「えっと……これでいいでござるか?」
「うん、そこ」
拙者とタマモはベッドの上で裸で向かい合っていた。
タマモを組み伏し、拙者が上となった形、正常位と言うらしい。
時刻は昼過ぎ、今日はてすとの最終日だったのでタマモが『このむしゃくしゃした気分を晴らすにはエッチが一番ね』と申したので、こうなってしまったのでござる。
拙者は別に百合の趣味はないのでござるが、タマモだと何故だが気にならない。
本当なら先生が相手をしてくれるのが一番でござるが、生憎出張中でござった。
先生は二、三日留守になるのは珍しくござらん、なのででタマモと二人で、慰めあうようになったのでござる。
「いくでござる」
「うあ……んん」
拙者はぺにすばんどなる物を装着し、タマモを貫いた。
衝撃は拙者の中に挿入された擬似ぺにすを通って、伝わってきたでござる。
「んん……何か、これは…んあ……妙な気分でござるな……」
「そう……ね」
こうやって道具を使ってタマモと絡み合うのは初めてでござる。
いつもはお大事同士を擦り合わせていただけであったから。
「シロ〜、もっとついて〜」
「承知!」
突く早さを上げる。
なるべく先生がやっているようにしてみたが、上手くいかずにぎこちない。
「タ、タマモ、いいでござるか!!」
「う…ん。ちょっと……いいかも」
タマモがはにかんだような表情をしたでござる。
拙者はなるべく、タマモを悦ばせるべく回転を加え突き上げる。
くう〜、拙者の中のモノも暴る分、上手く出来ないでござる。
「タマモ! タマモ!」
「シロ! キスして!」
そう言われ、拙者はタマモの唇を塞いだ。
すぐにタマモの舌は口内に侵入してきて、激しく蠢きだす。
拙者も積極的に舌を動かし、絡め合い唾液を貪る。
「んちゅ……くちゅ…んう……」
唾液で口の周りがベタベタになるのも構わず、接吻を続けたでござる。
「んあ……」
タマモが切なげな声を上げた。
しばらく貪り合った後、拙者は唐突に唇を離したでござる
「あっあっあ……急に…あん…そんな」
タマモが何か言うが、拙者は猛然と腰を突き出しタマモの中を支配する。
「こっち…だって……ちゅっ…うー」
「タ、タマモ、おっぱい吸っては……」
突然、タマモは拙者の胸を掴んで乳首を吸いだした。
それに胸も激しく揉み出す。
「だ、ダメでござる。……イく!!」
「私も……イ、イクーーー!!」
拙者とタマモ、二人とも体がびくびくと痙攣し果てた。
拙者がタマモに寄りかかるとそのまま接吻を続けたでござる。
「タマモ、どうでござった?」
拙者は全裸のまま、ベッドの上で大の字になりながら聞いたでござる。
「う〜ん、気持ちよかったけど、タダオと比べるとねえ」
タマモはシーツで体を隠して答えた。
むう、どうせ今は拙者しからおらぬのに何が恥ずかしいのでござるか?
