日は既に落ち、森は闇に包まれている。
森を通る狭い国道を一台のトラックが進んでいた。
「あれが今回のターゲットですわ」
「しっかし最近は忙しいノー」
「愚痴を言うな。それだけ悪党が多いって事だ。でも偶には普通にバトりてぇな」
「で、どうすんだ?」
俺は視線を動かし、仲間の三人に聞いた。
今、俺達が居るのはちょとした高さがある大きな木の上だ。
何ていうか俺達も怪しい格好しているよな。
四人とも漆黒のボディスーツに蒼い鉄仮面(と言っても強化プラスチックと樹脂の固まりだが)を被っている。
街中なら一発でお巡りさんに逮捕されるだろう。
「いつもの様にタイガーさんが幻惑、ターゲットが戸惑ったら私達三人が突っ込みます」
「分かったケン。氷雅さん」
「さて大暴れするか、横島」
「やり過ぎるなよ、雪之丞」
俺達は互いを見て頷くと、一斉に気から飛び降りた。
アホな奴には痛い目を見てもらいますか。
一年と少し前の事。
美神さんにしばかれ、おキヌちゃんに泣かれたりしたが、ようやくシロとタマモと暮らせる様になったある日。
俺はオカルトGメンに呼ばれた。
隊長がいる部屋の前で俺は少し悩んでいた。
どんな理由で呼ばれたのか分からないのだ。
シロとタマモの件は既に終わっている。
そうすると何かの仕事の依頼と考えるのが妥当だろう。
……あの人の事だ、何かとんでもない事を言いそうで怖い。
「どうぞ」
悩んでても仕方ないので俺は意を決し、ノックをすると中から隊長の声が聞こえた。
中に入ると、一瞬で理解した。
ああ、これはとんでもない事を言うんだと。
そこには隊長と西条はいいとして、雪之丞とタイガー……そして何故か氷雅さんまでも居た。
氷雅さんにはめっさ俺を睨んでいる。
「みんな揃ったようだね。では先生……」
「ええ」
西条が言うと隊長は席を立ち、きりっと顔を引き締め俺達にこう言った。
「あなた達にやってもらいたい事があるの」
隊長の顔は苦渋に満ちていた。
突然、トラックが蛇行運転になる。
タイガーの精神感応で運転手が混乱しているのだ。
道を踏み外し、木に衝突しそうになるが―
「フンガー!!」
タイガーがトラックの前に飛び出しそれを受け止める。
すごい馬鹿力だ。
タイガーはアシュタロス事件後に恐山に弟子入りした。
その行動に誰もが首を傾げた。
タイガーの能力はどう見てもサポート向きだし、いくらガタイがいいからといっても、いきなり相撲とは思いもしなかった。
だが、タイガーは恐山も認める程の力士となり見事GS試験にも合格。
タイガーの努力はようやく実った。
「チクショウ! どこのどいつだ!?」
トラックの幌付きの荷台からわらわらと男達が出てくる。
数は六人、何とかなるな。
どいつもこいつも凶悪な面構えで、登山用の装備を身に纏っていた。
「悪いがおねんねしてもらうぜ」
雪之丞はそう言うと両手にだけ魔装術を纏い、一人を殴り倒す。
魔装術の部分展開―雪之丞の新しい技だ。
霊力の節約というよりも、より高度に魔装術を操る事が出来た証拠らしい。
手だけでなく体のあらゆる部分にも出せるって話だ。
しかし手だけだと俺のハンズ・オブ・グローリーと被るよなあ。
「このアマっ!!」
体格から見て女性と判断し組し易いと考えたのか、一人が拳銃を抜くが―
ズバッ!!
