「ルシオラ・・・・・・・・・逢う前に俺・・・・・・・・・死ぬかも」
Legend of Devil vol.2 Inauguration その1
「ここか・・・・・・・・・」
申請が受理され横島がプロGSとなって2日経った日のこと、横島達はオフィスビル街の一角、窓に【横島除霊事務所】と書かれたビルの前に立っていた。ここが新しい横島達の事務所になるのだ。
「しかし、よくこんなビル一棟丸ごと買えましたね」
少々小さいながらも10階建てのビルは雑居ビルとして使われていたはずだ。横島はそんなことを考えながら小竜姫に話しかけた。
「えぇ、少々手こずりましたが管理人も入居社も”快く”明け渡してくれましたよ」
小竜姫の答えに違和感があり横島は察しが付いた。
(大方小竜姫様とワルキューレで脅して買い取ったんだろうな〜)
「大体そんな感じなのね〜。 でもただ脅すだけじゃなかったのね〜」
「ヒャ、ヒャクメ!!」
「天界や魔界のことちらつかせて精神的にどん底まで落としたのね〜」
俺の考えを読み、答えたヒャクメを小竜姫が制止しようとしたが無駄だった。俺と雪之丞は呆気にとられてしまった。確かに小竜姫やワルキューレは目的の為ならば手段を選ばないこともあるが、まさかそんなことまでしているとは考えても見なかったのである。
「と、ところでここの改装はいつ頃終わるんだ?」
咄嗟に話題を変える雪之丞。それを助け船にしたのか小竜姫が答えた。
「大体、あと10日というところでしょうか」
「そうですか・・・・・・・・・じゃぁ開業できるのは一月くらい先ですね」
横島も正気に戻り小竜姫に続いた。プロGSとなり個人活動できるようになったものの、民間GS横島除霊事務所所長としての営業登録が完了しない限り違法となってしまうのだ。
民間GSの営業登録の申請には個人がプロのGSであることは当たり前として、既に活動できる状態の事務所を所有していることが最低条件となっているのだ。つまり改装工事が終了しなければ申請出来ないということだ。しかも申請から受理まではおよそ半月かかってしまう事もあり、実際の営業開始は1ヶ月ほど先になってしまうのだ。
「横島、お前一ヶ月間どうするんだ?」
雪之丞の問いかけに横島が答える。
「んー・・・・・・・・・修行もしたいし、妙神山に行こうと思う。 小竜姫様良いですか?」
「えぇ、勿論です!私もその方が良いと思ってていましたし」
「小竜姫が考えていたのはそれだけじゃないのね〜」
ヒャクメがニヤニヤしながら続けようとしたが・・・・・・・・・
「ヒャクメ!! いい加減にしなさい!!」
小竜姫は赤面しながらヒャクメを制止した。更に額には血管が浮き出ていた。恥ずかしさと怒りが頂点に達そうとしていたのだ。
「わ、分かったのね〜・・・・・・・・・も、もう喋らないのね〜」
小竜姫に気圧され、オロオロしながらヒャクメが呟いた。横島と雪之丞は訳が分からず首を捻っていた。
妙神山に来た横島達は早速修行を始めていた。今回の修行目的は霊力のアップ及び精神力の向上である。その為に、今回からの修行は斉天大聖の元で行うこととなった。
「ほれ! もっと腰を落とさんか! 雑念が多い! もっと意識を集中せい!」
斉天大聖の言葉に横島達は苦笑いをした。彼らは今、身体に流れる霊気の流れを知る為の修行をしている。両足を肩幅に開き腰を膝高まで落とす、更に両手を前につきだしながら霊気の流れを掴み身体の中心、腹部に集中させる。この状態を8時間キープさせるのだ。聞いているだけで疲れ切ってしまうような内容だが実際には3日間キープさせるらしい。
「し、師匠(斉天大聖にそう呼べと言われた)・・・・・・・・・もうダメです」
「何を言っておる! まだ3時間しか経っておらんわ! 精神は身体と霊気に直結しておる、霊気の流れが読めれば疲れたりせんわ! もっと集中せい!」
横島の言葉は斉天大聖の渇で返された。
「ルシオラ・・・・・・・・・逢う前に俺・・・・・・・・・死ぬかも」
横島の声もむなしく修行は続く。