ふよんふよん、と。
浮かんでいるのは鬼道の使っていた、妙神山でこさえられていた──しかもキーやんの神気だかも込められていたらしい、神器なハリセン。
「・・お?」
それは今、光を放ちながら、ハニワ兵達を護っていた。
・・何故って、爆発は図った様に横島と鬼道の所へは届かなかったから。
因みに先程の小竜姫とパピリオの攻撃の時も、このハリセンがこっそりとその力を軽減してたりする。
そして、その場に響くは軽い声。
「・・おう、横っち♪」
「銀ちゃん!?」
・・やはりと言うか何と言うか、突っ込んできたのは乗り物(悪霊の塊)に乗った銀一で。
その乗り物は先程の突入で消滅してしまったが(酷)
・・悪霊達にしてみれば特攻である。
──と。
銀一は、横島達に瞳を向けて。
「・・そっか。選んだんやな、横っち」
穏やかに、笑んだ。
「・・銀ちゃん・・」
ふと、真剣な顔をして、横島を射抜く様に見詰め。
「・・後悔せんな?」
「・・しない」
静かに、言葉を交わす。
そんな短いやり取りの後。
小さく息を吐いて、複雑そうに微笑する。
「鬼道さん、横っちにもハリセン・・神器にも選ばれた様で。羨ましいですわ」
言う通り、ハリセンはふよふよと、鬼道の手の中に収まった。
「・・そんじゃ、一度逃げて下さい。まだ来ると思いますんで。・・まだ解っとらんアホ共が」
「・・・・・・そんならボクが説明を」
「ボコられますよ」
「多少は仕方あらへんよ」
「横っちが泣くから許容出来ません」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「えっ?えっ?・・ちょっ、ちょっと二人共?」
睨み合う二人に、オロオロする横島。
暫くその状態が続き──
「・・強情やなぁ」
溜め息と共に、折れたのは鬼道。
「俺は横っち中心で動いてますから」
にっ、と笑みを見せて銀一。
「くっ・・な、何が・・」
「一体・・」
「っと、起き始めましたな。・・横っち」
「え?」
不意討ち気味に、横島へと。
ちゅ、と、その頬に唇を落とし。
「愛してるで♪」
にぱっ、と笑って言った。
それは、明るく、軽く。
・・内心など見せぬ様に。
「・・ぎ、銀ちゃん!?」
一瞬呆けてから、慌てて頬を抑えて声を上げる横島。
「ははっ、親愛の情や。・・こんくらいはええですよね?鬼道さん」
「・・すまんな」
「・・ま、仕方ありませんわ」
苦笑し合い。
「そんならハニ!!頼むでぇっ!!」
『ぽぽぽーーーーーっっ!!!』
「えっ、あっ!?ちょっ・・銀ちゃっ・・!?」
「一息ついたら来ぃや!!」
「解っとりますよ!!いつまでもこないな連中には付き合ってられんしなっ!!」
ハニワ兵達と共に、横島と鬼道、夜叉丸は再び宇宙の卵の中に。
そして──
「お退きなさいっ!!」
「民間人っ!!退けっ!!」
「邪魔をする様なら・・」
「容赦はしまちぇんよっ!!」
「うっさいわ。負け犬共」
・・戦いが始まった(爆)
「横っちの幸せの為・・オドレ等の心は俺が折らせてもらう」
・・魔王の笑みと共に。
一方。
「嫌な予感がするわっ!!なんかどーしよーもないくらいの嫌な予感がぁぁっ!!」
「ヨコシマーーーッ!!無事でいてぇーーーっ!!!」
通路をひた走るのは、美神とルシオラ。
流石に横島奪い合いの元祖、回復も他の連中より早かったらしい。
取り敢えず他の連中は置き去りに、先程爆発のあった場所へと疾走中である。
「ああもうっ!!空間移動とかの能力何で持ってないのよアンタ!?ハニワ達は持ってるらしいじゃない!!」
「仕方無いでしょ!?ハニワ兵達は自爆機能の代わりと、ヨコシマが結構大事にしてるからアシュ様が凝って・・って土偶羅様が!!・・ああーん!!ヨコシマとずっと一緒に過ごしてたハニワ兵達が憎いぃ〜!!」
「・・それを言うなら、鬼道のヤツと横島クンの幼馴染み野郎がっ!!・・って横島クン騙されてる!!あの男はアシュタロス共々私達を・・あああっ!!カオスはそんな気無かった筈とか言ってたけど解らないわっ!!てゆーか真の敵はアイツかぁーーー!!!」
