お口の恋人? 多分そのようなもの
第十七話 え? この話って何? アクションものになんてさせないわ〜
いきなりですが、ピンチです。
「びえぇぇぇぇぇ!!」
子供のように大声で泣き喚く六道冥子。彼女の周りで破壊活動に勤しむは式神、十二神将。冥子の繰る強力な式神たちは、現在暴走状態にあった。
「結局こうなるのー!!?」
その暴走に巻き込まれ、瓦礫を避けながら逃げ惑うのが美神令子。今回、この二人でマンションに巣食う悪霊の群れを祓いに来ていたのだ。が、少しの油断がこの事態を招いた。冥子は騎乗していた式神、インダラの上からズルペッタンと落馬してしまった。
「痛いの…… ひっく…… びえーん!!!」
という事である。冥子は式神を制御する力が弱く、感情の起伏ですぐに式神を暴走させるという欠点があった。今回は、止まってるインダラの上で必要以上にはしゃいでしまったのが落馬の原因である。
「落ち着けー! ね!? 冥子ぉぉ! うひぃ!」
手当たり次第に周囲を破壊する式神たち。悪霊を吸い寄せる形になっていた建造物が破壊され、ある意味除霊は完了したのだが。残っていた悪霊も、この暴走の巻き添えになってどんどん滅ぼされている。
「痛いの〜!! うえ〜ん!!」
強く打ったお尻を押さえながら、痛みに我慢できずに冥子は泣き続ける。その時、瓦礫の一部、コンクリ壁の破片が逃げていた令子に直撃。
「あう! ぱた」
でかいタンコブを作って令子は気を失ってしまった。その光景を、冥子は目撃してしまった。自分のせいで怪我を負い、倒れてしまった友達。彼女の心に冷たい衝撃が走る。自分が不甲斐ないばかりに、大切なものを傷つけてしまった。ただ構ってほしくて、慰めて欲しくて騒いだ結果がこれだ。
「いやぁ…… 嫌ああああああああああああああああ!!!」
本当の暴走が始まった。狂った霊波が周囲を粉砕し、辺りの霊髄をも狂わせる。陽気/陰気が狂い、衰気が辺りを支配する。冥子のネガティブな精神が具現化し、一帯を侵食していった。
「あああああああああああああああ……」
言葉にならない声を、喉が裂けるほど強く出し続ける冥子。意味無き声に力が宿り、暴走に拍車をかけていった。
「今のは強いな」
地震の様に揺れるマンション内部。エレベーターが使えないため、最上階まで階段を駆け上る武装したGS助手、横島忠夫。途中、強力な衰気に当てられ、暴走した悪霊に遭遇するも、霊銃による攻撃でそれを打破していく。令子が最上階エリアに居る。それはただの感である。何故か分からないが、横島には絶対の確信があった。彼女はそこに居る。そこで自分を待っている。
「ほんま洒落にならんわ」
弾装を交換しながら、次の階の様子を慎重に探る。このマンション内には大暴れをしている何かがいる。強い力と、おそらく敵意をもった何かが。そのフロアの安全を確認するため、手鏡を使い、曲がり角の向こうの様子を探ろうとする。その時、手鏡は真っ二つに切り裂かれた。
「ぬぐおわぁ!」
手鏡を切り裂いたものの正体。それはウサギを模した式神、刃の耳をもつアンチラであった。暴走し、ただ辺りを切り裂いて回るアンチラ。それが横島を攻撃対象に選んだのはただの偶然である。居たから切る。そこにあるから――― 壊す。
「冗談じゃねえぞ!」
複雑なステップで横島に肉薄し、床を蹴って横島に襲い掛かるアンチラ。SMGを取り出し、床に向かってFA掃射する事でそれを牽制するも、アンチラは一切被弾した様子を見せない。それどころか、辺りに真っ二つになった弾丸が無数に転がっている。
『きゅきゅー』
横島を脅威と認識したアンチラ。しかし、術者の意識を離れた式神が複雑な行動を行うはずも無く、その能力をただ振るった殲滅行動しか行わない。
「ちょこまか動きやがって!」
