「ふあっ……ん…ああ!」
「はあ、はあ、はあ……」
夜となり、私とタダオはベッドの上で正常位で絡み合っている。
彼は荒い息と共に私の中をその肉棒で突き刺す。
私は突き刺される度に声にならない声を上げ、腰を振る。
タダオの肉棒は熱く、焼けた鉄棒を刺されたみたいだ。
熱い。
熱い。
熱い。
熱い。
まるでこのまま二人はその熱で溶けてしまいそうだ。
「ああん……いいっ…ん」
だけど決して溶ける事なく、その熱は私を悦ばせる。
私の中で肉棒は自在に動き、突き刺し、捏ね、叩きつけてくる。
彼の手が動き、私の乳首を掴み捻る。
「ダメェ、ち、ちくび……よわいのう」
私が言っても彼は止めない。
更に躍起になって私の乳首を嬲っていく。
「うう……んん!?」
今度は私を黙らせるべく、唇を押し当ててきた。
すぐさま舌が進入してきて、私のお口の中を犯してくる。
美味しい、タダオの舌、美味しいよ。
私は胸の次にキスに弱い。
彼はその事を熟知している為に、舌を縦横無尽に動かし私を舐る。
そして唾液を送ってきて、私に飲ませる。
彼の唾液はどんな美酒よりも美味だ。
だから私は貪欲に彼のを飲み続けていく。
「あ………」
タダオは唇を離し、腰の動きを早めた。
フィニッシュが近いようだ。
彼が一回イくのに、私は五、六回はイかされてしまう。
さっきの乳首攻めとキスだけでもイってしまった。
私は堪らずに首をぶんぶんと横に降らす。
快感が強い為に何かしてないと気が変になってしまう。
ふと隣で寝ているシロが視界に入った。
シロは正確に言うと寝てはいない。
うつ伏せになり、顔はこちらを見ている。
だが目に光がない、何故なら先程までタダオの相手をしていたのだ。
後ろから獣の様に犯されていたのだ。
彼女はあまりの快楽の為に茫然自失となっていた。
目から涙を、鼻からは鼻水を流し、口を半開きにして涎が垂れている。
ああ、私も今はこんな顔をしているんだ。
見てタダオ! だらしなく大声を上げ、涙を鼻水を涎を撒き散らしている私を。
でもね、そんなみっともない姿はあなただけにしか見せない。
「いひいっ!!」
私は一際、甲高い嬌声を上げた。
彼の亀頭が私の最も感じやすい所を抉ったからだ。
そこ弱いの! だめえ!!
「ん、ああ! 好きぃ、タダオ大好きぃ!!」
「俺も! タマモが好きだ! 出すぞ! どこがいい?」
「んああ……!! 中! 中にぃ!!」
「イくぞ! イくぞ! おおうっ!!」
「んああああああっ!!」
私は叫び、頭の中が真っ白になった。
彼の精子が私の子宮に大量に打ち出されたのだ。
マグマの様に熱いものが膣を子宮を埋め尽くす。
やっぱりこの感触はクセになる程堪らない。
私の意識はここで途切れた。
私は追われていた。
相手は大勢の人間だ、手にはよく分からないが武器のような物を持っている。
ようやく霊力を溜め、殺生石から蘇ったばかりなのに。
どうして?
どうして?
どうして?
どうして?
頭の中が疑問で一杯になる、私は何か罪を犯したのだろうか?
朧げな前世の記憶を思い出そうとする。
前は玉藻前と呼ばれていた。
だが自ら人間に危害を与えた覚えはない。
殺されそうになり反撃をしただけだ。
それと、それと私は妖孤―
人間からは金毛白面九尾と呼ばれている。
それが罪だというのだろうか?
息が苦しい、お腹が空いた。
さっき足を踏み外し、転んでしまったので足が痛い。
これは下手したら折れているかもしれない。
でもここで逃げるのを止めたら殺されてしまう。
茂みから飛び出し、一気に駆けようとした。
だが―
「!!」
全身に衝撃が走り、動けなくなってしまった。
しまった、結界だ。
結界の外には一組の男女。
青い服の男と巫女。男の手にはお札が握られている。
ああ、私の命はここまでなのか?
