「犯人は……この中におりますジャー!!」
2メートルを越す体躯に、似合っていないスーツを着込んだ大男が吼えた。
その場にいた制服姿の警官が叫ぶ。
「バカなっ!これは自殺だ!犯人なんか存在しないっ!!」
数日前に死体となった男の家族も口々に叫ぶ。
「そうよっ!いい加減な事を言わないで!」
「せっかく悲しみから立ち直ろうとしてるのに、引っ掻き回さないでくれ!」
「そうだ!余計な事をするんじゃねぇ!」
大男はそれらの罵声にも全く動じず、唯一自分を批難しなかった自分の依頼人、殺された男の娘に落ち着いた声で聞く。
「真実を知る覚悟は…ありますカイノー?」
……コクン
依頼人は、しばらく迷った末に…頷いた。
「オラ、キリキリ歩けっ!」
「チッ…さっきまで自殺とか言ってた癖に威張るんじゃねぇ!」
「なんだとっ!?」
大男の断定するかのような見事な推理と引っ掛けで、犯人は自白した。
警官に手錠をかけられた犯人は、余程悔しかったのか悪態をつきながら連行されて行く。
「……ありがとうございました……」
痛ましげな表情で礼を言う依頼人。
それも当然だろう。彼女は今、殺された男に続いて2人目の身内を無くしたのだ。
「いや…あまりお気を落とさんでツカーさい…では、わっしはこれで失礼しますケン…」
「待って下さい!最後に2つ聞かせて下さい!!どうして、どうしてあの人が犯人だって分かったんですか!?」
「…わっしには物に宿った記憶が読み取れる、サイコメトリーと呼ばれる力がありますジャ…それに精神感応…いわゆるテレパシーも…サイコメトリーで証拠と手がかりを見つけ出し、容疑者の動揺や嘘を精神感応で見抜くわっしに…解けない犯罪などありませんケェ…」
だが、その力を持ってしても今回、殺人を未然に防ぐ事は出来なかった。そして、続いての依頼人の最後の問いが大男の胸に突き刺さる。
「なら、どうして……どうして……」
「どうして、そんなに凄い力を持っていて未だにGS見習いなの?」
「放っといてくだっサイ!!!」
彼の名はタイガー寅吉。
実に犯罪捜査に向いた能力を身に付けた彼は、某人狼や某妖狐の少女らのようにオカルトGメンに協力を度々要請され、成果を上げていた。
そして最近はその評判を聞きつけた一般警察や一般人からも、今回のように霊能に関係の無い依頼が来るまでになったのだ。
だが、しかし。
そう。しかしだ。
その能力も全く戦闘の役には立たない(爆)
また何かに呪われているかのように、毎回GS試験で上位に食い込む強豪と当たって敗北する彼は……GS免許は未だ取得できていなかったりする。
ちなみに、彼の親友達はこうコメントしている。
「まぁ、タイガーですから…」
「お約束ってやつか?」
「まったく、芸術だな」
このコメントを聞いたタイガーが涙した事は、言うまでも無い。
タイガー寅吉……サポート要員として誰からも重宝される彼が一人立ち出来る日は……まだ、遠い。
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