「いやぁぁぁっっ!!ヨコシマが危なすぎーーーっっ!!!」
何だか物凄い叫びを上げつつ。
「「魔王めーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!」」
・・息ピッタリに、二人の恋する乙女はひた走る。
ある意味で正解で、ある意味では間違っている叫びを上げながら。
「・・何故です!!」
「あん?何がや?」
横島の友人という事で手加減せざるをえなく、ことごとくハリセンで弾かれ。
しかも気付いていなかったとはいえ、塔の壁を破壊して突入してきた時に巻き込まれた事を横島にチクるとか言われ(脅され)て。
その相手──銀一は容赦無く攻撃を仕掛けてくる。
勿論、その数々は相手を死に至らしめる為のものではなく。
・・ぶっちゃけ、言葉──罵倒やら何やら──で心を折るまでの時間稼ぎだったりするのだが。
その言葉は的確で、無論容赦無く。
このままではマズイと思った小竜姫が、声を上げる。
「貴方だって・・横島さんが好きなのでしょうっ!!」
「ああ、好きやで?」
アッサリと。
微塵も揺らぐ事無く、銀一は答える。
この時、ヒャクメと天龍童子は銀一側。
ジークとワルキューレは小竜姫側だが、決め手は無く。
パピリオは銀一からの辛辣な言葉を受けて興奮しすぎた為か、無差別攻撃。
鬼門達は未だ気絶中(爆)
そんな中での一角。
空気が変わった事で、必然的に。パピリオさえそれを感じて二人に注目する。
「な・・ならば何故っ・・!!横島さんをあの者にっ!!」
「横っちがそう望んだんやろ?」
言葉に詰まる。
「で・・ですがっ!!」
「俺は、横っちに幸せでいてほしいし、笑っとってほしい。俺の勝手な想いで悩ませる気も困らせる気も無い。・・俺は、横っちの傍におったからな。・・折角横っちが、自分の想い出せたんや。・・仕方無いわ」
どこか切ない、微苦笑。
それが深くて、悲しくて。
だから黙っていられずに。
「・・貴方はそれで・・いいと言うのですかっ!?」
「・・そんじゃアンタはどーすんのや?今更。・・鬼道さん殺して、横っち自分のモノにするか?それとも・・神魔の立場利用して、あーだこーだ理由つけて、あの二人引き離すとでも?」
「そ、そんな事はっ・・」
思い出す。
どこまでも真摯に、揺らぐ事の無かった鬼道を。
泣き笑いの顔が、とても綺麗だった横島を。
だから言葉は続かない。
「・・想いを告げるだけならいいわ。けど、横っち傷つけるな。泣かすな。そうしたらオドレ等、本気で俺の敵や。見返り求めて横っち想う位なら、最初から持つな。捨てろ、ボケ」
無茶を言う。
人を、想って。その想いに応えてもらいたいと思うのは当然なのだから。
しかし、銀一は続ける。
「見返り求めた時点で安っぽくなるわ。そんな"想い"は」
応えてもらう為に努力するならともかく。
望むだけや、願うだけでも、相手を傷つけるものではないのなら、それはそれ。己の動かなかった結果に不平不満を言わないのであれば。
・・ただ、どうにも連中を見ていると・・。
「・・なら・・ならっ!!通して下さいっ!!私はっ・・!!」
「またいきなり攻撃ぶちかましそーやから却下」
「なっ・・」
必死に訴える小竜姫に、にべもなく言い放ち。
「ここでのやり取り、フツーに聞いとったからな。ハニワ兵達がいたやろ?あいつら、皆繋がっててなぁ・・。どこにいてもハニワ同士なら連絡出来るし、ここにいたハニワの耳に聞こえるもん、他の場所にいるハニワから、そのまんまの音声で聞く事も可能や」
つまりは、盗聴機の役割も果たすという事で。
「・・横っちいるのにぶちかましとったなぁ、アンタ等・・」
一際、声が低くなる。
「・・あっ・・あれはっ・・」
「攻撃する必要があったんか?あそこで、フツーに声遮って、そのまんま告白してまえば少しは揺らいだかもしれんのに。まぁ気持ちは解るけどなぁ・・。"力"で邪魔されて、逃げん奴がどこにおんねん」
呆れた様に銀一。
最早小竜姫は声も出ない。
・・まぁ、卵の中に逃がしたのは銀一なのだが。
