ランスが日光を手に入れた当日の昼ごろ
ウマの機動力もあってか、カスタムの街へと到着していた
ランスは即座に門番に都市長との会談がしたいと話しかけ
その門番も、ランス本人が来た事に驚きつつも即座に街の中へと戻り
数分後、都市長が会談に応じると言う報告と共に、ランスを案内し
ランスは、その門番に誘われるまま都市長室まで向かい
案内を終えた兵が去った後、大きく深呼吸をし、扉を開けた
「ランス兄ちゃん〜〜〜!!」
ドゴッ!!
扉を開けたランスを待っていたのは、少女の腹部への見事な体当たりだった
「さすが、俺の妹だ、確実に急所に狙って体当たりしてやがる」
「ちょっとミル!!ランスの顔が青くなってるじゃない!!」
「ち・・ちょっとランス君大丈夫!!シィルちゃん、ヒーリングを!!」
「は、はい!!いたいのいたいの、とんでけ〜!!」
その見事な体当たりをくらい、その場で蹲り顔を青くしているランスを見て
各々別々な反応をしている面々がいた
まず一人目は、体当たりをした少女、ミル・ヨークスの実の姉であり
剣士としても一流に属する腕を持つ女性、ミリ・ヨークス
二人目は、青色の髪と瞳をした眼鏡をかけた女性、マリア・カスタード
三人目が、カスタムの都市長でもある女性、エレノア・ランであり
四人目は先の反乱平定時に参戦した、シィル・プラインその人である
「ミ、ミル・・・せめて、もう少し、威力を下げてくれ」
シィルにヒーリングされて、少しはましになったランスが
ミルの頭をなでながら、立ち上がりつつそういった
ミル本人は、頭をなでられてご機嫌らしく、聞いているようには見えなかったが
また、その光景を見て、マリアが少しだけ嫉妬の眼を向けていたようでもあった
「と・・・所で、ランス君、会談がしたいって話だけど
リーザスから遠路、このカスタムまで、一体何の会談をしにきたの?」
ランが、マリアの様子に僅かに引きつつもランスに尋ねる
「ん?・・・・あぁ、マリス様から書状を預かっている
この書状に全て書かれてる筈だから、これに関して是か非かを聞きたい」
そう言うとランスは、ミルをなでる手を止め、懐から書状を出し手渡す
ランはそれを受け取ると、即座に封を解き、書状の内容を確認しだした
近くにいたマリアとミリも、その内容に興味があるらしく、横から見ていた
「へぇ、いい条件じゃないか」
「けど、何か裏がありそうな・・・」
「うわ、ここまで譲渡するんだ・・・あっちも必死なんだね」
その書状を確認した三人が、各々反応をし続ける
遂には、三人で会議を始めだし、ランスはミルとシィルの二人と話し始めた
それからしばらく時間が過ぎ・・・
ミルがランスに肩車をしてもらっている時に
「ねぇ、ランス君、貴方はこの書状の中身を見たの?」
唐突にランが、ランスにそう話しかけた
「ん?・・・いや、一切見てないけど?」
ランスは顔だけをラン達の方に向け、そう返した
「そう、取りあえず条件は飲むけど、その前にランス君も確認しておいて」
そう言うとランは、マリスの書状をランスに手渡した
ランスは、ミルを降ろした後、書状の中身を見始めた・・・・そして
「・・・・
なにぃ!!」
ある一節を見て、そう叫んだ
ちなみに、マリスの書状の中身はこうだった
『この度、ハンナ、ジオの両都市がリーザスに宣戦布告しようとしています
当方も確かに先の内乱で疲弊しているため、迅速には動けないのが現状です
そこで、かつて共に戦ったカスタムの都市の皆様に、同盟を申し出ます
無論、無償で同盟を申し出るつもりではありません
そちらには有事の際にリーザスに軍事、金銭協力をしてもらう代りに
此方からは、カスタムの都市の復興支援、並びに有事の際の軍事支援
更にリーザスとの交易の際にはカスタム産の品物を免税します
今回は火急の事態と言うこともあり、この同盟を結んでくださる場合は
カスタムの街から諸国に、リーザスへの侵攻中止を呼びかけ
その上で、カスタムから少数の兵でいいので
リーザスが征討に出る際に、ジオの街へとそちらの兵を向ける事で
この同盟締結の証と言う事でお願いいたします
万が一、そちらがリーザスに牙向いた際には
此方としても、不本意ながらそちらを征討しなければならなくなりますので
同盟を拒絶なさる場合は、あくまで沈黙を保つことでその証としてください
同盟を承諾してくださる際の軍事行動に必要でしたら
使者のランス将軍を一時的にそちらにお貸しいたします
良い返事である事を、祈っております
リーザス国 宰相 マリス・アマリリス 』
その中でランスが見逃せなかったのは、一時的に貸すと言う所だ
ランス本人は、同盟締結を見届ければ即座にリーザスに戻り
緑の軍を率い、ハンナ・ジオ攻略戦に出るつもりだったのだ
かといって、マリスの提案を正面から反論は出来ない
カスタムの街の兵は皆、市民兵である、軍ほどの統率もなければ力もない
その上で、軍との連携を密にしようと思えば、従軍経験者がいる方がいい
統率や力が十分ならば、連携が密でなくてもある程度は戦えるのだが
この戦況では、軍との連携が密でなければ、被害は大きくなるだろう
リーザス軍の兵は死の覚悟すら出来ているものも多いが
市民兵にそれを望むのは酷な事、なら、生存率をあげてやるべきだろう
幸い、攻撃の主体はリーザス軍である事は疑いようもないのだから
後は軍の動きをいかに冷静に読み、その行動に合わせられるか
それが、市民兵の損害を減らし、兵の生存率を高める事となる
その為には、将としてのランスの力は重要なものであろう
過去にマリアやミリも軍を率いたが、ランスほどの采配能力はない
しかも同盟を今から結ぼうという勢力の兵を、無意味に損じさせるわけにもいかない
その為には、マリスの案どおり、ランスがカスタムに残った方が良いのだ
「・・・やっぱり、ランス君はリーザスに戻る?
