ハンナ、ジオ、ロックアースを陥落した翌日、バレスが緊急軍議を開いた
本来なら、2日はほぼ全将軍が休養を取る予定で、バレスも承諾していたため
よっぽどの事がない限り、一度承諾した物を覆さないバレスが覆した事が
この緊急招集が、どれほど重要なものかを物語っていた
緊急召集に応じられなかったのは、アスカ、メルフェイス両将軍だけだった
両将軍は、先日、ジオ・ハンナ・ロックアースの三都市攻略戦の最中に
単身攻め込んできた魔人に壊された魔法結界を、再修復していた
魔人の前では、無力に近いかもしれないが、魔物相手ならば効果はある
バレスも、その事は理解していたため、無理に招集をかけてはいなかった
結果、会議室に集まったのは・・・・・
緑の軍からランスとアールコート、黒の軍から招集をかけた本人のバレス
白の軍からエクスとハウレーン、青の軍からコルドバとキンケード
赤の軍からリックとレイラ、以上9名の将軍であった
「皆、すまんな、だが、かなり急を要する事態になってきたのだ
ロックアースを陥落した際に得た情報が、とんでもないものであった」
バレスはそういうと、ヘルマン方面の地図を開いた
「DXの会がステッセルと繋がっておったのは間違いなかったが
もっととんでもない事実があった・・・・・
宰相のステッセルは、DXの会から麻薬を購入しておったのだ
しかも、その麻薬は、ヘルマン王妃と王女に使われておるらしいのだ」
その言葉に、集まった将軍全員が、驚きと憤怒の表情を浮かべていた
宰相であれ、将軍であれ、国の為、民の為に尽くす事こそ、何よりも大切であり
自らの主君に麻薬を勧める事など、国の崩壊しか招かないことであり
それ即ち、民の苦しみへと繋がる、だからこそ、許せなかったのだ
敵対国が弱体化する事を、喜ばないと言えば嘘にはなるが
だが、その弱体化も、たった一人の欲望のせいだというのなら、話は別である
国は違えど、愛国心を知るものだからこそ、ステッセルの行いが許せない
会議に集まった将軍の内、エクス、リック、ランス、コルドバの四将軍は
特に、その憤怒の表れは凄まじいものであった
「この情報より、ヘルマン弱体化の理由は判明した
だが、リーザスと接する場所を護っておるのはレリューコフだ
この度の内乱も、自由都市の反抗も、全てはステッセルの策であり
内乱は無事鎮めたとはいえ、ステッセルに対し、一矢報いねばなるまい
そこでだ、此度得た情報を利用し、ヘルマン内部の対立を誘おうと思う
その策に関して話し合うため、この度は招集をかけた
皆の休養を潰したのはすまないが、至急動いておいた方がいいと思う
儂には残念ながら、レリューコフを抜く戦略も、内乱を誘う策も考え付かん
だからこそ、皆の知恵を借りたいのだ」
バレスがそういい終わると共に、エクスが一歩前に出た
「バレス将軍の言うとおり、ヘルマン対策を急ぐ必要もありますが
それと共に、もう一つ厄介な情報が手に入りました
ハンナの街を陥落した際に、篠田源五郎氏と出会い、話をしたのですが
篠田氏が言うには、JAPANの戦乱は既に終わっており、
JAPAN領主である織田信長は、大陸を狙っているとの事です
そこで、かなみさんに頼んで情報を集めてきてもらったのが、これです」
そういうと、エクスはJAPAN軍の配置状況を書いた地図を広げた
「なっ!?既に長崎に軍勢が集結し終わっているだと!!」
「狙いは・・・ポルトガルか!!」
その配置状況を見たコルドバとハウレーンが、ほぼ同時に叫んだ
「えぇ、今からポルトガルの救援に向かったとしても
確実に、ポルトガルはJAPAN軍に落とされます
しかも、ポルトガルを落とした勢いを利用し、そのまま進軍して来るでしょう
なら、JAPAN軍の出鼻を挫くのはその時です」
エクスはそういうと、Mランド近辺の地図を広げた
「今回の幸いだった所は、まだポルトガルはリーザスとは良好な関係ではなく
あくまで、商売人を通じた関係であったという点だけです
JAPAN軍の次に進軍してくるであろう場所は、このMランドでしょう