「・・お前、うるさいでちゅ。偉そうに・・!!」
「・・おう、何でも力ずくのお子様やな。子供は大抵の我侭は許されるけどな。・・これには適応されんよ」
「うるさいでちゅ!!お前こそ何様でちゅか!!」
「別に?何様でもあらへんけど?・・俺は単に、横っちの幸せ最優先のただの男やからな。・・ま、これも俺の我侭とエゴやな。あーすまんすまん。オドレ等の事言えんわー」
けらけらと、軽く笑う銀一に、パピリオは歯軋りする。
「馬鹿にするんじゃないでちゅ!!」
「しとらんけど?」
頭に血が上っているせいか、単純に、一直線に向かってくる霊波攻撃をハリセンで横に滑らせる様にして捌く。
「このっ・・!!ヨコシマの友達だからって、容赦しまちぇんからねっ!!」
「それはもう聞いた。・・で?何してくれるんや?」
「・・ッ!!このっ・・!!涅槃に送ってやるでちゅ!!」
そのパピリオの言葉に、おお、難しい言葉知っとるなぁ、などと軽く感心つつ。
「やってみいや!!幼い想い押し付けるしか知らんガキがっ!!」
・・悪役全開、もうこのままでいこうとしてるっぽい銀一であった。
──取り敢えずベスパを振り切って、暫く。
目的地に到着。
「・・ぬおっ!?」
・・すると同時、思わず声を上げる。
魔神の目の前に広がる光景は──・・。
なんというか、地獄絵図、だった。
爆炎がそこかしこで。
悲鳴と怒号と嘲笑と罵倒が飛び交い。
そして。
「クハハハハハハハハッ!!流石横っち護れんかったクソ神魔やなぁっ!!俺一人どーにかする事もできんかっ!!」
ハリセン片手に、更に爆発物だのまたもや怪しげな液体だの、思いっ切り危険物と判断すべきだろうそれぞれをもう片方の手に持って高笑いをかましている某魔王の姿。
思わず魔神、遠い目。
そんな事(現実逃避)をしていると、目の前の地獄が沈静化していく。
「・・おう、魔神。遅いで!!」
「・・何やってんだ貴様は・・」
一段落ついた為かこちらに気が付いて気軽に声を掛けてくる銀一に、脱力しつつ返すアシュタロス。
「アホ神魔四匹とケンカや」
「・・他の二名は?」
「こっち側。横っちと鬼道さんくっついたんでな。それを受け入れ、祝福できる側や」
間。
「・・・・・・いつの間にーーーーーーーー!!!」
「オドレがモタモタしとる間にや。アホめ!!」
「酷っ!?・・というか、貴様はそれでいいのか・・」
「俺は横っちが幸せならそれでええ。そう言うた筈や」
「・・私はそれでは納得できんぞ・・」
「せやろな。ほな、行くで!!」
「・・は?」
「横っちの所へ、や。そんで、きっちりフラレてこいや!!」
「・・それはキツイものがあるな」
「ええから来い!!そんなら、そっちは任すわ」
「・・全く・・ムチャクチャなのね〜・・。もう皆、貴方に逆らう気なんかなくしてるから、とっとと行くのね〜・・」
「横島はこういう友しか持っておらんのかのぅ・・。まぁ、良い。銀一とやら、横島は頼んだぞ」
「・・はいな。そんなら二人共、お疲れさーん♪」
アシュタロス登場にもリアクションを返せない程に疲れ切った様子のヒャクメと、魔神完全無視で真摯な瞳を銀一に向けてそう言う天龍童子に、軽く労いの声を掛け。
「そんなら行くで、アシュ!!」
「・・何が悲しくて魔王と二人・・」
「此処で潰れるかオラァァッ!!?」
「ギャアアア!?頭みしみしとかゆっとりマスヨーーー!!?」
・・ばたばたと二人して、残っていたハニワ兵達と共に、宇宙の卵へとダイブ。
・・そして残った者達は。
「・・うぅ・・なんで・・なんでぇっ・・!?」
強くて。
選ばれて。
護っていて。
自分達なんか、歯牙にもかけずに。
「・・小竜姫・・。仕方無いのね〜。あの人達は、一生"賭けて"横島さんを護ろうとした"人間"なんだから・・」
「でもっ・・!!それは私だって・・!!」
「・・小竜姫・・。本気だったら、神の座を捨てて、此処に来なきゃいけなかったのね〜。神魔が手を出しちゃダメって命令があって出遅れたんだから・・。結局、それに縛られてた私達は、そこまでなのね〜」