「拙者も同感でござる。最後には先生の精液がないと満足できないでござるよ」
「そうね。最後に中に出されたり、かけられた時は堪らないわ」
「でも、どうするでござる? 折角、九絵どのがくれたのに……」
拙者は起き上がり、ベッドの横に置いてあった段ボール箱を手に取って言った。
この中には大人のおもちゃと言われる物が、びっしりと詰まっているでござる。
「大丈夫よ。タダオとエッチする時に使えばいいわ。ちょっと持ってきて」
拙者は言われた通りにベッドの上に段ボール箱を置くと、タマモは中に手を突っ込み、何かを探し始めたでござる。
「え〜と、これでもない。これ……も違う。あ! これよ、これ!」
と言って、取り出したのは小さな団子に串が突き刺さったようなものでござった。
「それでどうするんでござるか?」
「どうするって、これアナル・ホールよ」
にやりと笑うタマモに思わず背中に悪寒が走り、拙者は思わずお尻に手で隠したでござる。
「タマモ。も、もしかして……」
「あんたが考えている通りよ。タダオに喜んで貰うためには、お尻の開発が必要よ!」
さらりととんでもない事を言うタマモ。
「そんな訳でシロ、お尻を出しなさい」
「う……」
拙者は押し黙る。
いくらタマモと肌を重ねているとはいえ、ちょっと抵抗を感じてしまう。
「タダオの為よ」
こ、こんな事を言われたら拙者は断れないでござるよ。
「……分かったでござる」
「素直でよろしい。さて先ずは浣腸ね」
「へ?」
「どうしたの?」
「い、いや、今何か凄い事を言わなかったでござるか?」
拙者の言葉にタマモはケラケラと笑った。
「や〜ね。アナルでする時は中のモノを出すのは当たり前よ」
タマモはそう言ってノートのある部分を見せた。
それは九絵どのから貰った『必勝、虎の巻、彼と幸せなエッチをする方法』でござった。
しいて言えばはうとぅ本でござる。
そこでまたタマモは段ボール箱から何かを取り出した。
「それに手に持っているのは何でござるか?」
「ん? これはイチジク浣腸よ。いくら何でも最初で浣腸器は使わないわ。ふっふっふ、逃がさないわよ。シロ」
「い、いやでござるーーー!!」
手をわきわきさせ、タマモは拙者に近寄ってきた。
拙者にはタマモが悪魔に見えたでござる。
「うう、汚されちゃった……。拙者、汚されちゃったでござるよ」
拙者はベッドの上で泣いた。
結局、浣腸をされてしまいトイレで用を済ませてしまったでござる。
「何いってるのよ。ほら、お尻を出して」
タマモは人差し指にコンドームを嵌め、ローションで濡らしていた。
仕方なく拙者は四つん這いの格好をとり、お尻をタマモに向けたでござる。
「さ、先ずは指でするわね。力を抜いて」
「ひゃん!? 何をしたのでござるか!?」
お尻に冷たい液?が触れたため、思わず声を上げてしまった。
「ローションよ。次は指でマッサージして解すわ」
そう言ってタマモは指で拙者の穴の周りを撫で回す感触が伝わる。
な、何か変な感じでござる。
焦れったい様な、くすぐったい様な……。
「くぅ〜ん、もう止めて欲しいでござる」
「だ〜め。だいぶ解れたみたいだし指を挿れるわよ」
穴に指の感触―
ぬぷり
「ん、な!?」
「痛かった?」
「ち、違う。何ともいえない感触が……」
「そう。なら続けるわね」
タマモはそのまま奥まで突っ込み、ぐりぐりと回す。
「う、んん……ああ……」
「これはおまけ♪」
「ああっ!?」
さらに拙者のお大事に指を挿れてきた。
ずにゅ、ずにゅと汁気を含んだ音が部屋に響いた。
んん、これいいかも……。
「ダメ! ダメ! やああぁぁぁぁああん!?」
「いい鳴き声ね」
拙者は大声を上げて、イってしまった。
「ふう。……お尻はどうだった?」
「思っていたより、よかったでござる。タマモは?」
「私も。これはクセになりそう」
あの後、拙者もタマモに同じ事をしたでござる。
指一本だけできついのに、先生の大きな自身を受け入れる事が出来るんでござろうか?
