ランスがレイとの戦いの傷から癒え、出発したその日の夜の内に
手勢400を率いてMランドに向かった軍と合流した時
既に戦端は開かれており、リーザス軍は尋常ならぬ被害を加えられていた
予想よりも、敵の進軍が早かったのである
その理由は、ポルトガルの無血開城にあった
JAPAN軍総大将、織田信長の残忍性はポルトガルでも知られており
大人しく土地を差し出し、金銭支援する事を条件として
ポルトガルは、無血開城をしたのだ
それに驚いたのはエクスとバレスであった
如何に戦力乏しい町と言えども、商人の町である、何らかの交渉を行うことで
無血開城の代りに何らかの要求をし、その事でJAPAN軍の足止めとなり
Mランドにおける布陣を完璧な物に出来ると思っていたのだ
だが、予想よりも早すぎる降伏で、布陣が完璧ではなかった
その不完全な布陣で、突破力の優れるJAPAN騎馬隊と戦闘になったのだ
何とか、退けはしたものの、被害は甚大であり
白の軍の兵数が3200、黒の軍の兵数が5700、緑の軍メナド隊が980まで減っていた
ランスは、そのただならぬ様子を見て、到着すると共に、会議場へと向かった
「ランス・プロヴァンス、ただいま到着しました」
ちょうど会議中であった事もあり、前線にいる全将軍が集合していた
バレスは、ランスの姿を認めると、大きく頷き、手でランスを呼び
ランスがそれに応じ、バレスの隣に行くと広げられている地図を見始めた
「・・・戦況は不利か」
地図に書かれていた敵軍の配置状況を見て、ランスはそういった
敵は・・・先陣にJAPAN騎馬兵が1800、中陣に7000の足軽兵
そして、後陣に弓兵が3000も控えていたのだ
兵数自体はそう大きく差はないが、騎馬兵が厄介すぎるのだ
騎馬兵の突破力は、歩兵とは比べ物にならない
なにせ、指揮官次第では、騎馬兵1で歩兵20を討つことも可能なのだ
エクスの策も、その突破力ではさほど意味をなさず
ただ、その凄まじい突破力を前に、兵の士気を損なわせないのが限界だった
「・・・正直、敵の戦法は『無策』と言える物なんですけどね
しかし、突破力が尋常じゃ無さ過ぎる、赤の軍に匹敵してます
その突破力を支えきるには、青の軍抜きでは正直辛いものがあります」
エクスは、苦笑しながら、ランスに向かってそう言った
「そのおかげもあって、敵の弓兵の被害にはあってはいない
だが、もうしばらくすれば弓兵も攻撃をしてくるだろう
そうなったら・・・・もはや支えきる方法がない」
ハウレーンが、エクスの言葉に続いた、その顔は、苦渋に満ちた顔であった
ランスが、その言葉を聞き、ある策を思いついた
「なぁ、エクス、騎馬兵の指揮官、挑発に乗りそうな奴だったか?」
「えぇ、猪みたいな人でしたから、乗ってくるとは思いますが・・・」
エクスの言葉を聞き、ランスは不敵な笑みを浮かべ
そして、ランスは自分の策を全員に告げた・・・・
バレス達は、最初はそれに反論したが、ランスが権限を発揮し、沈黙させた
そして、ランスの兵は最前線に配備され、夜が開けた・・・・
ちょうど、真昼と言える時刻に、戦端は再び開かれた
JAPAN軍は騎馬兵を先頭に、足軽兵がその後ろに続く形で突撃して来た
それに対し、リーザス軍は全軍で騎馬兵の足止めを開始した
「戻せ!!陣を崩すな!!
私達はあくまで耐えれば良いのです!!
ランス将軍が策を遂行し終わるまでの間
決して陣形を崩してはなりませんよ!!」
「退くでない!!何としても耐えよ!!
我らは誇りあるリーザスの兵ぞ!!