同盟は受けるつもりだし、ランス君がいればずいぶん楽になるけど
それでも、甘えるわけにもいかないしね。
ランス君が帰りたいんだったらリーザスに戻ってくれて良いわよ」
そのランスの反応を見たランが、ランスにそう提案した
ランスは、首をゆっくりと横に振ると、真剣な顔で言う
「確かに、リーザスに戻って兵を率いたい気持ちはあるけど
カスタムの兵は市民兵だろう?、なら、軍人としてやる事は一つ
少しでも戦術を駆使して、兵の生存率を高める
ランさん達が迷惑じゃないなら、厄介にならせてもらうよ」
ランスは、最後は微笑みながらそういった
その微笑に、マリアとランは僅かに頬を染めていた
「あっ・・だとすると宿はどうするかな
まさかこうなるとは思ってなかったからなぁ・・・」
ランスが宿代問題に気付き、頭をかきつつそう呟いた
その言葉に、ランとマリアが反応し、口を開こうとした瞬間
「だったら家に来るかい?部屋も空いてるし
アイテム屋の手伝いに男がいてくれればずいぶんと助かるしね
それに、あんたがいるとミルの奴も喜ぶだろうしね」
半ば副業でアイテム屋をしているミリが、ランスにそう提案した
「そうだな・・・・厄介になるか」
ランスは、少し考える素振りを見せると、そう返した
マリアとランは出鼻をくじかれ、言いだす機会がなくなってしまい
シィルに至っては、志津香の家に居候しているため家主の許可なくは言いだせず
結局、ランスはミリの家で世話になる事になったのだ
女性陣は複雑な顔をしていたが、まぁ、他所よりは良いと言う結論に達した
つまりは、ミリはランスを狙っていないし、ミルは年齢が違い過ぎるから
万が一にも、過ちはないだろうという結論に達したのであった
ミリの家に到着したランスは、アイテム倉庫の整理を手伝ったりしていた
その後、ミルが作った夕飯を三人で食べ、入浴しようとしたとき・・・
「あぁ、ついでにミルも入れてやってくれ、家主命令って事で」
という、家主であるミリの命令もあって、ミルとの同時入浴になった
流石のランスと言えども、ミルとの入浴を断る事は出来なかった
むしろ、断ったらロリコンだと自分で証明するようなものだろう
ランス自身、そんな趣味もないし、ミルを妹のように見ていたため
ミリのその命令に、苦笑しながらも大人しくつきあった
「ランスお兄ちゃん、そのお守り、ボロボロだね〜」
鎧を外し、上着とシャツを脱いだランスを見て、ミルがそういった
「ん?このお守りか?まぁ・・・もう十年以上もってるしなぁ」
ランスは、胸元にあった青色のお守りを触りながら言った
「新しいの買わないの?」
ミルのその言葉に、ランスは苦笑しながら返した
「これの代りなんて、どこにもないからな、買い換えるわけにもいかないさ」
ランスはそう言うとお守りも外し、脱いだ服の上に置いた
その後、ミルを促し、先に浴室に入れた後、自分も浴室へと入っていった
「ランスお兄ちゃん、背中流したげるね」
ミルはそう言いながら微笑むと、ランスを座らせ、背中を洗い出した
ランスは、そんな年相応の行動をしているミルをみて、微笑んでいた
かつて、カスタムの乱の時代、ミルは年齢を無理やり引き上げられていた
魔法使いの魔力を引き上げる、呪われた指輪の効力によってである
年齢を引き上げられた原因は、ミルが幻獣使いだったからだった
幻獣は、術者の年齢やレベル、つまりは術者の魔力によって
一度に使役できる数、その力が決まると言う特徴がある
つまり、幻獣は魔法と違い、術者の体力にも比例するのだ
その為、ミルは幻獣使いとしての能力を引き上げられる際に
年齢をも、引き上げられることとなったのだ
しかし、指輪の呪縛から解かれたさい、その当時の記憶は失われた
だが、仮にも呪われていたので、また、何らかの反動がないか心配してたのだ
だが、ランスの不安は、今のミルを見て、吹き飛んでいた
「あれ?お兄ちゃん、右肩に三つもホクロあるんだ、珍しいね〜」
背中を洗っていたミルが、ランスの右肩の方を見てそういった