いや、まだだ。私は残った意地を総動員し、男女を睨みつけ唸った。
? 何やら男と女が話しこんでいる。
男は少し迷い、何と私は背負っていた鞄に詰め込んだ。
そして彼の家らしい小汚い部屋で治療を受けた。
だけど気に食わない、この偽善ぶった奴らは私の幻術で惑わしてやった。
そこからは彼の上司の屋敷に行った。こいつらは私を殺そうとした。
狐火で焼き殺そうとしたが、何故か赤ん坊を寝かせていた台に張ってある念力発火封じのお札によって出来なかった。
私は疑問に思いながらもお札を剥がした。すると赤ん坊は泣きながら突然、炎を生み出した。
そのせいで右手を火傷、上司の女に気付かれ慌てて巫女に化けるがあっさりとばれた。
女の母親はGSの在り方を説いた「人間と妖怪の仲立ちが出来る様に」と。
私はあの男女が気になり、風邪をひいていたので薬草を残し去った。
人間って何だ? そう思いながら。
後日食い逃げをしていた所を男と二人の女に見つかった。例の人間達だ。
そして人狼のシロと出合ったのもこの時が初めてだ。
シロの第一印象はいけすかなった。
色々あり、私は人間社会の常識を学ぶ為に女―美神令子のもとでシロと暮らし始める事になった。
シロとは何やかんやあったが、相棒としてお互いを認めるまでになった。
しかし―
問題はこの事務所ただ一人の男、横島忠夫だ。
私を助けてくれた男の方だ。
この男は本当に分からない。
行動原理は謎の一言。
美人を見れば飛び掛り、カウンターを食らってダウン。
仕事でヘマして美神さんに折檻されても、すぐに回復。
海では鎖でぐるぐる巻きにされた鞄に閉じ込められ、なおかつ海に沈められたが奇跡の大脱出。
何で生きているの? あんた人間? と思った(後日純粋な人間ではなくなってしまったが)。
はっきり言ってアホだ。
この時点で私はヨコシマに幻滅していた。
そんなヨコシマに何故だが美神さん、おキヌちゃん、シロは好意を抱いている。
分からない。
ヨコシマの友人達は彼を頼りにしている。
分からない。
そこで私は考えた。
事務所に来たヨコシマを知る為に観察する事にしたのだ。
それこそ一挙手一投足、見逃さずに。
そしたら私は勘違いをしていた事に気付いた。
彼は本当はアホではない。
美人に飛び掛るのも、その場の緊張を解す為だったし、仕事のヘマも仲間を庇う為にやっていた。
まあこれらは結果論かもしれないけど。
だが私は興味を持ってしまったヨコシマに。
いつしか観察はどうでもよくなった。
どんなに気分が沈んでいても彼を見れば、何故だが楽しくなった。
悲しい夢を見ても、彼が来れば気にならなかった。
それほどヨコシマは場を明るくする、ムードメーカーだ。
そして運命の日。
「ちょっと、どういう事よ!!」
美神さんは素っ頓狂な声を上げ、マボガニーの机を乱暴に叩いた。
「言った通りだ」
対して冷静に言ったのはGS協会の偉い役人。
年は五〇過ぎでスーツを着て顔、容姿、霊力(GSとしては)、全てが平均的な男。
事の始まりはアシュタロスが起こした事件に関係があるらしい。
私は詳しくは知らないが、そのせいで多くの人が亡くなったそうだ、妖魔の手によって。
そのせいで民衆は妖魔に対して過敏となり、芽は小さい内に摘み取ろうって事になった。
私とシロがそのターゲットにされた訳だ。
この美神除霊事務所には美神さん、おキヌちゃん、シロ、ヨコシマ、私と役人の計六人居る。
美神さんは激昂し、おキヌちゃんは悲しそうに唇を噛み、ヨコシマは今にでも爆発しそうなシロを抑えている。
「だから何言っているのよ! シロとタマモを処分!? 寝言は寝てから言いなさい!!」
「そうですよ。二人が何をしたっていうんですか!!」
美神さんとおキヌちゃんの発言に役人は大げさに頭を振った。
これはあからさまにこちらを挑発している。
「何かが起こってからは遅いんです。聞いてみれば美神さん、あなたはこちらの金毛白面九尾を祓ったって嘘の報告をしましたね」
私を指差し役人が言う。
いちいち癇に障る動作だ。
「それがどうしたのよ!! タマモは何も悪くないわ! 例え前世で何かしても今とは何にも関係ない。もしあんたの前世が殺人でもしていたら今のあんたがその罪を償う気? ナンセンスにも程があるわよ!」
「分かってないなあ、美神さん。私が言っているのは超一流とまで言われているあなたが嘘を付いたという事だ。これは免許剥奪もんですよ」
にやりと笑う役人。美神さんは拳をぷるぷると振るわせる。
ここで私はこいつが大嫌いになった。
「それにですよ。そこの人狼、聞いてみればあのフェンリル狼の末裔だそうだ。フェンリル狼、あの北欧神話で有名ではないですか。そして美神さん、あなたまだ隠し事をしていましたね? 人狼の一人が未完成ながらフェンリルに変じて、大暴れしたそうですね」
「おのれっ、拙者の一族を侮辱する気でござるか!!」
「落ち着け、シロ」
「でも先生」
「いいから、な!」
「はい……」
ヨコシマはいつになく真面目な顔でシロを説得した。
もしシロがここで暴れたら、役人に付け入る隙を与えてしまう。
「くっ! 話にならない! どれこれも本人達に関係ない事だわ! さっさと帰りなさい!」
にべもなく言い放つ美神さん。
だが役人は動じない。
「いいのですか。このままでは免許剥奪に事務所閉鎖ですよ。こんな化物よりも大切だと言うんですか?」
やっぱり人間は……。
「くされ……」
バキィッ!!