目でその動きは何とか捕らえる事ができる。しかし、身体がそれについていかない。照準した瞬間、アンチラは別の場所に移動し、その鋭い耳で容赦なく攻撃してくる。弾切れになったマガジンを排出し、次弾装に切り替えるその隙、アンチラは情け無用の斬戟を加えてくる。
『きゅきゅ〜』
とっさにそれをSMGで受け止める。無論、強度が高いわけでないそれはバターのようにスッパリと切り裂かれた。次の銃器を取り出そうと思ったが、少しだけ違う手を試す事にした。
「くぉら! 高いんだぞこれ!」
理解されないと分かっていても、つい悪態をついてしまう。床を回転しながら攻撃をかわし、壊れたSMGを投げつける。威嚇にもならないが、間合いを取ることは出来た。
「ほらよ!」
ジャケットの内側にしまっていた球状の道具。それをアンダースローでアンチラに投げつける。それは遠隔操作で起爆できるのだが、アンチラのほうからそれを切り裂いた。その瞬間、ボールの中から粘状の物体が飛び出し、辺り一面に広がる。それはアンチラの全身に降りかかり、その動きを完全に絡め止めた。
『きゅ〜 きゅ〜』
トリモチのように粘々とアンチラに絡みつくそれは、妖蜘蛛の糸と納豆菌から作られた粘着弾である。効果は抜群だ。
「可哀想、とは思わんからな」
動きを止めたアンチラに、容赦なく対霊弾丸を撃ちこんだ。ギャヒ、と、高い声をあげてアンチラは消えていく。
「ぎゃん!!」
同時期、冥子は胸を押えて悶絶していた。痛い。この痛みは怒られたからだ。暴走する意識の狭間で、冥子は見えない何かに許しを求めていた。
「クソったれがああああ!!」
リュウを模した式神、アジラ。その首をナイフでかき切る。今の戦いで横島の左手首は石化されていた。背中もアジラの吐いた炎で焼かれている。血肉を撒くことも無く、式神は消え去るので横島に罪悪感は無い。
「痛みすらないな」
まったく反応しなくなった自分の左手に不安を感じる。が、令子やキヌならなんとかしてくると信じ、次へと目指す。どうせヒツジの式神にボロボロにされた手だ。痛みを感じなくてちょうど良い。
「やっと最上階やー! はぁー こんなん俺のキャラちゃうで…… んな!!」
黒い瘴気の檻。繭のように一人の女性を包むその空間の脇に、横島の探していた令子が横たわっていた。漫画みたいに頭部にタンコブを作り、目を渦巻状にくるくると回している。が、問題はその繭の人物だ。
「あ、あ、ああああ? あああああああああ!!!!」
式神との繋がりが切られるたび、彼女は断罪の痛みを受けていた――― 本人はそう思っている。ここまで倒した式神の数は10。暴走し、ただ能力を乱発するだけの存在に落ちたからこそ、横島は式神たちを倒す事ができたのである。
「あの娘やばくねぇか!? どうすりゃいいんだよ」
横島が悩むより先に、繭の中の冥子が横島の存在に気がついた。その姿を見たとき、冥子は目を大きく見開き、ボロボロと涙を流しながら叫んだ。
「ごめんなさい〜 ご、ごめんなさいー!! あうううううう!!」
「なんだか知らんが許す! なぁ、こっちに来れるか!?」
理由がわからないが、自分に泣いて許しを乞う美少女をほっとく訳には行かない。令子はギャグチックに倒れているし、問題はないだろう。そう思って横島は冥子に近寄った。その時、彼女を包む黒い瘴気が凝縮され、ある存在が実体化していった。
「だめ〜 止めてよ〜 嫌なの〜 止まってよ〜!!」
黒い人形の瘴気、手には実体化された剣。人の三倍はある巨体は、真直ぐに横島を見据え、剣先を向けてきた。冥子の声を聞かず、それは容赦なき守護者でも気取るように、横島を敵と見定め襲い掛かってきた。
「なんじゃこいつは! ラスボスのお出ましかよ!!」
市場には出回っていない最強のハンドガン、令子が特別に用意した横島の鬼札。弾丸一発数百万の赤字の大王。