銃身が目にも留まらぬ速さで斬られた。
「この霊刀ザンサツマルは人も斬れますのよ」
そう言って切っ先を相手に向けた。
刀と言っても前のヒトキリマルの打刀と違い、完全な忍び刀だ。
鍔は四角く、刀身も短い。
「くそぉぉぉぉう!!」
男は懐から神通棍を抜き、振り被る。
「遅いですわ」
しかし氷雅さんの方が断然速く、男を斬り伏せた。
と言っても峰打ちだったりする。
俺達がする事は殺しではないからだ。
「ちっ! これでも喰らえ!」
俺もただ見ているだけではない。
こちらは三人に囲まれてたりする。
前方の男はサブマシンガンをこちらに向け乱射してきた。
発砲音がけたたましく森の中に鳴り響き、動物達は逃げ出しているのが気配で分かった。
俺はただ左手をその男に翳したまま動かない。
「どうだ!! ……何!?」
あらかた撃ち付くし、殺したと思っていたのか男は無事な俺を見て驚愕の声を漏らす。
「テイル・オブ・フォックス」
俺が呟くと左手が金色に光り輝き、九つの刃が飛び出す。
結論から言うとこれで弾丸を防いだのだ。
西条と決闘?した時でも俺は霊波刀で銃弾を防いでいたなあ。
……今、考えるとよく出来たもんだ。
左手を振るう。
瞬間、九つの刃が閃いた。
音もなく左右の二人の男が倒れる。
これは俺の意思で自在に動く。イメージはもちろんタマモの尻尾からだ。
「さて降参したらどうだ? 痛い目を見ずにすむぜ」
と俺は一応、形だけだが言ってみた。
「だ、誰がするかぁぁぁあっ!!」
男は神通棍を持ち、ヤケ気味に俺に飛び掛ってきた。
まあ、こんな鉄仮面の男の言う事を素直に従う奴なんてそうは居ないよなあ。
「ファング・オブ・ウルフ」
今度は右手に霊力を集中させると、月光の如く銀色に輝く霊波刀が出る。
斬っ!!
神通棍を断ち切り、男を薙ぎ倒す。
手加減はしていたから大丈夫だろう。
この技のイメージは言うまでもなくシロだ。
ヒュンッ! ドゴォッ!!
俺のすぐ横を男が凄いスピードで通り、木に激突した。
「おい、雪之丞……」
「すまん。やり過ぎた」
その男はピクピクと痙攣している。
よかった。死んでないみたいだ。
「どっせーい!!」
タイガーが最後の男を上手投げで仕留めた。
「これで終わりですわね」
「そうだな。今回は早く片付いたな」
氷雅さんの言葉に俺は男達を縛りながら頷いた。
「どういう事だ? 隊長さんよぉ」
「そうですケン。それでは意味がよく分かりませんジャー」
雪之丞とタイガーが当然の反応をする。
俺も何の事だが、よく分からん。
氷雅さんは俺を睨むのを止め、涼しい顔をしている。
「端的に言うと正義の味方になって欲しいの」
「「「は?」」」
俺と雪之丞、タイガーは間抜けな声を出した。
氷雅さんだけは表情を変えてない。
が、急に瞳が輝いた様に見えたのは俺の気のせいだろうか?
「あの先生、僕から説明しましょうか?」
ここで西条が口を開いた。
「頼むわ。西条君」
う〜ん、隊長がここまで慌てているのは珍しいな。
「ここ最近、日本では物騒な事になっているんだ」
西条が語った事は衝撃的な内容だった。
「後は西条のダンナに連絡して終わりだな」
「ちょっと呆気なさすぎですノー」
「まあどいつもモグリのGSだからな」
俺は縛って転がしてある男達を見ながら言った。
「そうでもないですわ。あなた達は国内、いや、世界のGSの中でもトップクラスですから。ね、横島様」
氷雅さんは俺を見つめながら言う。
何かこうゾクッとくる視線だ。
「はいはい。ったく、横島はモテルねえ」
「うう、横島さんばかり、この世は不公平ですジャー」
男二人はとんでもない事を言い出す。
「俺にはシロとタマモが居るっつーの! お前らだって彼女持ちだろーが!!」
「最近、かおりが会ってくれないんだ」
「魔理さん、魔理さん。ワッシはー」
嗚咽が聞こえてきた。
仮面の中で泣いているのか。
「それって美神さんの所が忙しいんだろ?」
俺とシロ、タマモが居なくなったので美神さんはすぐ弓さんと一文字さんを雇った。
それに加え、あのクラス対抗でおキヌちゃん達と戦った女子も数人、交代要員として入れた。
そして今年の春にはみな卒業し、正社員として働いている。
「それは誤解ですわ。私には若と言う立派な方が。ああ、若、最近は色んな所がご立派になられて……。という訳で横島様は二番目です」
「……そうですか」
鉄仮面姿でイヤンイヤン、体をくねらすのはちょっと怖い。
!!