美神さんが飛び出す前に、役人は殴り飛ばされた。
「な、何をするんだ!?」
地面に倒れたまま、役人は叫んだ。
息が抜けた喋り方、こりゃあ歯が何本か折れたわ。
「何をする、だと……。てめぇ、自分が何言ったのか分かってんのか!! シロとタマモを侮辱しておいて何様のつもりだ!!」
そこには凄まじい殺気を放ったヨコシマが居た。
あまりの豹変振りに、最初は誰かと思ってしまった程だ。
そして私を含め、事務所の女性全員はついていけず固まっている。
「わ、私は人類のためを思って……」
「人類だと!? てめぇがそれを口にするには百億年早えぇ!」
その時のヨコシマの表情は凄かった。
悲しみ、苦しみなど全ての感情が混ざった様な複雑な表情。
「俺の名を知っているな?」
「よ、横島忠夫…」
「ようし、お偉いさんのあんたは俺が何て呼ばれているか知っているんだろ?」
「文珠使いの横島。……アシュタロス事件の影の英雄」
「そうだ。その英雄・横島がシロとタマモの傍にいるんだ。だったら何が起きても怖くないだろ?」
「ひいっ!?」
さらに膨れ上がった殺気に押され、役人は這いずる様に出て行った。
「横島クン……」
「横島さん……」
役人が事務所から出て行った後に美神さんとおキヌちゃんは不安げに彼を見つめた。
昔、何かあったのだろうか?
「美神さん、おキヌちゃん、俺は大丈夫っす。シロ、タマモ、俺があんな奴ら追っ払うから、安心してくれないか?」
「せ、せんせい〜〜〜〜!!」
シロは泣きながらヨコシマに抱きつき、顔を舐め始めた。
「シ、シロ、こんな所でするんじゃねー」
「だって、だって〜〜」
シロはそう言われても、舐めるのを止めなかった。
「ヨ、ヨコシマ……」
私はおずおずと話しかけた。
何でこんなに緊張しているんだろ?
