雨のように星が降り注ぐ夜の展望台。
そこに一人の青年が佇んでいた。
金髪に童顔ながらその瞳は強烈な意思を感じさせる。
そんな彼に、背後から声がかけられる。
「おまたせ、ガッシュ」「やあティオ」
そこに現れたのは驚くほどに美しく成長したティオ。
魔界の女王と名乗るに相応しい可憐さと神々しさを持つ彼女はまた知性においても
女傑と呼ばれるに足る力量を発揮し、魔界はかつてない繁栄の時を迎えていた。
「何事かしら、いまさらあたしをこんな所に呼び出すなんて。
それとも他者がいる所では言えない話?」
「いやぁ・・・実は・・・」真っ赤になって照れているガッシュ(青年ver)。
(ひょひょひょ、ひょっとしてこりは・・・ぷろぽぉず?)
「今度結婚しようかなぁって」(よぉっしおっけぃ!かもんかも−ん!)
「コルルと」「いいわ。喜んで受けさせてもら・・・・・・コルルと?」
「ああ。あとパティも一緒なんだ」と爽やかな笑顔のガッシュ。
何時の間にやらコルルとパティがガッシュの両側に居た。
二人とも真っ赤になってモジモジしながらガッシュに寄り添っている。
「だからティオも、旦那と一緒に式に来て欲しいんだ」「だんな?」
「うん、わかったよガッシュ」その声に振り向くとそこには・・・キャンチョメが居た。
「・・・・・・・・」しかも彼は「成長した」というよりは以前のまま縦に引き伸ばしただけといった姿である。
呆然唖然とするティオを置いておいてガッシュとキャンチョメは妙に盛り上がる。
「いやあガッシュ、二人も嫁さんもらうなんて羨ましいなぁ」
「いやいや、パピプリオにゾボロン、そしてキャンチョメと三人の旦那持ってるティオにゃかなわないよ」
「なんじゃそりゃあ!!!!!!」
ふと気付くと驚いているガッシュの顔が。・・・・・・子供なガッシュだ。ウマゴンも居る。
「どうしたの、二人とも」
「いや、ティオがいきなり叫ぶのでビックリしたのだ」「メルメル」しきりに頷くウマゴン。
夢・・・夢ね。そうよ夢よ。ただの悪夢に過ぎないわ・・・
そう自分に言い聞かせていると、運動場が見える。アレは確か・・・
「パム−ンだの」「親衛騎団の訓練ね。張り切ってるわね」
「いいかぁ!お前らはクズだ!間抜けだ!クソ野朗だ!
お前らの母親はお前等なんぞを生んでさぞ後悔してるに違いない!」
「なんなのだ、アレは?」「パム−ンがああいう訓練の事よく判らないっていうんで清麿に頼んでおいたのよ」
さてここは人間界。
新婚ホヤホヤの夫婦が夕食を食べています。今日のメニュ−は鯖の塩焼きにキノコとチキンのシチュ−ですね。
「マニュアル?」
「ああ。パム−ンが部下に訓練する為のマニュアル欲しがってるってティオが言ってたんでね。
ナゾナゾ博士に頼んで知り合いから傭兵用の訓練マニュアル貰ったんだ。
で、こないだ結婚式のときティオに渡しておいたんだよ」
「だがこの訓練をやり遂げればお前らはクソ野朗からウジムシ位にはなれるだろう!
判ったか!」
『サ−!イエッサ−!』
「よし!訓練を始める前にいつもの行くぞ!」『サ−!イエッサ−!』
「我が命我が物と思わず!」『我が命我が物と思わず!』
「なんだ?」「あ、アレあたしの趣味」
「趣味とな?」「大川橋蔵はやっぱ素敵よねぇ」
「・・・・・・」「メルメル・・・」「あ、天知茂もいいわぁ・・・」
「死して屍拾うものなし!」『死して屍拾うものなし!』
「よぉっし!貴様らぁ!グラウンド二十周だ!」『サ−!イエッサ−!』
一斉に走り出す親衛騎団の一同。そしてパム−ンはこちらを見つけて近づいて来る。
「やあガッシュ、こんにちわ女王陛下」
「うむ」「ティオって呼んでよ」
「で、訓練とやらはうまくいっておるのかの?」
「正直はかばかしくないな」
「○ァミコン○ォ−ズがで−たぞ−」『ファミ○ンウォ−○が出−たぞ−』
「コイツはどえらいシミュレ−ション」『コイツはどえらいシミュレ−ション』
「のめり込め!」『のめり込め!』「のめり込め!」『のめり込め!』
などと走り込みをやっている部下を見るパム−ン。
「この千年、平和で平穏。ロクな争いがなかった。
おかげで極一部の治安維持に関わってるヤツ −はっきり言うと黒騎士だ− を除けばたるみ切ってやがる。
それだけコモンとやらの政治がきっちりいけてたんだろうな。
しかし俺たち千年前の魔物が帰還し、現在の魔物達も記憶を消されず −言い換えれば闘争心を消されず−
魔界に戻ってるんでかなり治安が悪くなってる。
いくら鍛えても足りねぇってのにコイツらときたら・・・」
「か−ちゃん達にはな−いしょだぞ−」『か−ちゃん達にはな−いしょだぞ−』
パム−ンと分かれて再び歩き始めたガッシュとティオ、そしてウマゴンの前に姿を表したのは・・・
「ハ−アア−イ」「おぅ、ビッグボイン殿ではないか」
「コレ、タノマレモノデ−ス」「うむ、すまんの」なにやらちみっと巨大な風呂敷包み(当然緑色に唐草模様)を受け取るガッシュ。
「ちょうどこれからこれを欲しがっている者に会いに行くのだ。ぐったいみっというヤツなのだ」
「バ−ハハ−イ」「さらばなのだ。また頼むぞ」
「ちょちょちょ、ちょっとまってよガッシュ、何なのよアレは!」
「何なのよと言われてもビッグボイン殿だが?」
「『ビッグボイン殿だが?』じゃないでしょが!何で人間が魔界に居るのよ!?頼まれ物って何よ!」
「なぜか判らぬが時折姿を見せるぞ、ビッグボイン殿は。
運良く合えた時は人間界から持ってきて欲しい物などを頼むのだ。
清麿への手紙などもお願いするのでなにかと便利だ」
「『なにかと便利だ』じゃないでしょうが!大体・・・・もういいわ」
「ティオはビッグボイン殿が嫌いなのかの?」
「嫌いどころか・・・あいつはあたしの・・・あたし達全女性の敵よ!」
「なんと?」
「なによあのデカさは・・・初めてアレと出合った時は恵と二人で抱き合って泣いたものよ・・・
『小さい者同士二人で強く生きていこう』『大きくなるときは一緒』そう誓い合ったわモンよ・・・
なのに十年ぶりに合った恵は自分だけ・・・
何よ94・49・89って!ずるいわ恵ぃ!」
「何を言っておるのかよく判らんが落ち着くのだティオ」
「そんな馬鹿みたいなサイズの女は中学校で生徒にセクハラされてまいってりゃいいのよ!」
「落ち着くのだティオ」ガツン!
「あ−・・・一応礼言っとくわ。ありがとガッシュ」
などとやっていると眼前にちいさなテントが。
「元気かの? ブラゴ」
続きます
いささか中途半端ですがご容赦ください。
ちなみに魔界の平穏が乱れ始めている理由は当然ながらオリジナルです。
「ビッグボイン自由に魔界出入り」ですが、アレとワイフは何やっても許されるような気ィしまして。
あと「現在の恵のサイズ」はオリジナル。たしかマチコ先生と同じです。