やはり精進あるのみ、いつしか先生のを……。
ピンポーン
「誰か来たみたいね」
「拙者が出るでござるよ」
「ちゃんと何か着なさいよ。あんたこの前、上半身裸で出るもんだからびっくりしたじゃない。あの時は相手が女性じゃなかったら大変だたっわ。それに最初はインターホンで確認しなさいよ」
タマモが釘を刺してきたでござる。
前はそのちょっと急いでいたからであって……。
「大丈夫。さすがに二度も同じ過ちを繰り返さないでござるよ」
「本当かしら……」
呆れた様にタマモは呟いた。
拙者はそれを聞き流し、ショーツを履きシャツとズボンを身につけたでござる。
「はい。どちら様でござるか」
拙者は居間に来た。ここにインターホンがあるからでござる。
『あら、シロちゃん。久し振りね』
インターホーンのボタンを押し、小さな画面には見知った女性が映ったいたでござる。
『今日は様子を見に来たの。入れてくれる?』
「ちょ、ちょっと待って欲しいでござる」
『そう? 早くしてね』
「はい」
拙者は急いで寝室へ向かったでござる。
「タ、タマモー!!」
「なーに、廊下を走ったりしたら危ないわよ」
タマモは枕を抱きかかえ、ベッドの上で気だるそうに寝そべっていた。
「義母上が来たでござる!!」
「え!? うそ!?」
ばね仕掛けの玩具の様にタマモは跳ね起き、素っ頓狂な声を上げたでござる。
「いくら何でもそんな嘘はつかないでござるよ。早く身を整えるでござる」
「う、うん! やだっ、髪の毛ぼさぼさ」
タマモはすぐに服を着て、鏡台を見ながら髪を直す。
九つの房に分けられた髪の毛を直すのは、拙者から見ても大変そうでござった。
「手伝うでござるか?」
「いい。あんたも髪、爆発しているわよ」
「ええ!? そうでござるか!?」
拙者もタマモの隣に座り、ブラシを使って髪を整える。
拙者の髪の毛は八の字の様に広がっていた。
「義母上と会うのは久し振りでござるね」
「そうね。もう一年以上経っているわね」
タマモは髪を直す手を休めず、答えてくれたでござる。
義母上……、今でもそう呼ぶのは照れくさいでござる。
一年と少し前。
アパートの先生の部屋、今そこは緊張に包まれている。
今までは腐海の如く汚れていたが、拙者とタマモの努力により綺麗に片付けたでござる。
が、前のお二方を見ていると鼻がひくひくししてまうでござる。
「―という訳なんだ」
「それは本気なの、忠夫?」
今まで黙っていた目の前の男女の内―百合子どのが冷たい声で言う。
さすが先生の母上どのと言うべきか、彼女からは凄まじいぷれっしゃーを感じるでござる。
「ああ、本気だ。俺はシロとタマモと付き合っている。それに一生、一緒に生きていくと決めたんだ」
拙者の右に正座をしている先生はいつにも増して真面目な顔で答えてくださった。
先生の右にこれまた正座をしているタマモは嬉しそうに頬を緩ませた。
たぶん拙者も同じ様な表情なのでござろう。
「忠夫、よくやった。両手に花とはまさに……げふうっ!?」
「あなたは黙っていて」
背中に戦慄が走る。
百合子どのは良人である男性―大樹どのを裏券で鼻を打ち、黙らせたからでござる。
「あと、二年程前の悪霊が大量発生した事件にも深く関わっていたって」
これは先生が拙者達と付き合っている話の前に語ったのでござる。
拙者達の事を話すには必要だからと先生が仰ったのだ。
もちろんルシオラどのの事も……。
「それも本当だ」
「しかもニュースで聞いたのは全然違うみたいね。あの事件は美神さんとその仲間であるプロのGS達が収めたって聞いたけど」
確かに百合子どのの仰った通りでござった。
例のアシュタロス事件は世間一般では美神さん達、『プロ』のGSが片付けた事になっている。
当時見習いであった先生の事は一切世間には広がらない様に美神さんを始め、みんなが尽力なさったと聞いている。
でもピートどのだけは知られたらしいでござる。
「俺は嘘を言っていない。全て真実だ」
どげぎゃああっ!!
