注意:今回、ちと悪乗りが過ぎたやも知れません。でも、シャレと流してやってください。お願いします。
GS協会本部ビル。その3階の会議室。
そこで、とある男の人生をも左右する内容が話し合われていた。
「ではその件は保留と言うことで。では次の議題に移りたいと思います」
協会所属のお偉方によって話し合われる、その議題とは…
「GS資格試験の試験方法の変更について、ですが…何かご意見のある方は?」
某虎男にとって、ある意味死活問題でもある内容であった。
もし、彼がここにいたら声を大にして変更を訴えたであろう。しかし現実では彼はここにはおらず、会議は無責任に進んでいく。
「ああ、例の名物男の件ですか」
「そうそう。確かタイガーとか言う……もう何回スベったんでしたかな?」
「さて…5回だったか6回だったか。それだけ受ければ、1回ぐらいマグレで受かりそうなものだが」
「それが何故か毎回、トップ3には入る強豪とブツかってまして。しかも肝心の2回戦で」
「それは…余程、日頃の行いでも悪いのではないかねぇ?」
「いえ、ちょっと興味があったんで私、調べてみたんですがそれはありません。彼は小笠原GSオフィスの所属ではありますが、決して悪い人間ではありませんよ」
どうやらいい意味でも悪い意味でも目立っているため、ファンらしきものがお偉方の中にも出来ているらしい。
まぁ、目立っているせいで毎回対戦相手に能力が筒抜けで、対策バッチリ!な相手に毎回ボコボコにされているんだが。
そしてやはりファンらしき一人が、彼の擁護にまわる。
「毎回1次試験を通過していますし、霊力の面でも問題はありません。所持している霊能力も精神感応の他にもサイコメトリーを身に付けている彼は、実に有能ですよ……普通の除霊以外では」
「そうですな。普通の除霊以外なら」
「うむ。普通の除霊には向いていないな」
いつの間にか、擁護ではなくなっているが…まぁ、それは良かろう。
ちなみに、GS免許とは除霊業務を許可するものなのは言うまでもない。
「しかし……そうなると困りましたな」
「ええ…往々にしてそういった強力な霊能者は、戦闘もある程度はこなせるし、もしくは運が良いんで2回くらい勝ち抜くのは難しくないはずなんだが…」
「どうも彼は例外のようで」
「例外か。例外はある物だな…何事においても」
「かといって、放置しておくには彼の才能は…」
「ああ、わかっとるよ。ここだけの話、オカGの方からも彼の問題に興味があると言われたよ」
「「「「…う〜〜む…」」」」
オカGの名前が出るや、一斉に腕を組んで考え込むお偉方一同。
その脳裏に、とある女性の姿が浮かんでいるのは間違いなかろう。
そして、一人が妥協案を搾り出す。
「どうです?いっそ特殊GS免許でも作りますか?それとも彼個人に特例を認め、段階的にそれを立ち上げていくか」
「そうだな。将来的にはそうしても良かろう。だが…」
「ええ、解ってます」
「うむ。私も賛成だ」
「意義は無いよ、私もね」
「「「「どこまで落ち続けるか、ちょっと見てみたいですからな」」」」
期せずして声を揃えてハモった一同の顔に驚きが浮かび、そして笑いが巻き起こる。
ここまでこの連中の意見がそろい、心が一つになった事など今まであるまい。
組織には付き物の、それもGS協会などという多額の利権がからむ組織のお偉方だ。派閥や権力争いなど当然のように存在する。
だが、今、彼らはそんな事などを超越して一つになっていた。
全ては、タイガー寅吉がハタから見ていてあまりに愉快であったがゆえに…
「どうです?この後久しぶりに一杯」
「おお、いいですなぁ。サカナは勿論?」
「ええ、彼の資料で。いやぁ。愛嬌があるのか、彼の不幸って同情するより先に笑えるんですよね」
「はっはっは、言いますなぁ」
「いえいえ、そうおっしゃるあなたもご覧になれば解りますよ…それに、何と言ってもタイガーですから」
「そうですね。タイガーですからなぁ」
「いやぁ、楽しみですなぁ」
そして会議は終了した。
タイガー寅吉。優秀なGS見習いである彼の見えない活躍で、GS協会内部の対立は軽減された。
だが見えないゆえにそれを知る者は少なく。また、その代償に彼の肩書きから『見習い』の文字が取れる日は遠のいたが…
それも、お約束だろう。