「どうした?」
「ありがと」
これが精一杯だった。
「いいって事よ」
ヨコシマは笑顔でそう言った。
あ、そういえば面と向かって礼を言ったのは初めてだ。
その後の美神さんと美知恵さんの行動力は凄かった。
GS協会並びにオカルトGメンで妖魔排除派をスキャンダル等で、失脚させ清廉潔白で安心できる人に後釜を任せた。
唐巣神父もその一人だ。
美神さん曰く「この世はお金があれば、大抵の事は出来るわ」と、改めて敵に回したくないと心底思った。
時は流れ、ヨコシマが高校を卒業した。
周りからは奇跡とか騒がれた。まあ私の知る限り成績と出席日数はホントにギリギリだったからね。
だが不幸は突然襲い掛かるものだ。
ヨコシマが『卒業おめでとうパーティ』で倒れた。
みんな慌てふためいて、病院へヨコシマを連れて行ったが原因は分からず。
美神さんはすぐさまヨコシマを妙神山に運び、ヒャクメとか言う神に診て貰った。
結果はヨコシマの魂が魔族化してしまった……らしい、私とシロは訳が分からなかった人間が何の術も行わず、魔族になったりする訳がなないからだ。
後日、ヨコシマは体調が戻り妙神山から下山した。
が―
彼は憔悴しており、情緒不安定になってしまった。いつもの明るい彼ではなくなってしまった。
それを見た私とシロは何とかしたいと思い、積極的にヨコシマを誘った。
もちろん美神さんやおキヌちゃん、彼の友人達もだ。
相手にもされなかった。
でも私とシロは諦めなかった。
何度も何度も何度も何度もヨコシマの元を訪れ、何度も何度も何度も何度も追い返された。
だけど私とシロは彼の元へ通い続けた。
罵詈雑言を浴びせられようともだ。
私は命を救って貰った。シロは父の死から立ち直る切っ掛けを与えてくれたから。
いや、それは建前だ。本当は誰よりもヨコシマを好きだから……。
一月通い続け、ヨコシマは立ち直ってくれた。
あのへらへらした笑顔を見せてくれるようになった。
ある日、彼はアシュタロス事件の全容を語ってくれた。
私とシロは大雑把な概要しか聞かされていなかったので、その真実に驚愕した。
彼は敵の幹部であるルシオラととある事で恋仲になった。
しかし現実は残酷だ。
ルシオラはヨコシマを助ける為に命―いや、魂を失い、生き返らせる手段も自分で潰した。
彼は彼女より世界を選んだ。
だけど一つだけ、希望があった。
ヨコシマの子供としてなら転生する可能性がある。
ヨコシマの中にはルシオラが残した大量の霊波片―魔族因子があるからだそうだ。
だがヨコシマの魂と魔族因子が混ざり合い、その可能性は奇跡でも起きないと無理になってしまった。
私とシロは泣いた。みっともなく泣いた。
私は疑問を投げかけた。
「何でそんな事が起きても、へらへらと笑ってられるの!?」
彼はこう答えた。
「俺が笑ってられるのは仲間が友達がいるからさ。……それにこれは最近、気付いたんだが……俺さ。タマモとシロの事……」
「拙者とタマモがどうしたのでござるか?」
途中で声が小さくなり、聞こえなくなったのでシロが聞くと、
「その、なんだ……好きだ」
「「ええーーーーーーーっ!?」」
私とシロの声が重なった。
「すまん、やっぱり変だよな。シロとタマモ二人同時なんて」
そう言って踵を返そうとするが、私は彼の腕を掴んで止める。
ヨコシマは驚いたのか、こっちを振り返った。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 誰が断るって言ったの? 急に告白されてびっくりしただけよ! ね、シロ」
「そ、そうでござる。先生はいつも拙者とタマモを子供扱いしていたのでびっくりしたのでござる」
「ああ、まあその……ちょっと前までは子供と思っていた。だけどさ、俺を励ましてくれたじゃないか、それが何ていうか俺の方がよっぽど子供だと思ったんだ。本当のガキは俺だって。俺が勝手に絶望して自棄になってただろ? お前達にきつく当たったりしてさ。シロとタマモはそれでも俺を思ってくれてたのに……。そう自覚した時に気付いたんだ、この二人が好きだって」
何度も考えながら、ヨコシマは私達に再度告白してくれた。
「シロ! いいわね!」
「承知!」
私はシロにアイコンタクトを送った。
シロはすぐに理解し、行動に移した。
私はヨコシマの胴体にしがみ付いた。
シロも彼の腕を取り、ぴったりとくっついた。
「え? え? 何だ!?」
ヨコシマは急な事にまだ理解できていなかった。
「先生! 犬塚シロはこれからも一生涯、お傍に居るでござる」
「ヨコシマ―いえ、タダオ! 私に告白したんだから覚悟は出来ているわね? 私も一生付いていくわ」
「本当か?」
掠れた声でタダオは言った。
まだ何が起きたのか、信じきれてないみたいだ。
「だーかーらー、私とシロはタダオと恋人ってわけ」
「タマモの言う通りでござる。もう離さないでござるよ」
「いいのか?」
「もちろんでござる!」
「ええ! 私とシロは妖怪なんだから、人間が作ったモラルや法律なんて関係ないわ」
「ありがとう」
タダオは私達に優しくキスをしてくれた。
後はタダオのアパートの部屋へ行き、私とシロは積極的に誘惑し彼と結ばれたわ。
こういった事は早い方がいいし。
あ、ちなみに最初はシロに譲ったわ。出会いの順番で決めたわ。
「ん、ん〜〜〜〜」
私は上体を起こし、腕を上げ伸びをした。
すでに日は出て、カーテンの隙間からベッドを照らし出している。
時間は……まだ七時か。また失神して朝まで眠ったみたい。
でも早く起きたわね。今日は土曜なのに。
あ、そうか今日はバイトの日だったわね。
「いい夢だったけど、やたらと長かっかたわ」
何気なく一人ごちる。
タダオとの馴れ初めの夢を見たのは久し振りだ。
先週の九絵さんの件のせいかもしれない。
何か彼女と旦那さんと私とタダオの馴れ初めが似ていたから。
ここではたと気付く。
この広いベッド(三人で寝ているから)の上には私しか居ない。
「お、タマモも起きたでござるか」
ドアの所にいつの間にかシロが立っていた。
私はシロのその姿に少し呆れた。
「シロ、いくら私達しか居ないからって、部屋ん中歩く時はバスタオルぐらい巻きなさい」
これで分かると思うが、シロは全裸だった。
「いいではござらんか。拙者達は家族でござるよ」
尻尾をぱたつかせ胸を張り、シロはそう言った。
プルンと胸が弾む。
ぐっ、私より大きいわ。
でも私だって平均より大きいから大丈夫よ!