「ん?あぁ、そういやあったな、自分じゃ気付かない場所だから忘れてた」
ランスは、そのミルの言葉を聞き、自分の体の一つの特徴を思い出していた
ランスのホクロは、バラバラではなく、三角形のような形で出来ていた
その後、しばらくミルが必死に背中を流す声だけがしばらく響き
その背中流しの礼として、ランスがミルの頭を洗い
まるで兄妹のような、ほのぼのとした空間が形成されていた
約20分後、体を洗い終えた二人が浴槽につかっていたとき
ミルが唐突に、ランスに質問した
「ねぇ、お兄ちゃんが持ってたあのお守り、代りの物がないって、どういうこと?」
ミルからすれば、純粋な好奇心からの質問だろう
だが、ランスにとって、その質問は、重い意味を持っていた
「ん、そういえば、ミル達には話してなかったな
俺はな、5歳以前の記憶がまったくないんだ
親の顔も覚えてないし、どこで産まれたのかもわからない
ただ、その時から持ってたのが、あのお守りだったんだよ
俺にとって失われた過去の象徴、それがあれなんだ」
「・・・・・ん〜、あんまりわからないけど・・・・
とにかく、お兄ちゃんにとってはあのお守りは大切なものなんだね?」
さりげに、重い意味を持つ言葉を何気なく語ったランスの言葉を
ミルは、その年齢ゆえか、完全には理解しきれてはいなかった
いや・・・もしかすると理解はしていたが、誤魔化していたのかもしれないが
ランスは、そんなミルを見て僅かに微笑むと、頭をクシャリとなでた
「まぁ、そう言う事だ、そろそろあがるぞ、のぼせるわけにはいかないしな」
ランスはそう言い、ミルを抱きかかえて浴槽から出ていった
その後、ランスはミリの第二の命令で、同じベッドで寝る事になった
その日、ランスの寝顔は、とても優しい物だったという
ちなみに、入浴シーンや寝顔をラレラレ石に収めたミリが
マリア、志津香、ラン、シィル相手に商売したかどうかは定かではない
とりあえず、しばらくはカスタムの街は平穏であった
挑発を始めたといっても、そう簡単には動いてこなかったからだ
ランスがカスタムに到着して2週間が過ぎて、始めて戦況は動く
その時まで、ランスは、妹のような存在のミルや
かつては敵対したが、後に協力し合ったマリア達と共にすごしていた
その、普段とは少し違う日常が、ランスに考える時間を与えていた
セルに言われた言葉の真意、日光に言われた自己を持つということ
いまだに、ランスにとっては漠然としすぎているものではあったが
戦場に身を置かず、ただ、平和な時を過ごすこの状況でこそ
自分に足りぬ何かを見つけられるのではないかと、そう考え始めていた
自由都市とリーザスの間に流れる不穏な空気
だが、それはまだ、世界を動乱へと導くものではなかった
しかし、一度戦端が開かれれば、それが世界に飛び火するのは目に見えていた
その火が、どんどんと大きな炎となり、大陸を燃やし尽くすのか、
それとも炎となる前に消火され、一部の小火だけで終わるのか
そのような事などわかるはずもなく、さまざまな人間の思惑と共に
時は、ただ未来へと、とどまる事なく、流れ続けていた
後書き
今回はあくまでインターミッション風なので・・
内容が薄いのは、あえて見過ごしておいてください
今回はランスの過去に関するフラグを一部立てました
まぁ、この作品での過去は捏造もいいとこなので・・・
まかり間違っても、オフィシャルと誤認しないようにお願いします
取りあえず今回はランスの過去の唯一の産物の登場でした
どうしてもランス過去を先取りしたい方はレスにどうぞ(ぇ
おもいっきり暈しながら的中させて答えますので(マテコラ
次回以降の話の流れですが・・・・
自由都市鎮圧戦、ある魔人との決戦、その後、JAPAN覚醒編へと繋がります
皆様期待のランス獣モードはJAPAN覚醒編最終章で登場します(何
それまでの間、のんびりとお付き合いください
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