それは一瞬の事だった。
先生が後方に吹っ飛んだかと思った時には轟音を立てて窓に激突。
落ち着いてから見てみると、百合子どのは生拳中段突きを放ったまま息を整えていた。
み、見えなかったでござる。
人狼である拙者には影ぐらいしか認識できなかった。
隣のタマモはあまりの事に呆然としていたでござった。
「あ・ん・た・は〜。親である私達に何も言わなかったのはどういう了見だい!! こっちはどんだけあんたを心配したのか、分かっとるんかーーー!! それをあの時は何もなかったと電話でよくも言えたわねーー!!」
百合子どのはずかずかと歩いて行き、窓を突き破り、半分落ちかかった先生の襟首を持ち、無理矢理引っ張り込んで説教をし始めた。
がっくん、がっくんと先生の体を揺さぶる百合子どの。
「せ……」
「タ……」
あまりといえばあまりの事に拙者とタマモが先生を弁明しようとしたら―
「止めるんだ。百合子」
いつの間にか大樹どのが百合子どの肩に手を置いていた。
あの攻撃からもう目を覚ますとは先生の父上だけの事はある。
「あなた……」
「忠夫とてもう子供ではない。それに……いい加減しないと死ぬぞ」
「あら……」
「あ……が……ぎ……」
先生は半死半生だったでござる。
「えっと、何だ。その事だけど……」
あれから三分で先生は蘇ったでござる。
さすが拙者の先生でござるよ。
「それは俺の中で決着をつけてから話そうと思ってたんだ。だから、美神さんや隊長にもお袋達には教えないように俺がそう言ったんだ」
「……だったら忠夫はもう自分の中ではケリをつけたんだね」
少し経ってから百合子どのが申した。
「もちろんだ」
「よし。それだったらシロちゃん、タマモちゃん、買い物にでも行きましょう」
「「「え!?」」」
拙者達は間抜けな声を出した。
「お袋、それって……」
「何よ」
「あの百合子さん、それは私達を認めているって事」
タマモが拙者の代わりに聞いてくれた。
「ええ。私としては反対する理由はないわ。シロちゃんとタマモちゃんは忠夫の事好きなんでしょ?」
「「はい」」
拙者とタマモはほぼ同時に答えた。
すると百合子どのは笑顔で頷いた。
「それならよろしい」
「でもいいのでござるか? 拙者はまだ年齢はまだ二桁もいってないでござる」
「私は二歳ぐらいよ」
「シロちゃんとタマモちゃんは妖怪なんでしょ? だったら見た目と年齢のギャップぐらいどうって事ないわ」
拙者達が申した事をあっけらかんと返したでござる。
「いいのかお袋?」
「そうだな。それは俺でもびっくりだ」
先生は不安そうに大樹どのは人間なら普通の反応を申された。
「何言ってるのよ。あんた達の方がよっぽど規格外のクセに」
百合子どのはその発言を斬って捨てたでござる。
「「俺って一体……」」
先生と大樹さんは膝を抱えて落ち込んだ。
やっぱり親子だと分かる瞬間でござった。
「さ、行きましょ」
百合子どのは微笑んだ。
拙者の母上もこんなに暖かな人だったろうか?
母上は拙者が乳飲み子の時、亡くなったと父上から聞いた。
その父上も……。
ジリリリリン
突然、先生の黒電話が鳴り出したでござる。
先生はすぐに電話に出た。
「はい、横島です。仕事ですか? ……分かりました。シロとタマモはどうします? ……じゃあ、俺だけで」
受話器を置き、先生はこちらを振り向いた。
「すまん。美神さんからの仕事の呼び出した。どうやら俺だけでいいみたいだからシロとタマモはお袋と行ってくれ」
「でしたら先生、拙者達が言った方が早いのでござらんか?」
「私もそう思うわ」
タマモも拙者と同意見の様だ。
「う〜ん、でもな〜俺だけでいいって言うし……」
「それじゃあ忠夫は行けばいいわ。シロちゃんとタマモちゃんは私と一緒に行くから」
「でも……」
拙者は何か言おうとしたが、百合子どのが唇に人差し指を当てて止めた。
「シロちゃん。あなたの先生で恋人の忠夫は失敗すると思う?」
「そう言われたら何も言えないでござる」
「……さすがね」
タマモは何故か感心していたでござる。
「じゃ、俺は行って来ます」
そう言って先生は行ってしまわれた。
「あなたも会社に行った方がいいんじゃない?」
「ん? そうか……わ、分かった、行こう。あのクソ専務にまたネチネチ嫌味を言ってくるよ」
大樹どのが何か言う前に眼光だけで黙らせ、この場を退場させたでござる。
「あ、あの百合子さん。いくらなんでも……」