「で、タダオはどこ行ったの?」
気にしてもしょうがないから、私は話を変えた。
「先生なら西条どのに呼ばれて助っ人に行ったでござる。帰りは早ければ昼過ぎと言っておられた」
「え? あんたには言ってたの?」
「拙者は先生が出掛ける所で目が覚めたので、事情を聞けたのでござるよ。タマモは寝かせとけって言ってたもので……」
「別にいいわよ。そんな事、いちいち気にしててもね。それにしてもオカGもフリーのタダオに頼ってばかりとは深刻な人手不足ね」
「それは先生の実力がとび抜けているからでござる。……と言いたいでござるが、普通はGS免許を取ったら事務所を開くか、もしくは他の所へ入社するでござるからな」
珍しくう〜んと唸るシロ。そしてシロの言った通りだ。
オカGに入ろうなんて正義感が強くないとやっていられないだろう。
他の公務員より給料はいいが、事務所と比べると雲泥の差だ。
だったら同じ命を懸けるなら、事務所を開いて一か八かの賭けに出たりもする。
タダオや私とシロは西条からオカGに入らないか?と勧誘されているが、まだ結論は出していない。
「ま、いいわ。シロは何してたの?」
「サンポに行く前にお風呂に入ろうと沸かしていたのでござる。タマモも一緒に入るでござるか?」
「そうね。乾いっちゃってパリパリするからお風呂にするわ」
私は体にシーツを巻いて立ち上がった。
すえた匂いが体中からする。こういったのは嫌いではないけど、これからバイトもあるしね。
ついでに色んな汁や液で汚れたカバーも洗おう。
「そうだ! タマモもサンポどうでござるか?」
「いいけど、東京都内だけにしなさいよ。今日はバイトがあるんだから」
「そうでござったな。口惜しいがしょうがないでござる」
全く朝から元気ね。夜あんなにタダオの相手をしたのに。
それにしても釘を刺してよかった。シロの本気散歩は同じ犬神族の私でもきつい。
散歩というより全力疾走だもんね。
タダオは高校時代からシロの散歩に付き合っていたけど、これは尊敬に値する。
いくら自転車に乗り、引っ張ってもらっていたとはいえねえ。
「さ、早く入るでござる」
「ちょ、ちょっと、そう急がなくてもいいと思うけど」
私の手を取ったシロはお風呂場に向かった。
お風呂の後は一時間ほど散歩に出かけ、シャワーで汗を流す。
それから朝食を取り、私達はバイト先へ出かけた。
「いらっしゃいませー!」
「いらっしゃいませーでござる」
お客さんが入ってきたので私達は元気よく挨拶をした。
「ご注文はお決まりですか?」
「んっと、コーヒーとサンドイッチを貰おうかな」
「畏まりました」
若い男性の前で完璧に外向けの声を出して、接客に励んだ。
「コーヒーとサンドイッチ一つー」
カウンターの奥にある調理場に声をかける。
「あいよ」
「任せとき」
二人の美女が相槌を打った。
ぶっきらぼうに言ったのは黒髪の少々キツイ感じを受けるが優しい、ここのオーナーのヤツメさん。
方言で答えたのは大きなリボン(手ぬぐい?)で頭上半分を隠したシジミさん。
もう分かるかもしれないが、私とシロがバイトしているのは喫茶・蜘蛛之巣なの。
まあはっきり言うと、この二人は人間ではない。
ヤツメさんは蜘蛛の妖怪で、シジミさんは蝶の化身だ。
そのお陰で私やシロは気兼ねなく働く事は出来る。
「はい、お待たせしました。コーヒーとサンドイッチです」
「ありがとう。どうかな? ここが終わったら俺とどこか行かない?」
はあ〜と私は心の中で溜息を吐いた。
ここにバイトに来れば必ずナンパに合うし、男共の視線が厭らしい。
何たってここは喫茶店なのにファミレスっぽい制服を着ているからだ。
オレンジ色等の暖色系を使い、胸はやたらと強調しているしスカートだってミニ。
しかも白いニーソックスに赤いパンプスときている。
コスプレのお店と間違われても言い逃れできないわ。