Mランドまでなら、余裕を持って援軍を送ることも可能です
Mランドは既にカスタムを通じ、リーザスとの交易も再開しています
Mランド前でJAPAN軍を討つことで、他の都市へのアピールともなり
それと共に、ポルトガルが救援を求めてくれば、リーザスへの借りとなります
先にJAPAN軍を征討した方が、ヘルマン戦でも有利に事を進められるでしょう」
エクスはそういうと、バレスの方を向いた
バレスも、エクスの言葉を聞き、大きく頷いた
「いや、その前に魔人を一人でも倒すか、動きを封じましょう」
バレスが口を再度開こうとしたとき、キンケードが口を開いた
「動きを封じるといっても・・・策はあるのか?」
キンケードの言葉を聞き、ランスが尋ねる
「えぇ、俺達の軍はリーザス城待機でしたからね
他の将軍達がジオ等を攻めている間に、魔人が来たんですよ
一体だけの、雷を全身に纏った魔人、名前はレイと言うらしいですが
その魔人レイは、リッチの街に住むメアリーという女性との間に
何らかの関係があると思われます」
「・・・何故その事が?」
「簡単です、戦闘中に思いっきり名前を叫んでましたし
メガラス殿の兵に少し追跡を依頼した所、リッチの街に降りたんですよ」
ランスの当然の疑問に、キンケードはサラリと答えた
「しかし、なかなか熱い男でしたよ、こっちも思わず熱くなってしまった」
キンケードは、最後にそう言うと、一人どこか満足げな笑みを浮かべていた
キンケードは、最近こういう面が表に出始めたのだ
昔は、職業軍人と言った形で、ただ淡々と指揮をこなしていたのだが
ここ最近で何かがあったらしく、戦闘になると無意味に熱くなっているのだ
しかも、戦闘を思い出すとこれまた熱くなったりする
自分の世界に入ったら、もはや熱くなるのは確実と言った所だ
ランスは、自分の世界に入り始めたらしいキンケードをあえて放置し
現在集まっている情報の整理にかかった
「取りあえず、現在の急務は魔人レイへの対処でいいとして・・・
JAPAN軍に対する部隊と、ヘルマンへの牽制も考えないとな」
「でも、魔人への対処っていっても、どうするつもり?
確かにこっちにも魔人はいるけど、迂闊に動かすわけにも行かないでしょ?」
レイラが、考え事を始めたランスにそう話かけた
ランスは僅かに苦笑すると、背中に背負っていた刀を抜いた
「この、聖刀日光があれば、魔人といっても傷は負う
魔人レイが、リッチの街に本当に現れたなら
何とかして、二週間は動けないようにしてみせるさ」
ランスはそういうと、再び日光を鞘に戻した
ランスの、日光所持の発言を聞き、大半の将軍はただ驚くだけであったが
アールコートだけは、どこか悲しげな、恨めしげな視線をランスに向けていた
ハウレーンはそんなアールコートに気づいていたが、何故そんな目を向けるかは
想像は出来ず、ただ、アールコートの不思議な行動に頭を傾げていた
だが、ハウレーンも事実を知ったら同じような視線を向けることだろう
聖刀日光所持の条件、儀式の詳細な内容を知っているからこそ
アールコートは、その視線をランスに向けていたのだから
しばらくアールコートがその視線をランスに向け続けた後
一歩前に出て、大きく深呼吸をした後、口を開いた
「ランス将軍が聖刀日光を所持しているのなら・・・
ランス将軍に、魔人対策を一任した方がいいと思うんです
その間に、JAPANへの対策として、黒の軍と白の軍、そして赤の軍を
後、魔人対策が終わり次第、緑の軍の半数をMランドに向かわせて・・・
残り半数を、リーザス城防衛のために戻せば、護りも固められます
ヘルマンへの軍事的な牽制は青の軍が引き受けて・・・
それと同時に、ヘルマンに麻薬の情報を撒き散らすんです・・・・
上手くいけば、ヘルマン内部は、崩れ始めると思いますし
そうすれば・・・レリューコフ将軍といえども、動けなくなると思うんです
もしかしたら、他の将軍が噂の真偽を確かめるために動いて
それが原因で、内乱が勃発すると思うんです」
アールコートは、普段より少しだけ、胸を張りながらそういった