「いいのよ。女同士で話し合いたかったから」
百合子どのは悪戯っぽく笑ったでござる。
「あの……百合子どの。こんなに買っていいものでござろうか」
「いいのよ。やっぱり女の子と買い物をするのは楽しいわ」
そう言って百合子どのは嬉しそうに仰った。
今、拙者達は大きな貸し車で移動中。
運転は百合子どのがされ、拙者とタマモは二列目に座っており、先程は後ろに置かれた大量の荷物を見て思った事を言ってみたのでござった。
中身のほとんどは服でござる。
「ね、シロちゃん、タマモちゃん」
「「はい」」
「私の事、お義母さんって呼んでもいいのよ。もう忠夫の嫁として認めたんだから」
「「ええ!?」」
突然の事に拙者とタマモは混乱してしまった。
「先生のお嫁さん……」
「タダオの花嫁……」
拙者は思わず先生との新婚生活を思い描く。隣のタマモもきっと同じ考えでござろう。
「何をそんなに驚いているの?」
「そ、そのいきなりだったもので……」
慌てふためいてタマモが答える。隣の拙者も首を縦に振る、百合子どのが見れないと分かっていても……。
「あら? 変かしら、忠夫から大切な人を紹介したいって言ってたからナルニアから急いできたのよ」
「でも拙者達は妖怪でござって……」
「そうよ」
「シロちゃん、そんな事はどうだっていいの。忠夫があなた達を愛していて、あなた達が忠夫を愛している、それでいいじゃない。それにね……」
ここで急に車が止まったので、拙者とタマモは少しつんのめった。
「ダメよ、自分を卑下しちゃ。お義母さん、怒っちゃうから」
こちらを振り向かず、百合子どのはそう仰った。
凄まじいぷれっしゃーをこちらに放ちながら……。
「は……」
拙者が思い切って言おうとした時―
ずがががあああんっ!!
突如、前方の車が吹っ飛び拙者達の車の横に落ちて来た。
「な、何!?」
百合子どのが慌てて周りを確認する。
拙者とタマモも警戒したでござる。
「シロ! あれ!!」
タマモがいち早く気付き、前方を指さす。
そこには化物がいたでござる。
「!? お、大百足!?」
ざっと目測で全長一〇メートル近い。
それは道行く車を薙ぎ倒しながら、こちらへ向かって来ていたでござる。
「シロ!」
「承知!」
拙者とタマモは急いで車から出た。
拙者は運転席のドアを霊波刀で無理矢理こじ開け、百合子どのを担いでこの場から走って逃げ出した。
「何で拙者達を追ってくるでござるか!?」
急いで逃げたのはよかったが、何故か大百足はこっちを追いかけてきたでござる。
「……たぶん私とシロを喰らう気よ」
隣を走っているタマモは何かに気付いたかの様だ。
「その根拠は?」
「さっきからあいつは脇目も振らずに私達は追いかけているわ。きっと腹を空かせて霊力を持っている私達を狙っているのよ。って、それぐらい気付きなさいバカ犬!!」
「な、何だと!! このクソ狐!!」
カチンときたのでつい言ってしまったでござる。
あっという間に険悪な雰囲気になる。
「止めなさい! 二人とも!!」
「「は、はい」」
拙者の背中に背負っていた百合子どのが一喝した。
……少し耳がキーンとしたでござる。
「あの百足があなた達を追っているなら話は早いわ。あそこの公園で待ち伏せすればいいわ」
百合子どのが指さしたのは公園の入り口でござった。
「百合子さんは?」
「私は適当に隠れているわ。と言っても反論は受け付けないから」
「承知!」
拙者達は大百足がついてこられるぐらいに走る速さを上げ、公園へ突入。
幸い、公園は人が居らず百合子どのは拙者達が目に入るぐらいの所へ隠し、拙者とタマモは手頃な幹で身を隠す。
「来たでござる」
「そうね」
大百足は公園は入ってきたが、拙者達を見つける事が出来ずきょろきょろしている。
「私が狐火を放つから、シロは斬りかかって」
「それしかないでござるな」
拙者は頷く。
今は拙者達二人しか居らぬから、出きる手は限られているでござる。
「行くわよ!!」
タマモは狐火を放った。
拙者はそれを見てから疾走する。
「グケエエエエエエッ!?」
狐火が見事に大百足に命中する。
そして拙者の霊波刀の一閃で斬り捨てたでござる。
「上手くいったわね」
「そうでござるな」
大百足は首元を断たれ、黒焦げになって倒れ付していた。
「シロちゃん! タマモちゃん!」
百合子どのが出てきてこちらへ向かって来た。
拙者とタマモは駆け寄ろうと―
ブオオオオッ!