「ごめんなさい。私にはもう彼氏がいるから」
「……そう」
残念がる男性。
もう私はタダオの女だしね。
でも未だにこの格好には抵抗があるわ。
発案者のヤツメさんとシジミさんには悪いけどね。
本当なら先週で辞めるつもりだった。バイトの目的はタダオのプレゼント代を稼ぐ為だったし。
でも泣いて頼まれたから今でも続けている。
シジミさんの「頼んます。ここ火の車なんやー」と言われたらねえ。
「あ、シロちゃん。ごみ出してくれへん?」
「承知でござる」
シロはシジミさんに言われ、外へごみ出しに出て行った。
自動ドアが開き、スーツ姿の一人の男性が入ってきた。
年の頃は二〇代半ばで、中々の好青年だ。
「いらっ……」
「いらっしゃいませ!!」
私を遮り、ヤツメさんが男性客を出迎え、カウンターの所へ案内した。
は、速い! どうやってここまで来たのかいつも思う。
そしてヤツメさんの態度が急変したのは、その男性客が特別だからだ。
一言で表すなら『恋』。
ヤツメさんは田島八郎太に恋をしている。
「ヤツメさん、いつものを」
「はい。愛情たっぷり入れてコーヒーを淹れますね」
「はは、頼みます」
ヤツメさんは露骨な態度で八郎太さんを接客する。
だけどどうも彼の方は気付いていない、タダオ並みに鈍感みたいだ。
また自動ドアが開き、一人の少女がどかどかと入ってきた。
「あれ? 蜜子じゃない」
「タマモ? 今日バイトの日だったんだね」
「うん」
この娘は田島蜜子、私と同じ1―Dのクラスメイトだ。
艶やかな黒髪を腰まで伸ばし、典型的な日本美女―まだ美少女だったわね。
つまり可愛い女の子ってわけ、今日はスカートにブラウスといったラフな格好をしている。
「お兄ちゃん、ここに来ている?」
「カウンターの席よ」
やっぱりそれが目的な訳ね。
よく兄の居場所が分かるもんだ。
私を横切り、彼女は兄の所へ行った。
「お兄ちゃん」
「あ? どうしたんだ蜜子?」
八郎太さんが振り返った、蜜子が来た事に少し驚いているみたいだ。
ヤツメさんは……やっば、怒り心頭だわ。
「もう、今日は一緒にショッピングに連れて行ってくれるって約束したでしょ」
「ああ!?」
「忘れるなんて酷い! 早く行こうよ」
蜜子は八郎太さんの腕を取り、無理矢理立たせる。
だが―
「ちょっと待ちなさいよ。今、八郎太さんは私が淹れたコーヒーを楽しんでいるのよ」
「何を言っているの!? お兄ちゃんは私と行くの!!」
「だからそれは後でも行けるでしょうが!!」
「ダメ!! 今しかチャンスはないの!! 私のセクシー下着でお兄ちゃんを!!」
「ああん!! ケツの青いコムスメの色気で八郎太さんが振り向くわけないでしょうか!!」
「ふん!! おばさんよりマシよ」
「あんですってーーー!!」
「なによーーーー!!」
「ふ、二人とも止めてくれーー!!」
ヤツメさんと蜜子はパチキを噛まし合いながら、言い争っていた。
蜜子の言動で分かると思うけど彼女は『超』ブラコンだ。
何よりも誰よりも兄の八郎太さんが大好き。
「すいません……。お会計を」
「あ、はい」
私は急いでレジに立った。
会計を済ませる為にお客さんの大半は後ろに並んでいる。
普通はケンカしている所には居たくないのは分かるけどね。
はあ、シジミさんが泣いているわ。
この場を楽しんでいるのは常連のお客さんだけだったりする。
でもそれは極少数だ。
「タマモちゃん、いい?」
うんざりした感じでシジミさんは私に話しかけてきた。
「何ですか?」
あれから一〇分経っているがまだ二人の口喧嘩は収まらない。
八郎太さんは二人の霊波のスパークを食らって倒れてしまったので手近なソファに寝かせてある。
本当に八郎太さんが大事なのか少し疑ってしまった。
「シロちゃんがあまりに遅いから、ちょっと見てきてくれへん?」