突如全身に嫌な感覚が走った。
ずががああああああんっ!!
雷が落ちた様な音が響き、トラックが木っ端微塵に吹き飛ぶ。
俺達は間一髪、離れる事に成功、誰も怪我はしてないみたいだ。
それに例の男達はタイガーがちゃんと抱えていた。
「密輸組織?」
俺は驚き、西条の言葉を繰り返した。
「ああ、ここ最近日本の妖怪、妖精を捕らえて売買しているのさ」
西条は淡々と語るが言葉の端々が震えている。
相当頭にきているのが分かる。
「それに特殊能力を持った子供を攫う事もある」
「西条のダンナ、それは本当か!?」
雪之丞が怒気を込め、西条に聞いた。
「残念な事にね」
西条が頷くと、雪之丞は「ちっ」と舌打ちをした。
「私の娘、ひのめも先日狙われたわ」
『!!』
その言葉にここに呼ばれた全員が衝撃を受けた。
氷雅さんも顔を顰めている。
「ひのめは間一髪で助かったわ。今はとある所に預けているの」
隊長のその言葉に俺は一先ず安堵した。
「という事は西条。俺達がその組織と戦えって言いたいのか?」
「半分は正解だね。君達には組織に買われている密猟者を捕らえて欲しい。組織云々はオカGの仕事だ」
西条がそう言うと、タイガーが疑問の声を上げた。
「ちょっと待ってくんしゃい。組織を許せないのは分かるんジャが、どうしてワッシらがその役目を担うんジャー?」
「そうね。でも普通の人が妖怪や妖精の類をどうにか出来ると思う?」
隊長が逆に問い返してきた。最もな意見を述べる。
「なるほどな。相手はGSを雇っているという事か」
「そうよ、雪之丞クン。大抵はモグリのGSを雇っているわ。それでお願いがあるの。あなた達は実力もあるし、今はどこにも所属していないフリーだから、こちらとしては何かと都合がいいの。だから……」
「へっ、何を言ってるんだよ、隊長さん。俺はやるぜ。ガキや弱いもんをくいものにする奴はぶっとばしてやるさ」
雪之丞はエミさんの所で働いていた。
ブラックリストから外され、GS試験を受け直す事が出来る様になった。
けど、その試験を受けるにはGSの師匠から推薦して貰わなくてはならない。
曰く有り気な雪之丞を引き取ったのは、エミさんだったりする。
理由はやっぱり魔装術の使い手だからだ。
元来、黒魔術を専攻して来たエミさんは悪魔の術の使い手だろうと気にしない。
そんな訳で雪之丞はエミさんに弟子入りし、GS資格を取得。もちろん主席合格だ。
「ワッシも同意見ジャー。一生懸命頑張るケン」
二人はこの前、エミさんから一人前と認められ独り立ちした。
というかさせられた。理由は至って簡単、ピートを追いかけてパリまで行ったからだ。
とてもいい加減かと思われるがそうでもない。
タイガーは笛なしでも精神感応を使いこなせる様になったし、相撲で近距離戦もこなせる様になった。
雪之丞はモグリとしてやってきた分、そういった駆け引きも実は上手だったりする。
「俺ももちろんやります。シロとタマモを守れるなら何でもしますよ」
「ごめんね、横島クン」
「謝らないで下さい。俺は自分で考え、決断しただけの事です」
う〜む、やっぱり今でも隊長はあの事を気にしてんのかな?