バレスはその案を聞き、自分の髭を触りながら言った
「ふむ、少々緑の軍にかかる負担が大きくはなるが・・・・
現状ではそれが最善であろうな
ランス、苦労をかけるが・・・よいな?」
ランスは、バレスの視線を受け、僅かに頷き、その問いに答えた
「よし、出陣は明日にする、各将軍は出陣の準備を整えてくれ
ヘルマンへの情報散布の方だが・・・かなみ殿に依頼しておくとしよう
次々と休む間もなく戦が続いておるが、これもリーザスの為
だが、決して無理をしてはならんぞ、都市は取り戻せても、命は戻せぬ
戦況が危うくなったら引く勇気もまた、重要じゃ
皆、再び、このリーザスで再会しようぞ!!」
バレスの言葉に、全将軍が大きく頷くことでそれに答えた
翌日、ランスは400ほどの兵を連れ、リッチの街へと向かった
アールコートに1000の兵を預け、リーザス城防衛に残し
メナドには1600の兵を預けて、エクスと共にMランドへと向かわせていた
当初の予定では二つにだけ分ける予定だったが、ランスは三つに分けた
その理由はただ一つ、白の軍の損害が思いのほか大きかったのだ
再編制の後、エクス、ハウレーン両将軍合わせて9000の兵であったのだが
先のハンナ攻略戦で大きな損害を追い、5400程度に減っていたのだ
バレスの兵は7000程はあるが、万が一と言うこともあるため
ランスは、メナドに命を出し、エクス達と合流させたのだ
赤の軍は後陣として出陣するため、即座にはMランドに向かってはいなかった
その為、現在Mランドへ向かっている兵は、総勢14000と言った所である
JAPAN軍は全軍合わせて22000程らしいため、戦力数は不利であるが
JAPAN軍よりも先にMランド近郊での布陣は可能であるため
JAPANの騎馬兵の勢いを殺す布陣で、守りに徹し、兵の消耗を抑え
後陣の赤の軍約9000が合流すれば、逆に兵数でも有利となる
だが、それまで厳しい戦いを強いられるのは、目に見えていた
だからこそ、ランスはメナドに兵の半数以上を託し、Mランドに向かわせることで
ただでさえ苦しい戦況を、少しでもましなものにしようとしたのだ
もし、メナド部隊をMランドに送らなければ、兵数は僅か12400である
1600の差が、戦況に与える影響は以外に大きいのだ
そしてランスも、少しでも早く援軍に向かうために
リッチの街へと、ただひたすらに急いでいた
リーザス領 リッチの街
ランスは、途中で聞いた情報を元に、メアリーと言う女性の家まで来ていた
「・・・・ここか」
ランスは、兵達に家を包囲させると、ノックをした
「はい、どなた様ですか?」
ドアが音もなく開き、中から、老齢の女性が出てくる
「貴方が、メアリーさんですか?」
ランスは、確認のためにその女性に聞いた
「えぇ、私がメアリーですよ、貴方の名前は何と言うんですか?」
メアリーと言う名の女性が、微笑みながらランスにそういった
「っと・・・名乗りが遅れました、ランス・プロヴァンスと言います
今回は、レイと言う男性に関して少し聞きたい事がありまして」
「レイが、どうかしたんですか?」
メアリーが、その名前を聞き、心配そうな顔でランスに尋ねる
「少し長い話になりますので、中に上がらせてもらっていいですか?」
「えぇ、構いませんよ、でも、そちらの皆さんは?」
ランスの言葉に頷き、メアリーは家の回りにいる兵達はどうするのか尋ねる
「少し込み入った話ですので、他の人に聞かれないように頼んでるんです」
ランスのその言葉に、メアリーは少しだけ頷き、ランスを家の中へと招待した
「たいした持て成しも出来ませんけど・・・お茶でもどうぞ」
メアリーがそういい、ランスにお茶を渡す
「すいません、急に押しかけたのにお茶までいただいて」
「いえいえ、お構いなく
・・・・それで、レイがどうかしたんですか?」
ランスの言葉に笑みを浮かべた後、メアリーは心配そうな表情で聞いてきた
「いえ、ちょっとした事で彼ともめてましてね
所で・・・貴方と彼との関係は?」
ランスは、微妙にはぐらかして、メアリーに尋ね返した
「私とレイですか?