「いいですけど、お店は?」
「ええよ。今は一組しかおらへんし」
そう言えば窓際の席で常連の老夫婦が居るだけだ。
「分かりました」
「もうすぐあれも終わるやろから、すぐ戻ってきて」
「はい」
私は奥の扉から出て行った。
「シロったらどこへ行ったのかしら。……あれ?」
ビルとビルの間の狭い路地を進むと、空間の歪みが見えた。
「結界?」
私はすぐにそれに思い当たり、髪留めの文珠で『霊』『視』を発動させた。
何か危ない連中の仕業かもしれないから。
よく見てみると―
「あの二人は……」
私は頭を抱えた。
何故ならシロとタダオがセックスをしていたからだ。
仕方なく『潜』『入』で結界内に忍び込む。
「先生、もっと〜〜!」
「よし、こうか!!」
「くぅ〜ん! いいでござる!」
すると肉と肉がぶつかる音と二人の喘ぎ声が聞こえた。
二人はまだ私に気付いてない。
私はついでに幻術で周りと同化しているからだ。
シロはビルの壁に手を付き、後ろからタダオの凶悪な肉棒で攻められている。
服装は乱れ、シロは大きな胸をさらしタダオに形が変わるほど揉まれているし、タダオはジーンズを下ろし下半身は素っ裸だ。
何となく勢いで結界内に入ったけどどうしよう?
本当は私も入れて欲しいが、まだバイトの時間だし……。
「ふっ! ふっ! ふっ!」
「センセイ! センセイ! センセイ!」
タダオの呼吸の感覚が短くなり、シロは狂った様に「センセイ」を連呼している。
もうすぐ終わりみたい。
だったら……、
「わっ!!」
「うおっ!?」
「きゃうんん!?」
私が大声を出すと、二人は飛び跳ねるみたいに体をビクッとさせた。
そしてタダオの腰の辺りが痙攣した、びっくりして出しちゃったようだ。
シロは一際大きな嬌声を上げ、壁から手を離した。
タダオは急いでシロの肩を抱き寄せ、倒れるのを防いだ。
「あっぶねー」
「そりゃあ、危ないわよ」
「ってタマモ!? 今のはタマモが!?」
「そうよ。全く、こんな所でするなんて他の人にばれたらどうする気よ?」
「文珠の結界は破られる心配は少ないと思ったんだが……」
「でも破れたわよ。まあこれは同じ文珠だからかもしれないけど。それでオカGの仕事はどうしたの?」
「それはもう終わったよ。そんでシロとタマモの働いている姿を見たくてここに来たんだ」
「それだったら、何でシロを襲ってんのよ?」
何となく理由は分かるが、一応聞いてみた。
「その、あれだ。ついシロの制服姿にムラムラっと……」
やっぱり、どうせごみ出しに行ったシロに偶然会い、欲情したもんだから路地裏でこんな事をした訳ね。
「……そう。その内、制服で迫ろうと思っていたのに」
「すまん、タマモ」
タダオは本当にすまなさそうに頭を下げた。
でもシロと繋がったままだから、間抜けと言わざるを得ない。
「ま、いいわ。シロを起こさないと」
タダオは肉棒を抜き、シロを支える。
私は失神したシロの頬を軽く叩き、覚醒を促す。
「シロ! シロ! 起きなさい」
数度叩くとシロは目を覚ました。
「……えっと拙者は? ……タマモ!?」
私の姿を確認するとシロは目を見開いた。
たらりと冷や汗をかいているのが、よく分かる。
「シ〜ロ〜、私を外して楽しんでいたみたいね」
「そ、それは……。勘弁して欲しいでござる〜」
シロは言い訳が思いつかなかったのか、土下座をして許しを乞う。
「お仕置きは後にするわ。シジミさんが待っているから早く行くわよ」
私は文珠で『整』えると念じ、発動させた。
シロは青い輝きに包まれ、次の瞬間には綺麗に整った制服姿に戻った。
ホント、文珠は便利ね。愛液や精子の後もないし、すえた匂いも消えている。
「さ、行くわよ」
「承知でござる」
「頑張れよ〜」
タダオはジーンズを履き、肉棒をしまいながら言った。
時たま思うけど、何で好きになったのかしら?