「美神様、私はどうして呼ばれたのですか?」
氷雅さんが初めて口を開いた。
彼女は俺が受かった次の年に受け、合格した。
あの時は鬼気迫るものがあり、決勝で雪之丞と対戦、互角の勝負をした。
ちなみにタイガーはその前に戦ったが、鼻血を噴出し気絶した。
あのピッチピッチしたレオタード姿にやられたのだ。
その後、もちろん一文字さんにボコられていた。
「……里長からあなたの事を知ったの。聞いたわ、天才とまで言われたあなたの事、それに一番の問題児とも……」
「あのクソジ……もとい、お爺様ったら、まあいいでしょう。不肖、九能市氷雅、お手伝いさせて頂きます」
「ありがとう、私達も出来る限りにするわ。報酬も少ないかもしれないけど出すから」
隊長は深くお辞儀した。
子犬の様に小さいが、灰色の毛に覆われ頭は細長く、嘴の半ばから黒い。
尻尾は狐みたいで四本足のそれぞれの爪は鷲に似ている。
体から放電しており、時おり紫電が見えた。
……これは雷獣じゃねえか。また厄介な……よく捕まえる事に成功したな。
さっきの轟音は雷みたいなじゃなく、雷そのものだったという訳か。
ずがががあああああんっ!!
また雷を放つ。
「危ねえ!」
タイガーに向けられた雷撃を、雪之丞は魔装術を全身に纏い防ぐ。
「なっ!?」
「雪之丞、大丈夫か!!」
俺達は慌てて雪之丞に駆け寄る。
「すまねえ、腕をやられた」
雪之丞の腕はひどく焼け爛れていた。
俺はすぐに文珠で『治』す。
腕は時計を逆回しにした様にみるみると治っていった。
「ぎゅおおおおおんっ!!」
雷獣が吼えると電撃が迸り、俺達に向かってくる。
文珠『壁』ですかさず防いだ。
「腕の調子はどうだ?」
「駄目だ。痺れてしばらくの間は使いもんにならねえ」
ぎぎぎっと『壁』が悲鳴を上げる。
まずいな、もうもちそうにない。
「タイガー、雪之丞を連れて逃げろ。そして西条に連絡してくれ」
「横島さん……」
「そうだな。タイガーは六人も担いでいるし、俺は腕が使えねえ。それが妥当な線か」
さすが雪之丞、話が早い。
「横島様、私はどうすればいいのでしょうか?」
「氷雅さんはあの雷獣の動きを止められますか?」
「任せてください」
氷雅さんがこくりと頷いた。
「よし。今、文珠の文字を変更する。そしたらみんな散ってくれ」
俺の言葉にみんなが頷く。
いつの間にか俺がリーダーになっているな。
「行くぞ!!」
俺は『壁』から『煙』と変えると、辺り一面煙に包まれた。
もちろん俺達はすぐこの場から離れた。
ばがああああんっ!!
雷撃が地面を穿った音が聞こえてきた。
ふっと氷雅さんが雷獣の目の前に行く。
雷獣は動揺するが、電撃を放った。
が、それは氷雅さんをすり抜け、後ろの木に当たる。
「忍法 分身の術。忍者っぽい術でしょ?」
本体は雷獣のすぐ後ろに居た。
雷獣は振り向こうとするが、氷雅さんの方が速い。
「忍法 チャクラ縛りの術」
手を優雅に踊らすと雷獣に何本か針が刺さっていた。
「どうです? 霊的中枢(チャクラ)に針を突き刺し、相手の動きを封じる術ですわ」
すごいなあ、よく俺はあの時に勝てたもんだ。
一生分の運を使い果たしたと美神さんに言われる訳だ。
雷獣は体を動かそうとするが、何も出来ずもがくだけだ。
「さすが氷雅さん。後は俺がやるから下がっててくれないかな?」
「? 何をなさるおつもりですか?」
「このままじゃ、この雷獣は人間に憎悪を持つから、説得したいんだ」
「はあ……」
氷雅さんは納得できてないみたいだけど下がってくれた。
俺は鉄化面を脱ぎ捨て、転がっている雷獣を抱きすくめた。
「ごめんな。怖がらせちゃって……」
俺は心の中から謝りながら、針を抜いていった。
針を抜いても出血はない。
血が出たらどうしようかと思ったが、これはさすがとしか言いようがない。
「横島様!!」
氷雅さんは慌てて駆け寄ってくるが―
「来るな!!」
俺は一喝して留まらせた。
あ〜あ、後で氷雅さんに謝らないといけないな。
ばりばりばりばり!!