侵略者なぞに負けるではない!!」
「ウマを狙え!!機動力を奪うんだ!!
こっちの利点は小回りがきくことだ!!
正面からぶつかろうとはするな!!」
「撹乱にのみ専念して!!
攻撃は無理にしなくていいから!!
命だけは粗末にしないで!!」
JAPANの騎馬兵と衝突し、ある程度騎馬兵がリーザス軍に食い込んだ時
バレス、エクス、ハウレーン、メナドの四名が、いっせいに指示を飛ばした
先日同様に、撹乱に専念し、敵騎兵の戦力を削ぐことに集中し始めたのだ
しかし、その中にランス率いる緑の軍400の姿は無かった・・・
そう、その頃ランスの部隊は別行動を開始していたのだ
いや、別行動と言うには少々無謀ではあったが・・・・
リーザス軍と戦闘を行っている場所とは別に、鮮血が舞う場所があった
そう、ランスは敵騎馬兵が突撃して来た瞬間、自ら突撃を開始し
残る400の兵も、混戦にまぎれてランスに続いていたのだ
「どけ!!雑兵ども!!
総大将!!でてこい!!俺が相手をしてやるぞ!!」
ドシュ ザクッ ブシャアァァァ…
ランスは叫びながら次々と迫ってくる騎馬兵の首を切り落とし
ランスに従う400の兵も、迫り来る騎馬兵の足止めをし、少しずつ討ち取っていた
その鮮血を浴び、鎧が赤く染まる様は鬼神と、それに従う鬼兵達のようであり
勇猛果敢、命知らずとも言われていたJAPAN軍が、恐れをなしていた
それほどまでに、ランス達の戦い方は異常だったのだろうか?
正確には、そう異常なものではない、JAPAN軍に猛将はいる
猛将が出陣する事で、そのような光景になる事は、そう珍しくは無いはずだ
ならばなぜ、恐怖を覚えたのだろうか?
その理由はただ一つ、JAPANの統治体制に問題があった
JAPANの織田信長は、恐怖を持って軍を、民を、国を統治していた
それが出来るほどに、織田信長は強く、残忍な男であった
そして、JAPAN兵の多くが、その信長の残忍性を恐れて従っており
恐怖を与えられる事に対して、異常に過敏になり、臆病になっていたのだ
恐怖を与えてくる者に、いかに力があっても弓引く事が出来なくなるほどに
ランスは、周囲の兵達の動きが鈍った事を悟ると、突撃しようとした
ここで突撃をし、恐慌に陥らせることができれば、勝利は確実なものになる
そうランスが考え、突撃しようとした時に、異変が起きた
「何をやっておるか!!
この程度の兵相手に退くなど、それでも織田の兵か!!」
おそらく、騎馬兵の総大将だと思われる男が、そう兵達を激励した
その事で兵達は正気を取り戻し、ランス達に対し、包囲陣を敷き始めた
「・・・お前がこの軍の総大将か?」
ランスが、好戦的な笑みを浮かべながら、命令した男に言った
「いかにも、某がこの兵達を信長様から預かっておる柴田勝家だ」
ランスはそれを聞き、更にその笑みを深めた
「俺の名はランス・プロヴァンス、リーザス緑の軍の将軍だ
柴田勝家、その首、貰うぞ!!」
ヒヒヒーーン!!
ランスのその言葉と共に、ランスの乗るウマが高らかに吼え
即座に柴田勝家がいる方向へとその向きを変え、ランスは単身突撃を開始した
「ぬっ!?」
キィン!!
勝家は、僅かに驚いた表情を見せると、即座にその攻撃を受け止めた
「流石に、一発じゃあ無理か!!」
キン キィン キィン キィィンン!!