世の中は不思議だわ。
「ん……ちゅむ……はむ……むう」
「タマモー!! これはあんまりでござる!」
「ふう……ぷはっ!」
私はタダオの肉棒から口を離し、シロの方を振り向いた。
「言ったでしょ。お仕置きは後でって」
バイトを終え、夕食を取った後はいつもの夜の時間を始めた。
寝室のベッドでタダオは腰掛け、私は跪き彼の股間に顔を埋めていたのだ。
私とタダオは裸になっている。
「しっかし、いいのかあれ?」
「いいのよ。それに縛ったのはタダオだし」
「縛るのは楽しかったぞ」
今、タダオが言った通り、裸のシロは縛られて床に寝転がされている。もちろん呪縛ロープで。
高手小手+逆海老縛り。
後ろ手で縛り、胸を上下に挟むように縛った後、余ったロープで体が反る様に足首を縛る。
シロの様に体が頑丈かつ柔らかくないと無理な縛り方だ。
しかしタダオはいつ、こういった事を練習しているのかしら?
「頼むー。後生でござるから外してくだされー!」
「だーめ。シロは今日一回して貰ったからね」
「うー!」
シロの困った顔を見ているのは楽しいかも。
私は再びタダオの肉棒を口に含む。
丹念に舌で舐め取り、愛撫する。
「ちゅぷ……む……んん……」
「タマモ、いいぞ」
タダオは私の頭を撫で、指で髪を弄る。
こうされるととても安心する。
私は更に激しく吸い込み、舌を絡める。
「出すぞ!!」
ビクビクと肉棒が動いたかと思うと、大量の精子が私の口内を白く汚す。
凄い! この匂いだけでイっちゃう!
「んむ……」
飲み干したい所を我慢して、口内に留める。
そしてシロに歩み寄り、顎を掴んで無理矢理キスをした。
最初は抵抗していたが、すぐに諦め唇を開いた。
私はシロの口内にタダオの精子を送り込むと、シロは躊躇せず全部飲み込んだ。
「センセイ〜、タマモ〜。拙者にお慈悲を〜」
するとシロはあっという間に陥落した。
ホントにタダオの精子に弱いんだから。
「大丈夫よ、シロ。私が終わったらあなたの番だから」
そう言って私はタダオの元に戻った。
「タダオは座ったままでいいわ」
「ああ」
私は後ろを向き、椅子に座る様な動作をする。
ちゃんとタダオの肉棒がアソコに入る様にだ。
「ふわっ、おっきい!」
彼の肉棒は私の中を圧迫する。
私はタダオの肉棒を支点に円を描く様に腰を回した。
「うあっ! いい! いいよ〜!」
ああ、私の中で暴れてる〜。
「ひいっ!?」
タダオは突然、突き上げてきたもので悲鳴を上げてしまった。
ベッドの反動を使い、巧みに私を突き上げてくる。
「そ…んな、ああ……いいっ!」
さらに両手で私の胸を弄って来た。
「ダメェ……もう!」
「いいぞ。イっていいぞ。俺も出す」
子宮口への一突きが止めとなった。
「あああ〜〜〜〜!!??」
私がイったと同時にタダオの精液が私の中を真っ白に染め上げた。
その後、私は三回もして貰った。
そのせいでシロがむくれたが、タダオに慰めてもらったらすぐに機嫌を直した。
でも凄かったわ。シロは一突きされる度に体を痙攣させ絶頂した。
焦らされると感じやすくなるって本当みたい。
今度は私もそうしようかしら。
あとがき
今回も長くなりました。
タマモの場合は横島とくっつくにはやはりエピソードが必要って事で長くなってしまいましたが、タマモの夢でやってみました。
どうでしょうか? こういったのを考える楽しみがあるのもタマモの魅力の一つかもしれません。
蜘蛛巣姫のキャラはゲスト扱いなので、今後いつ出番があるのかは決めてません(爆)
八郎太と蜜姫は兄妹にしてしまいました。この方がやりやすかったので。
しかし現代でも八郎太って名前はあれかもしれません。
では次回はシロ視点でお送りします。