針を全部抜くと電撃のショックが俺を襲った。
いくら魔族化したとはいえ、直に喰らうのきっついな。
俺と同じ女好きの男はいつもこれを喰らっていたのか?
美神さんの鉄拳とどっちが痛いのかな?
とまあ、変な事を考えつつ俺は雷獣の瞳を見つめた。
「お前にただ、ただ一つだけ言える事がある」
未だに電撃を放ち続ける雷獣。
「俺は味方だ……」
……ようやく電撃を放つのを止めてくれた。
「きゅう〜ん」
「分かってくれて、本当にありがとう」
俺は懐いてきた雷獣の頭を優しく撫でた。
「横島様! いくら何でもそんな無茶をなさってはいけません」
と氷雅さんは俺の雷撃によって、ボロボロになったボディスーツを無理矢理脱がしていく。
止めたいけど雷獣を離す訳にもいかないし……。
「あれ? 怪我をしてないみたいですけど……それにお顔も綺麗なままですわね」
「まあね。さすがにまともに喰らったら死んじゃうからね」
俺は左手で雷獣を抱き、右手でポケットから文珠を取り出す。
「『金』? 金属の金でしょうか?」
「いや、それだとあんなに防ぐのは難しい。これは陰陽五行の『金』属性って意味さ」
「まあ!? なるほどそれでしたら雷を防げますね」
「そういう事、雷は『木』属性だから『金』属性で克つ訳さ」
「でもいつの間に陰陽術を……」
「はは、まあ俺も勉強しているって事で」
さすがに前世が陰陽術師とは言えないよな。
ピピピと電子音が鳴る。
氷雅さんは耳の所に手を当て通信に出る。
「はい、九能市です。ええ、はい……雷獣も無事保護しました。それでは」
鉄仮面には通信機が内蔵されていて、こうやって会話が出来るのだ。
「西条からか?」
「ええ。今、タイガー様と雪之丞様を見つけて、こちらへ向かっていますわ」
「そうか。はあ、今回は疲れたな」
「そうですわね。でもこれからは無茶は控えて下さい。こちらが心労で倒れてしまいますわ」
「きゅう〜ん」
「ん? お前もそう言うか?」
俺は朝日を浴びながら、雷獣を空に向かって掲げた。
って、もう朝!? 完徹かよ……。
「ただいま〜」
俺はドアを開け自分の部屋に帰って来た。
あの後、少し寝たから既に夕方になっていた。
「先生! お帰りなさいでござる!」
「タダオ! お帰り!」
シロとタマモが俺に向かってダイブしてきたので、受け止める。
どうやら帰ると電話してからずっと待ってたみたいだ。
「ただいま。シロ、タマモ」
俺は二人を優しく抱きしめ、頬にキスをした。
するとシロとタマモはとびっきりの笑顔を見せてくれた。
ああ、癒される笑顔だなあ。
「夕御飯、作ったから一緒に食べましょ」
「そうでござる。さあ、さあ」
二人は俺の手を引っ張り、居間まで連れて行く。
「お、今日は随分と普通だな」
夕食を見て最初にそう思った。
いつもは肉と油揚げがメインだけど、今日のは普通の料理だ。
キンピラゴボウに芋の煮っころがし、ポテトサラダと鯖の味噌にだ。
後は申し訳程度に肉入り野菜炒めと油揚げのお味噌汁といった具合だ。
「それはいつもは普通じゃないと仰るのでござるか?」
「タダオに喜んでもらおうと一生懸命に作ったのに……」
シロとタマモは拗ねだした。
俺はまずいと思い、続けた。
「いや、何となく、お袋の料理みたいだなと思っただけなんだ」
そう言うと二人は、にかっと笑顔になった。
「義母上は昨日来られたでござる」
「そうなの。それでお料理を教えてもらったの」
この言葉に俺はびっくりした。
「へえ、お袋がね。今はニューヨークで親父と働いている筈なのに」
一年前にナルニアからニューヨークへ栄転した。
だから物凄く忙しいと親父がぼやいていたっけ。
「でも入れ違いになったね。お義母さん、朝早く帰ったし」
「いいさ。後で俺から電話しとくから」
「だったら、冷めない内に食べるでござるよ」
「そうだな」