「だって・・!!そうでもなきゃ、この力がなきゃ、横島さんを護る事なんて・・」
「・・この力を持って、もっと早く此処に来れていたとして、横島さん護れた?アシュタロスを倒せていたと思うのね?・・小竜姫」
「・・・・・・・・・・」
押し黙る。
反論ができなかった。
それに、そういう問題では無いのだ。
ヒャクメが言っているのは、覚悟の問題なのだから。
力があってもなくても、アシュタロスを倒せない事が解っているのなら。
横島を愛しているというのなら。
・・来なくてはならなかったのだろう。もっと、早くに。
それがどんな結果を及ぼしたとしても。
想いを告げて・・例え選ばれなかったとしても。
そしてそれは、沈黙している魔族の軍人姉弟も同じ事で。
・・まぁ、最高指導者達の許可がもっと早くに降りて、神や魔の力を失う事無くもっと早くに此処に来ていたとしても──・・GS達救出部隊と同じ末路(萌えポスターに撃沈)を辿る事になっていただろうが(酷)
第一、あの人間達には、もっと根本的な所で負けている。
横島に対する想い。
ただ自分のものにしようと。"チカラ"で奪い、捕らえ様とした。
・・そんな、浅い、思慮の足りない、想い。
言ってしまえば、アシュタロスと同じ。
それで、太刀打ちなど出来るものか。
「お主も同じじゃ。・・仕方あるまい」
「・・いやでちゅう・・」
「・・そう泣くでない。別に横島に嫌いだと言われた訳ではないのだから。・・想いは、千差万別らしいぞ。・・同じ想いを持っていても、相手の為に立場を変えて、その者を護ろうとする者もおる。・・あの男を見れば解るであろう?」
「・・・・・・・・・・」
天龍童子が、体育座りをしながら涙を零していたパピリオに、そう諭す。
己とて、悔しい気持ちが無い訳ではなく。
それでも、あの男の言った通り。横島が幸せならば、それで良いとも思うのだ。
確かに──己の思いは、多分に友人か兄を慕うかの様な、淡いもので。
皆の様な、激しいものではなかったかもしれないけれど。
「・・余は、横島が、横島の望む幸せの中で笑ってくれた方が良い」
そう言い切る天龍童子の、どこか清々しく、満足げな表情を、涙に濡れた瞳で見詰め。
「・・ヨコチマァ・・」
呟き、消えていった宇宙の卵に視線を向けて。
「・・私は・・」
パピリオは、顔を伏せて考え込む。
足を抱える腕に、力が込められた。
本当はもう、理解している。
だからこそ、攻撃の手が止まり、膝を折ったのだから。
けれど、納得は、出来なくて。
「ヨコチマァ・・!!」
それでも。
どうしようもない事が、解っているから──・・
・・こちらでは。
それぞれ、想いに決着はつきそうだった。
一方。
「・・キーやん・・。ハリセンなんぞに自我持たしたん?」
「・・いいえ・・。そんな事をした覚えは皆無なんですが・・」
確かに、自動で最低限、主の身を護る様には設定されていたが、主を自ら決める機能があったかどうかは判然としない。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
微妙な沈黙。
「・・あの腹黒人間に何かしとったり」
「あっちはそちらの担当でしょう!?」
「知るかいな!!元々あーやで!?銀色魔王!!てか黒銀魔王!?」
「駄目ですよ、私達がそんな事を言っては!!本当に魔王になっちゃうじゃないですか!!」
「・・もしかして、アシュタロスが散々魔王呼ばわりしとったせいか?あの無駄に理不尽な強さは」
「・・高位の者にそう認定されたりすればその存在ごと"そういうもの"に引き摺られる事はありますが・・それとこれとは違う様な・・。大体、それなら最強保護者はどうなるんです?」
「・・そら、やっぱ最強の保護者に」
「・・人間ですよ?」
「・・人間が一番怖いやないか」
「・・確かに。でも、元々ああですよ?だからこそアシュタロスもそう名付け、呼ぶのでしょうし」
「せやから、そら魔王・・腹黒人間も同じやないか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