「ふざけてろよタコ助! いま腹いっぱい弾丸食わしちゃるわ!」
SEBEK・ピースメイカーTK。下級なら魔族も一撃で滅ぼす魔銃である。それを黒い瘴気の魔神に発射する。腹に3発頭に2発。それは形無き瘴気の身体を確実に穿つ。しかし―――
「ぎゃん! うぐぅ! ふ、ふぇぇぇぇぇ」
「なんだと!」
横島が撃った場所と同じ場所、そこを押えて苦しむ冥子の姿を見たとき、横島は己の迂闊さを呪った。感覚を共有している。少なくとも痛覚はバッチリみたいだ。完全ではないだろうが。完全だったらショック死している所だ。
「許して〜 ごめんなさい〜」
しかし、虚ろだった冥子の瞳に少しづつ光が戻ってきている。横島の行動は、過ちではあったが失敗ではないみたいだ。が、どうしても知識が足りない。どうすればこの場を収めるか見当もつかない。
「って、俺のアホー!! 美神さんを起こせばいいいんじゃねぇか!」
思いつくが早いか、すぐさま気絶する令子を拾い上げ、頬をペチペチと叩く。訓練所で習った気付け方法はさすがに女性にはきつい。(中指を掴んで捻る)
「んん〜 もぅ、まだヤるの? 良いわよ」
どんな夢を見ていたかモロバレの寝ぼけた台詞を令子は零す。が、今はそれに苦笑しているときではない。さらに顔を強く叩こうとも思ったが、後が怖いので代わりに乳を強く揉んだ。
「あうぅぅぅ! もぅ、酷くしないでぇ! …… は! こんな事してる場合じゃないのよ! 続きは後でね? って、忠夫クンが何でいるのよ! しかも冥子が大変でってええええ!! なんで護法童子が顕在化してんのよー!! しかも衰気で外道に落ちてるし!!」
「おお! 一目で正体を看破したうえに説明をするとは! さすがは美神さん、そこに痺れる憧れるぅぅ!」
「ありがと。ついでに言うなら護法剣までセットなのね。あはははははは! 勝てるか!」
六道の力の顕現化。十二神将を繰る血の顕在。六道の人間の中に眠る根源の力の具現。
「の一部だけでもこれなのよ! やってられないわよ! まったくもう! これだから六道ってのはああ!!」
まぁ、制御できない力に意味など無いが。大量の衰気を吸って、ネガティブモードの冥子の力が溢れたのだ。それは普段の暴走の比ではない。
「何とかなんないんですか!」
「倒すのは無理! 絶対に無理! 出来たとしても冥子がへたすりゃ死んじゃうわよ! 今あの子の中に無駄に強力な霊気が集まってるからそれをなんとかすれば…… あ!」
冥子の霊力を制御する。つまり、力ばかりあってそれを操る術の無い彼女の力をなんとかする。心当たりありまくり。
「令子さん。俺さ、なんか出来る事わかっちまったんだけど」
「私もよ忠夫クン。ああっ! よりにもよって冥子までなんて! 頭痛いわ」
粘膜接触による霊気の共有。この場合、冥子の霊気を横島に流せばよいのだ。この状況じゃ出来る事は限られているが。
「私が護法童子の引き付ける。その間に…… やりすぎちゃ駄目だかんね。あの娘、処女なんだから」
「アンタなー!!」
軽口を叩きながら、令子たちはタイミングを合わせて同時に行動を開始する。
「いっけー!」
令子の手から浄化符が放たれる。焼け石に水だが、単純に敵対行動に反応する今の状態なら効果はある。
「え?」
はずだった。しかし、護法童子は令子を敵と認識しない。冥子にとって、令子は絶対な存在であり、どんな状況でも敵対するなどありえないのだ。そのかわり、反対側を走る横島にその破邪の剣は振り下ろされる。
「ダメ」
それを妨害し、横島の前に盾となって立ちふさがったのは、冥子本人であった。
「令子ちゃんの大切な人を――― 絶対にダメ〜」
相反する冥子と護法の意思。ここまで、横島に式神を討たれたのは自分への罰だった。とても痛かったが、それは令子を傷つけた自分が償わなくてはならない罪だった。だから、この人を攻撃するなんてあってはならない事なのだ。だから、ダメ。
