「よいか、これを使いこなすのは日々な鍛錬が必須じゃ! 死にとうなければ己の霊力を使いこなせ!」
Legend of Devil vol.3 Departure その2
妙神山修行場
横島除霊事務所開業まで3日を切った朝、修行場には横島、小竜姫、そして斉天大聖の3人が立っていた。
「ど、どういうことッスか!?」
「今言った通りじゃ」
横島の驚きの言葉に斉天大聖は平然と応えた。
「これも横島さんのレベルアップを考えてのことなんです」
「で、でも文殊だけじゃなく霊波刀やサイキックソーサーまで使うなって・・・・・・・・・ましてや除霊道具も使えないんじゃ除霊なんか出来ませんよ!」
そう斉天大聖は横島に対し、除霊の際文殊はおろか霊的道具を一切使うことを禁ずる事を宣告したのだ。
「まぁ落ち着け」
「これが落ち着いてられますか! いくらなんでも死んでまうがな!!」
「なにも霊を殴って倒せとは言っとらん」
「は?」
「その為に今から1つだけ貴様に技を教える」
斉天大聖はニヤリと笑みを浮かべながら言った。
「わ、技ッスか?」
「そうじゃ、除霊の際はこの技だけで乗り切ることが条件じゃ・・・・・・・・・小竜姫!」
「はい!」
斉天大聖が小竜姫に呼びかけると小竜姫は近くにある岩(1〜2M程度)に近づき手を差し伸べた。
「横島さんよく見ておいてくださいね」
ドゴーン
もの凄い爆発とともに岩が砕け、爆風が巻き起こった。
爆風が収まり、目を開け辺りを見渡すと横島は驚愕した。そこには1〜2M程度あった巨大な岩が跡形もなく消え去っていたのだ。
「な、何をしたんスか?」
「中国拳法で言うところの発剄みたいなモノじゃ」
横島の問いに斉天大聖が答え、そのまま説明を続けた。
「発剄とは体内に流れる氣を一点に集中しそれを一気に放出することで相手にダメージを与える技じゃ。 じゃが、今小竜姫が見せたモノは氣ではなく霊気を放出したんじゃ」
「はぁ、・・・・・・・・・文殊で攻撃するのと何か違うんスか?」
「うむ、今の御主の文殊の場合は、一定量の霊気で文殊を精製し、それを文字(言霊)によって威力を増幅させておる。 また、他の道具や武器でも同じじゃ。 霊波刀の場合霊気を高質化させる事によって切ることが出来る。 札や神通棍にしても本人の霊気を増幅させる事で除霊作業を行うんじゃ」
「それはつまり・・・・・・・・・」
「えぇ、横島さんの霊力のみが武器と言うことです」
横島の考えを代替えして小竜姫が答えた。
「そんな! やったこともない技だけでなんて無理ッスよ!」
「安心せい。 この技に必要な修行はもうやっておる」
「え? じゃぁあの修行は・・・・・・・・・」
「そうじゃ。 腹部に集中させていた霊気を掌に変えれば良いことじゃ。 しかし見誤るな、霊一匹にしても祖奴の霊力の3倍程度の圧力を与えねば除霊は出来ん。 無駄に垂れ流す霊力はないと思え!」
「ハ、ハイ!!」
一瞬ギラついた目つきを見せた斉天大聖。それはこの技の難しさ、そして、それ故に危険なことであると物語っていた。
「どれ、1つやってみるかの。 横島よ、さっきの技であの岩を砕いてみい」
「はい」
斉天大聖の示した岩は先ほど小竜姫が砕いた岩の1/3程度の大きさだった。
横島は手を差し伸べ岩に触れると文殊を1つ造り出す程度の霊気を掌に集中し一気に放出した。
ぽふ
「ありゃ?」
「ばっかも〜ん!!」
バチ〜ン
どこから出したのか、斉天大聖は大型のハリセンで横島の頭をドツいた。
「ダッハ〜〜!!」
「御主ワシの話を聞いとったか!? 文殊は文字(言霊)によって力を増幅させるんじゃ! 同じ霊力で岩が砕ける分けなかろう!」
「はぁ・・・・・・・・・」
「ほれ、次はありったけの霊力を込めてやってみい」
横島は斉天大聖に急かされつつ渋々と岩に向かい手を差し伸べた。
(ありったけの霊力を・・・・・・・・・)
ドガ〜ン
爆発とともに岩が砕け爆風が巻き起こった。爆風が収まり辺りを見渡すと岩の上半分が砕け散っていた。
「ぜ、全力でこれだけ?」
「まぁそんなもんじゃろう。 この程度であれば雑霊の6・7匹くらいは除霊出来るじゃろう」
「ろ、6・7匹〜!? こんだけやってそれだけ・・・・・・・・・」
斉天大聖の言葉に横島は驚愕した。
「現状ではこんなモノじゃ。 よいか、これを使いこなすのは日々な鍛錬が必須じゃ! 死にとうなければ己の霊力を使いこなせ! これから週に一度ここに来い。 よいな」
「ハイ!」
「小竜姫、向こうではよろしく頼むぞ」
「はい、老師」
横島除霊事務所
「それじゃぁ、行きましょうか?」
「そうですね、悩んでも仕方ないですし。 まずは初仕事をしっかりやりましょう」
小竜姫の言葉に横島が応え、横島除霊事務所一行は初仕事に出発した。
続く