再び沈黙。
「・・まぁ、人間は怖いという事で。あと、アシュタロスがへたれすぎという事で」
「そやなー。ま、姫さんは保護者さんとくっついたし、妙神山の連中も落ち着いた様やし・・。あとは、アシュタロスの答待ちか?まぁ、腹黒と保護者がおるから、万一暴走してもそう酷い事にはならんやろ」
一連を覗いていた某最高指導者達は、のほほんとそんな事を言っていた。
「さぁて・・何だか面白い事になってるみたいだねぇ?ま、少し遅れちまったみたいだけど・・。取り敢えず、小竜姫でも揶揄いに行こうかねぇ・・?」
そして、塔の外。
遅れてやって来た蛇女が、一人。
見張りをしていたハニワ兵を地に転がし、しかも踏み付けながら、タチの悪い笑みを浮かべていた。
「ぽー!!」
「ぽぽー!!」
「ぽー・・」
「ああもううっさいね!!アンタ達がさっさと情報寄越さないからだろっ!?ほらほらっ!!あんまり煩いと壊しちまうよっ!?うりうりっ!!」
『ぽー!!』
・・足の下のハニワ兵を助けようとしている他のハニワ兵達を揶揄う様に、ぐりぐりと踏み付けている足の力を強くして、嬲ってみたり。
『ぽぽー!!』
「おや、怒ったのかい!?土くれの分際で!!」
・・何やら端目にはじゃれあっている様にも見えてたり。
「・・って、こいつらで遊んでる場合でもないか・・」
『ぽぽぽー!!』
「ぶわっ!?土くれなのに涙流して怒るかいっ!?キショッ!!」
『ぽーーーーー!!!』
・・そんなこんなと、無駄に時間を潰していたりする蛇女だった。
──走る。走る。走る。
そんな中。
色々と、話す。
こんな、時に。
いや、こんな時だから。
「・・あぁ、核か?発射?・・そんなん嘘に決まっとるやん」
「・・何ィ!?」
「俺は単なる一般市民やで?そんなんホイホイ使えるかい。・・まぁ、ハッキングしたんもセキュリティ甘いんも本当やけど。使お思たら使えるけど。んな事して横っちに嫌われたくないしなー。オドレのせいにするゆーても、流石に全部は無理やろーし」
あっけらかんと、ヘロッと暴露。
「・・その割りには本気の眼に見えたが・・」
「当然やろ。本気やったし」
「・・色々とムジュンが・・」
「俺は俳優やからな。役に入り込んでたっちゅう事や」
にやり、と笑いつつ銀一。
・・黒い笑みは素らしいが。
「・・俺は、横っちの事好きやけど・・横っちが笑ぉとるならそれで良い。横っちが幸せなら、俺を選んでくれんでも、満足できる。・・俺は、横っちにメロメロやからなー」
けらけら笑いながら言う。
どこか晴れ晴れとした顔で。
(・・これが、覚悟か・・)
鬼道に説教された内容は、殆ど理解できない人の理屈。
・・しかし。
それらには、覚悟が付いて回る。
色々と。何にでも。行動に伴う、それに対する、あらゆる覚悟。
その覚悟の在り方には、同意する。
銀一の覚悟は強い。それも解った。
それはきっと尊いものなのだろう事も。
その覚悟が生み出す強さも。
だが──
「・・それでも、私には横島クンしかいないのだ・・」
それだけは、譲れなかった。
譲れない筈だと。
言い聞かせるかの様に、重く、呟く。
そんなアシュタロスを苦笑と共に見て。
「・・なら、足掻くんやな。正々堂々と。欲望だけ出して力で無理矢理なんて、クソの横暴、ガキの我侭や」
そう言って。
「まぁ、オドレのしでかした事の数々がそない簡単に拭える訳無いけどなぁっ!!」
「げふぅっ!!」
・・きっちり口撃かまして締める銀一だった。
──覚悟。
なんて自分には足りなかったもの。
譲れないと、そう答えたというのに。
己の娘に答える事の出来なかった自分は。
・・本当は。
迷っているのだろうか。
・・何に?
違えているのだろうか。
・・何を?
私は──
「・・確かめてくると、言ったのだ・・」
ベスパに、そう言って。
・・だから。
「何ブツブツ言っとんねん。とうとう頭のネジ全部外れたか?」
「酷ッ!?」
・・確かめる為に。
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