そうですね・・・・レイは、私の恋人ですよ」
メアリーは、ほんの少しだけ悩んだと思うと、そういい切った
「恋人・・・?」
ランスは、半ば信じられないと言った顔でメアリーを見ていた
「えぇ、驚きましたか?」
メアリーは、微笑みながらランスにそういった
「まぁ・・驚いていないと言えば嘘になりますね」
ランスも、苦笑しながらそう返した
「驚かない方がおかしいんですけどね
私みたいな御婆ちゃんが、レイの恋人なんですから・・・ゴホッゴホッ」
メアリーは微笑んだままそう言っていたが、急に咳き込みだした
ランスは、即座にメアリーに駆け寄り、背中をさすった
メアリーは落ち着いたのか、ランスに頭を下げ、大丈夫だと、手で合図した
「・・メアリーさん、もしかして・・・体を?」
「・・・レイには、言わないでくださいね
レイは、私を守ろうとして、苦悩しているみたいですから
これ以上、レイの負担にはなりたくはないんです」
メアリーは、どこか悲しげな顔で、ランスにそういった
その言葉に、ランスが頷こうとした瞬間・・・・
バタン!!
「無事か!!メアリー!!」
全身から放電している、紫色の髪の男性、魔人レイが叫びつつ入ってきた
ランスはレイがここに来る瞬間に兵の叫び声がしなかった事から
兵達が指示どおりに、レイに一切手を出さずに引いた事を知った
そして、ランスはゆっくりと立ち上がると、レイの方向を向いた
「魔人レイ、貴様に一騎打ちを挑む!!」
ランスはそう言いつつ、聖刀日光を鞘から抜いた
魔人レイは、ランスの持つ刀が日光であると正確に理解すると
即座にメアリーの家からでていった
ランスも、それに応じるかのように、メアリーの家からゆっくりと出ていった
「人間、先に言っておくが、俺は一切容赦はしないぞ」
メアリーの家から出てきたランスを睨みつつ、レイがそう言う
「あぁ、構わん、元からこっちも全力で行くつもりだ」
そのレイに呼応するかのように、ランスも攻撃態勢に入る
メアリーは、ドアの近くで、そんな二人の様子を見ていた
「・・・・
いくぞ!!」
レイが叫ぶと共に、数本の雷の束が、ランスに向かって襲いかかる
ランスも、それを見極めると、即座に飛び、レイに切りかかった
ヒュオン!!
レイも、その斬撃をかわすが、その風切り音は凄まじいものがあった
生身であるランスにとっては、レイの一撃はまさしく必殺
だが、レイにとっても、ランスの攻撃は必殺と言える勢いがあった
「貴様・・・本当に人間か!!」
自分の攻撃をかわし、自分を一撃で殺しかねないそのランスの力を見て
レイは、更に雷の本数を増やしつつランスに攻撃を続ける
流石のランスも、警戒を強めたレイには迂闊に近寄れず
ただひたすら、回避に徹する事となった
「なるほど、貴様がサイゼルが言っていた人間か?
なら、侮るわけにはいかんな・・・!!」
ひたすら回避に徹するランスの様子を見て、レイはサイゼルの言葉を思い出した
『ただ回避に徹しているだけかと思ったら、急に襲ってきた人間にやられた』
魔人であるサイゼルが、人間にやられたと事を自ら、認めていたのだ
それほどの使い手など、そう滅多にいるはずもない
そして、今敵対しているランスは、レイの攻撃を避ける事に集中している
それは、手が出せないため逃げているだけにも見えるかもしれないが
サイゼルの言う人間なら、ただ、好機を待ち続けているだけだろう
なら、好機を与えるわけにはいかない、レイはそう考え
気を引き締めなおし、休むことなく攻撃を続けていた
(クソッ、隙がなさ過ぎる・・・・どうする・・・・!!)