『―――――――――!!』
人間には認識できない領域の声をあげ、霊気を撒き散らす護法童子。このままでは最悪の暴走を起こしかねない。
「忠夫クン!!」
令子の叫び声に、横島は自分のやるべき事を思い出す。冥子の正面に回り、抱きしめる。
「え? えええ〜???」
その展開に脳がついて来れず、冥子の思考が停止する。抵抗が無い事に感謝しつつ、横島は彼女の唇に己のそれを重ね合わせた。冥子は無反応。されるがままに舌を嘗め回されている。
「んむ、ん」
その態度と様子に横島は訝しむが、令子は無言で頷いたため、霊気の共有を続けた。横島の中に強力な衰気と神気が流れ込む。
「あれれ〜 皆どこなの〜」
誰もいない、光すらない、一人ぼっちのその場所。不愉快な暗闇だけが、身体にネットリと纏わりつく。
「お母様〜 お父様〜 令子ちゃ〜ん、 フミちゃ〜ん…… なんで〜 どうして〜 私は ど う すれ ば い いの」
暗闇が身体をどんどん包み込んでいく。絶望に涙をこぼしていたその時、暖かな光とともに、一本の手が差し出された。
「誰〜 誰なの〜」
誰でも良かった。その手を繋ぎ、温もりを感じたかった。しかし、自分の手はそこに届かない。
「うんしょ〜 うんしょ〜」
それでも必死に腕を伸ばす。闇がそれを邪魔しても、自分の意思で必死に腕を伸ばす。肌が引き裂かれるような痛みも、肉に刺さるような痛みが来ようとも。
「捕まえた〜」
なけなしの勇気を絞り、痛みにだけは慣れた心を強くもって、彼女はその手を握り締めた。彼女の、冥子の心にたくさんの笑顔が浮かぶ。令子や鈴音など、知ってる顔もあるが、大半が知らない顔である。しかし、それらの放つ暖かい温もりが、冥子を優しく包み込んでいった。
「動きが止まった?」
呪縛ロープを護法童子の手足に絡めていた令子。その彼女が、状況の変化に最初に気がついた。護法童子を構成していた霊子が分解され、消滅していったのだ。
「むぐー!!」
次に目に入ったのは、横島を押し倒して泣きながらキスをしている冥子の姿。彼女なりに力いっぱい横島を抱きしめ、不器用に、しかし丁寧に舌をペチャペチャと吸いあっている。
「はいはい! そこまでー!!」
冥子が胸や股間を擦り付け始めたとき、令子は無理やり二人を引き剥がした。
「ふぇ? あれ? あれれれれ〜? 私何してたのかしら〜」
「はぁ?」
記憶の混乱を起こしているのか、冥子はキョロキョロと辺りを見回してから、呆けた様子で令子に尋ねてきた。
「あれれ〜? あ、あなたはどちら様ですか〜? 私は〜 六道冥子といいます〜」
先程まで濃厚なキスをしていた相手に、改まった挨拶をしてきた。
「あ、俺は横島忠夫。美神さんの助手をやってるんだ。よろしく」
「こちらこそよろしくね〜」
「何やってんのよアンタ等」
先程の淫靡な雰囲気が欠片も残っていない二人。いや、横島はいつも同じなのだが。
「自己紹介は大切なのよ〜 ね〜?」
「ね〜って、まぁ、確かに。六道さん、身体に痛いところとか無いですか?」
とりあえず、冥子の心配をする。先程の護法童子への攻撃で、冥子が絶叫する姿が横島の頭に残ったままなのだ。
「? うん、大丈夫よ〜 あとね、あとね、冥子って呼んでくれる?」
自分の身などまったく気にした様子も無く、彼女は自分を名で呼ぶように頼む。小首を傾げつつ、上目遣いの攻撃だ。
「あ、うっス、わかったよ冥子」
「えぅ? あ、あはははは〜 うん! 私も忠夫クンって呼ぶね〜」
呼び捨てかよ、令子のツッコミよりも先に冥子がそれを認めてしまった。
「とりあえず、横島クンがここに居る理由を聞いたりしたいし、いったん外に出ましょう」
「はぁい♪ えへへ〜 もしかしてお仕事ちゃんと出来たのかしら〜 嬉しい〜」