「舐めるな小僧!!」
ランスの連撃を防ぎながら、勝家もランスに攻撃を繰り出す
キン カカッ キィィン キャリッ
ランスは、連撃を続けながら少しずつウマを走らせ始め
勝家も、それにつられる様にウマを走らせ始めた
カン キン ギャリ キィン
少しずつ馬で走る距離が伸び始め、遂には、ウマを走らせながら打ち合い始めた
それで動揺が走ったのは、JAPAN軍のほうであった
なにせ、自分達を指揮する将軍が、一騎討ちを始め、陣を駆け回っているのだ
一騎討ちのさなかで兵に指示を出せる将軍などそう滅多にはいない
勝家も、その例には漏れず、ランスとの一騎討ちに専念し続けていた
しかも、その間に、ランス率いる400の兵は撹乱しつつ、撤退を開始していた
敵兵の撹乱しつつの撤退による被害、更に指揮官の不在
その二つの要因が重なった結果、騎馬兵部隊の統率が、完全に乱れきった
これが、ランスの狙っていた事であった
正直、勝家の技量ではランスを討ち取ることなどできず、討ち取られるだけである
だが、ランスはわざと戦いを長引かせることに集中した
勝家を瞬殺すれば、兵達は、即座に逃亡を開始することだろう
これが、歩兵同士の戦いであったのなら、ランスは躊躇い無く切り捨てたが
相手は騎兵である、追撃を開始して追いつける相手ではない、ほぼ無傷で逃すだろう
そうなったら、別の将軍が騎馬兵を率いて来る事になる
今回は、まだ突撃のみを繰り返す将軍だから対処は可能だったが
もし、戦術、戦略を駆使する武将が率いたら、これほど怖い部隊もない
ならば、いっそ壊滅させてやろうと、ランスはこの策を考え付いたのだ
ランスの策は見事に成功し、騎馬兵の指揮系統は混乱を始めた
その混乱は次々と拡大していき、遂には、前線の騎馬兵にまで達した
「む、乱れ始めたか・・・ランス、よくやった・・・!!
全軍、突撃せよ!!」
「バレス将軍に続きますよ!!
騎馬兵を無視し、足軽兵の相手をしつつ包囲します!!」
「私達は騎馬兵の殲滅だ!!
一兵たりとて仕損じるな!!」
「僕達も反撃だよ!!
騎馬兵に攻撃を集中して!!」
騎馬部隊の混乱を感じ取ったバレスが、近くにいた騎兵を切り捨てつつ叫び
エクスもバレスに負けじと、全軍へと指示をだす
リーザス軍が攻勢に回った事でより一層混乱を始めた騎馬兵達を斬りつつ
ハウレーン、メナドの両名が騎馬兵殲滅の指示を出した
足軽兵達の近くで、ランスと勝家はまだ打ちあいを続けていたが
段々と騎馬兵達が倒され、リーザス軍が近づき始めていた
勝家はそれに気付いてはいたが、一騎打ちに専念するしかなかったのだが
ランスは、バレス、エクスの部隊の進軍の様子、騎馬兵の混乱状態から
騎馬兵殲滅が開始された事を悟ると、早々に決着をつける事にした
「さてと、お前との遊びももうこれで終わりだ!!」
「遊びだと・・・!!・・・許さぬ!!」
真剣勝負を続けていた勝家にとって、ランスの言葉は侮辱そのものだった
もはや駆け引きも何も無く、勝家は渾身の一撃を繰りだしたが
ランスはそれを難なく弾き、両手で剣を振り上げ・・・・
「ランスアタック!!」
ドバシュッ!!
ドサッ!!