ランスは、そんなレイの様子を見て内心あせっていた
かつて敵対したサイゼルは、まだ僅かとはいえ付け込む隙があった
だが、レイは時間が立てば立つほど逆に警戒を強めていっているのだ
(確かに、このままではこちらが不利になるだけですね・・・
かといって、兵を呼び戻しても、逆に危険になる可能性が高いでしょう)
日光が、直接ランスに話しかける
ランスが回避に徹し続けていられたのは、日光のおかげでもあった
ランスが気付く事の出来ない、命中する電撃を、日光が伝えてくれていたのだ
だが、このままではこっちが負けるだけだと言う事も、日光は悟っていた
人間と魔人とでは、基本的な体力の量が違い過ぎるのだ
このままではランスの体力がつき、死を待つだけとなってしまう
ランスも、それは理解していた、だからこそ、好機を探り続けていたのだ
だが、警戒を強めたレイに、隙と言うものは存在していなかった・・・・
「・・・流石はサイゼルを追い返した男だな
俺の攻撃をこうも避け続けるとは!!」
「ハァハァ・・・・クソッ!!」
戦いが始まって10分が過ぎた頃、ランスの息は早くもあがっていた
それも仕方ないだろう、かつて、サイゼルと戦ったときはまだ楽だった
サイゼル自身、人間を侮っていたのと、攻撃自体の速度が遅かったのだ
だが、レイの攻撃速度は並ではなかった
軍の中でも最高Lvのスタミナを持つランスですら、息切れが起きているのだ
一般兵がランスと同じだけの回避の力を見せたとしても
3分と立たずに体力が切れ、殺されていただろう
(クソッ、この雷さえどうにか出来れば・・・・雷?
一か八か・・・・やるしかない!!)
ランスは、何かを決意すると共に、レイに向かって突撃していった
「何!?・・・だが、甘い!!」
突然自分に突撃してきたランスに、レイは僅かに反応が遅れるが
それでも、即座に動揺を抑え、ランスに向かって電撃を放った
その電撃は、突撃を仕掛けたランスには避けようがないものであったが・・・
ピシャアァアン!!
「なんだと!?」
電撃を受けたランスは、聖刀日光を地面に突き刺した姿勢で立っていた
そして、即座に日光を抜くと、レイに向かって飛びかかった
「クッ・・・
うぁああああ!!」
ザシュッ!!
「ガッ!!」
動揺していたレイは回避し切れず、まともにランスの一撃をくらった
だが、斬りつけたランスもまた、その場に崩れ落ちかけていた
「クッ・・・はぁ、はぁ、はぁ!!」
日光を杖代わりにしていたランスは、ゆっくりと、ゆっくりと立ち上がった
(ランス殿!!何と言う無茶をするのですか!!
上手く電撃が逃げたからよかったものの・・・・
失敗したら、一体どうするつもりだったのですか!!)
日光が、ランスの無謀な行動に抗議するが、ランスは答える気力がなかった
立ち上がり終えたランスは、ゆっくりと、レイの方に近寄り
聖刀日光を、ゆっくりと振り上げ、一気に振り下ろそうとしたが
「め・・メアリー、そこを・・どくんだ・・・!!」
傷つき、倒れているレイとランスの間に、メアリーが立ちはだかった
「・・・そこを・・・どいてくれ」
ランスが、途切れ途切れの声でそういった
「どきません、レイを殺すと言うのなら、先に私を殺してください」
メアリーは、あくまでレイの盾になる覚悟で、ランスの前に立っていた
「や・・やめるんだ・・・メアリー・・!!」
レイは必死に立ち上がろうとするが、傷は深いらしく
立ち上がろうとしては、失敗を繰り返していた
「レイ、早く逃げて、その傷なら、まだ何とか間に合うでしょう?」
メアリーは、レイの傷の様子を見て、理解していた
人間なら、致命傷になりかねない傷かもしれないが
魔人であるレイなら、治療を急げば、十分間に合うだろうと
事実、ランスの斬撃は、ランスの予想よりは浅い傷だった
先に受けた電撃のせいで、踏み込みが甘かったせいだろう
ランスもそれを理解していたからこそ、とどめに移ろうとしたのだ
「馬鹿を言うな!!俺が、メアリーを残して逃げられるか・・・!!」
そう叫ぶと、レイは、ゆっくりと、本当にゆっくりと立ち上がった
そして、立ち上がったレイは、もはやそんな気力すらないはずなのに
必死に攻撃態勢に移ろうとしていた
「・・・・・ツッ!!」
ドシュ!!