そういって令子の腕にしがみ付く冥子。その様子に令子は疑問を感じる。冥子の反応が普段どおりで普通すぎるのだ。横島に対し、新しく出来たお友達として対応している。霊能力者への魅了が効いていないように思えるのだ。
「ねぇ、横島クンのことどう思う?」
「うん! 新しいお友達〜 嬉しいわ〜」
六道の力は横島の魅了を受け付けないのか? そう思ったが、これ以上考えることは止めた。余計な事をして鬼や蛇を出す事も無いのだ。
「それじゃあね〜」
外に六道鈴音がいた事に、令子は驚き冥子は素直に喜んでいた。そして、改めて横島状態に驚愕し、慌てて治療を行う。冥子の横島への反応に女性全員が不思議がったのだが、この場ではみな気にしない事にした。
「ねぇ、冥子? 横島クンの事どう思う?」
帰りの車の中、親子で帰途につく車内で、六道母は娘に尋ねる。
「面白い人ね〜 あのね、あのね〜 私の事を冥子って呼んでくれるのよ〜」
冥子の言動には横島への恋愛感情が見られない。自分の娘はここまで鈍いのか? そう思わないでもない鈴音だった。
その日の夜
「今日はとっても良い一日だったわ〜」
一日の日記をつけながら、冥子は今日の出来事を振り返っていた。大好きな令子に会えた。一緒にお仕事が出来た。しかも失敗しなかった。そして、新しい友達が出来た。自分を冥子と呼んでくれる年下の男の子。可愛い弟? いや、横島は男だ。たくましい腕、頼りがいある胸。そしてやわらかい唇。
「初めてのキスか〜」
その行為自体は仕方が無かったものだろうと思う。令子が何も言わなかったし。キスは予想以上に気持ちが良いものだった。頼んだらまたしてくれるだろうか? よし、今度会ったら頼んでみよう。令子にもちゃんと許可を得なくては。
「令子ちゃんは良いな〜」
一目見て、横島が令子の大切な人だとわかった。互いの視線がそれを雄弁に語っていたのだ。羨ましい。しかし、彼は自分お友達になってくれた。名前で呼んでくれた。キスもしてくれた。抱きしめてくれた。
「でも〜 良いのかしら〜?」
凄く身体が火照った。あんな快感は初めてだ。あの時令子が割って入らなかったらどうなっていただろう。止めてもらってよかった。令子から横島を奪うような事が無くて。
さて読者様はお気づきであろうが、冥子は横島の魅了を受けていない。理由はちゃんとあるのだが、決して鈍いからではない。ないのだが……
「忠夫クンかぁ〜 かっこ良かったなぁ…… 素敵だったなぁ〜」
改めて横島の事を考える。自分と令子がピンチのとき、颯爽と現れた。暴走している間の記憶は曖昧だが、彼が何とかしてくれたのだけは理解できる。あのキスも大切な行為だったのだろう。
「忠夫クン…… 素敵な人だったなぁ〜」
思い出せば出すほど、冥子の横島への気持ちがつのっていく。時間がたち、今やっと冥子の気持ちがグラグラと揺れてきたのだ。時限式一目惚れ爆弾の発動である。出会い、別れてから暫く時間がたち、改めてその人の事を思うと、自分が惚れていたの事に気がつく。
「あぅぅ〜 忠夫クン…… 忠夫クン……」
魅了効果などなく、天然で横島に恋に落ちた女性があらわれたのだった。実は令子もそうだったりするのだが。前世も魅了も関係なく、酷いセクハラをしてきた横島を雇ってしまったあの時、既に令子は(略)
「ごめんね〜 令子ちゃんごめんね〜」
机に倒れこみ、勝手にショーツの上から陰部をこする指を止められず、横島の事を思って自慰をはじめる冥子。そんな自分が酷い裏切り者のような気がして。それでも衝動はとめられずない。横島の唇を思い出しながら、冥子はなんども指を擦る。
「はぅぅぅ〜 あはぁぁ〜」
敏感な陰核。それを何度も指で弄る。横島の顔を思い出すだけで、熱い愛液が溢れて止まらない。乳首が痛いほどにビンビンに勃起している。パジャマの上からもその形がわかるほどだ。
