燃えている。
木が燃えている。
家が燃えている。
村が燃えている。
知人が 飲まれている。
「な・・・・なななな、何がおこったんだよぉ・・・・」
彼は、パピプリオは怯えていた。
魔王決定ト−ナメントにおいてただドタバタ騒いだだけな末のリタイヤという
些かならず不本意な結果に終わったのはまあ良しとしよう。
戻ってみると、魔界の大人たちがトトカルチョをやっていた上、自分の倍率が
妙に高い=優勝する可能性が低いと思われてたのも我慢しろといわれれば我慢しよう。
しかし、今の状況は到底我慢など出来はしない。
すこし辺境、首都から離れた地に存在する村。
遊園地もないし美味しいお菓子も売っていないひなびた場所。
人間界に居たときはル−パ−にダダこねればすぐお菓子とか用意してくれたものだったが・・・
しかしある日、近くの森から大量の泥人形が現れ、村を破壊し始めた。
大人達は抵抗したが、所詮泥人形。切られても砕かれてもすぐさま再生するのだ。
一度自分が最強の術を打ち込んだら倒せたが、他のが一斉に襲い掛かってきたので慌てて逃げ出した。
どうやら魔力を込めた攻撃なら倒せる −魔力を込めた攻撃でないと倒せない− らしい。
「しかし、オレの術で相手にダメ−ジ与えられるのっていっこだけだし」
さっきは眼前で隣に住むちょっとイカした少女パピ−シャがやつらに飲まれた。
「ナニヲヤッテイル」他所からまた別の泥人形が来たようだ。
「コノムラニハ『パピプリオ』ナル魔王候補がイタハズ。ニガスナ」
「ウルサイ、ワカッテイル。キサマラコソ対象ハカクホシタノカ」
「トウゼンダ」物陰から見ると、トカゲみたいなのが泥人形に抱えられている。
一度コンビを組んだ魔物だ。確か・・・ゾボロンといった。
「サキニ『飲ンデ』オクカ」
唐突にゾボロンを抱え込んだ泥人形が口を開くと、頭の口から上がカクンと後ろに倒れる。
そして空いた部分にゾボロンを置くとパタンと「口」を閉じる。
すると泥人形のグズグズなボディが引き締まっていく。
「フム、ショウジキタイシタ魔物デハナカッタヨウダナ。
魔力ハ低クナイガ、一般系能力ノ上昇ガ低スギル。
コノ程度デハますた−タチにマンゾクシテイタダケナイ」
「ミツケタ」
ガタガタ震えながら見ていると、背後から声が聞こえた。
真っ青になって振り向くと、そこには別の泥人形が自分を見つめて(?)いる。
「魔王候補『パピプリオ』ダナ。
コロシハシナイ。ワタシトトモニますた−にオツカエスルノダ」
「てぃや−!」気合一閃キック一発!泥人形の上半身が吹き飛ぶ。
「な?」「おい、大丈夫か、テメ−」
「あ、ああああああああああんたは」
「オレの名はダニ−。親衛騎団の一人だ。
数日前から辺境の調査を命じられてな。
ここはオレが防ぐから、首都に行って政府にこの事態を報告してこい!」
言われて、慌てて駆け出すパピプリオ。
行く先の泥人形はすでにダニ−が破壊している様子。
「ミツケタ、『パピプリオ』ダ」「『ダニ−』ノ所在モカクニン」
「両者トモホカクセヨ。我ハ『ゾボロン』をますた−達に提出スルコトヲユウセン」
「ホバクカナワネバコロセ」
「キョリ179・モクヒョウソクド144 ホバクセイコウリツ019 マッサツニヘンコウ」
一斉に泥人形の両腕が尖った槍に変わると、パピプリオの背中に向かって放たれる!
だがしかし泥で出来た槍の雨が彼に降り注ぐ瞬間、彼の背後に立つ影が!
「グフッ」「ア、アンタ・・・・」
「構うな。『ジオルク』」
見る見る傷が癒されていく。
「わかったか!俺は不死身だ!時間稼いでやるから早く行けぇ!」
その声に硬直したかのようにビクついたパピプリオは、急ぎこの異常事態を王と側近たちに報告すべく駆けて行く。
「やっぱジジィなしじゃこれが限界か」見ると傷は深く、完治はしていないようだ。
周囲はまさに十重二十重。おそらく自分の体力は持たないだろう。
「が、降伏すんのもヤだし、負けてやるのも趣味じゃねぇ。
テメェら全部たたっ壊してやるから、まとめてかかって来な!」
続きます