俺達は楽しく夕食をとった。
やっぱり懐かしい味がした。
「くちゅ……ちゅ……ちゅる……」
「ん……んあ…ん……」
夕食をとった後はすぐベッドへ連れてかれ、服を引ん剥かれた。
そして三人での嵐の様なキス。
もうキスと言うよりはお互いの舌を舐め合っている。
唾液は顎を伝って滴り落ち、胸はべたべたになった。
「ふう……何か今日は積極的だな」
「だって先生とは二日もしてないでござる」
「うん。とっても寂しかったんだから」
「だからこうするでござる」
シロはその豊満な胸で俺のモノを挟む。
さらに唾液を垂らし、しごいていった。
「うおっ!? シロすげぇな」
「もちろん! 修練は欠かさずに積んでいるでござるよ」
そう言ってモノの先端を口で含み、得意の舌技で攻め立ててくる。
胸が柔らかに形を変え、モノを包むのは見応えがある。
「タダオ、私も……ん」
タマモは俺の唇を塞ぎ、舌を侵入させてきた。
それは縦横無尽に口内を動き、俺の唾液を貪って来る。
俺も舌で応戦し、タマモの舌を絡めとった。
右手でシロの頭を撫で、左手でタマモの胸を揉む。
くりっくりっと乳首を弄ると、タマモは可愛らしく鳴いた。
シロも休まず、モノに刺激を与えていく。
「タマモ。そろそろでござるよ」
シロはやはりいち早く気付き、タマモに声を掛けた。
「ぷはっ……分かった」
タマモは唇を離し、シロの隣に行く。
「ん……出すぞ」
胸の谷間からモノを離して手で掴み、先ずはシロに向けて白濁液を発射。
続いてタマモに向け、ドクドクと顔目掛け放出した。
二人は顔を白く汚されたが、恍惚とした表情を浮かべている。
「シロォ……」
「タマモォ……」
二人は向き合い、お互いの顔を舐め合った。
そして口の中で租借し、唇を交わして交換し合う。
美少女同士のキスはエロいなあ。
「せんせい……もうそろそろ……」
「お願い。切ないの……」
たっぷりとキスを交わした後、シロとタマモは潤んだ瞳で俺を見つめる。
「ようし、今日は二人同時にしてやる。重なってくれ」
そう言われた二人は悦びに満ちた表情を浮かべ、すぐに用意を始めた。
シロが仰向けで下になり、タマモはうつ伏せでシロに重なる。
いわゆる重ね餅の体型だ。
う〜ん、いつ見ても絶景だ。
シロのお尻は大きい分、タマモの重みによって少し潰れるので何とも言えない卑猥な形になる。
そしてアソコとアナルが二つ丸見えというのもポイントが高い。
シロのアナルは下になっている関係、少々見えにくいが問題にはならない。
「おや? もう濡れているな」
俺は意地悪く言い、それぞれ人差し指と中指の二本をアソコに入れる。
にゅるんと抵抗なく入るが、俺の指を締め付ける。
「んん!? あ〜ん、指じゃなくてタダオのを挿れて〜」
「せ、拙者からも、お願いでござる〜」
「やれやれ、しょうがないなあ」
と俺は言うが本当は嬉しい。こうやって好きな女の子から求められるのは男冥利に尽きる。
俺は文珠を二個取り出し、『分』『身』を込め自分のモノに当てる。
するとにょっきりともう一本、ムスコが現れた。
本当に文珠は不思議な物だ。自分で作っといてそう思う。
「行くぞ」
俺は挿れる時は声を掛ける。
急にするのはどうも不評だからだ。
それぞれの先端をアソコに当て、突き進む。
いつもソコは俺のを暖かく向かい受けてくれる。
「ああ、凄ぉい!」
「せんせいのが入ってくるぅ!」
俺はタマモの背中に密着して腰を前後に動かす。
これは二人同時に愛せるが、欠点もある。
モノが二本あるって事は単純に快感も二倍って事だ。
だからこの時は射精感を我慢しなくてはならない。
いつもこうやっている時はシロとタマモとの初体験を思い出す。
恥ずかしながら二人とも、挿れた瞬間に射精してしまった。
「ああん! ああ! んう!」
「ひぃっ! いっ! ううん!」
俺が突く度にきゅんきゅんと締め上げて来る。