拙者の横を何か黒い影が過ぎった。
「きゃああっ!?」
百合子どのが悲鳴を上げる。
何と大百足はまだ生きていて百合子どのに襲い掛かった。
拙者とタマモは急いで走ったが間に合わず、百合子どのが倒れた。
「義母上ーーーーーーーっ!!」
「お義母さんーーーーーっ!!」
拙者とタマモが吼えた。
タマモは今まで見た事ない程の極大の狐火を放った。
拙者は筋肉が悲鳴が上げるぐらい足に力を込め、駆ける。
「ヌギャアアアアアッ!?」
火達磨になる百足に拙者は容赦なく、斬り付ける。
幾度も幾度も斬り付け、細切れにしてやった。
「義母上! 義母上!」
「お義母さん! お義母さん!」
「もう掠り傷だから泣かなくてもいいのよ」
ここは白井総合病院、拙者達は大百足を斃した後に急いで運んだのでござる。
義母上はほんの掠り傷で右手に包帯を巻いただけだ。
それを見て安心したのか拙者とタマモは義母上に抱きついて泣いてしまった。
あの時、犬飼に斬られた父上を思い出してしまったのだ。
「でもよかったわ。二人とも私を母親として認めてくれて……」
「ううん、違うの。本当は車で言われた時から言いたかったの」
「拙者もそうでござった。でも、拙者達は母親というものがよく分からないのでござる」
涙で掠れた声ながら、拙者達の事を話したでござる。
拙者は幼い頃に母上を亡くし、父上は殺された事。
タマモは元々から親というものが居ない事。
「……そう。親と接するのは難しく考えなくてもいいのよ。これから慣れればいいの」
拙者達はいつまでも泣いた。
それから先生と義父上が来られた。
どうやらあの大百足は今日、美神どの、おキヌちゃん、先生、そしてオカルトGメンと協力した仕事に関係があったのでござる。
蟲毒という壷の中に様々な蟲を入れ、共食いさせ最後に残っていた一匹で呪殺に使用するものでござった。
先生達が術者を捕らえたのはよかったが、その一匹が逃げ出したという事でござった。
先生は頭を下げて謝ったでござるが、義母上は気にするなって仰った。
しかし先生はそれでも謝り続けたので、しまいには義母上の鉄拳で黙らされたでござる。
「あの時は大変でござったな」
拙者はブラシを終えて、そう言った。
「そうね。でも……」
タマモはブラシを止め、神妙な面持ちになった。
「どうしたでござる?」
「でもさ、お義母さんは人間でしょ? だったら私達より早く居なくなると思うとね……」
そう呟いた。
これは拙者に言ったというよりも、タマモ自身に言った様に聞こえたでござる。
「いいのではござらんか?」
「へ!?」
「義母上が仰っていたでござる。GSという危ない仕事をしていても親より早く死ぬなって。だから拙者達は頑張って生きてればござるよ」
「……ふふ、あんたに教えられるなんてね」
「それより、早く身を整えるでござるよ。義母上を待たせるのはよくないでござる」
「そうね」
拙者とタマモはにこりと笑った。
あとがき
どうも炉炉多です。あ、違った、ろろたです。
某所での連載でちょっとやっちゃったのでこう書かれる様になってしまいました。
今回はシロ視点でお送りしました。
シロの一人称は癖があるので、難しかったですがどうでしょうか?
エロもシリアスもちょっとばかし中途半端なような……。
しかし横島出番少ないなあ、やはりグレートマザーは素晴らしいですな。
話は少し変わりますがシロニストってどれぐらい居るんでしょうか?
多くのGS美神のSSではタマモがメインヒロインが多いものでちょっと気になったので。
この作品の初期プロットでは横島×シロ又はタマモでしたが、結局シロタマ二人とも出しました。
何故ならシロとタマモの掛け合い(漫才とも言う)を書くのが面白い事に気付いたんです。
このコンビは本当にいいなあ、と思う様になりました。
次回は九能市氷雅と雪之丞、タイガーが出る予定です。
と言っても氷雅がエロい事をするわけではありません。
ここではエロい事をするのはシロタマだけですから。
では、また。