渾身の力で、振り落とし、勝家を乗っていたウマごと両断した
ランスは、勝家の最後を見届けると、即座にバレス軍と合流した
柴田勝家の戦死、その報告は即座にJAPAN軍に広がった
ランスが勝家を討った際に、近くにいた足軽部隊は、逃亡を始めていた
「追撃だ!!この機を逃すな!!」
その様子から、追撃の好機と悟り、ランスは即座に指示をだした
その言葉に呼応し、即座に動き出したのはやはり、緑の軍の兵達であり
その後に続くように黒の軍、後陣に白の軍が続いていた
7000もいた足軽兵であったが、多くの兵が逃亡を開始していた
足軽とは、元々は農民出身の兵であり、力もそう高くは無く、忠誠心も低い
そもそも、信長の恐怖体制によって、一番虐げられている階層の兵達である
命をかけてまで戦う気力など無く、騎馬兵壊滅の報を聞き、恐慌に陥っていた
こうなっては、もはや反撃などできるはずもなく、JAPAN軍は撤退を開始した
その撤退して行くJAPAN軍の中で、ランスが目を引かれた部隊があった
その部隊は、後陣に控えていた弓兵部隊であった
撤退のさなかに、一斉射撃をおこない、友軍の退路を確保していたのだ
追撃の主な部隊が、黒の軍であったために、そう被害は無かったが
その鮮やかなる一撃と、その後の撤退の乱れの無さが、ランスの目を引いた
弓兵はさほど重要視していなかったランスだったが、考えを改めた
次の戦いにおいて、あの弓兵を指揮する将軍を捕らえたいと思ったのだ
これから先、魔人領の方にも、いずれ出兵する必要が出るかもしれない
そうなった際に、優秀な人材は多くて困る事はない
ランスは、次の戦場になるだろうポルトガルでの戦いにおいて
その将軍を捕らえる策を、エクス達に考えてもらおうと思い
戦いが終わり、全将軍が集結したその時に、その事を切り出した
もっとも、その事を聞いたハウレーンが、ランスに説教をしたのではあるが
その理由は、その弓兵を率いる将軍が、黒髪の美しい女性だったからである
つまり、ハウレーンはその女性欲しさにランスがそう言ったと思ったのだ
ランスは、しばらく大人しく説教を受けていたが、説教が止まったときに
即座に、軍事的視点から欲しいだけだと説得をし、何とか事は収まった
Mランドにおける戦いで、リーザスは多くの兵を損失した
しかし、予想以上に早期終結が成功した事から、時間の余裕は出来た
この戦いで消耗すると思われていた赤の軍も、無傷のまま次の戦いで出せる
現在の兵数は、負傷兵を外すと、ランス率いる緑の軍350、メナド率いる緑の軍870
バレス率いる黒の軍5000、エクス、ハウレーン率いる白の軍2800
そして、後陣であった無傷の赤の軍9000である
特に、戦いに参加できなかった赤の軍の士気は非常に高く
バレスは、赤の軍を先陣とし、負傷兵をMランドに預け、進軍を開始した
次の戦場は、商人の街、ポルトガル
その街の戦いで、弓兵の指揮官を捕らえることが最優先事項となっていた
迂闊に戦争が長引けば、ヘルマンへの対処が遅れる事になる
早期決戦、バレスはそれを考えていた
だが、JAPANには織田信長率いる武者部隊が控えている
果たして、リーザスは織田信長を大陸より追い返し、野望を打ち砕けるのだろうか?
それとも、信長が大陸への完全なる侵出を果たしてしまうのであろうか?
その命運を分ける戦いが、次のポルトガルでの戦いになるであろう
果たして、勝利の神は、どちらに味方するのであろうか・・・・
後書き
難産の結果、こんな中途半端なものに・・・・(汗
本当は五十六ここで捕らえたかったんですけどね〜
ですが、ここが限界となってしまいした・・・
次回、JAPAN覚醒編第二話、ポルトガル制圧戦です
予定では・・ランス覚醒は、第五話になるでしょう
もう少しで、皆さん待ち望んでいる覚醒です
作者も覚醒早く書きたくて仕方がありません(ぉぃ
ランス・プロヴァンスの目覚めを、もうしばらくお待ちください
難産で力尽きて誤字チェックはする気力が・・・(汗
レイトニングサン殿、誤字チェック、お願いいたします(マテコラ