そんな二人の様子を見続けていたランスは、聖刀日光を、地面に突き刺した
「・・・・どうした・・・聖刀使い・・・」
レイが、そんなランスの様子を見て、そう声をかけた
「お前が、美樹ちゃんに、リトルプリンセスに敵対する理由は
メアリーさんを・・・保護するためか?」
ランスが真剣なまなざしのまま、そういった
「・・・・あぁ、その通りだ」
レイも、そのランスのまなざしを見て、素直に答えた
「なら・・メアリーさんを連れて、リーザス城に来い
直に、ケイブリスとかいう奴の軍は、崩壊するだろう
リーザス城では、美樹ちゃんも保護している
それに、最近、大規模な医療施設を立て始めている
先んじて来ている、名医も、リーザス城にいる
その人達に見せれば、メアリーさんの病気も、なおせるだろう」
ランスは、レイの目を見ながら、そういった
レイも、ランスの目をただひたすらに見続け、しばらくたって、口を開いた
「・・・わかった、あんたを信用しよう
できれば、俺達がリーザスに行く事を、あんたの方から伝えてくれ
俺は、しばらく、メアリーの所で、傷をいやさせてもらう・・・・」
ドサッ
「レイ!!」
「気絶しただけだろう、傷自体は、そう深いものじゃあない」
レイが倒れた事に驚いたメアリーに、ランスがそう声をかけた
「メアリーさん、明日にでも、リーザス城に伝えておくから
レイの傷が癒え次第・・・城に・・・・・・」
ドサッッ
「ランス殿!!」
ランスが倒れたと同時に、日光は人間の姿に戻り、ランスに駆け寄った
「・・・命に別状はありませんね」
ランスの状態を見て、日光は胸をなでおろしながらそういった
「男の人って、どうしてこうなんでしょうね・・・」
メアリーは、目に涙を浮かべ、レイの顔をみながら、日光に向かってそういった
「自分一人で、背負いすぎているだけなんでしょう
もう少し、仲間を頼ればいいのに・・・・」
日光も、ランスの髪をなでながら、そう言った
メアリーと日光は、倒れた二人の男性の顔を、ただ見つめていた
それから二日が過ぎ、ランスはリッチの街を離れた
それと同時に、レイとメアリーも、リーザス城へと向かっていった
ランスは、あの時、何故自分は聖刀日光を捨て
さらに魔人レイを説得したのかが、理解できていなかった
あの時、自分はメアリーごとレイを殺す覚悟を決めたはずだった
だが、二人のやり取りを見ているうちに、段々と決意が鈍り
そして、最後は説得という行動を取っていた
かつての同胞でもない限り、ランスは敵対した者には情けをかけない
だが、あの時、自分は確かに、レイとメアリーの命を奪わなかった
ランスは、そんな自分の考えが、いまだによく理解できていなかった
その考えが互いに思いあう、あの二人に感化されて芽生え始めた思い
人を、自分を、思い、『愛』する感情だと言う事を理解したのは
まだ、先の事であった・・・・・・・
後書き
今回、一発入魂で3時間半かかって書き上げました・・・(ぇ
だから今回、誤字チェックはあえて行わずに投稿します(何
いや、明日も早いので、誤字チェックしてる時間がなくて・・・(汗
次回、遂にJAPAN覚醒編に突入を開始します
三つの黒子の意味が、覚醒編最終章で明かされる予定です
どこまで皆さんの予想を裏切れるか・・・がんばります
まぁ、期待を裏切らないようにも頑張らないといけませんが・・・・(汗
では、眠る前の最後のレス返し〜
名称詐称主義さん
アニスですか・・・あの才能あるのに危険すぎて兵にしてもらえなかった
いや、最近鬼畜王してやっとアニスピカ材料回避したので・・(ぇ
サイゼルどころか・・・ケイブリスまで脅えさせそうな・・・(汗
ランスの違和感、まだまだ頑張ってください(ぇ
作者も違和感を感じつつも、必死に押さえてかいてます〜(ぉぃ
いや、暴走してもらったら少しは原作に近づくんですけどね(ぇ
五十六、メナド、アールコート・・・
取りあえず五十六とアールコートは派手な出番はありますが・・・
メナド・・出演回数は多くても・・派手な活躍はないかも・・(ぉぃ
けるぴーさん
カスタム軍、遠距離攻撃回避だけなら全軍TOPでしょう(ぇ
毎日5回はあてな騒動がカスタムで起きてますからね〜
でも回避が高くても包囲されたら意味なくなるのが世の常・・・
ROではAGIカンスト+木琴アサですら包囲されたらゴキブリに狩られますし(ぇ
最高Lvではあっても最強にはなれないと思われますww
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