「うくぅ! あうぅぅ…… んひぃ!」
横島の胸、横島のお尻、横島の脹脛。熱い舌を絡ませる最高の快感。それを何度も反芻し、口の中は涎で溢れている。抱かれたい。もっと横島に色々して欲しい。もっと色々したい。初めて思う。男に抱かれたい。横島に抱かれたい。
「あぅぅ…… イっちゃった〜 冥子ちゃんのエッチ〜」
愛液でベトベトの指をくわえ、自分の行為を恥じる。羞恥と虚しさが心を占める。自分みたいな女を、横島が相手にするはずが無い。令子のような素敵な女性が身近にいるなら尚更だ。そう思うと、情けなくて涙が止まらなかった。
「忠夫クン……」
冥子ともう一度呼んで欲しい。あの声で、もう一度呼んで欲しい。それを想像するだけで、身体が火照って仕方ないのだ。子宮が疼いて止まらないのだ。
「会いたいよぅ」
心が張り裂けそうでしかたないのだ。
「そうだわ〜」
霊視、索敵の能力を持つネズミを模した式神、クビラを呼び出す。この式神を使い、今横島が何をしているのか調べようと思い至ったのだ。横島の顔をもう一度見たい、その気持ちから生まれた行動だった。
『みーみー』
横島の霊波を探り、クビラは冥子の部屋を飛び出していった。何故か母の部屋に一度飛び込んだあと、クビラは外へ出て行った。
「あれ〜 あれれ〜 胸が凄いドキドキして止まらないの〜」
クビラが横島を探し始めたとき、冥子の心音が跳ね上がった。体温が急上昇するのも自分でわかる。顔が熱で真っ赤になってるのもわかる。会いたい。会って抱きしめられたい。気持ちが一気に跳ね上がっていき、同時に身体の疼きが止まらなくなった事に冥子は興奮していた。
「忠夫クン! もっとお願いぃぃ!」
『ぶー』
クビラからの視覚情報。冥子の脳に伝わったソレは、令子と横島が激しく肌を合わせ、愛し合う現場であった。
「今日は随分と甘えん坊ですね」
子供のように色々と愛撫をねだる令子に、横島は微笑ましいものを感じていた。
『私も治療で頑張ったじゃないですか〜』
心配させた罰。火傷に裂傷、打撲に石化までしていた横島。何気にもの凄い重症を負っていたのだ。彼が無自覚ではあるが、自己再生、自己治癒の能力を持っていたのが幸いしたのである。それがなかったら、今ごろ病院かその先であっただろう。
「もぅ、凄い心配したんだからね!! ね、だからもっとぉぉぉ」
冥子の心が凍った。自分の式神の暴走で横島が重傷を負った。とんでもない事だ。ま、それは置いておいて、クビラの目で横島を見たとき、自分の恋が本音のである事を確信してしまった。
「ずるい〜 えぇ〜 そんな風に舐めるの〜 えぇ〜 あんなおっきいのが入ってる〜 私のココにも入るのかしら〜 いぎぃ!」
自分の陰裂に指を入れてみる。とても痛い。でも令子はとても嬉しそうだ。確かに痛い。しかしこの痛みはそれはそれで良いような。令子と横島の絡みは一晩中続き、冥子の自慰も同じように一晩中続いた。
「はれれ〜」
気がついたらベッドの中だった。おそらくメイドさんが自分を寝室まで運んでくれたのだろう。
「やり方はバッチリ覚えたの〜 後は後は〜 うふふふ〜」
令子とキヌの奉仕をたっぷりと観察し、そのやり方や横島が喜ぶ場所をしっかりと学習した。後は実践だ。
「でもでも〜 もうちょっとだけおやすみなさ〜い。ねむねむ〜」
お昼過ぎ、冥子はもう一度眠りの世界へと戻っていった。
エロエロが無い? ま、たまには勘弁してください(挨拶)
どもども、アマドです。なんでしょうねこの話。さっぱりです。書いたやつ出て来い!
はーい。
冥子編はまだまだ続くですよ。安心安心。その名も「不思議!女の子の身体の秘密。六女の女の子はエッチでいっぱい♪ 淫惑の保健授業」です。だいぶ嘘。結構嘘。エロエロにストーリー性を混ぜると難しいのです。 アマドが)困惑のシリアス編はココまでですので安心也。 ではでは