がいた事も思い出し、調査しようと心に決めていた
ハウレーンは、レベッカを実の妹のように可愛がり、色々話をしたり
ハウレーンが休日の時には、一緒に買い物に行こうと約束していた
ランスは、妹のようなレベッカの存在を、半ば嬉しく思っていたが
何かが、引っかかってもいた
過去の自分にも、妹と呼べる存在がいたような、そんな引っ掛かりがあった
ポルトガルでの戦いは終わり、ランスは、リーザス城に帰還する事になった
山本五十六、本多忠勝両名の処遇を王女であるリアに報告するためと
マリスの方から、緊急に呼び出しがあったからである
ランスが抜けたリーザス軍は、長崎攻略を開始していた
今、長崎を落さなければ、JAPANと大陸との橋があげられ
本当の意味での終戦は迎えられないとわかっていたからだ
ヘルマンとの一戦も十分にありうる以上、後方を脅かされたくはない
それが、リーザス軍の総意であった
JAPAN軍にとっては、大陸の兵を追い返すための戦い
リーザス軍にとっては、近寄ってきた火を、完全に消火するための戦い
両軍共に戦う意義を持ち、まさしく、国の命運を賭けた戦となっていた
その戦の最中で、後の歴史家達に『覚醒』と言われる現象を引き起こす当人は
リーザス城へと、ただひたすらに向かっていた
時はLP暦3年5月12日
大陸の東端で発生した火が、いまだに燃え続けていた・・・・
そう、大陸全土を覆う焔へと変わらんとするかのごとくに・・・・
後書き
いや〜・・・時間かかりすぎた(汗
ギリギリ予告時間内にかけたようで、まぁよかったです(ぇ
本多忠勝、本来は徳川家に仕えていた猛将ですが
この話では、山本家に仕えてもらいましたww
五十六の処遇は次回と言う事でw
馬鹿剣登場も、もう少しです
次回、戦争から少しだけはなれた後
その次で、皆さんお待ちかねの現象スタートです(ぇ
例の現象は、多分二話に別れますのでww
では、気長にお待ちください〜