……ちょっとつらくなってきたな。
俺はシロの腰を両手で抱え、腰を入れ踏ん張る。
足に力を込め、背中側に倒れこんだ。
「やぁっ!?」
「きゃうんっ!?」
何とか騎乗位にすると先端がシロとタマモの中それぞれに深く食い込んだ。
「こんな時に体勢を変えるなんて酷いでござる……」
「すまん、すまん。タマモ、シロ動いてくれないかな?」
「うん」
半ば意識が飛んでいるのか、タマモは素直に頷き腰を回し始める。
シロも続いて行った。
「シロ、キスして」
タマモに言われ、シロは無言で唇を合わせる。
ぴちゃ、ぴちゃと舌と舌が絡まり合う音が聞こえてきた。
タマモは堪らずにシロに抱きついた。
シロも力強く抱きしめる。
俺も負けじとベッドの反動を利用して突き上げる。
「ひゃんっ!!」
「くひぃっ!!」
これでもかと叩き付けている内に限界が近づいてきた。
「中に、中に出すぞ!」
「センセイ! 早く、早く来て!!」
「いい! 中にちょうだい!!」
俺は二人の中に欲望の白い液体を吐き出した。
シロとタマモは獣の様に叫び、お互い倒れない様に抱きしめ合った。
「先生、今回のお仕事はどうでござった?」
「そうね。どうだったの?」
俺達はあの後、俺達は三人は風呂に浸かっている。
しこたま交わった後のお風呂は最高だったりする。
それに二人は髪をアップにしているので、うなじが見える。
色気を感じるなあ、ちょっと前までは考えられなかった。
「密猟者を捕まえて、雷獣を保護したんだ」
俺は両肩に二人の肌を感じながら今回の事を説明した。
シロとタマモには話してもいい様に許可は取ってある。
「……そうでござったか」
「許せないわね」
「すまない」
俺は謝った。
何か悪い気がしたからだ。
「いいの。タダオは雷獣や他の妖怪を助けてるんだから」
「そうでござる。『義を見てせざるは勇なきなり』先生は素晴らしい事しているのござる」
「ありがとな」
俺は二人の頭をぽんぽんと叩いた。
「私はタダオに助けられてここに居て、一緒に生活できて嬉しいわ。だから自分が悪くないのに謝らないで」
「先生はきっと人と妖怪、神、魔の架け橋となるでござる」
「そんなに褒めても何にもでないぞ」
二人の言葉は堪らなく嬉しかった。
あとがき
今回は横島のお仕事の話でした。
三話のシロが『先生がよく出張〜』はこういった事をしている為です。
そして九能市氷雅ですが、う〜ん私はまだキャラが掴めていないみたいですがどうでしょうか?
「……ねえ」
あれ? 誰ですか?
「……知っているくせに」
年は一五、六で灰色の瞳と灰色の髪。
髪型は……変わっているな。長い髪を細かい三つ編みでたくさん結ってある。
そして顔は美少女だ。シロタマに負けないぐらいに可愛い。
やや小柄で体型はスレンダーってか微乳?
ごす
「一言多い。それに分かってて言ってる」
うう、淡々と喋るくせにコークスクリューをぶちかますとは……。
「……もう一発いっとく」
すいません、すいません。
あなたは雷獣のライちゃんでしょ?
「安直な名前……」
うっさい! しかも三点リーダー多すぎ。
「それが私のキャラクター……」
まあそうだけど。
「本当は今回、私の出番がもっとあったはず……」
削った。
「……なぜ?」
あなた横島の事、好きなんだよね?
「うん。……できれば抱かれたい」
はっきし言う娘さんだなあ。
だからさ。
「え?」
だってこの話のヒロインはシロタマだ。
横島はこの二人以外とイチャイチャさせる気はない。
「……」
えっとその手の巨大なハンマーは何?
「……光になりなさい」
いやあああああああっ!?
「そういった訳で、光になったあの人の代わりに次回予告です……。次回は絶対可憐チルドレンとのクロス。……やっぱり炉炉多と改名するべきですね……。ではまた」
追伸:少し修正しました。